ケアマネジャーから「まずデイサービスから始めましょう」と言われたとき、多くの家族が最初に不安になるのはお金の話です。パンフレットには「1回○○円(1割負担の場合)」としか書いておらず、そこに食費が乗るのか、送迎代は別なのか、月にいくらになるのかが読み取れません。
デイサービス(通所介護)の費用は「介護保険で1〜3割を払う部分」と「全額自己負担の実費部分」の二階建てです。この二つを分けて考えると、金額の見通しが一気に立ちます。この記事では2026年9月時点の公的な単位数をもとに、1回あたり・1か月あたりの目安と、負担が重くなったときに使える制度までを整理します。
この記事の結論
- 費用は二階建て。介護保険が使える「サービス費」は1〜3割負担、食費・おむつ代・レク材料費などの「実費」は全額自己負担です。送迎費はサービス費に含まれており、別料金にはなりません。
- 目安は要介護3・7〜8時間で900単位。1単位10円の地域なら9,000円で、1割負担なら約900円。地域区分が最も高い1級地(東京23区など)は1単位10.90円のため約980円になります。
- 2026年6月に介護報酬が臨時改定されたが、基本の単位数は据え置き。変わったのは介護職員等処遇改善加算の区分と加算率で、通所介護は加算Ⅰイが11.1%、Ⅰロが12.0%です。事業所によってこの加算分が上乗せされます。
- 食費は1食600〜800円が中心。週2回・月8回通うと食費だけで5,000〜6,400円になり、サービス費とほぼ同額になることも珍しくありません。
- 自己負担が上限を超えたら高額介護サービス費で戻る。ただし食費・おむつ代などの実費は対象外です。上限額は世帯の課税状況で月15,000円〜140,100円に分かれます。
デイサービスの費用は「保険分」と「実費」の二階建て
請求書を見て混乱する原因は、性質のちがう2種類の費用が1枚にまとまっているからです。先に分けてしまえば、あとは足し算で済みます。
1階
介護保険が使うサービス費
単位数 × 地域単価で決まり、そのうち1〜3割だけを払います。
- 基本報酬(要介護度×利用時間)
- 送迎(基本報酬に込み)
- 入浴介助加算・個別機能訓練加算など
- 処遇改善加算(総単位数に%で上乗せ)
2階
全額自己負担の実費
保険の対象外なので、10割を払います。事業所ごとに金額が違います。
- 食費(昼食・おやつ)
- おむつ代
- レクリエーションの材料費
- 理美容・行事の実費
見学のときに「1回いくらですか」とだけ聞くと、多くの事業所は1階部分の1割負担額を答えます。「食費とおむつ代を入れて、1日いくらになりますか」と聞き方を変えると、実際に財布から出る金額が分かります。
1回あたりの単位数(通常規模型・2026年9月時点)
基本報酬は「要介護度」と「利用時間」の組み合わせで決まります。下表は利用者が最も多い通常規模型(前年度の月平均利用者数750人以下)の単位数です。2024年4月改定の値で、2026年6月の臨時改定でも基本報酬は変わっていません。
| 利用時間 | 要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 |
|---|---|---|---|---|---|
| 3時間以上4時間未満 | 370 | 423 | 479 | 533 | 588 |
| 4時間以上5時間未満 | 388 | 444 | 502 | 560 | 617 |
| 5時間以上6時間未満 | 570 | 673 | 777 | 880 | 984 |
| 6時間以上7時間未満 | 584 | 689 | 796 | 901 | 1,008 |
| 7時間以上8時間未満 | 658 | 777 | 900 | 1,023 | 1,148 |
| 8時間以上9時間未満 | 669 | 791 | 915 | 1,041 | 1,168 |
1単位は10円が基本ですが、地域区分によって最大10.90円まで上がります(通所介護は人件費割合45%の区分にあたるため、1級地の上乗せは9%)。要介護3・7〜8時間の900単位なら、1回のサービス費は9,000〜9,810円、その1割で900〜981円が目安です。ここに入浴介助加算や処遇改善加算が乗るため、実際の1割負担は1,000〜1,150円あたりに落ち着くことが多くなります。
1か月にするといくらか(週2回・週3回のモデル)
要介護3・7〜8時間・1単位10円・1割負担・食費700円という前提で、月の見通しを立ててみます。加算は事業所によって差が大きいため、ここでは基本報酬の1.15倍を加算込みの概算として置いています。
