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介護離職を防ぐ会社の義務と使える制度【2026年版】2025年4月から個別周知・意向確認が義務に|介護休暇の勤続6か月未満除外も廃止

日本の住まいの居間。椅子の脇に立てかけられた杖と、白紙のカレンダーと固定電話が置かれたサイドテーブル

この記事の結論

  • 介護・看護を理由に前職を離職した人は年10.6万人(令和4年就業構造基本調査)。うち8.3万人が離職後は無業で、収入が途切れたまま介護に入る構図が続いています。
  • 2025年(令和7年)4月1日から、会社側に3つの義務が生まれました。①雇用環境の整備 ②介護に直面した旨を申し出た人への個別周知・意向確認 ③40歳前後での情報提供。申し出れば、会社は制度を説明しなければなりません。
  • 同じ改正で介護休暇の「継続雇用6か月未満は除外」という労使協定の仕組みが廃止。入社まもない人でも介護休暇を取れるようになりました(週の所定労働日数2日以下の除外は残ります)。
  • 使える制度は5系統。介護休業(対象家族1人につき3回・通算93日)/介護休暇(年5日・2人以上なら年10日・時間単位可)/所定外労働の制限/時間外労働の制限/深夜業の制限+短時間勤務等の措置。
  • 介護休業は「自分が介護する期間」ではなく「両立できる体制を整える準備期間」と捉えるのが厚生労働省の示す使い方です。ここを取り違えると93日を使い切って離職に至ります。

基準日:2026年8月27日/出典:厚生労働省「介護休業制度特設サイト」(法改正のポイント・介護休業・介護休暇)、総務省「令和4年就業構造基本調査」

親の入院や要介護認定の連絡は、たいてい予告なく来ます。そのとき多くの人が最初に考えるのは「制度を調べよう」ではなく「仕事、どうしよう」です。そして調べる時間がないまま、有給を削り、やがて辞める。年10.6万人という数字の中身は、この順番でできています。

2025年4月の改正で、この順番を変えるための仕掛けが法律に入りました。労働者が「介護に直面した」と申し出れば、会社が制度を個別に説明し、利用の意向まで確認しなければならない——という義務です。この記事は、その義務の中身と、申し出たあとに実際に使える制度を、厚生労働省の公表資料に沿って整理します。

目次

介護離職は「減っていない」──年10.6万人の内訳

総務省の令和4年就業構造基本調査によると、直近1年間に「介護・看護のため」前職を離職した人は10.6万人。5年前の前回調査から約7,000人増えています。内訳は、離職後に職に就いていない無業者が8.3万人、有業者が2.3万人でした。

厚生労働省が同じ調査を引いて示しているもうひとつの数字が、雇用労働者のうち55〜59歳の10人に1人以上が介護に直面しているという事実です。管理職や熟練層と重なる年代が、そのまま介護と重なります。

介護・看護を理由に離職した10.6万人の内訳

離職後は無業 8.3万人 離職後も有業 2.3万人 合計 10.6万人(前回調査から約7,000人増)/出典:総務省「令和4年就業構造基本調査」

2025年4月に、会社側へ生まれた3つの義務

改正育児・介護休業法のうち介護関係の事項は、2025年(令和7年)4月1日から施行されています。労働者の側から見ると「会社に何を求めていいのか」が明確になった改正です。

義務1|利用しやすい雇用環境の整備

会社は①研修の実施 ②相談体制の整備(相談窓口の設置) ③自社の取得・利用事例の収集と提供 ④利用促進に関する方針の周知のいずれかを講じなければなりません(複数が望ましいとされています)。相談窓口があるかどうかは、まず社内イントラで確認する価値があります。

義務2|申し出た人への個別の周知・意向確認

「介護に直面した」と申し出た労働者に対し、会社は個別に周知し、利用の意向を確認しなければなりません。周知事項は①介護休業に関する制度・介護両立支援制度等 ②申出先 ③介護休業給付金に関すること、の3点。方法は面談(オンライン可)・書面交付・FAX・電子メール等のいずれかで、FAXと電子メールは労働者が希望した場合のみです。取得を控えさせるような周知・意向確認は認められません。

