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介護保険の住所地特例とは【2026年版】施設に入っても保険者が変わらない仕組みと14日以内の届出

施設の相談コーナーで高齢の母と娘が白紙の届出書を前に座っている様子

親が特別養護老人ホームや有料老人ホームに入ることになり、住民票を施設へ移す。そのときに必ず出てくるのが「介護保険の保険者はどこになるのか」という問題です。ふつう住民票を移せば、その市区町村が保険者になります。ところが介護保険には、住民票を移しても移す前の市区町村が引き続き保険者であり続けるという例外があります。これが住所地特例です。

知らないまま手続きを進めると、要介護認定のやり直しを求められたり、保険料の請求先が分からなくなったり、負担限度額認定の申請先を間違えたりします。逆に仕組みを理解していれば、窓口でひとこと伝えるだけで済みます。この記事は、自治体が公開している運用資料と厚生労働省の参考資料をもとに、家族の立場で必要なところだけを整理したものです。

目次

結論:施設に入っても「前の市区町村」が保険者のままになる

この記事の結論

  • 住所地特例が働くと、要介護認定・介護保険給付・保険料の徴収のすべてを、施設に入る前の市区町村が続けて行います。
  • 対象になるのは介護保険施設(特養・老健・介護医療院・介護療養型医療施設)と、地域密着型を除く特定施設(有料老人ホーム・軽費老人ホーム・養護老人ホーム、条件を満たすサービス付き高齢者向け住宅)です。
  • グループホームなどの地域密着型サービスは対象外。定員29人以下などの要件を満たす有料老人ホームも「地域密着型特定施設」として対象から外れます。
  • 要介護認定を受けていなくても、40歳以上で介護保険の資格がある人が対象施設に入れば自動的に制度の対象になります。選べるものではありません。
  • 届出は「介護保険住所地特例適用・変更・終了届」。住民異動があった日から14日以内が原則です。
  • 老健は住民票を移さない運用の施設も多く、その場合は住所地特例になりません。制度の対象施設かどうかと、実際に住民票を移すかどうかは別の話です。

なぜこんな例外があるのか

介護保険は「地域保険」として、住んでいる市区町村が保険者になる建て付けです。しかし施設の入所者を一律に施設所在地の被保険者にしてしまうと、介護施設が多く建っている市区町村だけ給付費が膨らみ、財政の不均衡が起きます。新宿区も盛岡市も柏市も、公開資料でまったく同じ理由を挙げています。施設が多い自治体に負担を押しつけないための仕組み——これが住所地特例の目的です。

つまりこの制度は、入所する本人や家族の得のためにあるものではありません。だからこそ「申請すると有利になる制度」ではなく、要件に当たれば必ず適用される制度として運用されています。柏市は「要介護認定の有無に関わらず、40歳以上の介護保険資格を持つかたが要件に該当する場合、必ず制度の対象となります」と明記しています。

対象になる施設・ならない施設

どこに入るかで扱いが変わります。施設のパンフレットには「住所地特例対象施設」と書かれていないことも多いので、入居前に施設へ直接確認するのが確実です。

表1:住所地特例の対象になる施設・ならない施設(2026年9月4日時点で各自治体が公開している内容にもとづく)
施設の種類住所地特例注意点
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)対象介護保険3施設のひとつ。
介護老人保健施設(老健)対象制度上は対象ですが、入所期間がおおむね3〜6か月のため住民登録を認めない施設もあります。移さなければ適用されません。
介護医療院対象介護療養型医療施設も同じ扱いです。
有料老人ホーム対象(地域密着型特定施設を除く)入居時要件が要介護者等に限られ、かつ定員29人以下の施設は対象外です。
軽費老人ホーム(ケアハウス)対象特定施設に含まれます。
養護老人ホーム対象同上。
サービス付き高齢者向け住宅条件つきで対象有料老人ホームに該当するサービス(介護・家事・食事・健康管理のいずれか)を提供する住宅が対象。安否確認と生活相談だけの住宅は対象外です。平成27年4月1日以降の入居者に限ります。
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)対象外地域密着型サービスのため対象になりません。
一般の賃貸住宅・子の自宅対象外施設ではないため、転居先の市区町村が保険者になります。

