2026年4月、高校の授業料を支援する「高等学校等就学支援金」の制度が大きく変わりました。年収による制限がなくなり、私立高校(全日制)に通う生徒の支給上限は年45万7200円になっています。ただし「無償化」という言葉から想像するほど、負担がゼロになるわけではありません。この記事では、いくら支援されるのか・いつまでに何をするのか・それでも自己負担として残るのはいくらかを、文部科学省の一次資料をもとに整理します。(基準日:2026年8月7日)
まずここだけ|結論の要点
| 何が変わった | 年収約910万円未満という所得制限が撤廃。私立の上限は39万6000円→45万7200円に。 |
| いくら | 公立 年11万8800円/私立全日制 年45万7200円/私立通信制 年33万7200円(いずれも上限)。 |
| いつまでに | 原則入学した4月中(学校が定める期日まで)にe-Shienで申請。在校生は毎年7月に収入状況の届出。 |
| 受け取り方 | 家庭に現金は入りません。学校が代理で受け取り、授業料と相殺されます。 |
| 注意 | 入学金・施設費・教材費・制服代は対象外。東京都の私立(全日制)は初年度納付金の平均が100万7549円で、支援を差し引いても約55万円が残ります。 |
2026年4月に何が変わったのか
「高等学校等就学支援金の支給に関する法律の一部を改正する法律」が令和8年3月31日に成立し、4月1日に施行されました。文部科学省は、いわゆる「高校無償化」という言い方について、正確には授業料を支援する「高等学校等就学支援金」であるとしています。変更点は大きく2つです。
| 項目 | 旧制度(令和7年度まで) | 新制度(令和8年度〜) |
|---|---|---|
| 所得制限 | 年収目安 約910万円未満 | なし |
| 私立(全日制)の上限 | 39万6000円(年収590万円未満のみ) | 45万7200円(全員) |
| 公立の上限 | 11万8800円 | 11万8800円(据え置き) |
| 財源の負担 | 国が10/10 | 公私立は国3/4・都道府県1/4 |
| 予算額 | 4074億円(令和7年度) | 5824億円(令和8年度) |
私立に通う世帯の増額が最も大きく、年収590万円以上の世帯では39万6000円→45万7200円、または11万8800円→45万7200円へと支援が跳ね上がります。文部科学省は、この拡充で新たに支給または増額の対象になる生徒を約80万人と見込んでいます。
年額の支給上限額(全日制・定額授業料の場合)
いくらもらえるか|学校の種類別の支給限度額
支給限度額は学校の種類と設置者(国立・公立・私立)で変わります。全日制の支給期間は36月(3年分)です。
| 学校の種類 | 公立 | 私立 |
|---|---|---|
| 高等学校 全日制 | 118,800円(9,900円/月) | 457,200円(38,100円/月) |
| 高等学校 定時制 | 32,400円 | 457,200円 |
| 高等学校 通信制 | 6,240円 | 337,200円(28,100円/月) |
| 中等教育学校 後期課程 | 118,800円 | 457,200円 |
| 特別支援学校 高等部 | 4,800円 | 457,200円 |
| 高等専門学校(1〜3学年) | 234,600円 | 457,200円 |
| 専修学校 高等課程(昼間) | 118,800円 | 457,200円 |
単位制の授業料を採用している学校では、単位あたりの上限になります。私立は1単位18,528円(通算74単位・年間30単位まで)、公立は1単位4,812円です。国立高校の上限は11万5200円で、文部科学省は「国立高校等についても実質無償」としています。
損しないポイント|ここを落とすとお金が減ります
- 申請しないと1円も支給されません。所得制限がなくなっても自動では始まらず、受給資格認定申請が必要です。
- 在校生は毎年7月の「収入状況届出」が必要。出し忘れると支給が止まります。1年目に申請したから安心、ではありません。
- 授業料が上限より安い場合、差額は受け取れません。支援は授業料を限度に支給されるため、余った分が現金で戻ることはありません。
- 授業料以外は「高校生等奨学給付金」で別に申請できます。教科書費・教材費などが対象の返還不要の給付金で、申請先は都道府県または学校です。就学支援金とは別制度なので、こちらも取りこぼしがちです。
- 離婚・死別・養子縁組で保護者が変わったら、速やかに収入状況届出書を提出。提出がないまま後で課税所得の変更が判明すると、支援金の返納が発生する可能性があります。
手続きの時系列|いつ何をするか
期限は学校・都道府県によって細部が異なりますが、大枠の流れは全国共通です。学校からの案内が最優先の情報源になります。
入学前(2〜3月ごろ)
学校から申請案内とログインID通知書を受け取る
e-Shien(オンライン申請システム)のIDとパスワードは学校から配られます。紛失したら学校に問い合わせます。パスワードを5回間違えるとアカウントがロックされるので、入力は慎重に。
