この記事の結論
| 何を | 市区町村の介護保険窓口へ「要介護(要支援)認定」の申請書を出す。本人が行けなくても家族・地域包括支援センター・居宅介護支援事業者が代行できる |
| いつまでに | 期限はない。ただし認定の効力は申請日にさかのぼるため、迷っている間の日数はそのまま損になる |
| いくら | 申請そのものは無料。主治医意見書の作成料も自己負担なし(受診料は自己負担) |
| どれくらい | 申請から結果通知まで原則30日以内(介護保険法第27条第11項)。実務では延期通知が出ることもある |
| 最大の罠 | 認定調査の当日、本人が張り切って「できます」と答えてしまい、実態より軽い区分が出ること。家族の立ち会いとメモが結果を左右する |
親の物忘れが増えた、転んで歩けなくなった、退院の相談で「介護保険は申請していますか」と聞かれた。要介護認定の申請は、そのどこかのタイミングで必ず通る手続きです。ところが実際にやってみると、申請書を出すところまでは簡単なのに、認定調査の受け答え次第で結果が変わるという、事前に誰も教えてくれない部分でつまずきます。
この記事では、申請から結果通知までの流れを時系列で追いながら、区分ごとに使えるサービス量の目安、認定調査で伝え漏れを防ぐ準備、結果に納得できないときの選択肢までをまとめます。制度の数値は厚生労働省と自治体の公式情報で確認しています(基準日:2026年8月8日)。
申請できるのは誰か|65歳以上と、40〜64歳で条件が違う
介護保険の被保険者は年齢で2つに分かれ、要介護認定を受けられる条件も変わります。
| 区分 | 対象年齢 | 認定を受けられる条件 |
|---|---|---|
| 第1号被保険者 | 65歳以上 | 原因を問わず、介護や支援が必要な状態であれば申請できる |
| 第2号被保険者 | 40〜64歳 | 介護保険法施行令第2条が定める16の特定疾病が原因である場合に限る。末期がん、若年性認知症、脳血管疾患、関節リウマチなどが該当する |
40〜64歳の方が交通事故や転倒によるケガで介護が必要になった場合は、原則として介護保険の対象外です。この場合は障害福祉サービスや医療保険の枠組みを検討することになります。該当するかどうかは主治医と市区町村の窓口に確認してください。
申請は本人以外でも可能です。家族のほか、地域包括支援センター、居宅介護支援事業者、介護保険施設が申請を代行できます。「平日に窓口へ行けない」「本人が申請を嫌がる」といった場合は、まず地域包括支援センターに電話するのが最短ルートです。
申請から結果通知までの流れ|原則30日以内、効力は申請日にさかのぼる
手続きは6つの段階に分かれます。自分で動くのは最初の「申請」と、途中の「認定調査の立ち会い」の2か所だけで、残りは行政と主治医の側で進みます。
認定までのタイムライン
DAY 0
STEP 1 市区町村の窓口へ申請する
介護保険課または地域包括支援センターへ。持ち物は申請書・介護保険被保険者証(65歳以上)・マイナンバーがわかるもの・本人確認書類。40〜64歳は健康保険証も必要です。この日が「申請日」となり、後日おりる認定の効力はここまでさかのぼります。
DAY 0
STEP 2 主治医の名前と医療機関を伝える
申請書に主治医の氏名・医療機関名を記入します。市区町村が直接その医師へ意見書を依頼するため、申請前に一度受診して普段の生活の様子を伝えておくと、意見書の精度が上がります。かかりつけ医がいない場合は窓口で相談してください。
DAY 3〜14
STEP 3 認定調査を受ける(訪問・約1時間)
市区町村の認定調査員が自宅や入院先を訪問し、心身の状態について74項目の基本調査と聞き取り(特記事項)を行います。身体機能・生活動作・認知機能・精神行動・社会生活への適応の5分野です。日程は事前に電話で調整されます。
DAY 3〜21
STEP 4 主治医意見書が作成される(自分の作業なし)
市区町村から依頼を受けた主治医が意見書を作成し、直接市区町村へ返送します。作成料の自己負担はありません。この段取りが遅れると全体が止まるため、結果が遅いときはここで滞っていることが多いです。
DAY 14〜25
STEP 5 一次判定・二次判定
調査結果をコンピュータで分析して要介護認定等基準時間を算出するのが一次判定。その結果に特記事項と主治医意見書を加え、保健・医療・福祉の専門家で構成される介護認定審査会が審査するのが二次判定です。
