この記事の結論
- 「うちは中小企業だから申請できる」とは限りません。資本金・従業員数の表を満たしても、その先に3つの関門があります。
- 関門1=みなし大企業。大企業が株式の1/2以上(複数なら2/3以上)を持つ、役員の半数以上が大企業の役員・職員、直近3年の課税所得の年平均が15億円超——このいずれかで対象外です。
- 関門2=みなし同一法人。議決権50%超の親子・孫・ひ孫会社、代表者が同じ法人は1グループ1社しか申請できません。複数出すと全社が要件未達扱いになります。
- 関門3=過去の交付実績。ものづくり・事業再構築・新事業進出のいずれかで、過去3年に合計2回以上の交付決定を受けていると申請できません。
- 配偶者・親子・生計を同一にする者はすべて同一として扱われます。「夫の会社と妻の会社で1本ずつ」は通りません。
- 申請担当者は申請者自身か、自社が雇用する従業員でなければならず、認定支援機関を含む外部の人を担当者に登録すると虚偽申請として扱われる場合があります。
この記事の基準(中小企業省力化投資補助事業<一般型>)
資料:応募申請の手引き(第6回公募)2026年4月14日版
第6回公募期間:2026年3月13日(金)〜2026年5月15日(金)17:00(申請受付開始 2026年4月15日)
記事の基準日:2026年8月16日/次回公募に向けた事前確認としてお読みください
補助金の相談で最初につまずくのは、経費でも事業計画でもなく「そもそも自社が申請できるのか」です。中小企業の定義表を見て「資本金3,000万円、従業員40人だから大丈夫」と判断し、事業計画を1か月かけて書いたあとで、株主構成のせいで対象外だと分かる——これがいちばん痛い。
公募要領の「補助対象者」は、実際には4段構えのふるいになっています。1段目が中小企業者の定義、2段目がみなし大企業、3段目がみなし同一法人、4段目が過去の交付実績と行為の制限です。1段目を通っても、2〜4段目で落ちる会社はかなり多いのが実情です。
以下は中小企業省力化投資補助事業<一般型>「応募申請の手引き(第6回公募)」(2026年4月14日版)の記載にもとづいて整理しています。制度ごとに細部は異なりますが、みなし大企業・みなし同一法人の考え方は経済産業省系の補助金でおおむね共通です。申請前に必ず各制度の最新の公募要領で確認してください。
1.判定は4段階。上から順に見ていく
まず全体像です。下の4つを上から順に確認してください。どこか1つで引っかかった時点で、その公募回は申請できません。
補助対象者の4段階チェック
中小企業者等の定義に入るか
業種ごとの資本金・常勤従業員数のどちらかを満たせばOK。ここは多くの会社が通過します。
みなし大企業に当たらないか
株主に大企業がいる会社、役員を大企業と兼ねている会社、課税所得が大きい会社が落ちます。
みなし同一法人で重複していないか
グループ内・親族内で複数社が同じ回に出していないか。1グループ1社が原則です。
過去の交付実績・行為の制限に触れないか
過去3年の交付決定回数、未払いの補助金、送検処分、計画の重複などが見られます。
2.関門0:まず中小企業者の定義(資本金か従業員数、どちらか)
中小企業基本法の定義は「資本金 または 常勤従業員数」のどちらかを満たせば足ります。両方を満たす必要はありません。ここを「かつ」だと誤解して申請をあきらめる会社が毎回います。
| 業種 | 資本金 | 常勤従業員数 |
|---|---|---|
| 製造業、建設業、運輸業 | 3億円 | 300人 |
| 卸売業 | 1億円 | 100人 |
| サービス業(ソフトウェア業・情報処理サービス業・旅館業を除く) | 5,000万円 | 100人 |
| 小売業 | 5,000万円 | 50人 |
| ゴム製品製造業(自動車・航空機用タイヤ及びチューブ、工業用ベルトを除く) | 3億円 | 900人 |
| ソフトウェア業、情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
| 旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
| その他の業種 | 3億円 | 300人 |
ここでいう常勤従業員は、労働基準法第20条にいう「あらかじめ解雇の予告を必要とする者」です。日々雇い入れられる者、2か月以内の期間を定めて使用される者、季節的業務に4か月以内の期間で使用される者、試用期間中の者は含みません。代表取締役や専従者を従業員数に含めていたことが後から判明すると、採択取消等になることがあります。
