この記事の結論(2026年9月5日時点)
- 国の中小企業向け補助金では、消費税は原則として補助対象外です。持続化補助金の公募要領は消費税・地方消費税を「公租公課」として補助対象外に挙げています。
- 例外は免税事業者・簡易課税事業者・2割特例の申請者だけ。税込で申請し、その内容で交付決定を受けた場合に限り対象になります。
- 自治体や医療・福祉系の補助金は税込で交付されるものが多く、この場合は消費税の確定申告後に仕入控除税額を報告し、相当額を返還します。
- 返還額がゼロでも報告は必要です。報告を怠ると交付条件違反になります。
補助金の申請書を書いていると必ずぶつかるのが「この金額は税込で書くのか、税抜で書くのか」という問題です。さらに厄介なのは、交付を受けたあとに「消費税仕入控除税額報告書を出してください」という通知が届くケースがあることです。何のための書類なのか分からないまま放置すると、交付条件違反になります。
この記事では、国の補助金と自治体の補助金でルールが分かれる理由、返還が必要になる場合とならない場合、返還額の3通りの計算式、報告の時期と提出書類を、公募要領と自治体の公式ページだけを根拠に整理します。会計処理そのものについては補助金の会計処理と圧縮記帳、法人税・所得税の扱いは補助金に税金はかかるのかで扱っています。本記事は消費税だけに絞ります。
国の補助金は「税抜」が原則、例外は3類型だけ
小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第20回公募の公募要領(第8版・2026年7月21日改版)は、補助対象外となる経費のひとつとして「公租公課」を挙げ、そのカッコ書きでこう定めています。消費税・地方消費税は、消費税等を補助対象経費に含めて補助金交付申請額を申請し、その内容で交付決定を受けた「免税事業者・簡易課税事業者・2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の申請者」を除き、補助対象外とする、というものです。ただし旅費に係る出入国税だけは補助対象になる、という但し書きが付いています。
ここから読み取れることは3つあります。第一に、原則は税抜です。第二に、例外は免税事業者・簡易課税事業者・2割特例の適用者の3類型に限られます。第三に、例外に当たる場合でも「申請の時点で税込にしておく」ことが条件で、交付決定後に税込へ切り替えることはできません。ここを取り違えると、実績報告の段階で補助対象経費が想定より1割少なくなります。
図1|自分はどちらのルートに乗るのか
ルートA:税抜で申請するルート
課税事業者(原則課税)で、国の中小企業向け補助金に申請する場合。補助対象経費は税抜で積み上げます。消費税分は自分で仕入税額控除するので、補助金からは最初から除かれています。交付後の仕入控除税額の報告も返還も発生しません。
ルートB:税込で交付されるルート
免税事業者・簡易課税事業者・2割特例の申請者が税込で申請した場合、および自治体や医療・福祉系の補助金で税込交付を受けた場合。消費税の確定申告後に仕入控除税額を報告し、該当すれば相当額を返還します。
出典:小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第20回公募 公募要領(第8版・2026年7月21日改版)、および自治体の補助金交付要綱の一般的な取扱い。2026年9月5日時点。
なぜ返さないといけないのか
返還を求められる理屈は、自治体の公式ページがいちばん端的に説明しています。西宮市は「税制上、補助金は特定収入であるため、消費税を含む補助金の交付を受けた場合、当該補助金は預かり消費税の対象とはなりません。従って、補助事業で支出した消費税を含めて仕入控除を受けた場合、自らが支払っていない消費税の仕入控除を受けたこととなり、当該仕入控除税額分の補助金を返還していただく必要があります」と書いています。
かみ砕くとこうです。補助金は売上ではないので、受け取っても消費税を納める義務は生じません。一方で、その補助金で買った機械の消費税は、確定申告のときに仕入税額控除として差し引くことができます。すると「自分では負担していない消費税を、税務署から取り戻している」状態になります。埼玉県も「補助事業者は仕入れに係る消費税額を実質的に負担していないことになります」と同じ説明をしています。二重取りを防ぐために、その分を補助金の交付元へ返すのが仕入控除税額の返還です。