DAY 30まで
STEP 6 結果が郵送で届く
介護保険法第27条第11項により申請日から原則30日以内に通知されます。区分が記載された新しい被保険者証が同封され、ここで初めてケアプラン作成に進めます。調査や意見書が遅れる場合は延期通知が届きます。
結果を待たずにサービスを始めることもできる
認定の効力は申請日にさかのぼるため、結果が出る前でも「暫定ケアプラン」を組んでサービスを使い始められる場合があります。ただし想定より軽い区分が出ると、限度額を超えた分が全額自己負担になります。急ぐ事情があるときだけ、ケアマネジャーとリスクを確認したうえで選んでください。
損しないポイント|認定調査の30分が、その後1年の使えるサービス量を決める
要介護認定でいちばん結果を左右するのは、書類ではなく認定調査当日のやりとりです。調査員が見るのはその日その場の様子と、聞き取った話だけ。ふだんの困りごとが伝わらなければ、そのまま軽い区分になります。
申請前・調査前にやっておくこと
- 1〜2週間、生活のメモをつける。「夜中に2回起きてトイレへ行き、1回は間に合わなかった」のように、回数と失敗まで具体的に書く。伝え忘れを防げるうえ、調査員が特記事項に落とし込みやすくなる
- 家族が必ず立ち会う。本人は他人の前だと「できます」と答えがちで、これは見栄ではなく自然な反応。訂正役が要る
- 本人の前で言いにくいことは、別室かメモで渡す。「実は入浴を3週間拒否している」といった内容は、本人の尊厳を守りつつ確実に伝える工夫をする
- 申請したら一度、主治医を受診してメモを見せる。主治医意見書は診察室での様子だけが根拠になりがちなので、家庭での状況を渡しておくと内容が変わる
- 「できる/できない」ではなく「どう困っているか」で答える。手すりがあれば立てる、時間をかければ着替えられる——その条件付きの部分こそが判定材料になる
逆に、実態より重く見せようとするのは避けてください。調査項目と主治医意見書、審査会の目で突き合わせが行われるため整合しませんし、実態に合わないケアプランは本人の負担になります。目的はあくまでふだんの姿を正確に伝えることです。
パターン別の分岐|自分のケースはどれか
| 状況 | 進め方 |
|---|---|
| 入院中に介護が必要になった | 退院を待たずに申請できる。病院の医療ソーシャルワーカー(地域連携室)に相談すると、認定調査を入院先で受けられるよう調整してくれる。退院日に間に合わせたいなら早いほどよい |
| 遠方に住む親のこと | 申請先は親の住民票がある市区町村。まずその地域の地域包括支援センターへ電話し、代行申請と調査日程を相談する。調査日だけ帰省して立ち会う進め方が現実的 |
| 本人が申請を嫌がる | 「介護認定」ではなく「市役所の健康チェック」「手すりをつけるための相談」と説明を変えると受け入れられることが多い。地域包括支援センターの職員に同席してもらう手もある |
| 状態が急に悪くなった | 有効期間の途中でも区分変更申請ができる。更新を待つ必要はない。手続きは新規と同じで、再度の認定調査が行われる |
| 結果が「非該当(自立)」だった | 介護保険サービスは使えないが、市区町村の介護予防・日常生活支援総合事業なら利用できる場合がある。窓口で「総合事業の対象になりますか」と聞く |
イレギュラー・現場対応|つまずきやすい4つの場面
ここでは、実際に手続きをした家族の体験談で多く語られる場面を編集部で整理しました。制度上の例外ではなく、運用のうえで起きやすい詰まりどころです。
30日を過ぎても結果が来ない
30日以内は法律上の原則ですが、認定調査の日程が取れない、主治医意見書が戻らないといった理由で延期通知が届くことがあります。国も認定に要する期間の短縮を課題として取り上げており、地域差があるのが実情です。2週間以上音沙汰がないときは、介護保険課に「認定調査は済んでいるか」「意見書は届いているか」とどの段階で止まっているかを名指しで確認すると動きが出ます。
調査当日だけ本人がしっかりしてしまう
認知症のある方に特に多い場面です。来客に合わせて一時的に受け答えが整い、「一人で買い物に行けます」と答えてしまう。ここで家族が黙っていると、そのまま記録されます。調査員は本人の回答と実態が食い違う場合、その差を特記事項に書くことができます。その場で否定せず、調査の終盤や別室で「実際は先月2回、帰り道が分からなくなりました」と事実だけ伝えるのが現実的な対応です。