なお省力化投資補助金では、資本金10億円未満で従業員数が製造業・建設業・運輸業500人、卸売業400人、サービス業・小売業300人、その他500人以下の「特定事業者の一部」も対象に含まれます。中小企業の枠を少し超える規模でも、あきらめる前に確認する価値があります。
3.関門1:みなし大企業の6類型
定義表を満たしていても、次の6つのどれかに当たると「みなし大企業」として対象外になります。オーナー系の会社より、大手の資本が入っているベンチャーや、大手の子会社として設立された会社が引っかかりやすいところです。
みなし大企業チェックリスト(1つでも当たれば対象外)
- □発行済株式の総数または出資価格の総額の1/2以上を、同一の大企業が所有している
- □発行済株式の総数または出資価格の総額の2/3以上を、複数の大企業が所有している
- □大企業の役員または職員を兼ねている者が、役員総数の1/2以上を占めている
- □上の3つに当たる中小企業者が、自社の発行済株式の総数または出資価格の総額を所有している
- □上の3つに当たる中小企業者の役員または職員を兼ねている者が、役員総数のすべてを占めている
- □応募申請時点で確定している直近過去3年間の各事業年度の課税所得の年平均額が15億円超
実務で効いてくる例外が2つあります。ひとつは役員の数え方で、会社法第2条第15号の社外取締役と、会社法第381条第1項の監査役はこの判定の「役員」に含まれません。大手から社外取締役を招いていても、それだけでみなし大企業にはなりません。
もうひとつは投資家の属性です。中小企業投資育成株式会社と投資事業有限責任組合(LPS)が株式を保有する場合は、その保有比率をもってみなし大企業の規定を適用しないこととされています。VCから出資を受けている会社は、出資者のスキームを確認してください。
そして見落としやすいのが「この条件の適用は補助事業実施期間中にも及ぶ」という点です。採択後に大手の資本を受け入れてみなし大企業になれば、そこで対象外になり得ます。補助事業の実行期間中に資本政策を動かす予定がある会社は、事務局に事前照会したほうが安全です。
4.関門2:みなし同一法人は「1グループ1社」
ここがいちばん事故が多いところです。次の関係にある事業者はみなし同一法人とされ、いずれか1社しか申請できません。
| 関係 | 扱い |
|---|---|
| 親会社が議決権の50%超を持つ子会社 | 親会社と子会社は同一法人とみなす |
| 親会社が50%超を持つ子会社が複数ある | 親会社と全子会社をまとめて同一法人とみなす |
| 個人が複数の会社それぞれの議決権を50%超保有 | その複数社は同一法人とみなす |
| 子会社が持つ孫会社、さらにひ孫会社 | 孫・ひ孫まで含めてすべて同一法人とみなす |
| 代表者が同じ法人 | 上記に当たらなくても同一法人とみなす |
損しないポイント:親族は「すべて同一」で数えられる
みなし同一法人の判定にあたっては、配偶者・親子およびその他生計を同一にしている者は、すべて同一として扱われます。夫が代表の会社と妻が代表の会社を別々に申請する、といった組み立ては通りません。さらに、過去に交付決定を受けた個人事業主が設立した法人も同じ扱いです。
そして罰は重い。複数の事業者が申請した場合、申請したすべての事業者において申請要件を満たさないものとして扱われます。1社が通るのではなく、全滅します。
あわせて、本補助金を受けることを目的に主要株主や出資比率を変更して申請することも認められていません。また補助事業実施期間中に、親会社や子会社が過去に交付決定を受けているみなし同一法人に該当することとなった場合は、その補助事業者の交付決定が取り消されます。
5.関門3:過去の交付実績と行為による制限
資本構成に問題がなくても、これまでに補助金を使ってきた履歴で止まることがあります。省力化投資補助金<一般型>では次のように定められています。
過去の履歴で申請できなくなる主なケース
- 過去3年で2回以上:応募申請日を起点に過去3年間に、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金/中小企業等事業再構築促進補助金/中小企業新事業進出補助金の交付決定を合計2回以上受けている