義務3|40歳前後での早期の情報提供

介護に直面する前の早い段階で理解を深めてもらうため、会社は①40歳に達する日(誕生日の前日)の属する年度の1年間、または②40歳に達する日の翌日(誕生日)から1年間のいずれかに、義務2と同じ3事項を情報提供しなければなりません。介護保険制度もあわせて周知することが望ましいとされています。

あわせて、要介護状態の家族を介護する労働者がテレワーク等を選択できるようにすることが、会社の努力義務になりました。義務ではないものの、通院の付添いと在宅勤務を組み合わせられるかどうかは両立可否を大きく左右します。制度がなければ、努力義務であることを根拠に相談してよい領域です。

使える制度は5系統──「休む」と「働き方を変える」で分けて考える

介護と仕事の両立支援制度は、まとまって休む/スポットで休む/働き方そのものを変えるの3層で整理すると迷いません。厚生労働省はこれらをまとめて「介護両立支援制度等」と呼んでいます。

休む制度

  • 介護休業/対象家族1人につき3回・通算93日。開始予定日の2週間前までに書面等で申出。休業開始時賃金日額の67%の介護休業給付金あり
  • 介護休暇/対象家族1人なら年5日、2人以上なら年10日。1日単位または時間単位。口頭での申出も可。年次有給休暇とは別枠

働き方を変える制度

  • 所定外労働の制限/いわゆる残業のない働き方にする
  • 時間外労働の制限/法定労働時間を超える残業を一定の範囲内に抑える
  • 深夜業の制限/午後10時から午前5時の勤務をしない
  • 短時間勤務等の措置/短時間勤務・フレックスタイム・時差出勤などから会社が制度を設ける
  • テレワーク等/2025年4月から会社の努力義務

出典:厚生労働省「介護休業制度特設サイト」をもとに編集部で整理(基準日 2026年8月27日)。制度の細目は就業規則・労使協定で異なる場合があります。

介護休業 ─ 93日は「介護する期間」ではない

介護休業は、要介護状態(負傷・疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある対象家族を介護するための休業です。対象家族は配偶者(事実婚を含む)、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母。

厚生労働省が明記しているのは、休業期間中は自分が介護を行うのではなく、仕事と介護を両立できる体制を整えるための準備期間と捉えるという使い方です。市区町村・地域包括支援センター・ケアマネジャーへの相談、介護サービスの手配、家族での分担決定、民間事業者やボランティアの調査——この4つに93日を使う、という設計になっています。

手続は休業開始予定日の2週間前までに書面等で申出。終了予定日の2週間前までに申し出れば、1回の申出ごとに1回に限り、事由を問わず終了予定日を繰り下げられます。一方で開始予定日の繰上げ・繰下げは法律に定めがなく、労働者の申出だけでは当然には変更できません。ここは会社との話し合いになります。

有期雇用の人は、休業開始予定日から93日を経過する日から6か月を経過する日までに契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないことが条件です。「契約が切れるから無理」と自己判断せず、この条件に当てはめて確認してください。給付金の詳細は介護休業給付金のもらい方【2026年版】で整理しています。

介護休暇 ─ 2025年4月に「入社まもない人」も対象に

介護休暇は、通院の付添いや介護サービスの手続代行、ケアマネジャーとの短時間の打合せにも使える休暇です。対象家族が1人なら1年間に5日、2人以上なら10日。1年間は、会社に特に定めがなければ4月1日から翌年3月31日です。

取得単位は1日または時間単位。書面の提出に限定されておらず、口頭での申出も可能です。年次有給休暇とは別に与えなければならない一方、有給か無給かは会社の規定によります。