出典:新宿区「介護保険住所地特例」、盛岡市「住所地特例対象施設について(介護保険)」、目黒区「介護保険の資格に関する特例」、柏市「介護保険の住所地特例制度」(いずれも2026年9月4日取得)。

いちばん間違えやすいのが有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅です。盛岡市は「地域密着型特定施設」を、①入居時要件を要介護者(要支援者や自立の方を含まない)およびその配偶者等に限定していること、②定員が29人以下であること、の2つを満たす施設と説明しています。そしてその施設が地域密着型特定施設入居者生活介護の指定を受けていなくても、この2要件を満たしていれば地域密着型特定施設として扱うとしています。「小規模で要介護の人だけが入るホーム」は対象外になりやすい、と覚えておいてください。

ケース別・保険者はどこになるか

ここではA市に住んでいた人が動く場面を、実際に起こる順番で追います。ポイントは「対象施設から対象施設へ移る間は、いちばん最初の市区町村が保険者であり続ける」ことです。

図1:住所を移すたびに保険者はどう動くか

A市の被保険者が動いた場合。網かけが「保険者」。

① A市の自宅 → B市の特別養護老人ホーム(住民票を移す)

保険者はA市のまま(住所地特例の適用)。B市では介護保険の手続きは不要です。

② B市の特養 → C市の有料老人ホーム(対象施設から対象施設へ)

保険者は引き続きA市(住所地特例の変更)。何度移っても、対象施設をたどっている限りA市が続きます。

③ C市の有料老人ホーム → D市の子の自宅(在宅へ戻る)

保険者はD市へ移る(住所地特例の終了)。要介護度を引き継ぐには、異動日から14日以内の手続きが必要です。

④ B市の特養 → A市内の施設または自宅(元の市へ戻る)

保険者はA市。対象施設かどうかにかかわらず、A市が保険者になります(住所地特例の終了)。

⑤ A市の自宅 → B市のグループホーム

保険者はB市へ移る。地域密着型サービスは住所地特例の対象外です。

出典:柏市「介護保険の住所地特例制度」、新宿区「介護保険住所地特例」(2026年9月4日取得)をもとに編集部で作図。

③のケースだけは気をつけてください。柏市は、住所地特例が終わって新しい市区町村が保険者になるとき、要介護・要支援の認定を引き継ぐには異動日から14日以内の手続きが必要で、負担限度額認定を受けていた場合も改めて申請が要る、と案内しています。転入届を出すときに「介護度があります」と必ず窓口で伝えてください。ここを言い忘れると、認定を取り直すことになりかねません。

届出の種類と、14日以内という期限

提出する書類は「介護保険住所地特例適用・変更・終了届」の1枚で、状況に応じて3つの使い分けをします。新宿区の説明がいちばん整理されているので、そのまま引きます。

図2:3つの届出の使い分けと提出先

適用届

もとの市区町村の被保険者が、他市区町村の対象施設に入所・入居し、住所を施設所在地へ移したとき。

変更届

住所地特例が適用されている人が、別の対象施設へ住所を移したとき。

終了届

対象施設を退所して在宅へ住所を移したとき、または死亡したとき。

提出先と期限

保険者である市区町村の介護保険担当窓口へ、住民異動があった日から14日以内。新宿区は区役所の介護保険課または最寄りの特別出張所で受け付け、郵送も可としています。

出典:新宿区「介護保険住所地特例」(2026年9月4日取得)。書式や受付窓口は自治体ごとに異なります。

ここで安心材料をひとつ。自治体によっては、家族から言い出さなくても自動的に案内が届きます。柏市は「介護保険に関しては自らお申し出いただく手続きはなく、住民票の手続きをされれば、必要書類を後日郵送で柏市からご案内します」と明記しています。ただしこれは柏市の運用であって全国共通ではありません。転出の窓口で「転出先が住所地特例施設だと思われる場合は、その旨をお伝えください」とも書かれています。ひとこと伝えるだけで、その後の郵送のやり取りが確実になります。

親が他市区町村の介護施設へ入るときに、介護保険の住所地特例を正しく通すための手順。

  1. 入る施設が住所地特例の対象かを施設に確認する

    特養・老健・介護医療院・有料老人ホーム・軽費老人ホーム・養護老人ホーム・条件を満たすサービス付き高齢者向け住宅が対象です。グループホームや定員29人以下の地域密着型特定施設は対象外なので、施設側に直接確かめます。