入学した4月中(学校が定める期日まで)
受給資格認定申請を出す(最重要)
e-Shienから申請。親権者2名分のマイナンバーが必要です。紙申請の場合は受給資格認定申請書+マイナンバーカードの写し等を学校へ。住民税が未申告だと所得が確認できず手続きが止まるため、未申告の人は先に住民税の申告を済ませます。
4月〜6月
都道府県が審査し、認定される
支援金は家庭に振り込まれず、学校が代理で受け取って授業料に充てます。私立では、いったん授業料を全額納めてから後日還付する運用の学校もあります。
毎年7月(在校生も全員)
収入状況届出を出す
新しい年度の住民税額で判定し直すための届出です。出さないと支給が止まります。所得制限がなくなった新制度でも、在学の確認と対象要件の確認のために手続きは残ります。
随時(発生したとき)
保護者の変更・課税額の更正があったら届け出る
離婚・死別・養子縁組などで保護者が変わったら速やかに届出。市町村から更正通知書を受け取った場合は、受け取った日の翌日から15日以内に学校を通じて提出します。
支給期間の上限
全日制は36月(3年分)で終了
留年などで在学が延びても、支給されるのは通算36月までです(定時制・通信制は48月)。単位制の場合は通算74単位・年間30単位が上限になります。
あなたの場合はこうなる|パターン別の分岐
公立高校に通っている
上限は年11万8800円で、旧制度から変わっていません。もともと公立の授業料はおおむねこの水準なので、実質的に授業料はかかりません。変わったのは「年収910万円以上でも対象になった」点です。これまで所得制限で対象外だった世帯は、今年から申請すれば授業料負担がなくなります。
私立高校(全日制)に通っている
最も影響が大きいパターンです。年収590万円以上910万円未満だった世帯は11万8800円→45万7200円へ、910万円以上で対象外だった世帯は0円→45万7200円へ。年間30万〜45万円ほど負担が軽くなる計算になります。ただし後述のとおり、授業料以外の費用は残ります。
私立の通信制・単位制に通っている
通信制の上限は年33万7200円(月2万8100円)と、全日制より低く設定されています。単位制の授業料をとる学校では1単位18,528円・通算74単位・年間30単位までが上限です。年間30単位を超えて履修しても、超えた分は支援の対象外になります。履修計画を立てるときは単位数の上限も見ておくと安心です。
高専・専修学校高等課程に通っている
高等専門学校は1〜3学年が対象で、公立は年23万4600円、私立は45万7200円。専修学校の高等課程・一般課程も対象校種に含まれます(各種学校は国家資格者養成課程を置くものなど条件つき)。「高校」ではないから対象外だと思い込んで申請していないケースがあるので、在学先が対象校種かどうかは学校に確認してください。
日本国籍ではない場合
新制度の対象は、日本国内に住所があり、次のいずれかに当たる人です。①日本国籍を有する者 ②特別永住者 ③永住者 ④日本人の配偶者等 ⑤永住者の配偶者等 ⑥定住者のうち将来永住する意思があると認められた者 ⑦家族滞在のうち小中学校を卒業し、高校等卒業後に日本で就労して定着する意思があると認められた者。
留学・特定活動などの在留資格は新制度の対象外ですが、対象外になる生徒にも旧制度と同等水準の支援が用意されています(在校生には経過措置、新入生には予算措置による「高校生等・新修学支援事業」)。この場合の上限は39万6000円または11万8800円です。「対象外=ゼロ」ではないので、必ず学校に相談してください。
きょうだいが複数いる
就学支援金は生徒ごとの制度なので、高校生が2人いれば2人分申請できます。旧制度では世帯年収で判定されたため、きょうだいが多い世帯ほど所得制限で不利になる場面がありましたが、新制度ではその論点自体がなくなりました。申請はそれぞれの学校を通じて別々に行います。
現場で詰まりやすいところ
制度の説明ではあまり触れられないものの、実際の申請でつまずきやすいのは次のような点です。手続き経験者の話として語られることが多く、公式マニュアルにも対処法が載っています。
- ログインIDの通知書を入学準備の書類の山に埋もれさせる。e-Shienは学校が配るIDとパスワードでしか入れません。合格発表から入学までの書類が多い時期に届くので、この1枚だけは別にしておくと後が楽です。
- パスワードを5回間違えてロックされる。解除は学校への連絡が必要で、期日が迫っているときほど痛手になります。
- 親権者2名分のマイナンバーが必要なことを直前まで知らない。単身赴任・別居中などで手元に情報がない場合、マイナンバー入りの住民票を取り寄せる時間が要ります。
- 住民税が未申告で審査が止まる。収入がなくても住民税の申告は必要です。文部科学省も、未申告の人は事前に申告するよう案内しています。
- 1年目に申請したので終わったと思い込む。毎年7月の収入状況届出を出さないと支給が止まります。
