地震や大雨で家が傷んだとき、最初に取る書類が罹災証明書(り災証明書)です。市区町村が住家の被害の程度を認定して発行する書類で、その後に使えるお金のほとんどが、この証明書に書かれた被害区分で決まります。区分が1段階違うだけで、受け取れる金額が数十万円から百万円単位で変わることもあります。
この記事では、被害区分が6段階に分かれる仕組みと、区分ごとに使える支援を金額・期限つきで整理します。金額は内閣府と公益財団法人都道府県センターの公表資料、および令和8年熊本地震で実際に運用されている自治体の案内にもとづいています(基準日:2026年8月28日)。制度の細部は市区町村ごとに違うため、最終的な確認はお住まいの自治体でお願いします。
この記事の結論(3行)
- 被害区分は全壊・大規模半壊・中規模半壊・半壊・準半壊・準半壊に至らない(一部損壊)の6段階。損害割合50%以上が全壊、10%未満が一部損壊。
- お金が出るのは原則中規模半壊(損害割合30%台)から。被災者生活再建支援金は全壊で最大300万円、中規模半壊は加算支援金のみで最大100万円。
- 準半壊までは住宅の応急修理(令和8年熊本地震では367,000円以内)が使える。区分に納得できないときは再調査(二次調査)を申し出られる。
被害区分は6段階:損害割合で決まる
罹災証明書に書かれる被害の程度は、住家の主要な構成要素(基礎・柱・壁・屋根など)ごとに経済的な被害の割合を計算し、それを合計した損害割合で判定されます。判定の物差しは内閣府の「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」で全国共通です。
図1|被害の程度と損害割合の対応
| 被害の程度 | 損害割合 | おおまかな状態 |
|---|---|---|
| 全壊 | 50%以上 | 補修しても元の用途に使えない |
| 大規模半壊 | 40%以上50%未満 | 大規模な補修をしないと住めない |
| 中規模半壊 | 30%以上40%未満 | 相当規模の補修が必要 |
| 半壊 | 20%以上30%未満 | 補修すれば元どおり住める |
| 準半壊 | 10%以上20%未満 | 一部に補修が必要 |
| 準半壊に至らない(一部損壊) | 10%未満 | 瓦の一部落下・軽微なひび割れなど |
出典:内閣府(防災担当)「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」。水害の場合は浸水深による判定基準が別に定められています。
時系列でみる:写真を撮ってから支援金が届くまで
図2|罹災証明書と支援のタイムライン
STEP 0:片づける前
被害の写真を撮る
家の外観を四方向から、次に被害箇所を近くから。浸水は跡の高さが分かるようにメジャーを当てて撮る。片づけ後は証明が難しくなる。
STEP 1:発災から数日〜2週間
市区町村で罹災証明書を申請する
窓口とオンラインの両方が用意されることが多い。令和8年熊本地震では、八代市がオンラインを8月3日13時から、窓口を8月10日から受け付けた。
STEP 2:申請から数週間
現地調査(または自己判定)→ 証明書の交付
被害が軽微なら写真だけで判定する自己判定方式もある。区分に納得できなければ、この後に再調査を申し出る。
STEP 3:証明書が出たら
支援金・応急修理・貸付・減免をまとめて申請
被災者生活再建支援金、住宅の応急修理、災害援護資金、税・保険料の減免。窓口が課ごとに分かれるので一覧にして回る。
STEP 4:13か月/37か月
申請期限を管理する
基礎支援金は災害発生日から13か月以内、加算支援金は37か月以内。住まいの再建方法が決まってからでよいのが加算支援金。
区分別に使える支援の早見表
まず全体像です。国の制度を軸に、どの区分でどの支援が使えるかを1枚にまとめました。市区町村や都道府県が独自に上乗せする見舞金・補助は別にあるため、これは「最低ライン」と考えてください。
図3|被害区分×使える支援の早見表
| 区分 | 生活再建支援金 | 住宅の応急修理 | 災害援護資金 |
|---|---|---|---|
| 全壊 | 基礎+加算で最大300万円 | 修理で住めるなら対象 | 最大350万円 |