そして2025年4月1日、労使協定で「継続雇用6か月未満の労働者」を対象外にできる仕組みが廃止されました。転職直後に親が倒れる、という最も苦しいケースが救済されたことになります。除外できるのは週の所定労働日数が2日以下の労働者だけです。もし社内規程が古いままなら、労使協定を締結し直す必要があります。

勤務時間の制限 ─ 申し出れば会社は断れない

所定外労働の制限(残業免除)、時間外労働の制限、深夜業の制限は、いずれも労働者が請求すれば会社が応じなければならない類型です。短時間勤務等の措置は、短時間勤務・フレックスタイム・時差出勤などの中から会社が制度を設けるかたちで、介護休業とは別に利用できます。

実務上のポイントは、これらを介護休業と組み合わせて使うことです。93日で体制を整え、その後は残業免除と時間単位の介護休暇で日常を回す。この設計にできるかどうかが、離職するかしないかの分かれ目になります。

「親が倒れた」直後の72時間チェックリスト

STEP 1

会社に「介護に直面した」と申し出る。この申出が、会社の個別周知・意向確認義務の引き金になる。制度・申出先・介護休業給付金の3点を説明してもらう。

STEP 2

当面は介護休暇(時間単位・口頭申出可)で乗り切る。年5日を1日単位で使い切らず、通院付添い2時間・面談1時間のように刻む。

STEP 3

市区町村の窓口か地域包括支援センターへ。要介護認定の申請と、ケアマネジャーの選定を同時に進める。

STEP 4

体制づくりにまとまった時間が要るなら、2週間前までに介護休業を申し出る。93日を3回に分けられるので、初回は全部使わない。

STEP 5

復帰後の定常運転を決める。残業免除・深夜業の制限・短時間勤務・テレワークのどれを使うかを、休業中に会社と詰めておく。

パターン別の分岐

遠距離介護の場合。介護休暇は時間単位で取れますが、移動に半日かかる距離では実質1日単位になります。この場合は残業免除と時差出勤・テレワークを軸に組み、介護休業は「サービス調整のためにまとまって帰省する回」に充てるほうが持ちます。93日を3回に分けられる仕組みは、まさにこの使い方を想定したものです。

転職直後の場合。介護休業は労使協定で継続雇用1年未満を除外できますが、介護休暇は2025年4月以降、勤続期間を理由に除外できません。まず介護休暇で時間を確保し、その間に体制を整えるのが現実的です。

要介護認定がまだ出ていない場合。育児・介護休業法の「要介護状態」は介護保険の要介護認定とは別の定義で、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態を指します。認定を待たずに申し出られる可能性があります。会社が認定結果の提出を求めてきたら、この点を確認してください。

看取り期・急変期の場合。この局面では介護休暇の年5日はすぐ尽きます。介護休業の残日数と年次有給休暇、そして会社独自の特別休暇(法定外)の有無を早めに確認しておくことが、無給期間を短くします。

イレギュラー・現場対応

「制度はあるが前例がない」と言われた。2025年4月からは、自社の取得・利用事例の収集と提供が雇用環境整備の選択肢の一つに入っています。前例がないこと自体は制度を使えない理由になりません。相談窓口の有無とあわせて、人事に確認する筋です。

周知はされたが、暗に取得を止められた。厚生労働省は「取得を控えさせるような個別周知と意向確認は認められません」と明記しています。説明の場で取得しにくい空気をつくること自体が、義務の履行として不適切だという整理です。記録を残し、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談する道があります。

介護休暇が有給にならない。介護休暇を有給とするか無給とするかは会社の規定によります。無給が違法というわけではありません。ただし年次有給休暇とは別に与えなければならないため、「有休を使え」と言われて介護休暇が取れないのは、制度の趣旨に反します。

40歳になったのに何の案内も来ない。義務3の情報提供は、40歳に達する日の属する年度、または40歳の誕生日から1年間のいずれかに行うこととされています。案内が来ないなら、その時点で人事に照会してよい事項です。

