この記事の結論(2026年10月19日時点)
- 中小企業投資促進税制は、青色申告の中小企業者などが新品の機械などを取得して指定事業に使ったときに、30%の特別償却か7%の税額控除を選べる制度です。
- 指定期間は令和9年(2027年)3月31日まで。取得しただけでは足りず、その事業年度中に事業の用に供することが必要です。
- 金額のハードルは機械装置は1台160万円以上、ソフトウェアは70万円以上、測定・検査工具は120万円以上、貨物運送用の普通自動車は車両総重量3.5トン以上。
- 税額控除を選べるのは資本金3,000万円以下の法人などに限られます。3,000万円超1億円以下なら特別償却のみです。
- 特別償却は税金の繰り延べ、税額控除は純粋な減税。黒字が続く見込みなら税額控除、単年度で資金を残したいなら特別償却が基本の考え方です。
設備を入れ替えたい。でも補助金は公募のタイミングが合わず、採択されるかも分からない——そんなときに見落とされがちなのが税制措置です。補助金と違って公募も採択もなく、要件を満たして申告すれば使える。その代表格が中小企業投資促進税制です。
国税庁のタックスアンサー No.5433 は、この制度を次のように説明しています(令和8年4月1日現在法令等)。対象は、青色申告書を提出する中小企業者などです。期間は平成10年6月1日から令和9年3月31日までです。この間に新品の機械装置などを取得・製作し、国内の製造業や建設業などの指定事業に使うことが条件になります。満たせば、使い始めた日を含む事業年度に特別償却か税額控除が認められます。
この記事では、国税庁の公表内容を基準日つきで整理します。ゴールは「自社の設備が対象になるか」「特別償却と税額控除のどちらを選ぶか」を判断できることです。数字と期限は、2026年10月19日に国税庁と中小企業庁のサイトで確認しました。
対象になる会社——2つの線引きを間違えない
この制度でいちばん誤解が多いのが、特別償却と税額控除で対象法人の範囲が違うことです。
30%特別償却が使える会社
青色申告書を提出する中小企業者、農業協同組合等、商店街振興組合。中小企業者とは、原則として資本金または出資金が1億円以下の法人などです。
7%税額控除まで使える会社
上記のうち資本金または出資金が3,000万円以下の法人、農業協同組合等、商店街振興組合。3,000万円超1億円以下の法人は特別償却のみです。
加えて、資本金1億円以下でも次に当たると中小企業者から外れます。国税庁は、大規模法人の子会社にあたる法人を除外しています。たとえば、発行済株式などの2分の1以上を同じ大規模法人が持つ法人です。3分の2以上を複数の大規模法人が持つ法人なども含まれます。親会社を持つ子会社は、まずここを確認してください。
もうひとつ、適用除外事業者という線引きがあります。所得が大きい会社も外れます。直前3年以内に終わった各事業年度の所得の年平均が15億円を超える法人等は、国税庁が「適用除外事業者」としています。この場合、制度は使えません。資本金は小さくても利益水準が高い会社は対象外になり得ます。
損しないポイント
資本金3,000万円という数字は、この制度でだけ出てくる独特の線引きです。増資を考えている会社は、ここに気をつけてください。税制の有利不利を確かめないまま資本金を3,000万円超にすると、以後は税額控除が使えなくなります。増資・減資の意思決定の前に、使っている(使う予定の)税制措置の資本金要件を棚卸ししてください。
対象になる設備——金額のハードルを表で確認する
対象は新品であることが大前提です。中古設備は対象になりません。そのうえで、種類ごとに取得価額の下限が決まっています(国税庁 No.5433)。
| 資産の種類 | 金額のハードル | 注意点 |
|---|---|---|
| 機械および装置 | 1台または1基が160万円以上 | コインランドリー業(主要な事業であるものを除く)で管理のおおむね全部を他者に委託するものは除外 |
| 測定工具・検査工具 | 1台または1基が120万円以上(1台40万円以上で事業年度合計120万円以上でも可。2026年3月31日以前の取得分は30万円以上) | 製品の品質管理の向上等に資するもの。電気・電子を利用するものを含む |
| ソフトウェア | 1つが70万円以上(事業年度の合計70万円以上でも可) | 複写して販売するための原本、開発研究用、サーバー用OSの一定のものは除外 |
| 車両および運搬具 | 一定の普通自動車で車両総重量3.5トン以上 | 貨物の運送の用に供されるものに限る。普通自動車の判定は道路運送車両法施行規則別表第一による |
| 船舶 | 内航海運業の用に供される船舶 | 基準取得価額は取得価額の75%。総トン数500トン以上は国土交通大臣への届出が要件 |