| 大規模半壊 | 基礎+加算で最大250万円 | 対象 | 最大250万円 |
| 中規模半壊 | 加算のみ 最大100万円 | 対象 | 住居半壊で最大170万円 |
| 半壊 | 原則なし(解体すれば全壊扱い) | 対象 | 住居半壊で最大170万円 |
| 準半壊 | なし | 対象(上限は低い) | 家財1/3以上の損害で最大150万円 |
| 一部損壊 | なし | 対象外 | 要件に該当すれば可 |
生活再建支援金は複数世帯の額。単数世帯は4分の3。災害援護資金は所得制限があり、貸付(返す必要がある)です。
被災者生活再建支援金:基礎支援金と加算支援金
被災者生活再建支援金は、都道府県が拠出した基金をもとに国からも支援が入る仕組みで、住宅の被害の程度に応じた基礎支援金と、再建方法に応じた加算支援金の合計で支給されます。中規模半壊世帯だけは基礎支援金がなく、加算支援金のみです。
図4|複数世帯の支給額(単位:万円)
| 被害の程度 | 基礎 | 再建方法 | 加算 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 全壊・解体・長期避難 | 100 | 建設・購入 | 200 | 300 |
| 補修 | 100 | 200 | ||
| 賃借 | 50 | 150 | ||
| 大規模半壊 | 50 | 建設・購入 | 200 | 250 |
| 補修 | 100 | 150 | ||
| 賃借 | 50 | 100 | ||
| 中規模半壊 | — | 建設・購入 | 100 | 100 |
| 補修 | 50 | 50 | ||
| 賃借 | 25 | 25 |
出典:公益財団法人都道府県センター「支援金支給概要」。単数世帯(世帯構成員が1人)は上表の4分の3の額(全壊・建設購入で225万円など)。
金額差をならべると、区分の重みがはっきりします。同じ「補修」を選んでも、全壊なら200万円、大規模半壊なら150万円、中規模半壊なら50万円です。
図5|「補修」を選んだ場合の支給額(複数世帯)
半壊で0円になるのは酷に見えますが、半壊した住宅をやむを得ず解体した場合は「解体世帯」として全壊と同じ扱いになります。解体を決める前に、解体証明書や滅失登記の準備を含めて市区町村に相談してください。
住宅の応急修理:準半壊まで使えて、完了期限がある
災害救助法の「住宅の応急修理」は、屋根・外壁・台所・トイレなど日常生活に必要な最小限の部分を修理して、その住宅に住み続けられるようにする制度です。現金でもらうのではなく、市区町村が修理業者へ費用を支払う仕組みなので、先に自分で発注して工事を終えてしまうと対象外になることがあります。
令和8年熊本地震の嘉島町の案内では、限度額は大規模半壊・中規模半壊・半壊が1世帯あたり757,000円以内、準半壊が367,000円以内。全壊でも、応急修理をすれば居住できる場合は対象になります。そして完了報告や修理写真の提出まで含めて、原則令和8年(2026年)10月27日までという期限が設定されています。
応急修理で外しやすい3つの条件
①応急仮設住宅に入っていないこと/仮設住宅(みなし仮設を含む)に入居していると、原則として応急修理は使えません。ただし半壊等で工事期間が1か月を超える見込みの場合は、応急修理期間中に賃貸型応急住宅へ入れる扱いがあります。
②施工前・施工中・施工後の写真/完了報告に3種類の写真が要ります。撮り忘れた場合は代替資料の様式を出すことになり、手間が増えます。業者にも最初に伝えておくのが確実です。
③上限を超えた分は自己負担/757,000円を超える見積りでも制度が全額を見てくれるわけではありません。優先順位(雨漏り・水回り・出入口)を決めてから見積りを取ります。
災害弔慰金・災害障害見舞金・災害援護資金
住まいの被害とは別に、人の被害に対する制度が「災害弔慰金の支給等に関する法律」にあります。亡くなった方の遺族に支給される災害弔慰金は、生計維持者が亡くなった場合500万円、その他の方の場合250万円。精神または身体に重度の障害を受けた場合の災害障害見舞金は、生計維持者250万円、その他125万円です。
