この記事の結論
- 補助金は原則として課税されます。法人なら益金、個人事業主なら事業所得の総収入金額に入ります。「国からもらったお金だから非課税」という理解は誤りです。
- ただし固定資産の取得や改良に充てた分は、法人は圧縮記帳(法人税法42条)、個人は総収入金額不算入(所得税法42条)で、その年の課税を避けられます。
- これは非課税ではなく「課税の繰延べ」です。圧縮した分だけ帳簿価額が下がり、以後の減価償却費が減るため、税金は先の年度に回るだけで消えません。
- 人件費・広告費・旅費などの経費に対する補助は圧縮記帳できません。受け取った年にそのまま課税されます。補助率3分の2でも、手元に残るのは想定より少なくなります。
- 「条件に違反したら返還」「一定の収益が出たら返還」といった一般的な条件が付いていても、圧縮記帳の可否には関係ありません(法人税基本通達10-2-1)。
- 消費税では補助金は不課税(対価性がないため)。ただし補助金で買った物の仕入税額控除分は、事務局に返還する義務が別途あります。
採択の通知が届いたときに、税金のことまで考えている事業者はほとんどいません。ところが決算のときになって「補助金1,000万円がまるごと利益に乗っていて、法人税が数百万円出た」と驚くケースが実際にあります。補助金は、原則として課税対象です。
この記事では、国税庁の公表資料をもとに、どの補助金にいつ課税されるのか・圧縮記帳で何ができて何ができないのか・個人事業主はどうするのかを整理します。基準日は2026年8月17日です。なお、個別の申告判断は税理士または所轄税務署にご確認ください。
まず前提——補助金は「もらった年」の利益になる
補助金・助成金・給付金は、法人であれば益金、個人事業主であれば事業所得の総収入金額として、原則どおり課税所得を構成します。持続化補助金でも、ものづくり補助金でも、省力化投資補助金でも、この点は変わりません。
計上する時期は入金日ではありません。実務上は交付決定または額の確定通知を受けた事業年度に計上するのが原則です。補助金は後払いなので、「年度末に確定通知だけ来て、入金は翌年度」という決算をまたぐパターンが起こりやすく、ここで見落としが生まれます。
圧縮記帳は「非課税」ではなく「課税の繰延べ」
固定資産の取得や改良に充てるための国庫補助金等を受け、その目的に合った固定資産を取得し、返還を要しないことが事業年度末までに確定している場合、法人は圧縮限度額の範囲で帳簿価額を減額し、その額を損金に算入できます(法人税法42条)。これが圧縮記帳です。
ここを誤解しないでください。圧縮記帳をすると、その資産の帳簿価額が補助金の分だけ下がります。結果として翌年度以降の減価償却費が小さくなり、そのぶん毎年の利益が増えます。初年度に払わずに済んだ税金は、耐用年数をかけて少しずつ払うことになります。
図:補助金1,000万円で機械を買った場合の初年度の税負担(編集部の試算)
この試算は仮定を置いた説明用のものです。実際の税額は所得の状況、資本金、適用できる特別償却や税額控除によって変わります。圧縮記帳の価値は「税金が減ること」ではなく「補助金を受け取った年にキャッシュが出ていかないこと」にあります。設備投資の直後は資金繰りが最も苦しい時期なので、この効果は小さくありません。
使えるのは固定資産だけ——経費補助は繰り延べられない
圧縮記帳の対象は「固定資産の取得または改良に充てるための国庫補助金等」です。逆に言えば、それ以外の補助はこの制度に乗りません。ここが実務でいちばん効いてきます。
持続化補助金のように販路開拓の経費を広く対象にする制度は、対象経費の大半が固定資産以外です。補助率3分の2、上限50万円といった数字だけを見て手取りを計算すると、あとで足りなくなります。受け取った額に自社の実効税率を掛けたぶんは、翌期の納税として出ていくものと見ておいてください。
「返還条件が付いているから確定していない」は誤り
圧縮記帳の要件のひとつが「返還を要しないことが確定していること」です。ここで、公募要領に書かれた返還条項を見て「うちはまだ確定していないのでは」と迷う人がいます。