だから国の中小企業向け補助金は、そもそも税抜で交付することでこの問題を入口で消しています。ルールが違って見えても、目的は同じ「消費税の二重取りを起こさないこと」です。
返還がいらないのはどんなときか
西宮市は「返還の必要がない」ケースを7つ列挙しています。ここまで具体的に公表している自治体は多くないため、自分がどれに当たるかを確認する早見表として使えます。ただし、いずれの場合も報告そのものは必要です(一部の補助事業では6と7に限り報告不要とされることがあります)。
表1|返還が不要になる7つのケース
| No. | 該当する状況 |
|---|---|
| 1 | 消費税の申告義務がない(免税事業者) |
| 2 | 簡易課税方式により申告している |
| 3 | 公益法人等であり、特定収入割合が5%を超えている |
| 4 | 補助対象経費に係る消費税を、個別対応方式において「非課税売上のみに要するもの」として申告している |
| 5 | 補助対象経費が人件費等の非課税仕入となっている |
| 6 | 補助金に係る仕入れに係る消費税等相当額を、あらかじめ補助金額から減額して実績報告を提出した場合 |
| 7 | 消費税を含まない金額で補助金が交付された場合 |
出典:西宮市「補助金に係る消費税仕入控除税額報告について」(更新日2025年1月6日)。公益法人等の範囲は消費税法別表第三による。2026年9月5日に編集部が内容を確認。
実務でいちばん多いのは1と2です。免税事業者や簡易課税を選んでいる小規模事業者は、そもそも実額の仕入税額控除を行わないため、返す消費税が発生しません。国の補助金で免税事業者・簡易課税事業者・2割特例の申請者だけが税込申請を認められているのは、この裏返しです。
返還額の計算式は3通りある
返還が必要な場合の計算式は、消費税の申告方式によって3つに分かれます。ここも西宮市の公表内容が具体的です。
表2|仕入控除税額(返還額)の計算式
| 自社の状況 | 計算式 |
|---|---|
| 課税売上高5億円以下かつ課税売上割合95%以上(全額控除) | 補助金額×10÷110=返還額(円未満切り捨て) |
| 5億円超または95%未満で「一括比例配分方式」 | 補助金額×10÷110×課税売上割合=返還額(円未満切り捨て) |
| 5億円超または95%未満で「個別対応方式」 | A(課税売上のみに要する経費分)=補助金額×10÷110 B(課税・非課税に共通する経費分)=補助金額×10÷110×課税売上割合 AとBの合計額が返還額 |
出典:西宮市「補助金に係る消費税仕入控除税額報告について」。課税売上割合は端数処理をせずに計算する(消費税の申告で端数処理をした場合はその割合を用いる)。2026年9月5日確認。
具体例で見ます。仮に補助金額が200万円、課税売上高5億円以下かつ課税売上割合95%以上の事業者だとすると、返還額は 2,000,000×10÷110=181,818円(円未満切り捨て)です。補助金の約9.1%が戻っていく計算になります。50万円の補助金なら45,454円、1,000万円なら909,090円です。「補助金が入ったから設備投資の予算をそのまま使い切る」という組み方をしていると、翌年度にこの金額を用意できず資金繰りが苦しくなります。
なお、補助対象経費に課税仕入れと非課税仕入れが混ざっている場合は、その割合で補助金額を按分し、課税仕入れに係る補助金だけを計算対象にします。消費税の申告または補助金の実績報告で補助金の使途を明確にしている場合は、課税仕入れに使った補助金のみが対象になります。
損しないための4つのポイント
- 申請書を書く前に、自社の消費税の申告方式を確認する。免税か、簡易課税か、2割特例か、原則課税か。この一点で税込・税抜の書き方が変わり、後の返還の有無まで決まります。
- 税込交付を受けたら、返還見込み額(おおむね補助金の9.1%)を最初から別勘定にしておく。返還のタイミングは翌年度以降になるため、忘れたころに納付書が届きます。
- 返還がゼロでも報告書は出す。返還不要の事業者であることを示す挙証資料を添えます。報告は交付条件そのものです。
- 区分経理をしておく。持続化補助金の公募要領も「補助事業を行うにあたっては、当該事業について区分経理を行ってください」と明記しています。按分計算が必要になったとき、区分経理があるかどうかで作業量が何倍も変わります。