災害援護資金は貸付制度で、返済が必要です。貸付限度額は世帯主の1か月以上の負傷で150万円、家財の3分の1以上の損害で150万円、住居の半壊で170万円、全壊で250万円、住居の全体が滅失・流失した場合で350万円(住居を建て直す際に残存部分を取り壊さざるを得ない等の特別の事情があるときは、半壊250万円・全壊350万円)。所得制限があり、世帯人員1人220万円・2人430万円・3人620万円・4人730万円(5人以上は1人増すごとに30万円加算)、住居が滅失した場合は1,270万円です。
利率は年3%以内で市町村の条例により定められ、保証人を立てる場合は年0%、立てない場合は年1.5%という運用が一般的です。いずれも据置期間中は無利子。据置期間は3年(特別の場合5年)、償還期間は据置期間を含めて10年です。
罹災証明書を取る4ステップ
図6|申請から交付までのチェックリスト
損しないポイント:ここで差がつく
損しないポイント(5つ)
- 片づける前に撮る。区分は写真と現地調査で決まる。復旧を急ぐほど証拠が消える。
- 自己判定方式は「軽微だと自分で認める」手続き。屋根裏・基礎・内部の被害が疑われるなら現地調査を選ぶ。
- 加算支援金は再建方法が決まってからでよい。基礎13か月・加算37か月と期限が違う。急いで賃借で申請すると、後から建設に切り替えても差額が出ないことがある。
- 半壊で解体するなら順番が大事。解体すると「解体世帯」として全壊と同じ扱いになるが、解体証明書などの書類が要る。壊す前に窓口へ。
- マイナンバーの記載で住民票と通帳の写しを省略できる。ただし情報連携のエラー時は提出を求められることがある。
パターン別の分岐
パターンA
全壊・大規模半壊で、建て直すか買い直す
基礎支援金を13か月以内に先に申請し、加算支援金は契約書ができてから37か月以内に。合計で最大300万円(複数世帯)。災害援護資金も併用でき、税・保険料の減免も同時に確認する。
パターンB
中規模半壊・半壊で、住み続けながら直す
住宅の応急修理が主役。中規模半壊なら加算支援金(補修50万円)も加わる。応急修理は先に発注しないこと、完了期限があることの2点に注意。
パターンC
準半壊・一部損壊だった
国の支援金は出ない。準半壊なら応急修理(上限は低い)が使える。ここからは自治体独自の見舞金・修繕補助と、火災保険や地震保険の請求が中心になる。保険は罹災証明の区分と別に、保険会社の独自調査で決まる。
パターンD
持ち家ではなく賃貸に住んでいた
建物の被害は所有者側の話になるが、居住していた住家の区分に応じて生活再建支援金の対象になり得る。加算支援金の「賃借」区分もある。まずは自分の世帯として罹災証明を申請する。
イレギュラー・現場対応
自治体の案内や過去の災害での運用から、実際につまずきやすい場面を3つ挙げます。
窓口が課ごとに分かれていて何度も足を運ぶことになる。罹災証明は防災・税務、支援金は福祉、応急修理は建築・企画、減免は税務や国保と、担当がばらけます。最初に総合相談窓口で「うちの区分で使えるものを全部教えてほしい」と聞き、リストにしてから回るほうが早く終わります。
被災当時の住所が住民票と違う。単身赴任や一時的な同居などで住民票と実際の居所がずれていると、支援金の申請で追加の証明を求められます。自治会長や民生委員による居住証明書の様式が用意されているので、窓口で確認してください。
修理業者から「今すぐ契約すれば補助が出る」と言われた。災害後は便乗商法の相談が増えます。内閣府も応急修理に関して悪徳業者への注意喚起資料を配布しています。応急修理は市区町村を通す制度なので、契約を急がせる話が出たら、いったん止めて窓口に確認するのが安全です。
相場観と編集部の価値判断
数字を並べて見えてくるのは、公的支援は住まいの再建費用を全部まかなう設計になっていないということです。全壊で建て直す場合の支援金は最大300万円(複数世帯)。住宅の建築費が全国平均で数千万円という現実に対して、支援金がカバーするのは一部です。応急修理も757,000円が上限で、屋根と水回りを直せば消えてしまう規模です。
