この記事の結論
- 補助金は「何を買ったか」だけでなく「どう払ったか」で対象外になります。支払方法は銀行振込が大原則。
- 1取引10万円超(税抜)の現金払いは不可。旅費と、代金引換限定など現金決済のみの取引だけが例外です。
- 小切手・手形・相殺による支払いは、自社振出・他社振出を問わずすべて不可。売掛金と買掛金の相殺も認められません。
- クレジット払いは申請事業者名義で、金融機関からの引き落としが補助事業期間内に完了していることが条件。分割・リボも同じです。
- 交付決定日より前の発注・契約・購入・支払い(前払い含む)はすべて対象外。採択通知だけでは始められません。
- キャッシュバックやポイント還元で実際の支払額が証憑の金額と一致しないものは、補助金交付の目的に反する行為として扱われます。
この記事の基準(小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第20回)
公募要領:第8版(2026年7月21日改版)
申請受付開始:2026年11月5日(木)/申請受付締切:2026年12月15日(火)17:00
事業支援計画書(様式4)発行の受付締切:2026年12月4日(金)
補助事業実施期限:2028年3月31日(金)/実績報告書提出期限:2028年4月10日(月)
補助金の相談でいちばん惜しいのが、「対象になる買い物をしたのに、払い方のせいで全額対象外になった」というケースです。機械も広告も要件どおり。見積書も相見積もそろっている。それでも実績報告で落ちることがあります。
公募要領には、経費の中身とは別に「経費の支払方法について」という独立した項目があります。ここを読まずに現金で払ってしまうと、あとから振込に直すことはできません。支払いは一度きりで、やり直しがきかない——これがこの記事を書いた理由です。
以下は小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第20回公募 公募要領(第8版・2026年7月21日)の記載にもとづいて整理しています。他の補助金でも考え方は共通しますが、具体的な基準額や例外は必ず各制度の公募要領で確認してください。
1.支払方法は「銀行振込が大原則」
公募要領は、補助対象経費の支払方法について「銀行振込が大原則」と明記しています。理由は、補助金の執行が適正であることを外形的に確認する必要があるからです。「補助事業者から相手方へ、実際にお金が移動した」ことが通帳で追える——この一点に尽きます。
この原則から、次の3つのルールが導かれます。
| 支払方法 | 補助対象になるか |
|---|---|
| 銀行振込 | ○ 原則これ。振込手数料そのものは補助対象外 |
| 現金(1取引10万円超・税抜) | × 不可。旅費と、代金引換限定のサービス等の現金決済のみの取引を除く |
| 現金(1取引10万円以下) | △ 可能だが領収書等の証憑が必須。振込にできるなら振込が安全 |
| 小切手・手形 | × 自社振出・他社振出を問わず不可 |
| 相殺(売掛金と買掛金の相殺等) | × 資金の移動が確認できないため不可 |
| クレジットカード | △ 申請事業者名義+補助事業期間内に引き落とし完了が条件 |
| 電子マネー | △ 補助事業者からの支出であり、一連の経理証憑を提出できる場合に限る |
| 商品券・金券・仮想通貨・ポイント | × これらでの支払いは補助対象外 |
2.「1取引10万円超の現金払い」の数え方
基準は1取引あたり10万円(税抜)です。月の合計でも、年間の合計でもありません。
現金で払えるか・払えないかの分かれ目
ここで注意したいのが、「10万円を超えないように分割して払う」という発想は通用しないことです。公募要領は中古品の購入について、単価50万円(税抜)以上のものを50万円未満になるよう分割して購入した場合はその中古品全体が補助対象外になると明記しています。金額基準を回避するための分割は、制度全体を通じて認められていないと考えてください。
3.クレジットカードの3つの落とし穴
クレジット払いは使えますが、条件が3つあります。ひとつでも外れると対象外です。
クレジット払いが認められる条件
- ①申請する事業者の名義であること/代表者や従業員の個人カードで払った場合は「立替払い」となり、帳簿等で確認できなければ補助対象外。
- ②引き落としが補助事業期間内に完了していること/カードを切った日ではなく、金融機関から実際に引き落とされた日で判定されます。
- ③分割払い・リボ払いも同じ扱い/期間内に引き落としが完了していない残額分は対象外になります。
補助事業実施期限が2028年3月31日なら、3月に切った翌月引き落としのカード決済は間に合わない可能性があります。締切の1〜2か月前には支払いを終える計画にしてください。
4.いつから払っていいのか:交付決定日という一線