金額のハードルで見落とされやすいのが合計での判定です。測定工具・検査工具は、1台40万円以上のものを積み上げて事業年度合計120万円以上でも対象です。この40万円は2026年4月1日以後の取得分の基準で、それより前は30万円でした。ソフトウェアも、事業年度の合計が70万円以上なら対象に入ります。「1本では届かないから諦めた」というケースは、合算で成立していないか確認する価値があります。
逆に注意したいのが貸付けの用に供する資産です。内航運送の船舶の貸渡事業を営む法人を除き、貸付けに使う資産は対象外とされています。設備を購入して他社に使わせるスキームは、原則としてこの制度に乗りません。
リースについては扱いが分かれます。リースで入れた設備の扱いも、国税庁が明記しています。所有権移転外リース取引で取得したとされる資産は、特別償却は使えませんが、税額控除は使えます。リースで導入する場合、資本金3,000万円以下であれば税額控除の道が残ります。
指定事業に当てはまるか——広いが、穴もある
設備が対象でも、それを使う事業が指定事業でなければ適用できません。国税庁が挙げている指定事業は次のとおりで、かなり広い範囲をカバーしています。
製造業、建設業、農業、林業、漁業、水産養殖業、鉱業、採石業、砂利採取業、卸売業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、ガス業、小売業、料理店業その他の飲食店業(料亭・バー・キャバレー・ナイトクラブ等は生活衛生同業組合の組合員が行うものに限る)、一般旅客自動車運送業、海洋運輸業、沿海運輸業、内航船舶貸渡業、旅行業、こん包業、郵便業、情報通信業、損害保険代理業、不動産業、駐車場業、物品賃貸業、学術研究・専門技術サービス業、宿泊業、洗濯・理容・美容・浴場業、その他の生活関連サービス業、映画業、教育・学習支援業、医療・福祉業、協同組合(他に分類されないもの)、サービス業(他に分類されないもの)。
注意:対象にならない事業がある
国税庁は娯楽業(映画業を除く)および性風俗関連特殊営業に該当する事業を対象外としています。また、電気業・水道業・銀行業などは指定事業の列挙に含まれていません。自社の事業が日本標準産業分類でどこに位置づけられるかを、申告前に確認してください。
30%特別償却と7%税額控除、どちらを選ぶか
制度の中身を数字で押さえます。特別償却限度額は基準取得価額の30%相当額を普通償却限度額に上乗せする形。税額控除限度額は基準取得価額の7%相当額です。基準取得価額は、船舶なら取得価額の75%、それ以外は取得価額そのものです。
取得価額500万円の機械を導入した場合(制度の数字から計算した試算)
※ 基準取得価額500万円、実効税率を仮に30%として編集部が計算した試算です。実際の税額は所得・税率・他の控除により変わります。
図のとおり、初年度のインパクトだけ見ると特別償却が大きく見えます。ただし特別償却は減価償却費を前倒しするだけで、償却できる総額は変わりません。翌年度以降の償却費が減るぶん、税金は戻ってきます。つまり特別償却は繰り延べ、税額控除は取り切りです。
税額控除には上限があります。控除には上限があります。この制度と中小企業経営強化税制(措法42の12の4)の税額控除は、合わせて調整前法人税額の20%相当額までです。国税庁が示す基準で、事業年度ごとに判定します。控除しきれなかった金額(繰越税額控除限度超過額)は1年間の繰越しが認められます。
| 比較軸 | 30%特別償却 | 7%税額控除 |
|---|---|---|
| 使える会社 | 資本金1億円以下の中小企業者等 | 資本金3,000万円以下の法人等 |
| 効果の性質 | 償却の前倒し(繰り延べ) | 法人税が直接減る(取り切り) |
| 上限 | 特別償却限度額の範囲内 | 調整前法人税額の20%(他制度と合算) |
| 繰越し | 特別償却準備金として積み立てる方法あり | 控除しきれない分は1年繰越し |
| 所有権移転外リース | 適用できない | 適用できる |
| 向いている場面 | 初年度に資金を手元に残したい/翌期以降の利益見通しが不透明 | 黒字が継続する見込みで、税負担を確実に減らしたい |
期限は2027年3月31日。逆算して動くスケジュール
指定期間の終わりは令和9年3月31日です。ここで注意したいのは、適用の判定が「取得した日」ではなく「指定事業の用に供した日を含む事業年度」で行われることです。対象になる事業年度は、指定事業に使い始めた日を含む事業年度です。指定期間内に取得・製作し、そのうえで使い始めることが前提だと国税庁は説明しています。
設備導入の逆算スケジュール
6か月前:資本金と事業区分を確認する