- 私立で「いったん全額納付」の学校がある。支援金は学校が代理受領する仕組みのため、学校によっては先に授業料を全額納め、後から還付を受ける運用です。入学時の現金の準備額が想定と変わるので、事前に学校の運用を確認しておくと資金繰りの見通しが立ちます。
なお2026年4月には、e-Shienが4月17日18時から24日15時まで緊急メンテナンスでサービス停止しました。文部科学省は、申請時期が5月以降になった場合でも4月分から受給できるよう弾力的に取り扱うとしています。システム都合で遅れた場合に慌てる必要はありませんが、案内は必ず学校・都道府県から出ますので、自己判断せず連絡を待ってください。
支給には「期間の上限」もある(2026年8月追記)
金額の上限と並んで見落とされやすいのが、支給期間の上限です。全日制は36か月、定時制・通信制は48か月と決まっており、留年や転学を挟むとこの月数を先に使い切ることがあります。卒業までの残り月数と、支給の残り月数は別物です。進路変更を考えるときは、在籍校に残りの支給月数を確認しておくと想定外の自己負担を避けられます。
図:支給期間と単位制の上限(新制度)
| 課程 | 支給期間 | 単位制のときの単価(公立/私立) |
|---|---|---|
| 高等学校 全日制 | 36か月 | 4,812円/18,528円 |
| 高等学校 定時制 | 48か月 | 1,740円/18,528円 |
| 高等学校 通信制 | 48か月 | 336円/13,668円 |
| 中等教育学校 後期課程 | 36か月 | 4,812円/18,528円 |
単位制の支給は通算74単位・年間30単位までが上限。出典:文部科学省「高等学校等就学支援金・新制度の概要」(2026年6月16日公表)
制度の規模も押さえておくと、報道の見方が変わります。令和8年度の高等学校等就学支援金等の予算額は5,824億円で、前年度の4,074億円から1,750億円増えました。財源の分担も変わり、公立・私立高校等は国が4分の3、都道府県が4分の1を負担します(国立高校等は国が10分の10)。就学支援金は生徒や保護者に現金で渡るのではなく、学校の設置者が代理受領して授業料に充てる仕組みです。
そしてもうひとつ、この新制度は法施行後3年以内に十分な検証を行ったうえで、必要な見直しを実施することが予定されています。今の水準が高校3年間ずっと続く前提で家計を組むより、支援がなくても回る計画を土台に、支援分は上振れとして扱うほうが安全です。
「無償化」でも残る費用|編集部の見方
ここが、この制度でいちばん誤解が生まれるところです。就学支援金が充てられるのは授業料だけで、入学金・施設費・教材費・制服代は対象外です。東京都が公表した令和8年度の都内私立高校(全日制)233校の調査で、実際にどれだけ残るのかを見てみます。
| 費目(都内私立・全日制の平均) | 金額 | 支援の対象 |
|---|---|---|
| 授業料 | 512,882円 | 45万7200円まで対象 |
| 入学金 | 254,599円 | 対象外 |
| 施設費 | 34,386円 | 対象外 |
| その他(教育充実費など) | 205,682円 | 対象外 |
| 初年度納付金の合計 | 1,007,549円 | 支援後の自己負担 約550,349円 |
つまり「私立高校無償化」でも、都内私立の平均では初年度に約55万円が手元から出ていくことになります。それでも旧制度で対象外だった世帯にとっては、初年度で約45万円、3年間で100万円以上の差になります。制度の効果は確かに大きいのですが、「無料になる」と受け取ると入学時の資金計画を誤ります。
編集部の判断材料|どこまで見ておくか
堅実に見積もりたい人はここまで:入学時にまとまって必要になるのは、入学金・施設費・制服・教科書でおおむね40万〜50万円。支援金は学校が代理受領するので、この分は現金で用意する前提で考えます。授業料は支援でほぼ相殺されると見ておけば大きく外れません。
余裕をみておきたい人はここまで:修学旅行の積立、部活動費、模試・講習費は学校差が大きく、年10万〜30万円ほど動きます。都内私立の初年度納付金は最高194万2300円・最低75万2000円と2.6倍の開きがあるため、志望校の募集要項に載っている実額で確認するのが確実です。
学費を理由に進路を狭める前に、都道府県が独自に上乗せする授業料軽減助成(東京都など)と、授業料以外を対象とする高校生等奨学給付金を確認してください。この2つは国の就学支援金とは別枠で、併せて使える場合があります。
家計全体を見直すなら、固定費見直しのガイドで通信費や保険料の削減余地も確認しておくと、教育費に回せる金額が見えやすくなります。ひとり親世帯なら児童扶養手当、中学生までのお子さんがいるなら児童手当も併せて確認を。保護者ご自身の学び直しには教育訓練給付が使えます。
まずは公式の一次情報で確認を
制度の最新の取り扱いと、お住まいの都道府県の期限は公式ページが確実です。→ 文部科学省「高校生等への修学支援」/e-Shien(オンライン申請システム)の案内
よくある質問
年収がいくらでも本当に受け取れますか?
