結論の要点
| 考え方 | 「人手不足の補助金」という制度は存在しません。不足をどう埋めるかで使う制度が変わります。設備で減らす/賃上げで留める/採って定着させる/育てる、の4ルートです。 |
| 設備で減らす | 中小企業省力化投資補助金。カタログ注文型は随時受付、一般型は公募回制です。 |
| 賃上げとセット | 業務改善助成金。令和8年度の交付申請受付開始は2026年9月1日、最大600万円。 |
| 採る・定着 | キャリアアップ助成金(正社員化は最大80万円)、トライアル雇用、特定求職者雇用開発、65歳超雇用推進。 |
| 共通の落とし穴 | 交付決定・計画提出の前に動くと対象外になります。GビズIDプライムの取得は最優先で着手してください。 |
「人手が足りない」で補助金を探すと、省力化・賃上げ・採用・育成の制度が一度に出てきて、どれが自社の話なのか分からなくなります。制度は目的別ではなく手段別に用意されているためです。この記事は制度の解説ではなく、自社の状況からどの制度に進むかを決めるための地図として作りました。それぞれの詳細は個別記事に分けています。制度全体の位置づけは補助金・助成金完全ガイドで整理しています。
まず「不足をどう埋めるか」を決める
ルート別の制度一覧と金額の目安
| ルート | 制度 | 上限額の目安 | 時期の性質 |
|---|---|---|---|
| 1 減らす | 省力化投資補助金 カタログ注文型 | 200万〜1,000万円 (賃上げ達成で最大1,500万円) | 随時受付。急がなくてよい |
| 1 減らす | 省力化投資補助金 一般型 | 従業員数により最大1億円 | 公募回制。第7回は2026年7月31日で締切済み |
| 2 賃上げ | 業務改善助成金 | 30万〜600万円 (助成率3/4または4/5) | 令和8年度は2026年9月1日受付開始 |
| 3 採る | キャリアアップ助成金 正社員化コース | 1人あたり最大80万円 | 通年。転換前日までに計画提出 |
| 3 定着 | キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コース | 1人あたり4万〜7万円 | 通年。1年度1事業所100人まで |
| 3 採る | トライアル雇用助成金 | 対象者1人あたり月額の定額 | 通年。ハローワーク等の紹介が前提 |
| 3 採る | 特定求職者雇用開発助成金 | 対象者の区分により定額 | 通年。継続雇用が前提 |
| 3 定着 | 65歳超雇用推進助成金 | 定年引上げ等の内容により定額 | 年度内の受付期間に注意 |
| 4 育てる | 人材開発支援助成金 | 訓練経費と賃金の一部 | 訓練開始前に計画届の提出が必要 |
| 4 育てる | 両立支援等助成金 | 取組の内容により定額 | 育休・介護と両立させて離職を防ぐ枠 |
金額は上限であって、支給される額ではありません。補助金はかかった経費に補助率を掛けた額が上限の範囲で支払われ、助成金は要件を満たした人数分が定額で支払われます。上限額の大きさで選ぶと、要件の重さと自己負担の大きさを見誤ります。
どの制度でも共通する申請の順番
制度は違っても、つまずく場所はほぼ同じです。「先に動いてしまった」が最大の失格理由で、これは補助金でも助成金でも変わりません。
損しないポイント
ここを外すと損をします
1. 上限額ではなく「自己負担額」で比べる。1億円の補助金でも補助率が1/2なら、同額の自己資金が要ります。手元資金と資金繰りから逆算したほうが、通ったのに実行できないという事態を避けられます。
2. 賃上げ要件は「戻せない約束」だと考える。加算を狙って賃上げ幅を上げると、補助が終わったあとも人件費が残ります。加算分より継続コストのほうが大きくなる水準を先に計算してください。
3. 助成金は「人数×定額」なので小さく始められる。補助金の公募回を待つあいだに、キャリアアップ助成金など通年の制度を先に動かすことができます。両者は排他ではありません。
4. カタログ注文型は締切がない。公募回制の一般型が締切済みでも、カタログ注文型は随時受付です。「次の公募まで待つ」の前に、カタログに自社の作業を代替できる製品があるか確認します。
5. 労働保険料の未納・就業規則の未整備は、その場で不支給要因になる。雇用関係の助成金は、申請前に社内の労務書類が整っていることが前提です。制度探しより先に、ここを点検してください。
イレギュラー・つまずきやすいところ
「一人親方・役員だけの会社」は雇用系の助成金が使えない。業務改善助成金は事業場内最低賃金を引き上げる制度なので、雇用している労働者がいない一人事業主は対象外です。雇用保険の適用事業所であることが前提の助成金も多く、まずここで対象かどうかが決まります。設備投資系の補助金に寄せるのが現実的です。
「最低賃金の発効日」に間に合わない。業務改善助成金の賃上げ期限は、地域別最低賃金の発効日の前日または11月30日のいずれか早い日です。発効日当日に引き上げると対象外になります。9月1日の受付開始を待つのではなく、8月のうちに見積取得と就業規則の準備を済ませ、発注だけは交付決定まで止めるのが正しい段取りです。
