引越し料金は「距離」「荷物量」「時期」の3つで決まり、なかでも時期の影響が最大です。国土交通省は3月の引越件数を通常月の約2倍と説明しており、繁忙期は同じ荷物でも金額が変わります。契約のルールは国が定めた標準引越運送約款にあり、キャンセル料は当日で見積運賃等の50%以内、前日30%以内、前々日20%以内が上限です(2026年9月8日時点)。
情報基準日: 2026-09-08/この記事は暮らしの手続きガイドの一部です。手続き全体の順番は引越しやることリストを、荷物を減らす方法は引越しで出た不用品はどこに頼むのが安いかをご覧ください。
結論の要点
- 高くなる条件は3つ重なったときです。2人以上・移動距離100km以上・3月中旬以降。1つでも外すと金額の動きは小さくなります。
- 見積書には9つの記載事項が約款で決まっています。そろっていない見積書は、比較の土俵に乗っていません。
- 見積料は無料。内金・手付金の請求は約款で禁止されています。下見の費用だけは、事前に金額を伝えて了解を得た場合に限り請求できます。
- 当日に業者都合で増額はできません。約款第19条は、実額が見積額を超える修正を「荷送人の責任による事由で算出の基礎に変化が生じたとき」に限っています。
- 荷物の破損は引渡日から3か月以内に通知しないと、責任が消滅します。荷ほどきは早めに。
1. 引越し料金は何で決まるのか
標準引越運送約款の第18条は、運賃と料金は各社が別に定める運賃料金表によると定めています。つまり「相場」という統一価格はなく、各社の料金表と現場の条件で決まります。実務上、金額を動かしているのは次の4つです。
1つめは移動距離。距離が伸びると車両の拘束時間が伸び、長距離では運転手の労働時間規制も効いてきます。2つめは荷物量。トラックのサイズと作業員の人数が決まります。3つめは時期・曜日・時間帯。需要が集中する日は同じ条件でも高くなります。4つめは作業条件。エレベーターの有無、道幅、階数、吊り上げの要否などで、当日の追加が発生する余地が決まります。
見積もりを比べるときは、この4つのうちどれが自分の引越しで一番効いているかを先に決めてください。距離が短くて荷物も少ないのに高いなら、それは時期の問題です。時期をずらせないなら、荷物量と作業条件のほうを削るしかありません。
2. 時期でどれだけ動くか(一次データ)
国土交通省は、引越しの依頼が3月から4月にかけて集中し、3月の引越件数は通常月の約2倍になると説明したうえで、時期の分散を呼びかけています。同省の資料では、例年の最繁忙期は3月中旬から4月上旬とされ、3・4月に加えて9・10月にも集中する傾向が示されています。
金額の実データは公的統計には存在しないため、ここでは一括見積もりサイトが自社の利用者データを集計して公表している数値を、出典と取得日つきで引用します。あくまで一事業者の集計であり、全国平均ではありません。
図解1:繁忙期の距離別・時期別の料金集計
| 移動距離 | 単身 | 家族 |
|---|---|---|
| 〜5km | 56,669 | 127,141 |
| 5〜14km | 61,482 | 147,381 |
| 15〜99km | 76,267 | 173,590 |
| 100〜499km | 140,016 | 301,437 |
| 500km〜 | 227,140 | 417,129 |
| 3月のどこか | 単身 | 家族 |
|---|---|---|
| 上旬 | 82,227 | 157,572 |
| 中旬 | 131,147 | 246,395 |
| 下旬 | 170,882 | 287,505 |
出典:株式会社エイチームライフデザイン「引越し侍」調査記事(2026年8月27日公開)。同社利用者のデータ集計であり、公的統計ではありません。取得日 2026-09-08。件数の「3月は通常月の約2倍」は国土交通省 物流・自動車局貨物流通事業課の資料による。
この2つの表から読めることは単純です。単身の3月上旬(約8.2万円)と3月下旬(約17.1万円)では、同じ月の中で2倍以上開いています。距離を見ても、15〜99kmと100〜499kmの間に段差があります。つまり「3月下旬」と「100km超」の2つが、金額の折れ点です。
図解2:3月の時期別 料金集計(単身・家族)
3. 見積書に必ず載る9項目
標準引越運送約款の第3条第2項は、見積りを行ったときに発行する見積書へ記載する事項を9つ列挙しています。裏返せば、この9つがそろっていない紙は「見積書」として比べる土俵に乗っていません。金額だけが書かれたメモを3社ぶん並べても、条件がそろっていないので比較になりません。
図解3:見積書の記載事項チェックリスト(約款第3条第2項)
- 申込者の氏名または名称、住所、電話番号
- 荷受人の氏名または名称、住所、電話番号