国税庁の法人税基本通達10-2-1は、この点を明確に示しています。①交付の条件に違反した場合には返還しなければならないこと、②一定期間内に相当の収益が生じた場合には返還しなければならないこと——こうした一般的条件が付されていることは、返還を要しないことが確定しているかどうかの判定には関係がないとされています。さらに同通達の注書きで、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律15条により補助金等の額が確定し、その旨の通知を受けた国庫補助金等は「返還を要しないことが確定した国庫補助金等に該当する」と明記されています。
つまり実務の目印は「額の確定通知」です。この通知を受けているなら、収益納付条項や取得財産の処分制限が残っていても、圧縮記帳の判定上は確定しているものとして扱えます。なお、事業年度末までに確定していない場合は、特別勘定を設けて経理する方法(法人税法43条)が用意されています。
個人事業主は「総収入金額不算入」+明細書の添付
個人事業主の場合は圧縮記帳という呼び方をしません。国税庁のタックスアンサーNo.2202によれば、固定資産の取得や改良に充てるために国または地方公共団体から補助金等の交付を受け、その目的に適合した固定資産を取得・改良したときは、確定申告書に一定の事項を記載することを条件に、その取得等に充てた部分の金額を総収入金額に算入しないことができます(所得税法42条・43条)。
手続きとしては、「国庫補助金等の総収入金額不算入に関する明細書」を添付した確定申告書を所轄税務署長に提出します。この明細書を付け忘れると適用を受けられません。また、この取扱いを受けた固定資産の取得費は、実際に支払った額から総収入金額に算入しなかった補助金の額を差し引いた残額になり、減価償却もその金額を基礎に計算します。法人の圧縮記帳と同じく、課税は繰り延べられるだけです。
消費税は不課税。ただし「仕入控除税額の返還」は別の話
消費税では、国または地方公共団体からの補助金や助成金は不課税です。国税庁のタックスアンサーNo.6157は、寄附金や見舞金と並べて「国または地方公共団体からの補助金や助成金等」を不課税の具体例に挙げ、その理由を「一般的に対価を得て行う取引ではないから」と説明しています。売上高に含める必要はありません。
混同しやすいのが消費税等仕入控除税額の返還です。これは税務ではなく補助金制度側のルールで、補助金で買った物にかかる消費税を仕入税額控除できた場合、その分は補助金として受け取る必要がなかったとみなして事務局に返す、という仕組みです。確定申告で消費税額が固まったあとに報告と返還を求められます。詳しくは補助金の消費税仕入控除税額の報告と返還で扱っています。
損しないための3つのポイント
- 採択されたら、その時点で顧問税理士に共有する。圧縮記帳は損金経理などの会計処理が要件になるため、決算を組んだあとから遡って選ぶことはできません。処理方法の選択は事前に決めておく必要があります。
- 「補助金の額」と「手元に残る額」を分けて資金計画を立てる。経費補助はそのまま課税されます。受け取った額に実効税率を掛けた金額は、翌期の納税として確保しておいてください。
- 額の確定通知の日付を必ず控える。計上時期と圧縮記帳の可否を分ける基準日になります。事業年度末をまたぐときは、通知日と入金日のどちらの年度で処理するのかを税理士と先に決めておくと安全です。
税務のタイムライン——どの日が基準になるか
補助金の税務は、いくつかの日付で処理が決まります。どこで何を確認すべきかを時系列で並べておきます。
図:採択から申告までの流れと、税務上の確認ポイント
現場で迷うところ——事務局を通して受け取った補助金はどうなるか
ものづくり補助金や省力化投資補助金のように、国の予算を財源としながら、実際の交付は全国中央会や基金を造成した機構などの補助金交付団体を通して行われる制度は少なくありません。条文だけを読むと「国から直接交付されるもの」が国庫補助金等なので、間接交付だと圧縮記帳が使えないのではないかという疑問が生じます。
この点について国税庁は質疑応答事例で回答を公表しています。補助金交付団体が国に代わって交付事務を行っているにすぎず、実質的に国から直接交付を受けたものと認められる場合には、国庫補助金等に該当するという整理です。照会では、①国からの補助金を財源としていること、②交付決定に交付団体の裁量が入らないこと、③国の監督の下に交付されること、④国から交付された補助金が遅滞なく対象法人に交付されること——といった事実が確認されています。基金を経由する場合も、資金の出入りを国が確実に管理しているなどの事実があれば同様とされました。地方公共団体の財源を基にした間接交付も同じ考え方です。