| 項目 | 週2回(月8回) | 週3回(月13回) |
|---|---|---|
| サービス費の1割負担(加算込み概算) | 約8,280円 | 約13,460円 |
| 食費(1食700円) | 5,600円 | 9,100円 |
| おむつ代・レク材料費など | 0〜2,000円 | 0〜3,000円 |
| 合計の目安 | 約14,000〜16,000円 | 約22,500〜25,500円 |
ここで見落とされがちなのが、食費はサービス費とほぼ同じ重さを持つという点です。「1割負担だから安い」と考えていると、請求書の合計を見て驚きます。事業所によっては食費が1食500円のところも900円のところもあり、週3回通うなら年間で5万円近い差になります。
月にどれだけ使えるか — 区分支給限度基準額
介護保険には「1か月にこの単位数まで」という上限があります。これが区分支給限度基準額で、超えた分は全額自己負担になります。デイサービスだけを使うなら上限に触れることは少ないのですが、訪問介護や福祉用具レンタルと併用すると、要介護1・2では意外と早く天井が見えます。
| 区分 | 1か月の上限 | 7〜8時間デイに換算 |
|---|---|---|
| 要支援1 | 5,032単位 | 総合事業のため別枠 |
| 要支援2 | 10,531単位 | 総合事業のため別枠 |
| 要介護1 | 16,765単位 | 約25回分 |
| 要介護2 | 19,705単位 | 約25回分 |
| 要介護3 | 27,048単位 | 約30回分 |
| 要介護4 | 30,938単位 | 約30回分 |
| 要介護5 | 36,217単位 | 約31回分 |
要支援1・2の方は「介護予防・日常生活支援総合事業」の通所型サービスになり、月額包括の料金設定(週1回・週2回で定額)が中心です。要介護と要支援では料金の決まり方そのものが違うので、要支援の方は自治体の単価表を確認してください。
利用開始までの流れ(申請から初日まで)
要介護認定をまだ受けていない場合、デイサービスの初日までにはおおむね1〜2か月を見ておく必要があります。認定結果を待つ間も暫定ケアプランで利用を始められますが、想定より軽い認定が出ると自己負担が増えるため、ケアマネジャーと相談してから決めてください。
申請から利用開始までのタイムライン
Day 0
地域包括支援センターか市区町村の窓口に相談。要介護認定の申請書を出します。本人が行けない場合は家族や地域包括支援センターが代行できます。
Day 7〜20
認定調査と主治医意見書。自宅や入院先で聞き取りがあります。普段できないことを「できる」と答えてしまう例が多いため、家族が同席して補足してください。
Day 30前後
認定結果が届く。原則30日以内ですが、混み合う自治体では40〜60日かかることもあります。効力は申請日にさかのぼります。
結果到着後 1〜2週間
ケアマネジャーを決め、見学して事業所を選ぶ。ここが本人の意思が最も効く場面です。2〜3か所は見比べてください。
その後 数日〜2週間
ケアプラン確定・契約・利用開始。体験利用を受け入れている事業所も多く、契約前に半日だけ試せます。
認定申請の手順そのものは要介護認定の申請の流れと介護保険の申請手続きで詳しく整理しています。
損しないための3つのポイント
お金で後悔しないために
- 食費・おむつ代を含めた「1日総額」で比較する。サービス費は制度で決まっているため事業所差はわずかですが、実費は事業所の裁量です。差が出るのはこちらです。
- 高額介護サービス費は申請しないと戻らない。初回だけ市区町村への申請が必要で、以後は自動振込になる自治体がほとんどです。該当していそうなら窓口で確認してください。
- 加算の内容を聞く。入浴介助加算・個別機能訓練加算・ADL維持等加算などは、必要なら払う価値がありますが、入浴しないのに入浴加算が付いていないかは確認する価値があります。
負担が重くなったときに使える制度
1か月の介護サービス費の自己負担が上限を超えると、超えた分が高額介護サービス費として払い戻されます。上限は世帯の課税状況によって次のように分かれます。
| 区分 | 1か月の上限(世帯) |
|---|---|
| 課税所得690万円以上 | 140,100円 |
| 課税所得380万円以上690万円未満 | 93,000円 |
| 市区町村民税課税〜課税所得380万円未満 | 44,400円 |
| 世帯全員が市区町村民税非課税 | 24,600円 |
| 前年の年金収入等の合計が80万円以下など | 24,600円(個人15,000円) |