  2. 住民票を施設へ移すかどうかを決める

    住所は民法上「生活の本拠」です。施設に入るなら移すのが原則ですが、老健のように住民登録を認めていない施設もあります。移さなければ住所地特例にはならず、元の市区町村の被保険者のままです。

  3. 転出届のときに施設名を窓口へ伝える

    転出先が住所地特例対象施設であることを伝えると、自治体側が把握し、必要書類を案内してくれます。ここで伝えておくと後の郵送が滞りません。

  4. 14日以内に住所地特例適用届を提出する

    提出先は保険者である元の市区町村の介護保険担当窓口です。多くの自治体で郵送を受け付けています。施設側が記入する連絡票を求められることもあるため、施設の相談員に相談します。

  5. 後期高齢者医療と国民健康保険の扱いを別に確認する

    介護保険と医療保険では住所地特例の取り扱いが異なることがあります。柏市は、県内での異動の場合、後期高齢者医療は介護保険と違って住所地特例に該当しないと注意喚起しています。保険年金担当の窓口で別に確認します。

  6. 書類の送付先を設定する

    被保険者証などの書類は、原則として本人の住民票住所である施設宛てに届きます。家族が受け取りたい場合は、送付先変更の申請が別に必要です。

現場でつまずく4つの場面

制度の説明としては単純でも、実際の手続きでは思わぬところで止まります。自治体が公開している注意書きから、家族が実際に直面しやすいものを4つ挙げます。

1. 老健は住民票を移さないことがある。新宿区は、介護老人保健施設は住所地特例の対象施設だが、入所・入院期間がおおむね3〜6か月であるため住民登録を施設に置くことを認めていない施設もあると説明しています。その場合は住所変更をしていないので住所地特例にはならず、入所前の市区町村の被保険者資格がそのまま続きます。ここで注意したいのは、入所に伴って親族の自宅などへ住所を移した場合は、その住所地の市区町村が保険者になることです。「施設に入るから」と安易に子の家へ住民票を移すと、保険者が変わります。

2. 医療保険は別ルール。柏市は、県内での異動の場合、後期高齢者医療保険制度については介護保険とは異なり住所地特例に該当しない、と明示しています。つまり介護保険の保険者はA市のまま、後期高齢者医療の保険者は別、という状態が起こりえます。介護と医療で窓口が分かれることを前提に、両方の担当課で確認してください。

3. 地域密着型サービスは原則として住んでいる市区町村のものしか使えない。住所地特例で保険者がA市のまま、体はB市の施設にいる。この状態で、B市の地域密着型サービス(小規模多機能型居宅介護など)を使いたくなったとき、事業所の指定は市区町村ごとに出ているため、そのままでは使えないのが原則です。施設のケアマネジャーに、使いたいサービスが地域密着型かどうかを確認してもらってください。

4. サービス付き高齢者向け住宅は「いつ入居したか」で変わる。サービス付き高齢者向け住宅が住所地特例の対象になったのは平成27年4月1日からで、目黒区も柏市も「平成27年4月1日以降の入所者に限る」「平成27年3月31日以前の入所者を除く」と書いています。長く同じサ高住に住んでいる場合、入居した日を確認する必要があります。

お金はどう変わるのか、編集部の見方

住所地特例が働くと、介護保険料は施設のある市区町村ではなく、元の市区町村の保険料率で計算されます。第1号被保険者の保険料は市区町村ごとに基準額が違い、同じ所得段階でも自治体間で年額数万円の開きが生じることがあります。施設のある自治体の保険料が安くても、住所地特例が適用されている限りその恩恵は受けられません。逆もまた同じです。これは選べるものではないので、有利不利を気にしても仕方がない——というのが実務上の結論です。

むしろ家族が気にすべきは、金額ではなく手続きの窓口がどこになるかです。要介護認定の更新申請も、負担限度額認定証の申請も、保険料の相談も、すべて元の市区町村が窓口になります。親が遠方の施設に入り、子も別の土地に住んでいる場合、誰も住んでいない市区町村と郵送でやり取りし続けることになります。だからこそ、入所が決まった段階で書類の送付先を家族の住所に設定しておく価値があります。柏市も、書類は原則として本人の住民票住所(=施設)に届き、それ以外の送付先を希望する場合は申請が必要だと案内しています。