いつ、どこに、何を出すのか
報告の時期はどの自治体もほぼ共通で、消費税の確定申告後、速やかにとされています。埼玉県も西宮市も同じ書き方です。提出先は補助事業の交付申請を行った担当課で、補助金事務局ではなく交付元の部署である点に注意してください。
図2|報告から返還までの流れ
- STEP 1
交付要綱で報告義務の有無を確認する
報告対象者は「交付要綱により消費税仕入控除税額報告を行うことが求められている事業者」です。交付決定通知書と要綱を保管しておきます。 - STEP 2
補助金の交付を受けた年度の消費税の確定申告を行う
ここが起点になります。申告方式(原則課税・簡易課税・2割特例)と課税売上割合が確定します。 - STEP 3
返還の有無を判定する
表1の7ケースに当たるかを確認します。当たれば返還ゼロ、当たらなければ表2の計算式で金額を出します。 - STEP 4
仕入控除税額報告書と添付書類をそろえる
返還がない場合は報告書と挙証資料。返還がある場合は報告書、消費税の確定申告書の写し、付表1・付表2の写し、返還額の計算書(自治体により様式が指定されます)。埼玉県では補助金確定通知書の写しも求められます。 - STEP 5
交付申請を行った担当課へ提出する
確定申告後、速やかに提出します。 - STEP 6
納付書が届いたら返還金を納付する
埼玉県は「後日、県から事業者に対して納付書(請求書)を送付しますので、金融機関の窓口等で返還金を納付してください」と案内しています。自分から振り込むのではなく、納付書を待つ形が一般的です。
出典:埼玉県「補助金に係る消費税仕入控除税額について」、西宮市「補助金に係る消費税仕入控除税額報告について」。2026年9月5日時点。具体的な様式と期限は交付元の要綱に従ってください。
イレギュラー・現場でつまずくところ
第一に、提出期限が「確定申告後、速やかに」としか書かれていないことです。日付が特定されていないため、カレンダーに落としづらく、結果として1年以上放置されるケースが起きます。自治体によっては「補助事業完了日の属する年度の翌々年度の6月30日まで」といった具体的な期限を設けているところもあるため、交付要綱の該当条文を必ず読んでおくのが安全です。
第二に、担当課が分散していることです。西宮市の案内では問い合わせ先が法人指導課・高齢介護課となっており、補助金ごとに窓口が違います。複数の補助金を受けている法人は、報告書を1通だけ作って終わりにせず、補助金ごとに交付元へ出す必要があります。
第三に、「税込で申請していないのに報告を求められた」という混乱です。表1の7に「消費税を含まない金額で補助金が交付された場合」が返還不要として挙がっているとおり、税抜交付なら返還はゼロです。それでも報告書の提出自体は求められることがあります。返還ゼロと報告不要は別の話だと押さえておけば、慌てずに済みます。
第四に、国の補助金でも「税込」で判断する場面がある点です。持続化補助金では、発注総額(1件あたり)が50万円超(税込)の場合に2者以上の相見積が必要とされる一方、処分制限財産に当たるかどうかの単価50万円は税抜で判定します。同じ50万円でも税の扱いが逆なので、公募要領のカッコ書きを読み飛ばすと相見積の要否を取り違えます。
相場観と編集部の価値判断
金額の感覚をつかんでおくと判断が早くなります。税込交付で全額控除の事業者なら、返還額は補助金の約9.09%です。補助金100万円につきおよそ9万円が戻り、1,000万円なら約91万円です。これは「もらったつもりだったお金が、1年後に1割近く出ていく」ということで、設備投資の自己負担額を見積もるときには最初から差し引いておくべき数字だと考えます。
編集部の判断としては、免税事業者や簡易課税の小規模事業者にとって、国の補助金の「税込申請が認められる例外」は実額で効く優遇だと考えます。補助対象経費を税込で積めるということは、同じ買い物でも補助対象経費が約1.1倍になるということです。補助率2/3なら、100万円(税抜)の機械が110万円(税込)として計上でき、補助金は約66.7万円から約73.3万円へ増えます。免税事業者・簡易課税事業者・2割特例の申請者は、この例外を使わない手はありません。