新制度では所得制限がありません。ただし対象は、日本国内に住所があり、日本国籍・特別永住者・永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者(将来永住する意思があると認められた者)・家族滞在(一定の要件を満たす者)のいずれかに当たる生徒です。要件を満たさない場合も、旧制度と同等水準の支援が別に用意されています。
授業料が45万7200円より安い学校です。差額はもらえますか?
受け取れません。就学支援金は授業料に充てるための制度で、授業料を限度に支給されます。上限との差額が現金で渡されることはありません。
入学金や制服代も支援されますか?
支援されません。就学支援金の対象は授業料だけです。教科書費・教材費など授業料以外の費用については、返還不要の「高校生等奨学給付金」が別にあります。申請先は都道府県または学校で、手続きの開始時期は都道府県ごとに異なります。
申請しないとどうなりますか?
支給されません。所得制限がなくなっても自動的に始まる仕組みではなく、受給資格認定申請が必要です。原則として入学した4月に学校を通じて手続きします。提出期限は学校・都道府県で異なるため、学校からの案内に従ってください。
2年生・3年生になっても手続きは要りますか?
必要です。毎年7月ごろに収入状況の届出があり、これを出さないと支給が止まります。また離婚・死別・養子縁組などで保護者が変わったときや、市町村から課税額の更正通知を受け取ったとき(受け取った日の翌日から15日以内)にも届出が必要です。
通信制や単位制の場合はどう計算されますか?
私立通信制の上限は年33万7200円(月2万8100円)です。単位制の授業料をとる学校では、私立は1単位18,528円、公立は1単位4,812円が上限で、いずれも通算74単位・年間30単位までという制限があります。
あなたの体験を聞かせてください
この手続きで「実際はこうだった」「ここでつまずいた」という経験があれば、体験談募集フォームから教えてください。許諾をいただいたものだけ、出所を明示して記事に反映します。
この記事の出典
- 文部科学省「高校生等への修学支援」(新制度の概要・支給限度額・申請手続き・お知らせ)
- 文部科学省「高等学校等就学支援金・新制度の概要」(令和8年6月16日公表・PDF)-支給上限額、対象校種、対象者要件、支給期間・支給限度額一覧、令和8年度予算額
- 文部科学省「高等学校等就学支援金の支給に関する法律の一部を改正する法律の施行等について(通知)」(令和8年3月31日成立・4月1日施行)
- 文部科学省「高等学校等就学支援金オンライン申請システム e-Shien」
- 東京都「令和8年度 都内私立高等学校(全日制)の学費の状況」(2025年12月18日公表)-初年度納付金の平均・費目別内訳・最高額・最低額
本記事は制度の内容を整理したもので、個別の家庭の判定を保証するものではありません。提出期限や必要書類は学校・都道府県によって異なります。実際の手続きは、必ず在学する学校またはお住まいの都道府県の案内に従ってください。(最終確認:2026年8月7日)
暮らしの手続きをまとめて確認したい方は暮らしの手続きガイド、子育て期のお金は出産・育児ガイドもあわせてご覧ください。
授業料が下がっても、進学で増える出費は別にあります
就学支援金が対象にするのは授業料だけで、通学や下宿にかかる費用は残ります。自宅から通えない高校に進むなら、引越しの費用と新居の光熱費が新しい固定費になります。どちらも進学先が決まった直後に動くと、繁忙期の割高な料金を避けられます。
- 引越し料金の相場と見積もりの取り方(3〜4月は同じ荷物でも料金が上がる)
- 電気・ガスの乗り換え完全ガイド(新居の契約を決める前に比べる)