注意

介護休業の開始予定日は、労働者の申出だけでは繰上げ・繰下げができません。「入院がいつまで続くか分からないから、とりあえず来週から」と申し出ると、状況が変わったときに動かせなくなります。開始日は、地域包括支援センターやケアマネジャーとの初回相談を終えて見通しが立ってから決めるほうが安全です。急ぎの用事は介護休暇で先に埋められます。

お金の相場観と、編集部の価値判断

介護休業中は、雇用保険の被保険者で一定の要件を満たせば休業開始時賃金日額の67%相当額の介護休業給付金が支給されます。逆に言えば、残り3割強は収入が落ちます。93日をフルに使えば、月収の3割強×3か月分が家計から失われる計算です。

一方、離職した場合の損失はこれと桁が違います。年10.6万人のうち8.3万人が離職後に無業であるという構造は、介護離職が「一時的な収入減」ではなく「収入の断絶」になりやすいことを示しています。67%の給付を受けながら制度を整える3か月と、収入ゼロで介護に入る期間を比べれば、判断はほぼ一択です。

編集部としての価値判断を書きます。2025年改正でいちばん実用的なのは、義務2の「申し出れば会社が説明しなければならない」という一点です。これは、自分で法律を読み込まなくても、会社側に情報を出させる権利が明文化されたということです。介護が始まった日にやるべきことは、制度を調べることではなく、「介護に直面しました」と会社に伝えること。順番を変えるだけで、その後の選択肢が増えます。

もうひとつ。介護休業を「自分が介護する93日」と誤解したまま突入する人が、いまも少なくありません。厚生労働省が繰り返し「準備期間」と書いているのは、この誤解が離職の主要な入口だからです。93日で介護を終わらせることはできませんが、93日で体制はつくれます。

制度の入口である要介護認定の流れは介護保険の申請の流れ【2026年版】、ケアマネジャーの選び方は暮らしの手続きガイドから辿れます。

よくある質問

要介護認定を受けていない親でも、介護休業は取れますか。

育児・介護休業法の「要介護状態」は、負傷・疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態を指します。介護保険の要介護認定とは別の定義です。認定前でも要件を満たせば申し出られる可能性があるため、会社の担当窓口に状況を伝えて確認してください。

入社3か月ですが、介護休暇は使えますか。

使える可能性が高くなりました。2025年(令和7年)4月1日から、労使協定で継続雇用6か月未満の労働者を介護休暇の対象外とする仕組みが廃止されています。除外できるのは週の所定労働日数が2日以下の労働者だけです。社内規程が古いままの場合は、労使協定を締結し直す必要があります。

介護休業は何回に分けて取れますか。

対象家族1人につき3回、通算93日まで分割して取得できます。1回で93日を使い切る必要はありません。厚生労働省は休業期間を「仕事と介護を両立できる体制を整えるための準備期間」と位置づけており、状況の節目ごとに分けて使う設計になっています。

会社に相談したら「うちには制度がない」と言われました。

介護休業・介護休暇・所定外労働の制限などは法律上の制度で、就業規則に記載がなくても労働者の権利です。また2025年4月からは、介護に直面した旨を申し出た労働者への個別の周知と意向確認が会社の義務になっています。対応が得られない場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談する方法があります。

まず読むべき公式情報

制度の細目と最新の改正内容は、厚生労働省の特設サイトに集約されています。社内規程が古いまま運用されているケースもあるため、原典を手元に置いて相談するのが確実です。

基準日:2026年8月27日。本記事は厚生労働省および総務省の公表資料に基づく一般的な整理です。制度の細目は就業規則・労使協定によって異なる場合があり、給付金の支給要件はハローワークの判断によります。手続の際は必ず勤務先および公式ページで最新情報をご確認ください。

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この記事を書いた人

みんなのミカタナビ編集部です。運営者・たくの編集方針のもと、相続・出産・退職・補助金など「知らないと損する手続きとお金」を、公的機関の一次情報と体験談の取材をもとに時系列で整理しています。数値・期限は必ず公式情報で裏取りし、出典を明記します。

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