- 荷物の受取日時および引渡日
- 発送地および到達地の地名、地番、連絡先電話番号
- 運賃等の合計額、内訳、支払方法
- 解約手数料の額
- 事業者の名称、事業許可番号、住所、電話番号、見積り担当者の氏名、問い合わせ窓口電話番号
- 荷送人・荷受人および事業者が行う作業内容
- その他見積りに関し必要な事項
出典:標準引越運送約款(平成2年運輸省告示第577号)第3条第2項。全日本トラック協会 掲載条文により確認。取得日 2026-09-09。
実務で効くのは5番目と8番目です。5番目の「内訳」は、同項第3項で受取日・引渡日・積込み・取卸し作業などに応じて区分してわかりやすく記載すると定められています。総額しか書かれていない見積書は、あとから「これは含まれていない」と言われる余地を残します。8番目の作業内容は、どこまでを業者が行い、どこからを自分でやるのかの線引きです。ここが空欄のまま当日を迎えると、当日の追加作業をめぐる話し合いになります。
7番目の事業許可番号も見ておいてください。引越運送は一般貨物自動車運送事業の許可が要る仕事です。番号の記載がない見積書を出す相手とは、そもそも取引の前提が違います。
4. 見積もりの取り方(4ステップ)
見積もりは「安い順に並べる作業」ではなく「同じ条件で比べられる状態を作る作業」です。順番を守るだけで、比較の精度がまったく変わります。
図解4:見積もりを取る4ステップ
条件を紙に固定する
住所(発送地・到達地)、希望日と代替日、建物の階数・エレベーターの有無・前面道路の幅、大型家具の点数を先に書き出す。全社に同じ紙を渡す。
3社前後で訪問または映像の下見を受ける
見積料は請求されない(約款第3条第4項)。ただし下見に要した費用は、事前に金額を伝えて了解を得た場合に限り請求できる。電話だけの概算は当日の増額の余地を残す。
9項目がそろった見積書で並べる
総額ではなく内訳で比べる。段ボール・ハンガーボックス・エアコン工事・不用品処分の扱いが各社で違う。含まれていない項目は自分で埋めた金額を足してから比較する。
決めたら受取日の2日前の確認連絡に備える
約款第3条第7項で、事業者は受取日の2日前までに見積内容の変更の有無を確認することになっている。この時点で荷物が増減していれば正直に伝える。ここで直せば当日の混乱がない。
出典:標準引越運送約款 第3条。取得日 2026-09-09。
5. 損しないポイント
図解5:知らないと損をする5つのルール
- 見積料は無料。約款第3条第4項で見積料は請求しないと定められている。請求できるのは下見の実費だけで、しかも事前に金額を伝えて了解を得た場合に限る。
- 内金・手付金は請求されない。同条第5項。契約の場で「今日押さえるなら手付を」と言われたら、根拠を確認する。
- 当日の値上げは業者都合ではできない。第19条第4項第2号は、実額が見積額を超える方向の修正を「荷送人の責任による事由により算出の基礎に変化が生じたとき」に限っている。荷物が増えていないのに増額されたら、その事由を書面で示してもらう。
- 安くなる方向の修正は無条件。同項第1号は、実額が見積額を下回る場合は実額へ修正すると定めている。荷物を減らしたぶんは戻る。
- 破損の申告期限は3か月。第25条により、荷物の一部の滅失・き損についての責任は引渡日から3か月以内に通知を発しないと消滅する。荷ほどきを先延ばしにすると権利のほうが先に消える。
出典:標準引越運送約款 第3条・第19条・第25条。取得日 2026-09-09。
6. キャンセル・延期の手数料はいくらか
解約手数料と延期手数料は約款第21条にあります。2018年6月1日施行の改正で、対象日と料率が引き上げられました。改正前は前日10%以内・当日20%以内でしたが、現在は前々日が新たに対象になり、料率も上がっています。「前日までなら無料」という古い理解のままだと、金額を見て驚くことになります。
図解6:解約・延期手数料の上限(約款第21条)
| 連絡したタイミング | 現行(2018年6月1日〜) | 改正前 |
|---|---|---|
| 受取日の3日前まで | 請求されない | 請求されない |
| 前々日 | 見積運賃等の20%以内 | 対象外 |
| 前日 | 見積運賃等の30%以内 | 10%以内 |
| 当日 | 見積運賃等の50%以内 | 20%以内 |
出典:標準引越運送約款 第21条(平成2年運輸省告示第577号、2018年6月1日施行の改正後)/国土交通省「標準引越運送約款等の改正について」。取得日 2026-09-09。上限であり、実際の額は各社の運賃料金表によります。