結果に納得できない
取れる道は2つあります。ひとつは都道府県の介護保険審査会への審査請求(不服申立て)で、結果を知った日の翌日から3か月以内が期限です。ただし判断が出るまで時間がかかります。もうひとつは区分変更申請で、こちらは期限がなくすぐ出せるため、実務ではこちらが選ばれることが多いようです。どちらが向くかはケアマネジャーか地域包括支援センターに相談してください。
更新を忘れて有効期間が切れた
切れると介護保険サービスが全額自己負担になります。更新申請は有効期間満了の60日前から受け付けられ、通常は市区町村から案内が届きますが、ケアマネジャーがついていない要支援の方や、住所変更の直後は取りこぼしが起きます。認定結果が届いたら、被保険者証の有効期間の末日をカレンダーの2か月前に登録しておくことをおすすめします。
区分ごとに使えるサービス量の相場観|要支援1と要介護5では7倍の差
認定区分は「非該当・要支援1〜2・要介護1〜5」の8段階です。区分によって、1か月に介護保険で使えるサービス量の上限(区分支給限度基準額)が決まります。単位数は2019年10月の改定以降据え置かれており、2026年8月時点も同額です。
| 区分 | 限度額(単位) | 1単位10円換算 | 自己負担1割の目安 | 状態のイメージ |
|---|---|---|---|---|
| 要支援1 | 5,032 | 約50,320円 | 約5,032円 | 日常生活はほぼ自立。入浴や掃除など一部に支えが要る |
| 要支援2 | 10,531 | 約105,310円 | 約10,531円 | 要支援1より支えが必要だが、改善の見込みがある |
| 要介護1 | 16,765 | 約167,650円 | 約16,765円 | 立ち上がりや歩行が不安定。買い物・服薬管理に手助けが要る |
| 要介護2 | 19,705 | 約197,050円 | 約19,705円 | 自力での起き上がりが難しい。入浴や排せつに部分的介助 |
| 要介護3 | 27,048 | 約270,480円 | 約27,048円 | 起き上がり・立ち上がりが自力では困難。ほぼ全面的な介助 |
| 要介護4 | 30,938 | 約309,380円 | 約30,938円 | 日常生活全般に介助が必要。意思疎通が難しい場合もある |
| 要介護5 | 36,217 | 約362,170円 | 約36,217円 | ほぼ寝たきりで全面的な介助が必要。意思疎通が困難なことが多い |
自己負担の割合は所得に応じて1割・2割・3割のいずれかで、認定結果と一緒に届く「介護保険負担割合証」に記載されます。限度額を超えて使った分は全額自己負担になるため、ケアプランはこの枠の中で組み立てることになります。なお、居宅療養管理指導やグループホーム、有料老人ホームの特定施設入居者生活介護などはこの限度額の対象外です。
編集部の価値判断|「まだ早い」で待つ理由はほとんどない
申請すべきかどうかで迷う家族は多いのですが、判断材料として整理すると、待つ側のメリットは意外に小さいというのが編集部の見方です。何を大事にするかで結論は変わるので、価値観別に並べます。
| 重視すること | 現実的な選択 |
|---|---|
| とにかく早く支援を得たい | 今日、地域包括支援センターに電話して代行申請を依頼する。認定は申請日にさかのぼるので、1日遅らせるだけ枠が減る |
| 本人の気持ちを優先したい | 申請だけ先に済ませ、認定が出てもサービスを使わない選択もできる。認定を受けること自体に費用も義務も発生しない |
| 費用を抑えたい | 認定を取らずに自費でヘルパーを頼むと1時間3,000円前後が相場。要介護1の枠を1割負担で使えば月16,765円が上限で、費用面では認定を取るほうが圧倒的に軽い |
| 介護する側の負担を減らしたい | 要支援でもデイサービスや訪問介護、福祉用具貸与が使える。担当のケアマネジャーがつくこと自体が、相談先ができるという意味で大きい |
申請して非該当だったとしても、失うのは窓口へ行く手間だけです。「症状が進んでから」と待った結果、退院日までに認定が間に合わず在宅に戻れない、というほうが実害が大きいと考えています。
よくある質問
要介護認定の申請にお金はかかりますか?
