電気やガスの会社を変えると聞くと、「工事が要るのでは」「一時的に止まるのでは」と身構えてしまいます。実際には、都市ガス会社どうしの切り替えも、電力会社の切り替えも、原則として工事も立ち会いも供給停止もありません。手続きは切り替え先の1社に申し込むだけで、いまの会社への解約連絡も不要です。
| 何をする | 切り替え先の1社に申し込むだけ。いまの会社への解約連絡は原則不要(切替先が代行) |
| いつまでに | 電気はスマートメーター設置済みでおよそ4日、交換が必要ならおよそ2週間。都市ガスは大手4社エリアで申込みから5営業日以降の定例検針日 |
| いくら | 切替の手数料・メーター交換費は原則無料。ただしいまの契約に解約金がある場合と切替先が市場連動型の場合だけは事前確認が必須 |
申込みから初回請求までを時系列で
「申し込んだ日から安くなる」わけではありません。切り替わるのは検針のタイミングです。ここを勘違いすると、初月の請求を見て「話が違う」と感じてしまいます。
損しないポイント|確認しないと後で効いてくる4つ
- いまの契約に解約金・精算金があるか。電気・ガスとも、選択約款や割引付きのプランでは解約金や精算金が発生する契約になっている場合があります。乗り換えで浮く額より解約金が大きければ、当然ながら損です。
- 切替先が「市場連動型」でないか。卸電力市場の価格に単価が連動するプランは、市場が高騰した月に請求が跳ね上がります。国民生活センターには「市場連動型プランとの説明を受けておらず高額になった」という相談が寄せられています。
- 燃料費調整・原料費調整に上限があるか。都市ガスの規制料金には原料価格の急騰時に調整幅の上限(基準平均原料価格の1.6倍)がありますが、自由料金にはこの上限が及ばない設計もあります。契約書面で確認してください。
- 契約期間と更新後の条件。「最初の1年だけ割引」というメニューは珍しくありません。割引の対象期間がいつまでか、期間満了後にどう更改されるかは、事業者に書面交付義務がある項目です。
逆に、心配しなくていいこともはっきりしています。都市ガス事業者間の切り替えではガスメーターの取替えもガス器具の取替えも不要で、開閉栓を行わないため供給が止まりません。電気のスマートメーター交換費用も原則無料です。ガス漏れなどの緊急時対応と内管の漏えい検査は、契約先が変わっても引き続き一般ガス導管事業者(従来の地域のガス会社)が担います。「安い新電力に変えると停電しやすい」といった話にも根拠はありません。
あなたの場合はこう|住まいと契約タイプ別
| あなたの状況 | できるか | 注意点 |
|---|---|---|
| 持ち家・都市ガス | できる | 既存の導管をそのまま使うため、新たな導管の敷設は不要。 |
| 賃貸・都市ガス | 基本できる | ただし借上げ社宅など契約名義が自分でない場合は契約者に確認が必要。 |
| LPガス・オール電化から都市ガスへ | 条件つき | 都市ガス用の配管やメーター設置、コンロ・給湯器の調整や買替えが必要になる場合があり、費用負担が生じる。切替前の事業者への解約連絡も自分で行う。 |
| 集合住宅でコミュニティ単位の供給 | 単独では不可 | 管理組合などコミュニティ単位の意思決定が必要。まず管理組合・管理会社へ。 |
| 二世帯住宅で別契約にしたい | 条件つき | 契約は需要場所ごと。メーターが分かれていれば別々の契約が可能。 |
現場でつまずくのはここ|イレギュラーと対処法
公式の手順どおりに進めても、実際にはここで止まる人が多い、というポイントがあります。体験談として多く語られる内容と、公的機関が注意喚起している内容を分けて整理します。
検針票が手元にない
Web明細に切り替えている人ほど、紙の検針票がありません。お客さま番号と供給地点特定番号は、Web会員ページか、検針が行われない契約ではダイレクトメールや領収書からも確認できます。どうしても見つからなければ、現在契約している会社に直接問い合わせれば教えてもらえます。ここで諦めて手続きを先延ばしにするのが、いちばんもったいないパターンです。
申し込んだ後に、もっと良い会社を見つけた
A社に申し込んだ後、B社とだけ話をしてもA社への申込みは有効のままです。契約は需要場所ごとに1社なので、A社の手続きが先に進むとB社に切り替えられなくなる可能性があります。切替先を変えるなら、B社と契約する前にA社に連絡して申込みを整理してください。家族がそれぞれ別会社に申し込んでしまい混乱する例も報告されています。
訪問販売・電話勧誘で契約してしまった
訪問販売や電話勧誘で結んだ自由料金メニューの契約は、クーリング・オフの対象です。期間は法定事項を記載した契約書面を受け取った日から起算して8日間。ただし一般ガス導管事業者の「最終保障供給」や経過措置料金(規制料金メニュー)は適用除外です。
あわせて、電力・ガス取引監視等委員会は次のような事実と異なる説明に注意するよう促しています。「あなたのガス会社は社名が変わった」「自由化で地域の担当会社が当社に変わった」といった説明です。委員会は、旧一般ガス事業者が社名を変更した事例を確認していないとしており、一定の地域で新しい会社だけが供給担当になることもありません。
切り替えた会社が撤退・倒産した
実際に2022年前後、契約先の事業撤退に関する相談が国民生活センターに寄せられました。ガスの場合、小売事業者は廃止時に契約者へあらかじめ周知する義務があり、その期間内に他社へ切り替える必要があります。切替が間に合わない間は、一般ガス導管事業者と契約して最終保障供給を受けることができます。いきなり供給が止まる制度設計にはなっていません。
切替月に請求が2通届いた
体験談で最も多く語られるつまずきがこれです。切替日をまたぐ月は、旧会社の最終請求と新会社の初回請求が別々に届きます。二重請求ではなく、期間が分かれているだけです。金額を比べるときは、この月ではなく、切替が完全に終わった翌々月から判断してください。
編集部の価値判断|どこまで手間をかけるか
比較サイトや代理店は「年間◯万円お得」という上振れの試算を前面に出しがちです。判断材料として、費やす手間ごとの現実的な線引きを示しておきます。押し付ける意図はなく、どこで区切るかはご自身の価値観で決めてください。
なお、料金が安いかどうかだけで決めないよう、公的機関も繰り返し求めています。電力・ガス取引監視等委員会は、料金だけでなく保安への取組・契約期間・契約解除の条件まで確認して納得のうえ契約することが重要だとしています。
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よくある質問
電気やガスの会社を切り替えると、工事や立ち会いは必要ですか?