注意すべき点が3つあります。1つめは、対象が「運賃」であって、荷造りサービスやエアコン工事などの附帯サービス料金を含む総額ではないこと。2つめは、解約の原因が自分側にある場合、手数料とは別に、すでに着手された附帯サービスの実費(見積書に明記されたものに限る)を請求されること。3つめは、事業者が第3条第7項の「受取日の2日前までの確認」を行わなかった場合、解約手数料・延期手数料を請求できないと定められていることです。確認の連絡が来ていないのに手数料を請求されたら、そこを確認してください。
なお、これは荷送人(依頼した側)の都合で解約・延期した場合の話です。天災などやむを得ない事由による場合は、この条文の前提から外れます。
7. パターン別の分岐
単身・同一市内で、日程を動かせる
金額が最も動かしやすい層です。引越し侍の集計では単身・5km未満が約5.7万円、3月上旬が約8.2万円、3月下旬が約17.1万円。つまり日程だけで倍以上変わります。3月下旬と4月上旬を避け、平日・午後便(前の現場が終わってから始まる「フリー便」)を検討してください。荷物量も自分で削れます。処分の判断は引越しで出た不用品はどこに頼むのが安いかにまとめています。
家族・100km以上で、日程が動かせない(転勤・入学)
集計値では家族・100〜499kmが約30.1万円、500km以上が約41.7万円。ここは日程でも距離でも下げられないので、削れるのは荷物量と附帯サービスだけになります。大型家具を運ぶか買い替えるかを金額で比べる、荷造りは自分でやる、といった判断が効きます。売れるものと売れないものの線引きは引越し前に売れるもの・売れないものを参考にしてください。
日程が3月下旬で確定している
国土交通省は3月の引越件数を通常月の約2倍とし、最繁忙期を3月中旬から4月上旬としています。この期間は金額だけでなく「そもそも受けてもらえるか」が問題になります。動かせないなら、早く動くこと自体が対策です。荷物を運ぶ日と、電気・ガス・水道・回線の開通日は別々に押さえます。回線は工事枠が先に埋まるので、引越し・新生活のインターネット回線ガイドで逆算の目安を確認してください。
賃貸からの引越しで、退去費用も気になる
引越し料金と退去精算は別の財布ですが、同じ月に出ていきます。原状回復の負担区分を先に把握しておくと、想定外の出費が減ります。賃貸の退去費用と原状回復を先に読んでおくのがおすすめです。
実家の片付けを兼ねている
これは引越しとは費用構造が違う作業です。運ぶ量ではなく、探して仕分ける時間で金額が決まります。引越し業者に「ついでに処分も」は基本的に通りません。実家の片付け・遺品整理は引越しの片付けと何が違うかで切り分けを整理しています。
8. イレギュラー・現場でよく起きること
当日に「荷物が多い」と言われて増額される
国民生活センターには引越し料金や解約料をめぐる相談が寄せられています。約款上、見積額を超える方向の修正は荷送人の責任による事由で算出の基礎が変わったときに限られます。増えていたなら払う話ですが、増えていないなら根拠を示してもらう話です。防ぐ手は1つで、下見を受けて、大型家具と段ボールの想定本数を見積書の作業内容欄に書いてもらうことです。
現金・通帳・貴金属が荷物に混ざっている
約款第4条第2項は、現金、有価証券、宝石貴金属、預金通帳、キャッシュカード、印鑑など「荷送人において携帯することのできる貴重品」について、引受けを拒絶できると定めています。これは業者が冷たいのではなく、事故時の責任範囲を決められないからです。通帳と印鑑と現金は自分の手で運ぶ、と決めておいてください。ピアノ・美術品・動植物も特殊な管理が必要なため、同じく別扱いです。
エレベーターがない・道路が狭くてトラックが着けられない
当日の追加が最も発生しやすい条件です。4階まで階段、前面道路が4m未満で小型車へ積み替え、といった要素は作業員の人数と時間を変えます。これは「荷送人の責任による事由」に当たり得るので、下見の時点で申告しておくのが安全です。新居側の条件も同じで、着地の道幅は自分で見に行くか、地図の航空写真で確認して伝えます。
荷ほどきしたら家具に傷がついていた
引渡日から3か月以内に通知を発しないと、一部の滅失・き損についての責任は消滅します(第25条)。まず写真を撮って、日付のわかる形で業者へ連絡してください。滅失・き損・遅延の証明書は、引渡日から1年以内であれば請求できます(第17条)。損害賠償請求権そのものの時効も、受け取った日から1年です(第27条)。
引越し当日に不用品が残ってしまった
自治体の粗大ごみは申込から収集まで日数がかかるため、当日に残ると選択肢が一気に減ります。段取りは粗大ごみの出し方と料金の考え方を、冷蔵庫・洗濯機・テレビ・エアコンは家電リサイクル法の対象で扱いが別なので4品目の処分を確認してください。急いで業者を呼ぶ場合の許可の見分け方は不用品回収業者の選び方にあります。
9. 相場観と編集部の価値判断