申請手数料は無料です。認定調査の費用も、主治医意見書の作成料も自己負担はありません。ただし、主治医意見書を書いてもらうために受診が必要になった場合、その診察料は通常どおり自己負担となります。
結果が出るまでどのくらいかかりますか?
介護保険法第27条第11項により、申請日から原則30日以内に通知されます。ただし認定調査の日程や主治医意見書の提出が遅れる場合は、市区町村から処理見込期間を示した延期通知が届きます。認定の効力は申請日にさかのぼるため、待っている期間が無駄になるわけではありません。
認定の有効期間はどのくらいですか?
新規認定は原則6か月、更新認定は原則12か月です。いずれも介護認定審査会の意見により短縮・延長されることがあり、更新の場合は最長で36か月まで延びることがあります。有効期間の末日は被保険者証に記載されているので確認してください。更新申請は満了の60日前から受け付けられます。
40代・50代でも要介護認定を受けられますか?
40〜64歳の方(第2号被保険者)は、介護保険法施行令第2条が定める16の特定疾病が原因で介護が必要になった場合に限り認定を受けられます。末期がん、若年性認知症、脳血管疾患、関節リウマチ、初老期における認知症などが該当します。事故によるケガなど特定疾病以外が原因の場合は対象外です。
結果が思ったより軽かったら、やり直せますか?
2つの方法があります。都道府県の介護保険審査会への審査請求は、結果を知った日の翌日から3か月以内が期限です。もうひとつは区分変更申請で、期限がなくいつでも提出でき、あらためて認定調査が行われます。実務では手続きが早い区分変更申請が選ばれることが多いようです。どちらを選ぶかは地域包括支援センターやケアマネジャーに相談してください。
本人が入院中でも申請できますか?
できます。認定調査を入院先で受けることも可能です。退院後すぐに在宅サービスを使いたい場合は、退院の見通しが立った時点で病院の医療ソーシャルワーカーに相談し、入院中に申請しておくと間に合いやすくなります。ただし状態が安定していないと判断されると、退院後の調査になる場合もあります。
出典と確認先
- 厚生労働省|介護・高齢者福祉(制度の全体像・要介護認定の仕組み)
- e-Gov法令検索|介護保険法(第27条第11項=原則30日以内の通知)
- e-Gov法令検索|介護保険法施行令(第2条=16の特定疾病)
- 堺市|要介護度別・区分支給限度基準額(2025年8月19日更新/単位数の確認に使用)
持ち物・様式・窓口の名称は市区町村によって異なります。申請前に、お住まいの自治体(親の住民票がある自治体)の介護保険課または地域包括支援センターで最新の案内をご確認ください。この記事は制度の一般的な説明であり、個別の認定結果を保証するものではありません。基準日:2026年8月8日
まずどこに相談すればいいか分からないとき
お住まいの地域の地域包括支援センターが、介護に関する最初の相談窓口です。申請の代行、調査の立ち会い、ケアマネジャーの紹介まで無料で対応してくれます。所在地は厚生労働省の地域包括ケアシステムのページ、または自治体名と「地域包括支援センター」で検索すると確認できます。
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