- 精算が終わっていない:上記3制度の交付決定を受け、応募申請時点で事務局からの補助金支払が完了していない
- 本事業と重複:本事業に応募申請・交付申請中、または交付決定を受けて支払が完了していない
- 他制度の直後:観光庁の「観光地・観光産業における人材不足対策事業」(令和7年度)等で設備投資の交付決定を受け、10か月を経過していない
- 取消歴:本事業において補助金等適正化法第17条による交付決定取消を受けた
- 法令違反:過去1年において労働関係法令違反により送検処分を受けた
加えて「計画重複」の制限があります。他の事業者から提出された事業と同一または極めて類似した内容で申請すると、1回目は次回公募の申請不可、2回目以降は次回と次々回の公募に申請できません。支援業者から渡されたひな形をほぼそのまま使うと、自分に落ち度がなくても巻き込まれます。事業計画書作成支援者が主導した場合には、その支援者が関与した申請そのものが受け付けられなくなる可能性もあります。
注意:申請担当者は「自社の人間」でなければならない
補助金の申請担当者は、申請者自身または申請者が雇用する従業員でなければならず、認定経営革新等支援機関を含む外部機関の者を申請担当者として申請することはできません。外部の登録があった場合、虚偽の申請として交付規程に基づき不採択となる場合があります。
同じ趣旨で、GビズIDを他者に貸し出す、他者が取得したGビズIDを使う、事務局との窓口担当を外部に任せるといった行為は「事業の遂行に主体的でない」とみなされ、補助対象外の事業者として扱われます。
6.現場でつまずく典型パターン
実際の相談で繰り返し出てくるのは、条文そのものより「自分は該当しないと思い込んでいた」という形のつまずきです。よく語られる例を、編集部の視点で整理します。
「グループ会社だが資本関係はない」——代表者が同じなら同一法人
製造の会社と販売の会社を分けている、というのはよくある形です。株式を持ち合っていなくても代表者が同じなら同一法人とみなされます。「別会社だから2本出せる」と考えて2社で申請すると、両社とも要件未達で処理されます。
「大企業の出資は3割だから大丈夫」——複数社合算で2/3を見る
同一の大企業が1/2以上なら1社でアウトですが、複数の大企業の持分を合算して2/3以上でもアウトです。30%・25%・15%と3社に分かれていても合計70%なら該当します。株主名簿を「大企業かどうか」で色分けして合計する作業を、申請前に一度やっておくべきです。
「利益が出た年が1年だけある」——3年平均で判定する
課税所得の基準は単年ではなく直近過去3年間の各事業年度の年平均額15億円超です。1年だけ大きく跳ねた年があっても、3年平均で15億円以下なら該当しません。逆に、恒常的に高収益の会社は該当し得ます。
「休眠会社を使えば回数制限を避けられる」——実態が確認できなければ対象外
事務局の調査によって事業の実態が確認できない事業者は補助対象外です。また、専ら本事業の対象事業者になることのみを目的として資本金や従業員数を一時的に変更していると認められる事業者も対象外とされています。回数制限をかわすための器づくりは、通らないだけでなく虚偽申請のリスクを背負います。
7.編集部の見立て:時間をかける前に、30分で判定する
事業計画書の作成には、自社だけでも数十時間、支援を受ければ着手金と成功報酬で数十万円規模の費用がかかることも珍しくありません。それに対して、この記事の4段階チェックに必要なのは登記簿・株主名簿・直近3期の申告書・過去の補助金の交付決定通知書の4点だけで、確認は30分程度で終わります。
費用対効果で見れば、着手前の30分がいちばん利回りの高い作業です。とくに、株主に法人がいる会社、代表者が複数の会社を持っている会社、過去2年以内にものづくり補助金や事業再構築補助金を使った会社の3つは、先に確認しておく価値があります。
そのうえで、判断が微妙なとき(大企業の定義に当たるか、持株比率の計算が複雑、親族の会社との関係が曖昧など)は、自己判断で出さず、公募期間中に事務局へ照会するのが確実です。応募締切の直前は問い合わせが集中するため、締切の2週間前までに済ませておくと安全です。
8.申請できるかを判定する5ステップ
手元の書類だけで進められる順番に並べます。上から順に、1つでも×が出たらそこで止めてください。
判定の流れ(所要30分・書類4点)
STEP1 業種と規模を確認する