ただしこの回答は、照会に係る事実関係を前提とした一般的なものです。自社が受けた補助金がこの形に当てはまるかは、公募要領や交付規程で財源と交付主体を確認したうえで判断することになります。編集部としては、交付規程の「国庫補助金」「基金」という語と、額の確定通知の発出元を最初に確認することをおすすめします。
編集部の見方——補助金は「税引き後」で採算を見る
補助金の記事の多くは、上限額と補助率までしか触れません。しかし事業者にとって意味があるのは、税金と返還義務を通したあとに手元に残る額です。設備投資型なら圧縮記帳でキャッシュアウトを先送りできますが、経費補助型は受け取った年にそのまま課税されます。同じ「補助率3分の2」でも、資金繰りへの効き方はまったく違います。
もうひとつ。圧縮記帳は税金を減らす制度ではありません。減らすのは初年度のキャッシュアウトだけです。「圧縮記帳を使えば得をする」という説明を見かけたら、その先の減価償却がどうなるかまで確認してください。逆に、赤字が続いていて繰越欠損金で吸収できる年度なら、圧縮記帳をあえて使わないという選択が合理的な場合もあります。ここは制度の知識ではなく、自社の課税所得の見通しで決める領域です。税理士と数字を並べて判断してください。
よくある質問
補助金は非課税だと聞きましたが、本当ですか。
いいえ。法人税・所得税では原則として課税対象です。非課税なのは消費税で、これも正確には「不課税」(対価を得て行う取引ではないため課税の対象にならない)という扱いです。消費税が不課税であることと、法人税・所得税で課税されることは別の話なので、混同しないでください。
補助金はいつの年度の収入になりますか。入金日ですか。
入金日ではなく、原則として交付決定または額の確定通知を受けた事業年度に計上します。補助金は精算後払いなので、確定通知が期末直前に届き入金が翌期になるケースが頻繁に起こります。決算をまたぐときは、通知日と入金日の両方を控えたうえで税理士に相談してください。
キャリアアップ助成金や雇用調整助成金も圧縮記帳できますか。
できません。圧縮記帳の対象は「固定資産の取得または改良に充てるための国庫補助金等」に限られます。人件費や賃金に対する助成は固定資産の取得に充てるものではないため、受け取った事業年度の益金にそのまま算入されます。
補助金で買った機械を途中で処分したら、税務上どうなりますか。
圧縮記帳をしている場合、その資産の帳簿価額はすでに圧縮後の金額になっています。売却すれば帳簿価額との差額が譲渡損益として計上されます。加えて、補助金制度側では取得財産の処分制限期間があり、処分には事務局の承認と補助金の返還が必要になることがあります。税務と補助金制度は別々に判断されるので、両方を確認してください。返還が必要になる場面は補助金の返還が必要になる5つの場面で整理しています。
出典
- 国税庁法人税基本通達 第2節 国庫補助金等で取得した資産の圧縮記帳(10-2-1ほか)
- 国税庁質疑応答事例:間接交付された国又は地方公共団体の補助金で取得した固定資産の圧縮記帳の適用について(令和7年8月1日現在)
- 国税庁タックスアンサー No.2202 国庫補助金等を受け取ったとき(令和7年4月1日現在)
- 国税庁タックスアンサー No.6157 課税の対象とならないもの(不課税)の具体例(令和7年4月1日現在)
- e-Gov法令検索法人税法(42条・43条)
- e-Gov法令検索補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(15条)
本記事は上記の公表資料をもとに、みんなのミカタナビ編集部が2026年8月17日時点で整理したものです。記事中の試算は説明のために仮定を置いたもので、実際の税額を示すものではありません。税務の取扱いは個別の事実関係によって結論が変わります。編集部は税理士ではなく、本記事は個別の税務相談への回答ではありません。申告の判断は、必ず顧問税理士または所轄税務署にご確認ください。
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補助金の税務は、制度を暗記するより「額の確定通知の日付」と「その補助が固定資産に向いているかどうか」の2点を押さえるほうが実務では速く進みます。採択通知が届いた日に、この2点を顧問税理士へ一報入れておいてください。決算期の慌ただしさが、それだけでかなり変わります。