| 生活保護受給者など | 15,000円 |
ここを間違えやすい
高額介護サービス費の対象は「介護サービス費の1〜3割部分」だけです。デイサービスの食費・おむつ代・レク材料費は対象外なので、いくら払っても戻ってきません。
また、施設入所時の食費・居住費を軽減する負担限度額認定は、デイサービスの食費には使えません。特別養護老人ホームやショートステイなどの入所・宿泊が対象です。この2つは名前が似ているため取り違えが頻発します。
負担限度額認定の対象と申請方法は介護保険の負担限度額認定にまとめています。医療費と介護費の両方が高い年は医療費控除との組み合わせも検討してください。
目的別・どのタイプのデイサービスを選ぶか
「デイサービス」とひとくくりにされますが、中身は事業所ごとにかなり違います。本人が何をしたら困らなくなるのかから逆算すると、選ぶ先が絞れます。
体力・歩行が心配
機能訓練指導員が常勤し、個別機能訓練加算を算定している事業所。半日型のリハビリ特化型なら入浴なしで3〜4時間、費用も抑えられます。
自宅で入浴が難しい
個浴・機械浴の設備がある一日型。入浴介助加算(Ⅰ)(Ⅱ)の有無と、寝たきりでも入れる浴槽かを見学時に確認します。
認知症がある
認知症対応型通所介護(定員12人以下)。単位数は通常型より高めですが、少人数で職員の目が届きます。地域密着型のため原則として住所地の事業所に限られます。
家族の休息が目的
滞在時間の長い7〜9時間型。延長加算を使えば最大14時間まで預かる事業所もあります。まずは家族の生活時間から必要な時間帯を決めます。
現場で起きるイレギュラーと、その対処
制度どおりに進まない場面もあります。利用者・家族の体験談として繰り返し語られるもののうち、公的な制度の裏づけがある対処法を編集部の視点で整理しました。
本人が「行きたくない」と言って続かない
最も多いつまずきです。原因は「知らない人ばかりで居心地が悪い」「子ども扱いのレクが嫌」「入浴を人に見られたくない」に分かれます。原因が特定できれば、事業所を変えるほうが説得を続けるより早いことが多くなります。契約は月単位で切り替えられ、ケアプランの変更もケアマネジャーに依頼すれば行えます。体験利用を複数か所で受けてから決めると、この失敗はかなり減らせます。
送迎の順番が悪く、乗車時間が1時間近くなる
送迎は基本報酬に含まれるため追加料金はかかりませんが、ルートの都合で最初に乗って最後に降りる位置になると、車中の時間が長くなります。ルート変更は事業所の判断で可能な範囲があるので、まず事業所に相談し、改善しなければケアマネジャー経由で調整を依頼するのが順序です。なお、事業所の通常の実施地域を越える送迎には、実費として交通費を求められる場合があります。
利用したい曜日が空いていない
定員がある以上、人気の曜日は埋まります。空き待ちをしながら、別事業所を曜日で組み合わせる方法があります。デイサービスは複数事業所の併用が可能で、月・木はA事業所、火はB事業所といった組み方はケアプラン上も問題ありません。ただし本人の混乱が大きい場合は勧められません。
休んだ日にキャンセル料を請求された
介護保険からは給付されないため、キャンセル料は事業所が独自に設定した実費です。契約書の重要事項説明書に記載があり、前日までの連絡なら無料、当日連絡は食材費相当を請求、という設定が一般的です。契約時に必ずこの条項を確認してください。体調不良による当日欠席まで一律で課金する運用は、説明を求める価値があります。
相場観と、編集部の価値判断
ここまでの数字を並べると、要介護3で週2回なら月1万4千円前後、週3回なら月2万3千円前後が一つの相場です。これを高いと見るか安いと見るかは、家族が抱えている負担をどう金額に置き換えるかによります。
編集部の見方は、デイサービスの費用は「本人のため」と「家族の時間を買うため」の両方に効いているというものです。週3回・7時間預かってもらえば、家族には月に約90時間の自由な時間が戻ります。月2万3千円を90時間で割ると1時間あたり約256円です。介護離職を避けられる可能性まで含めると、この価格は割高とは言いにくいところがあります。
一方で、金額を下げたいなら削るべきは実費のほうだという判断も成り立ちます。サービス費は制度で決まっており事業所を変えてもほとんど変わりませんが、食費は昼食を持参できる事業所を選べば消える費用です(受け入れ可否は事業所によります)。おむつも自宅から持ち込めるなら持ち込んだほうが安く済みます。まず実費の内訳を明細で見せてもらうことが、節約の出発点になります。
よくある質問
デイサービスの送迎に別料金はかかりますか?