入所が決まったら、この5つを確認する

  1. その施設は住所地特例の対象か。有料老人ホームとサ高住は特に、定員29人以下・入居時要件・提供サービスの3点で分かれます。施設の相談員に直接聞くのが早いです。
  2. 住民票を移すのか、移さないのか。老健は移さない運用もあります。移さないなら住所地特例にはなりません。
  3. 転出届のときに施設名を伝えたか。ここを言うだけで、その後の書類案内がスムーズになります。
  4. 後期高齢者医療・国民健康保険の窓口はどこになるか。介護保険と別々になることがあります。
  5. 被保険者証などの送付先を家族の住所に変えたか。放っておくと施設宛てに届きます。更新の案内を見落とす原因になります。

よくある質問

住所地特例は申請しないと適用されませんか?

申請して選ぶ制度ではなく、要件に当たれば必ず適用される制度です。柏市は「要介護認定の有無に関わらず、40歳以上の介護保険資格を持つかたが要件に該当する場合、必ず制度の対象となります」と説明しています。ただし届出は必要で、「介護保険住所地特例適用・変更・終了届」を住民異動の日から14日以内に保険者の市区町村へ提出します。自治体によっては住民票の手続きをすれば書類を郵送で案内してくれます。

グループホームに入る場合も住所地特例になりますか?

なりません。認知症対応型共同生活介護(グループホーム)は地域密着型サービスで、住所地特例の対象外です。住民票を移せば、その市区町村が保険者になります。同じ理由で、入居時要件を要介護者等に限定し、かつ定員29人以下の有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅も「地域密着型特定施設」として対象から外れます。

介護老人保健施設に入るときはどうなりますか?

制度上は住所地特例の対象施設ですが、入所期間がおおむね3〜6か月であるため、住民登録を施設に置くことを認めていない施設もあります。住所を移していなければ住所地特例は適用されず、入所前の市区町村の被保険者のままです。入所に伴って親族の自宅へ住所を移した場合は、その住所地の市区町村が保険者になるので注意してください。

施設から別の施設へ移ったら保険者は変わりますか?

対象施設から対象施設へ移る限り、いちばん最初に入所する前の市区町村が保険者のまま続きます。この場合に出すのは「変更届」です。対象施設ではない一般の住所へ移った場合は「終了届」を出し、新しい住所地の市区町村が保険者になります。ただし元の市区町村内へ戻る場合は、対象施設かどうかにかかわらず元の市区町村が保険者です。

後期高齢者医療も同じ扱いになりますか?

同じとは限りません。柏市は、県内での異動の場合、後期高齢者医療保険制度については介護保険とは異なり住所地特例に該当しないと案内しています。介護保険の保険者と後期高齢者医療の保険者が別になることがあるため、介護保険担当課と保険年金担当課の両方で確認してください。国民健康保険についても別に確認が必要です。

施設を退所して子の家に移るとき、要介護度は引き継げますか?

引き継げますが期限があります。柏市は、新しい住所地の市区町村で介護度を引き継ぐには異動日から14日以内の手続きが必要だと明記しています。転入手続きのときに、日付を確認したうえで「要介護認定を受けている」と必ず申し出てください。負担限度額認定を受けていた場合も、改めて申請が必要です。

手続きの詳細は保険者の市区町村に確認してください

住所地特例の書式・受付窓口・添付書類は自治体ごとに異なります。本記事は2026年9月4日時点で公開されている自治体資料と厚生労働省の参考資料にもとづく一般的な説明です。実際の手続きは、保険者である市区町村の介護保険担当課へご確認ください。

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本記事は2026年9月4日時点で公開されている自治体・厚生労働省の資料をもとに編集部が整理したものです。制度の運用や書式は自治体ごとに異なり、法改正で変わることもあります。手続きの前に必ず保険者である市区町村の介護保険担当課へご確認ください。本記事は法律・行政の専門家による監修を受けたものではありません。

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この記事を書いた人

みんなのミカタナビ編集部です。運営者・たくの編集方針のもと、相続・出産・退職・補助金など「知らないと損する手続きとお金」を、公的機関の一次情報と体験談の取材をもとに時系列で整理しています。数値・期限は必ず公式情報で裏取りし、出典を明記します。

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