だからこそ編集部としては、「もらえるお金」より先に「区分の正確さ」に時間を使うことをおすすめします。中規模半壊と半壊の境目は損害割合30%で、この1点を挟んで補修の加算支援金50万円が出るか0円かが分かれます。全壊と大規模半壊の境目(50%)では基礎支援金が50万円違います。写真を丁寧に撮る、再調査を申し出る、内部の被害を漏らさず伝える——この3つは、どの制度の申請書を書くよりも金額への効き方が大きい作業です。
もうひとつ。罹災証明の区分と、火災保険・地震保険の認定は別物です。地震保険は「全損・大半損・小半損・一部損」という保険独自の区分で、保険会社の鑑定で決まります。罹災証明が一部損壊でも保険金が出ることはありますし、その逆もあります。片方の結果だけで諦めないでください。保険の見直しについては火災保険の見直しで整理しています。
事業所や店舗が被災した方へ
住まいの罹災証明とは別に、事業所や事業用資産についての証明を取れば、災害復旧貸付や別枠の信用保証が使えます。
あわせて読む:令和8年熊本地震で使える事業者の資金支援/暮らしの手続きナビ
よくある質問
罹災証明書の区分に納得できません。やり直せますか
市区町村へ再調査(二次調査)を申し出ることができます。一次調査は外観からの判定にとどまることがあり、二次調査では住家の内部まで確認されます。申し出のときは、屋根裏・基礎・壁の内側など、外から見えない被害を具体的に伝えてください。撮っておいた写真がここで効きます。
半壊だと支援金は本当に1円も出ないのですか
被災者生活再建支援金の基礎支援金・加算支援金は、半壊世帯そのものには支給されません。ただし、半壊した住宅をやむを得ず解体した場合は「解体世帯」として全壊世帯と同じ扱いになり、基礎支援金100万円(複数世帯)と加算支援金の対象になります。解体する前に市区町村へ相談してください。
申請の期限はいつまでですか
被災者生活再建支援金は、基礎支援金が災害発生日から13か月以内、加算支援金が37か月以内です。住宅の応急修理は災害ごとに完了期限が設定され、令和8年熊本地震では原則2026年10月27日までに完了報告まで終える必要があるとされています(延長される場合があります)。罹災証明書の申請期限は自治体ごとに異なります。
自己判定方式で申請しても大丈夫ですか
被害が明らかに軽微で「準半壊に至らない(一部損壊)」で構わない場合は、写真だけで判定でき、待ち時間を大きく減らせます。一方で、区分が上がる可能性が少しでもあるなら現地調査を選ぶほうが安全です。自己判定は「自分で軽微だと申し出る」手続きにあたるため、後から区分の見直しを求めにくくなる場合があります。
支援金と災害援護資金は両方使えますか
制度が別なので、それぞれの要件を満たせば併用できます。ただし被災者生活再建支援金は返済不要の給付、災害援護資金は返済が必要な貸付で、所得制限もあります。まず給付の制度を確定させてから、足りない分を貸付で埋める順番が基本です。
あなたの体験を聞かせてください
この手続きで「実際はこうだった」「ここでつまずいた」という経験があれば、体験談募集フォームから教えてください。許諾をいただいたものだけ、出所を明示して記事に反映します。
出典・基準日
基準日:2026年8月28日
- 内閣府(防災担当)「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」
- 公益財団法人都道府県センター「被災者生活再建支援事業・支援金支給概要」
- 内閣府(防災担当)「災害援護資金の概要」「災害弔慰金、災害障害見舞金の概要」(災害弔慰金の支給等に関する法律)
- 嘉島町「災害救助法『住家の応急修理』制度のご案内」(2026年8月12日更新)
- 八代市「令和8年熊本地震における『り災証明書』の申請について」(2026年8月24日最終更新)
本記事は公的機関の公表資料をもとに、みんなのミカタナビ編集部が整理したものです。金額・期限・要件は災害ごと、自治体ごとに異なる場合があります。申請前に必ずお住まいの市区町村の案内をご確認ください。
役所での手続き全般は暮らしの手続きナビにまとめています。
読み終えたら、次に手を動かすこと
被害区分と使える支援が分かったら、次は生活の立て直しの手続きです。転居や仮住まいが決まったタイミングでまとめて動かすと、二度手間になりません。
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