払い方と同じくらい落ちやすいのがタイミングです。公募要領は「補助金交付決定通知書」の受領前に補助対象となる経費支出等はできない、と明記しています。採択通知書だけでは補助事業を始められません。
お金が動いてよくなるまでの時系列
申請(第20回は2026年12月15日17:00締切)/この時点では発注も支払いもできない。
採択発表(2027年3月頃予定)/まだ始められない。ここで動くと全額対象外になる。
見積書等の提出(提出期限2028年2月29日)/出さないと採択取消。発注総額50万円超(税込)は2者以上の相見積が必要。
交付決定通知書の受領(採択発表から概ね1〜2か月)/この日からようやく発注・契約・支払いができる。
支払い完了(実施期限2028年3月31日まで)/振込・引き落としまで期間内に終わらせる。
実績報告(事業完了から30日、または2028年4月10日のいずれか早い日)/支払いを証明する経理書類を提出する。
例外はひとつだけです。展示会等への出展の「申込み」は交付決定前でも構いません。ただし請求書の発行日が交付決定日以後でなければ、やはり補助対象外になります。
5.ネット通販・電子商取引で必要になる証憑
インターネット広告やネット通販は、紙の請求書が出ないことがあります。公募要領は電子商取引について、「仕様提示、見積、発注、納品、検収、請求、支払」という流れで調達を行い、経理処理の証拠となる書類(取引画面の写し等)を整理・保存・提出できることを把握してから取引してくださいとしています。
実際に経費を支出していても、次のような場合は補助対象外になります。
証憑が出せずに落ちる典型パターン
- 取引相手の都合で発注した日が確認できる取引画面を提出できない(交付決定日以後の発注であることを示せない)。
- まとめ請求のため補助対象経費として計上する取引分の請求額が判明する書類が出せない。
- 掲載期間が終わっていて広告が確認できるインターネット画面を取得できない。
対策はひとつだけです。発注・掲載・支払いの各時点でスクリーンショットを取り、日付が写る形で保存しておくこと。あとから遡って取得することはほぼできません。
6.損しないポイント(払う前にやる7つ)
支払いの前に確認するチェックリスト
- ①交付決定通知書は手元にあるか/採択通知と混同しない。日付を必ず見る。
- ②支払いは事業用口座からの振込か/代表者の個人口座からの振込は、資金の出どころで疑義が生じやすい。
- ③1取引10万円超(税抜)を現金にしていないか/請求書を分けても取引単位で判定される。
- ④カードなら引き落とし日が期限内か/通帳の引き落とし記録まで確認する。
- ⑤補助事業の経理を区分しているか/公募要領は補助事業の区分経理を求めている。
- ⑥キャッシュバック・ポイント還元がないか/証憑の金額と実支払額がずれる取引は不可。
- ⑦発注先が身内でないか/役員・従業員、代表者や役員の3親等以内の親族、その親族が代表・役員を務める事業者、親会社・子会社・関連会社・関係会社への発注は対象外。
7.イレギュラー・現場対応
Q. 代表者の個人カードで払ってしまった。
公募要領は、代表者や従業員が個人のクレジットカードで支払った場合を「立替払い」と整理し、帳簿等で確認ができない場合には補助対象外としています。裏を返せば、会社から本人への精算が帳簿と通帳で追える状態であれば、説明の余地があります。支払った時点で精算処理まで済ませ、記録を残してください。
Q. 販売店から「購入額の一部を後日キャッシュバックします」と言われた。
これは避けてください。公募要領は、購入額の一部または全額に相当する金額を口座振込や現金で申請者へ払い戻すこと(ポイント・クーポン等の発行を含む)で、証憑に記載の金額と実質的に支払われた金額が一致しなくなるものを補助対象外としています。さらに、補助事業者の自己負担額を減額・無償にするような販売方法は形式や時期を問わず、本事業全体を通じて補助金交付の目的に反する行為と明記されています。
Q. 「補助金の申請を手伝うので、成功報酬を売上に乗せておきます」と提案された。
応じてはいけません。公募要領は申請時の宣誓事項として、「補助金受給額を不当に釣り上げ、関係者へ報酬を配賦する」といった不正な行為に加担していないことを挙げています。宣誓に違反すると交付決定取消となるだけでなく、交付済みの場合は加算金を課したうえで返還を求められます。第三者の支援を受けた場合は、様式2の該当欄に相手方と金額(着手金・成功報酬その他名目を問わず)を記載する必要があり、記載がなければ虚偽の報告として不採択・交付決定取消になります。
Q. 支払いは終わったが、機械をまだ使っていない。
これも対象外になります。公募要領は、機械装置等を購入したものの補助事業終了までにそれを使って販路開拓等の取組を行っていない場合、当該機械装置等の購入費は補助対象外と明記しています。実績報告書に「使って何をしたか」の記載がない場合も同様です。買って終わりではなく、使って報告するまでが補助事業です。