資本金3,000万円以下か、大規模法人の出資比率、適用除外事業者に当たらないか、指定事業に当たるかを確認します。ここで税額控除の可否が決まります。
4か月前:見積書で金額要件を判定する
機械160万円、工具120万円、ソフトウェア70万円の各ハードルに届くかを税抜・税込の経理方式も含めて確認します。届かないときは合算の可否を検討します。
2か月前:発注し、据付・検収の日程を押さえる
納期遅れが最大のリスクです。決算日をまたぐと適用年度がずれます。据付・試運転・検収まで含めて期末より前に終わる計画を立てます。
期末まで:事業の用に供する
「置いてあるだけ」では要件を満たしません。実際に稼働させ、稼働開始日が分かる記録(作業日報、検収書、写真)を残します。
申告時:明細書を添付する
特別償却は償却限度額の計算に関する明細書を、税額控除は控除額を申告書に記載したうえで計算明細書を添付します。添付漏れは致命的です。
なお、解散(合併による解散を除く)の日を含む事業年度と清算中の各事業年度は、この制度の適用対象事業年度から除かれます。
補助金・他の税制との関係をどう整理するか
設備投資まわりには似た制度が並んでいて、混同しやすいところです。経営力向上計画の認定を受けた中小企業者などには、別の選択肢があると国税庁は案内しています。それが中小企業経営強化税制(コード5434)です。平成29年4月1日から令和9年3月31日までに、一定規模の設備を取得して対象事業に使った場合が対象です。こちらは建物附属設備や器具備品も対象に含まれる一方、計画の認定という手続きが前提になります。
| 制度 | 事前の計画認定 | 性格 |
|---|---|---|
| 中小企業投資促進税制 | 不要 | 要件を満たして申告すれば使える。手続きが最も軽い。 |
| 中小企業経営強化税制 | 経営力向上計画の認定が必要 | 対象資産の範囲が広い。認定に時間がかかる。 |
| 先端設備等導入計画 | 市区町村の認定が必要 | 固定資産税の特例。国税の償却・控除とは別枠。 |
| 設備投資系の補助金 | 公募・採択が必要 | 返済不要の資金が入るが、時期が読めず不採択もある。 |
計画認定型の詳細は経営力向上計画とは?メリットと申請方法【2026年版】、固定資産税の特例は先端設備等導入計画とは?固定資産税を軽減【2026年版】で扱っています。
損しないポイント:補助金をもらった設備は取得価額が変わる
国庫補助金等で取得した資産について圧縮記帳を適用すると、帳簿上の取得価額が圧縮後の金額になります。その結果、160万円・120万円・70万円といった金額のハードルを下回ってしまうことがあります。両取りを狙う計画では、圧縮記帳の有無が税制を使えるかどうかを左右します。この点は事前に顧問税理士と確認してください。
現場でつまずくポイントと、その回避策
納品されたのに稼働していない
もっとも多いのがこれです。要件は「指定事業の用に供した」ことなので、期末までに据付・試運転・検収を終えて稼働させる必要があります。決算日直前の納品は危険です。逆に言えば、稼働日を客観的に示せる記録(検収書、作業日報、稼働ログ、写真)を残しておけば、後の説明が楽になります。
明細書の添付を忘れた
添付書類も国税庁が定めています。特別償却なら、償却限度額の計算に関する明細書が要ります。税額控除なら、控除額を申告書に書き、計算明細書を付けます。繰り越した分の控除を受けるときも書類が要ります。超過額が出た事業年度以後、各年度の確定申告書に明細書を付け続けることが条件です。「1年だけ添付すればよい」ではない点に注意してください。
中古設備を対象だと思っていた
条文上、対象は「その製作の後事業の用に供されたことのない」資産です。中古機械の購入は対象外です。予算の都合で中古を検討している場合、税制のメリットは織り込めません。新品との実質負担差を、税額控除7%を含めて比較してみる価値はあります。
器具備品やパソコンを対象だと思っていた
この制度の対象資産に器具備品や建物附属設備は含まれていません。パソコンやサーバー、業務用エアコンなどは対象外です。器具備品まで含めたい場合は、経営力向上計画の認定を前提とする中小企業経営強化税制の検討になります。
個人事業主は使えないと思っていた
本記事で引用している国税庁 No.5433 は法人税を対象税目とするページです。個人事業主については所得税の側に対応する措置が置かれており、要件や書式が異なります。青色申告の個人事業主で設備投資を予定しているなら、法人向けの説明をそのまま当てはめないでください。所得税での扱いは、税務署か税理士に確かめるのが確実です。
使えるかどうかの判定チェックリストと、編集部の見方
6つすべてに「はい」なら適用の可能性が高い
- 青色申告書を提出している