まず前提を確認しておきます。引越し料金には公的な統計がありません。国土交通省が公表しているのは件数の季節変動であって、金額ではありません。この記事で引用した金額は一括見積もりサイトが自社の利用者データを集計したもので、全国平均でも標準額でもありません。ですから「相場より高い」という言い方自体が、実はあまり意味を持ちません。
そのうえで編集部の判断です。金額の比較よりも、条件の固定のほうが先です。同じ荷物・同じ日・同じ作業範囲で3社に出させれば、差は自然に見えます。逆に、条件を固定しないまま安い会社を選ぶと、当日に条件が確定して差額が戻ってきます。安く見えた見積書は、含んでいない項目が多かっただけということが少なくありません。
もう1つ。日程を動かせる人にとって、いちばん効くのは「3月下旬を外す」です。集計値では単身で3月上旬と下旬に2倍以上の開きがありました。値引き交渉で2倍の差は埋まりません。交渉に時間を使うより、カレンダーを見直すほうが確実です。日程を動かせない人は、交渉ではなく荷物量と附帯サービスに手を入れてください。
最後に、一括見積もりサイトについて。条件を一度に伝えられる利点はありますが、登録直後に複数社から連絡が来ます。電話の本数を許容できるかどうかで向き不向きが分かれます。合わないと感じるなら、自分で3社に個別に依頼しても、比較の質は変わりません。
困ったときの公的な相談先
見積書の内容や解約手数料でもめたときは、消費者ホットライン「188」(局番なし)で最寄りの消費生活センターにつながります。約款の条文そのものは、国土交通省および全日本トラック協会のサイトで全文を確認できます。当サイトは相談の受付や事業者の紹介は行っていません。
よくある質問
引越しの見積もりにお金はかかりますか?
標準引越運送約款第3条第4項で、見積料は請求しないと定められています。例外は、発送地または到着地で下見を行った場合の下見費用だけで、これも見積りを行う前に金額を伝えて了解を得ることが条件です。また同条第5項により、見積りの際の内金・手付金も請求されません。
引越しをキャンセルしたら、いくら請求されますか?
約款第21条の上限は、見積書に記載した受取日の前々日が見積運賃等の20%以内、前日が30%以内、当日が50%以内です。3日前までの連絡であれば、この条文にもとづく請求は生じません。実際の額は各社の運賃料金表によります。なお対象は運賃であり、附帯サービス料金を含む総額ではありません(2026年9月9日時点)。
当日に「荷物が多いので追加料金」と言われました。払う必要がありますか?
約款第19条第4項第2号は、実際の運賃等が見積額を超える方向の修正を「荷送人の責任による事由により見積運賃等の算出の基礎に変化が生じたとき」に限っています。荷物が見積り時より増えているなら該当し得ます。増えていないのに増額を求められた場合は、どの事由で算出の基礎が変わったのかを確認してください。判断に迷うときは消費者ホットライン188に相談できます。
荷物が壊れていました。いつまでに連絡すればいいですか?
約款第25条により、荷物の一部の滅失またはき損についての事業者の責任は、荷物を引き渡した日から3か月以内に通知を発しない限り消滅します。事故証明書の請求は引渡日から1年以内(第17条)、損害賠償の責任の時効は受け取った日から1年(第27条)です。まず写真を撮り、日付の残る方法で連絡してください。
3月を避けると、どのくらい変わりますか?
公的な金額統計はありません。引越し侍が自社利用者のデータを集計した数値(2026年8月27日公開)では、単身の3月上旬が約8.2万円、3月下旬が約17.1万円でした。件数については国土交通省が3月を通常月の約2倍とし、最繁忙期を3月中旬から4月上旬としています。金額の差は事業者や条件によって変わるため、目安として扱ってください。
引越し業者に不用品の処分も頼めますか?
基本的には別の話です。家庭から出た廃棄物を運ぶには一般廃棄物処理業の許可が必要で、引越運送の許可とは別のものだからです。引き取りを扱う引越し事業者は、その許可を持つか許可業者と提携しています。頼めるかどうかではなく、どの許可にもとづいて誰が運ぶのかを確認してください。詳しくは不用品回収業者の選び方で解説しています。
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- 国民生活センター「引っ越しのキャンセル料が高い!」(消費者トラブル解説集)。取得日 2026-09-09
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- 引越しで出た不用品はどこに頼むのが安いか|荷物量を減らす
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- 引越し・新生活のインターネット回線ガイド|開通日の逆算
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