原則としてかかりません。送迎にかかる費用は通所介護費の基本報酬に含まれているため、通常の実施地域内であれば追加請求はされません。ただし事業所が定める実施地域の外から通う場合は、交通費を実費として求められることがあります。契約前に「実施地域はどこまでか」を確認してください。
デイサービスの食費は介護保険で安くなりませんか?
デイサービスの食費は保険給付の対象外で、全額自己負担です。施設入所やショートステイの食費を軽減する負担限度額認定も、通所介護の食費には適用されません。金額は事業所が独自に設定しており、1食600〜800円が中心です。昼食の持参を認めている事業所もあるため、費用を抑えたい場合は見学時に相談してみてください。
要支援でもデイサービスは使えますか?
使えます。ただし要支援1・2の方は介護予防・日常生活支援総合事業の「通所型サービス」という扱いになり、料金は1回ごとではなく週1回・週2回といった月額包括で設定されるのが一般的です。単価は市区町村が定めるため全国一律ではありません。地域包括支援センターに自治体の単価表を見せてもらうのが確実です。
2026年6月の介護報酬改定でデイサービスの費用は上がりましたか?
基本報酬の単位数は変わっていません。2026年6月の改定は介護従事者の賃上げを目的とした臨時改定で、介護職員等処遇改善加算の区分と加算率が見直されました。通所介護では加算Ⅰイが11.1%、Ⅰロが12.0%です。この加算は総単位数に対して上乗せされるため、上位区分を算定する事業所では自己負担がわずかに増える計算になります。実際の変化額は明細で確認してください。
デイサービスとデイケアはどう違いますか?
デイケア(通所リハビリテーション)は医師の指示のもとで理学療法士などがリハビリを行うサービスで、病院・診療所・介護老人保健施設が提供します。デイサービス(通所介護)は生活支援と機能訓練が中心で、医師の常勤は要件ではありません。医学的な管理下でリハビリを続けたいならデイケア、入浴や日中の居場所づくりが目的ならデイサービスが基本の分け方です。単位数はデイケアのほうが高めに設定されています。
複数のデイサービスを併用できますか?
できます。曜日ごとに別の事業所を使う組み方はケアプラン上も認められています。区分支給限度基準額の範囲内であれば単位数の合算で管理されます。ただし場所や職員が変わることで混乱が強く出る方もいるため、認知症がある場合はケアマネジャーと慎重に相談してください。
デイサービスを決めるまでの7ステップ
- 目的を1つに絞る
入浴か、リハビリか、家族の休息か。最初に決めると事業所選びが速くなります。
- ケアマネジャーに候補を3か所出してもらう
1か所だけ提示された場合は「他にどこがありますか」と聞いてください。
- 重要事項説明書で実費を確認する
食費・おむつ代・キャンセル料・実施地域の4点を先に見ます。ここが事業所ごとの差になります。
- 見学する
昼食の時間帯に行くと、食事の内容と職員の関わり方が同時に見えます。
- 体験利用する
半日でも本人の反応が分かります。複数の事業所で受けて比べます。
- ケアプランに位置づけて契約する
利用回数と時間区分をここで確定します。
- 1か月後に明細で答え合わせをする
想定と違えば回数や時間区分の見直しをケアマネジャーに依頼します。
出典
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」(通所介護費の単位数)
- 厚生労働省「令和8年6月介護報酬改定(介護職員等処遇改善加算)」
- 厚生労働省「区分支給限度基準額」(2019年10月改定以降)
- 厚生労働省「高額介護サービス費の負担限度額が見直されます」(令和3年8月施行)
※本記事は2026年9月2日時点の公表情報をもとに編集部が整理したものです。単位数・加算率は今後の改定で変わる可能性があり、地域区分や事業所の体制によって実際の自己負担額は異なります。個別の判断は担当ケアマネジャー、地域包括支援センター、市区町村の介護保険担当窓口にご確認ください。特定の事業所やサービスを推奨するものではありません。
次に読むと迷いが減る記事
デイサービスは在宅介護の入口です。この先で必要になる制度と費用は、下の記事にまとめています。
介護保険の申請や事業所の紹介は、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口と地域包括支援センターが無料で対応しています。まずは公的な窓口へ。