- 資本金または出資金が1億円以下で、大規模法人の持株要件・適用除外事業者に当たらない
- 導入する設備が新品で、機械160万円・工具120万円・ソフトウェア70万円などの金額要件を満たす
- 使う事業が指定事業に当たる(娯楽業・電気業・水道業・銀行業などではない)
- 令和9年3月31日までに取得し、その事業年度中に事業の用に供する
- 確定申告書に明細書を添付する体制がある
編集部の見方です。中小企業投資促進税制の価値は、金額の大きさよりも「不確実性がないこと」にあると考えています。補助金は公募時期に事業計画を合わせる必要があり、採択されない可能性も常にあります。この制度は要件を満たして申告すれば使えます。設備投資の判断を、補助金の採択に賭けるのは危うい選び方です。まず税制で確実に取れる分を計算に入れ、補助金は「取れたら上乗せ」として扱う。編集部は、この順番のほうが投資判断として健全だと考えます。
そのうえで、特別償却と税額控除の選択は今後3年程度の利益見通しで決まります。安定して黒字なら税額控除。今期だけ利益が出ていて来期以降が読めないなら特別償却で手元資金を厚くする。どちらが有利かは自社の数字で変わるため、決算の3か月前には顧問税理士とシミュレーションしておくことをおすすめします。補助金側の選択肢はものづくり補助金2026をわかりやすく解説や省力化投資補助金の一般型【2026年版】で扱っています。
よくある質問
中小企業投資促進税制の適用期限はいつまでですか。
指定期間は平成10年6月1日から令和9年(2027年)3月31日までです。この期間内に対象資産を取得または製作し、指定事業の用に供した日を含む事業年度が適用対象になります。取得だけでは足りず、実際に事業で使い始めることが必要です。
資本金5,000万円の会社は税額控除を使えますか。
使えません。税額控除の対象は、中小企業者のうち資本金または出資金が3,000万円以下の法人、農業協同組合等、商店街振興組合です。資本金3,000万円超1億円以下の中小企業者は、30%の特別償却のみを選択できます。
パソコンやサーバーは対象になりますか。
器具備品は対象資産に含まれていないため、パソコンやサーバー本体は対象外です。ソフトウェアは1つ70万円以上(事業年度の合計70万円以上でも可)で対象になります。ただし、一定のサーバー用OS、複写して販売するための原本、開発研究用のものは除かれます。
リースで導入した設備でも使えますか。
所有権移転外リース取引で取得したとされる資産は、特別償却は使えません。一方、税額控除は使えます。したがって資本金3,000万円以下の法人であれば、リースでも7%の税額控除を検討できます。
税額控除はいくらまで使えますか。
控除額は基準取得価額の7%相当額です。上限は、中小企業経営強化税制(措法42の12の4)の税額控除と合わせて、その事業年度の調整前法人税額の20%相当額です。控除しきれなかった金額は1年間の繰越しが認められます。
中古の機械を購入した場合はどうなりますか。
対象になりません。この制度の対象資産は「その製作の後事業の用に供されたことのない」もの、つまり新品に限られます。
飲食店やサービス業でも使えますか。
料理店業その他の飲食店業は指定事業に含まれます。料亭・バー・キャバレー・ナイトクラブ等は、生活衛生同業組合の組合員が行うものに限られます。宿泊業、洗濯・理容・美容・浴場業、その他の生活関連サービス業、サービス業(他に分類されないもの)も指定事業です。一方、娯楽業(映画業を除く)は対象外です。
出典と確認日
- 国税庁 タックスアンサー No.5433「中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)」(令和8年4月1日現在法令等。指定期間・特別償却限度額30%・税額控除限度額7%・控除上限20%・1年繰越し・適用対象法人・適用対象資産・指定事業・手続き)
- 中小企業庁「中小企業税制<令和8年度版>」パンフレット(2026年9月16日公表。中小企業投資促進税制の対象設備・取得価額基準・対象外の事業)
- 国税庁 タックスアンサー No.5434「中小企業経営強化税制」(経営力向上計画の認定を前提とする制度。平成29年4月1日から令和9年3月31日まで)
- 国税庁 タックスアンサー No.5704「所有権移転外リース取引」
- 租税特別措置法第42条の6、第42条の12の4
いずれも編集部が2026年10月19日に確認した内容です。税制は毎年度の改正で要件・率・期限が変わります。実際の適用可否と税額の判断は、必ず顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。この記事は制度の一般的な説明であり、個別の税務判断を行うものではありません。