不正受給の罰則(補助金適正化法)
本補助金は補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律にもとづいて実施されます。不正受給が行われた場合は、交付決定の取消・返還命令、不正の内容の公表のほか、5年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその併科に処せられることがあります。疑いがある場合には現地調査等が実施されます。
8.相場観と編集部の価値判断
補助上限50万円(インボイス特例で+50万円、賃金引上げ特例で+150万円、両方で+200万円)、補助率2/3。金額だけ見れば「小さい補助金」に見えるかもしれません。しかし払い方を誤ったときに失うのは、補助金だけではありません。すでに支出した本体価格の自己負担が丸ごと残ります。
編集部の判断はこうです。補助事業に関する支出は、金額の大小にかかわらず全部を事業用口座からの銀行振込に統一する。10万円以下でも現金は使わない。カードも、期間ぎりぎりの決済は避ける。手間は増えますが、実績報告での差し戻しが激減します。
もうひとつ。交付決定日までのスケジュールを甘く見ないことです。第20回は申請締切が2026年12月15日、採択発表が2027年3月頃、交付決定はそこから概ね1〜2か月。実際にお金を動かせるのは2027年春以降です。「補助金が取れたら年内に導入しよう」という計画は、この時点で成立しません。設備の納期が長い商材ほど、逆算を先にしてください。
よくある質問
1取引10万円というのは税抜きですか、税込みですか。
公募要領は「1取引10万円超(税抜)」と定めています。いっぽう相見積が必要になる基準は「発注総額(1件あたり)50万円超(税込)」で、税の扱いが逆です。混同しやすいので、見積書を見るときは税抜・税込のどちらの数字で判断する場面かを毎回確認してください。
交付決定の前に発注だけしておくことはできますか。
できません。補助対象となる経費の発注・契約・支出行為は、交付決定通知書に記載された交付決定日から可能です。唯一の例外は展示会等への出展の申込みで、これは交付決定前でも構いませんが、請求書の発行日が交付決定日以後でなければ対象外になります。
売掛金と相殺して支払ったことにできますか。
できません。公募要領は、補助事業者から相手方へ資金の移動が確認できないため、相殺(売掛金と買掛金の相殺等)による決済は認められないとしています。小切手・手形も、自社振出・他社振出を問わず不可です。
振込手数料は補助金で出ますか。
出ません。金融機関などへの振込手数料、代引手数料、インターネットバンキング利用料、インターネットショッピング決済手数料等は、いずれも補助対象外経費として明示されています。
身内の会社に発注してはいけないのですか。
補助対象外になります。社内の役員・従業員、代表者・役員の3親等以内の親族への発注、その親族が代表または役員に就いている事業者への発注、財務諸表等規則第8条で定義される親会社・子会社・関連会社・関係会社への発注は、いずれも対象外です。
分割払いにしたら、期間内に払い終えた分だけ対象になりますか。
公募要領は「補助事業期間内に支出が完了していないもの」を補助対象外とし、分割払い・クレジットカード決済・リボルビング支払等の場合は金融機関等からの引き落としが補助事業期間内に完了していることが必要としています。期間内に完了していない部分は対象になりません。判断に迷う場合は必ず事前に補助金事務局へ確認してください。
出典・参考
- 小規模事業者持続化補助金事務局<一般型 通常枠>第20回公募 公募要領(第8版・2026年7月21日)(商工会議所地区)
- 商工会地区 小規模事業者持続化補助金事務局
- 中小企業庁「小規模事業者持続化補助金<一般型・通常枠>(第20回)」の公募要領を公開しました(2026年5月27日)
- e-Gov法令検索補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律
本記事は公募要領の記載をもとに、みんなのミカタナビ編集部が整理したものです。公募要領は改定されることがあります。申請・支払いの前に、必ず最新版の公募要領と補助事業の手引きをご確認ください。判断に迷う支払いは、事前に補助金事務局へ照会するのが確実です。
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補助事業の経理は、日々の記帳が整っているほど楽になります。区分経理や証憑の保存に不安があるときは、会計ソフトの導入や、商工会・商工会議所の経営指導員への相談を早めに検討してください。第20回は事業支援計画書(様式4)の発行受付が2026年12月4日で締め切られます。