登記簿と直近決算から、日本標準産業分類にもとづく業種、資本金、常勤従業員数を書き出す。資本金か従業員数のどちらかが表の範囲内なら通過。
STEP2 株主名簿を大企業で色分けする
同一の大企業で1/2以上、複数の大企業の合算で2/3以上になっていないかを確認。中小企業投資育成株式会社と投資事業有限責任組合の持分は、この判定から外れる。
STEP3 役員名簿と課税所得を見る
大企業の役員・職員を兼ねる人が役員総数の1/2以上でないか(社外取締役と監査役は除く)。直近3期の申告書から課税所得の年平均額が15億円以下か。
STEP4 グループと親族の申請予定を突き合わせる
議決権50%超でつながる会社、代表者が同じ会社、配偶者・親子・生計を同一にする者が代表の会社を洗い出し、同じ公募回に出すのは1社だけに決める。
STEP5 過去の交付決定通知書を数える
応募申請日から遡って3年間で、ものづくり・事業再構築・新事業進出の交付決定が合計2回以上ないか。精算未了の補助金が残っていないか。ここまで全部○なら、事業計画の作成に進む。
よくある質問
資本金は範囲内ですが従業員数が超えています。申請できませんか。
申請できます。中小企業者の定義は資本金または常勤従業員数のどちらかを満たせばよいため、片方が超えていても、もう片方が表の範囲内なら要件を満たします。ただし省力化投資補助金では、常勤従業員数によって補助上限額が変わる点には注意してください。
大企業から社外取締役を1名受け入れています。みなし大企業ですか。
役員の兼務による判定では、会社法第2条第15号に規定する社外取締役と、会社法第381条第1項に規定する監査役は「役員」に含まれません。したがって社外取締役の受け入れだけでは、この類型には当たりません。ただし株式の保有割合による類型は別途判定されます。
親会社と子会社で、それぞれ別の設備を申請することはできますか。
できません。議決権の50%超でつながる親子会社はみなし同一法人とされ、いずれか1社しか申請できません。複数の事業者が申請した場合は、申請したすべての事業者において申請要件を満たさないものとして扱われます。設備が別でも、グループで1社に絞る必要があります。
2年前にものづくり補助金を1回使いました。今回は申請できますか。
回数の制限は応募申請日を起点に過去3年間で合計2回以上です。1回だけであれば回数制限には当たりません。ただし、その補助金の交付決定を受けていて応募申請時点で事務局からの補助金支払が完了していない場合は、回数にかかわらず申請できません。精算が終わっているかを先に確認してください。
申請作業を支援会社にすべて任せてもよいですか。
申請担当者は申請者自身または申請者が雇用する従業員でなければならず、認定経営革新等支援機関を含む外部機関の者を申請担当者として登録することはできません。GビズIDの貸し借りや、事務局との窓口を外部に任せる行為も「事業の遂行に主体的でない」と判断されます。助言を受けること自体は問題ありませんが、アカウントと窓口は自社で持ってください。
出典・参考
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構中小企業省力化投資補助事業(一般型)応募申請の手引き(第6回公募)(2026年4月14日版・PDF)
- 中小企業省力化投資補助金(一般型)(事務局サイト)
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領(PDF)
- e-Gov法令検索補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律
- 中小企業庁中小企業庁関連事業データ利活用ポリシー
本記事は公募要領および応募申請の手引きの記載をもとに、みんなのミカタナビ編集部が整理したものです。要件は公募回ごとに改定されることがあり、制度によって細部も異なります。申請の前に必ず最新版の公募要領を確認し、判断に迷う場合は自己判断で提出せず、補助金事務局へ照会してください。
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申請可否の判定は、資本関係と過去の履歴という「動かせない事実」の確認です。ここが白なら、あとは事業計画の質の勝負に集中できます。株主構成やグループ関係が複雑で自社では読み切れないときは、顧問税理士や商工会・商工会議所の経営指導員に登記簿と株主名簿を見てもらうところから始めてください。