都市ガス事業者間の切り替えでは、ガスメーターもガス器具も取替えは不要です。電気はスマートメーターが未設置の場合のみ交換工事が入りますが、費用は原則かかりません。LPガスやオール電化から都市ガスへ変える場合だけは、配管や器具の調整・取替えが必要になることがあります。
切り替えの手続きにどれくらいかかりますか?
電気の標準的な期間は、スマートメーターへの交換工事が必要な場合およそ2週間、不要な場合およそ4日とされています。都市ガスは、スイッチングシステムを備える東京ガス・大阪ガス・東邦ガス・西部ガス管内の事業者間の切り替えで、原則としてスイッチング申込みから5営業日以降の定例検針日です。
いまの会社に解約の連絡をする必要はありますか?
電気は、現在契約している会社への解約手続きを、消費者の同意に基づき切り替え先の会社が行うことができます。都市ガス事業者間の切り替えも、原則として切り替え先のガス小売事業者に連絡すれば足ります。ただしLPガスやオール電化からの切り替えでは、切替前の事業者にも契約解除の連絡が必要です。
切り替えのときにガスや電気は止まりますか?
都市ガス事業者間の切り替えだけなら、検針は行いますがガス栓の開閉栓は行わないため供給は停止しません。電気はスマートメーターの交換を伴う場合に、1軒あたり約15分程度の停電が生じることがあります。
解約金や違約金を取られることはありますか?
料金プランによっては解約金が発生することがあります。従来のガス会社の選択約款でも精算金・解約金が発生する契約になっている場合があります。一方で「ガスの小売営業に関する指針」は、不当に高額な違約金の設定や、解約の申出に応じないことを問題となる行為としています。契約前に書面で条件を確認してください。
切り替え先の会社が倒産したら電気やガスは止まりますか?
すぐに止まるわけではありません。ガスでは、小売事業者が事業を廃止する場合は契約者への事前周知が義務づけられており、その間に他社へ切り替えます。切替までの間は、一般ガス導管事業者と契約して最終保障供給を受けることもできます。
訪問販売で契約してしまいましたが、やめられますか?
訪問販売・電話勧誘販売で結んだ自由料金メニューの契約は、特定商取引法に基づくクーリング・オフの対象です。期間は法定書面を受領した日から起算して8日間です。最終保障供給や経過措置料金メニューは適用除外となります。困ったときは消費者ホットライン「188」や電力・ガス取引監視等委員会の相談窓口を利用できます。
出典・参考(公式情報)
- 資源エネルギー庁「電力会社の切り替え方法」(切替に要する標準的な期間、スマートメーター交換、必要となる情報)
- 電力・ガス取引監視等委員会「ガス小売全面自由化に関するよくあるご質問と回答集」(問6・7・9・10・20・21・22・29・31・43・46・51・52・56・57、最終更新2017年6月13日)
- 電力・ガス取引監視等委員会「ガス小売全面自由化に関するQ&A」問34(原料費調整制度の上限=基準平均原料価格の1.6倍)
- 国民生活センター「電力・ガスの契約トラブル」(市場連動型プラン・事業撤退に関する相談事例)
- 経済産業省「ガスの小売営業に関する指針」(不当に高額な違約金等を問題となる行為と位置づけ)
- 本記事は2026年7月30日時点の公表情報をもとに、編集部が公的一次情報を整理したものです。専門家の監修は受けていません。
- 料金プラン・割引・解約条件は事業者ごとに異なり、随時変更されます。申込み前に必ず各社の契約書面と公式サイトで最新の条件をご確認ください。
- 「体験談で多く語られる」と記した内容は、公的機関が確認した事実ではなく、利用者の投稿等で繰り返し見られる傾向として紹介しています。