「カタログに載っていない機械を入れたい」。カタログ注文型は登録製品からの選択が前提で、販売事業者との共同申請になります。自社仕様の設備を入れたい場合は一般型になり、公募回制・審査ありの世界に移ります。手軽さと自由度は交換関係にあります。
「制度改定を知らずに古い記事で計算していた」。省力化投資補助金のカタログ注文型は2026年3月19日に上限額が改定され、従業員5名以下は500万円から200万円に下がりました。金額を根拠に投資判断をする前に、必ず改定日と適用回を確認してください。
金額感と編集部の価値判断
棒の長さは対数目盛です。実額では一般型がキャリアアップ助成金の125倍ですが、実際に手に入る確率と手間を掛け合わせると順位は逆転します。一般型は事業計画の作成と審査があり、採択されなければゼロです。キャリアアップ助成金は要件を満たせば定額で支給されます。
編集部の価値判断は「通年の助成金を先に動かし、補助金は同時並行で待つ」です。人手不足は今起きている問題で、次の公募回まで止めておける性質のものではありません。キャリアアップ助成金や人材開発支援助成金は通年で申請でき、しかも社内の制度整備(就業規則・評価・訓練計画)が副産物として残ります。この整備は、あとから補助金を申請するときの体力にもなります。一方で、補助金の公募を待つあいだ何もしないと、要件を満たす準備期間そのものを失います。先に助成金で足場を作り、設備投資は公募回に合わせる——これが、限られた人員で申請作業までこなす事業者にとって現実的な順序だと考えています。
よくある質問
人手不足そのものに使える補助金はありますか?
「人手不足対策補助金」という単独の制度はありません。省力化投資補助金のように人手不足の解消を目的に掲げた制度はありますが、多くは設備投資・賃上げ・雇用・訓練といった手段ごとに用意されています。自社が取る手段を決めてから制度を探すほうが早く着地します。
補助金と助成金は併用できますか?
制度ごとに併給調整のルールがあり、同じ経費に二重で受け取ることはできません。一方で、設備投資は補助金、雇用や訓練は助成金というように対象経費が分かれていれば、併せて申請できる場合があります。それぞれの公募要領・支給要領の併給に関する記載を必ず確認してください。
業務改善助成金はいつ申請できますか?
令和8年度は交付申請の受付開始が2026年9月1日です。締切は地域別最低賃金の発効日の前日、または11月30日のいずれか早い日とされています。受付開始前に設備を発注すると対象外になるため、8月中にできるのは見積の取得までです。
省力化投資補助金のカタログ注文型と一般型はどちらが向いていますか?
公式カタログに自社の作業を代替できる製品があるならカタログ注文型が近道です。随時受付で、販売事業者と共同で申請します。カタログにない設備や自社仕様の設備を入れたい場合は一般型になり、公募回制で事業計画の審査を受けます。
交付決定の前に発注してしまいました。あとから申請できますか?
原則として対象外になります。補助金・助成金は、交付決定や計画の受理より前に契約・発注・支払いを行った経費を認めない設計になっているためです。個別の取扱いは制度ごとに異なるため、事務局や労働局へ早めに相談してください。
申請にGビズIDは必ず必要ですか?
電子申請を使う制度では必要になります。Jグランツを使う補助金や、電子申請に対応した助成金がこれにあたります。発行までに時間がかかるため、制度を絞り込む前に取得手続きを始めておくと待ち時間を無駄にしません。
公式情報で確かめる
金額と受付期間は年度途中でも改定されます。投資の判断をする前に、必ずその年度の公式資料で確認してください。
・厚生労働省|業務改善助成金
・中小機構|中小企業省力化投資補助金 カタログ注文型
・厚生労働省|キャリアアップ助成金
・厚生労働省|事業主の方のための雇用関係助成金
あわせて読みたい
- 補助金・助成金完全ガイド(ハブ)|制度全体の位置づけと探し方をまとめています。
- 中小企業省力化投資補助金2026【カタログ注文型・一般型】上限額と公募回
- 業務改善助成金 9月1日受付開始の逆算準備【2026年版】
- キャリアアップ助成金 正社員化コース2026【最大80万円】
- 人材開発支援助成金とリスキリング【2026年版】
- GビズIDプライムとJグランツの使い方
- 補助金のよくある不採択理由と対策【2026年版】
基準日:2026年8月8日。本記事は厚生労働省および独立行政法人中小企業基盤整備機構の公表内容にもとづき編集部が整理しました。金額・受付期間・要件は年度途中でも改定されることがあり、本記事の内容は支給や採択を保証するものではありません。編集部は社会保険労務士事務所でも行政書士事務所でもなく、本記事は個別の助言ではありません。申請にあたっては各制度の公式ページと、管轄の労働局・事務局の最新情報を必ずご確認ください。