逆に、原則課税の事業者が「税込のほうが補助金が増えるのでは」と考えて税込で申請するのは、公募要領上そもそも認められていません。ここは判断の余地がある論点ではなく、要領の記載どおりに処理する場面です。迷ったら交付元の窓口に確認し、消費税の個別判断そのものは税理士に相談してください。
よくある質問
補助金の申請書は税込と税抜のどちらで書きますか。
小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第20回公募の公募要領(第8版)では、消費税・地方消費税は公租公課として原則補助対象外とされています。例外は、消費税等を補助対象経費に含めて申請し、その内容で交付決定を受けた免税事業者・簡易課税事業者・2割特例の申請者だけです。自治体の補助金は交付要綱ごとに扱いが異なるため、必ず要綱を確認してください。
消費税仕入控除税額報告書とは何ですか。
税込で交付を受けた補助金について、消費税の確定申告で仕入税額控除をした分だけ、実質的に負担していない消費税を控除したことになるため、その相当額を交付元へ報告する書類です。西宮市はこれを「補助金交付時の条件」と説明しています。返還額の有無にかかわらず提出が必要です。
返還額はいくらになりますか。
課税売上高5億円以下かつ課税売上割合95%以上の全額控除の場合、補助金額×10÷110(円未満切り捨て)です。補助金200万円なら181,818円になります。課税売上高が5億円超または課税売上割合が95%未満の場合は、一括比例配分方式か個別対応方式かで計算式が変わります。
返還がゼロなら報告も不要ですか。
報告は必要です。埼玉県も西宮市も「返還額が0円でも報告は必要」と明記しています。返還がない場合は、返還が不要な事業者であることが分かる挙証資料を添えて提出します。
いつまでに報告すればよいですか。
埼玉県・西宮市とも「消費税の確定申告後、速やかに」としています。自治体によっては補助事業完了日の属する年度の翌々年度の6月30日までといった具体的な期限を設けている場合があるため、交付要綱と交付決定通知書を確認してください。
免税事業者や簡易課税でも返還は発生しますか。
西宮市が挙げる返還不要の7ケースには「消費税の申告義務がない」「簡易課税方式により申告している」が含まれています。実額の仕入税額控除を行わないため、返す消費税が発生しないという整理です。ただし報告は必要です。
返還金はどうやって納めますか。
埼玉県は「後日、県から事業者に対して納付書(請求書)を送付しますので、金融機関の窓口等で返還金を納付してください」と案内しています。自分から先に振り込むのではなく、報告後に届く納付書で納めるのが一般的です。
国の補助金でも税込で判断する場面はありますか。
あります。持続化補助金では、発注総額(1件あたり)が50万円超(税込)の場合に2者以上の相見積が必要とされる一方、処分制限財産に当たるかどうかの単価50万円は税抜で判定します。同じ50万円でも基準が異なるため、公募要領の表記を必ず確認してください。
まず自社の申告方式を確かめる
免税か、簡易課税か、2割特例か、原則課税か。この1点で申請書の書き方も、交付後の報告義務も変わります。判断に迷うときは交付元の担当課と顧問税理士の両方に確認してください。仕入税額控除の一般的な仕組みは国税庁のページで確認できます。
出典と基準日
- 小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第20回公募 公募要領(第8版・2026年7月21日改版/ファイル名 r6_koubover8_ip20.pdf)。補助対象外経費の「公租公課」の項、補助事業の区分経理の項、相見積の項。
- 西宮市「補助金に係る消費税仕入控除税額報告について」(更新日2025年1月6日)。返還不要の7ケース、返還額の3通りの計算式、必要書類。
- 埼玉県「補助金に係る消費税仕入控除税額について」(掲載日2024年7月29日)。報告時期、報告様式1・2、確定申告書の写し、補助金確定通知書の写し、納付書による返還。
- 消費税法別表第三(公益法人等の範囲)。
本記事は2026年9月5日時点で公開されている上記の資料にもとづく編集部の整理です。消費税の取扱いは事業者ごとの申告方式や課税売上割合によって結論が変わり、補助金ごとの交付要綱でも定めが異なります。最終的な判断は交付元の担当課と税理士にご確認ください。当サイトは税務の個別判断を行うものではありません。
