国民年金保険料は、前年所得が「(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円」以下なら全額免除を申請できます。全額免除の期間も老齢基礎年金の2分の1が反映され、障害基礎年金の対象にも残ります(2026年9月18日時点)。
情報基準日:2026-09-18(出典=日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」2026年8月3日更新。最終確認日=2026年9月18日)
まず結論:何を・いつまでに・いくら
| 何を | 「国民年金保険料免除・納付猶予申請書」を市区町村の国民年金窓口・年金事務所・電子申請のいずれかで提出する |
|---|---|
| いつまでに | 申請時点から2年1か月前までさかのぼって申請可能。ただし障害・死亡の事故が起きた後にさかのぼっても納付要件には算入されない |
| いくら | 令和8年度の保険料は月17,920円。全額免除なら0円、4分の3免除4,480円、半額免除8,960円、4分の1免除13,440円 |
| 最大の理由 | 未納のまま放置すると老齢基礎年金も障害基礎年金も失う。全額免除なら老齢基礎年金の2分の1は確保できる |
※金額はすべて令和8年度(2026年4月〜2027年3月)。基準日 2026年8月6日/出典は記事末尾
収入が減った、仕事を辞めた、事業をたたんだ。国民年金保険料の納付書が届いても払えないとき、いちばんやってはいけないのが「払えないから放っておく」ことです。未納と免除は、手続きの手間こそ違えど、将来受け取る年金額でも、もしものときの障害年金でも、まったく別の扱いになります。この記事では、免除と納付猶予の違い、所得の基準、申請の手順、そして「追納すべきかどうか」の判断材料までを、日本年金機構の公式情報をもとに整理します。
免除と納付猶予は何が違うのか(いちばん大事な差)
名前が似ていますが、この2つは「将来の年金額に反映されるかどうか」が決定的に違います。納付猶予は受給資格期間(10年以上必要)にはカウントされますが、年金額には1円も反映されません。一方、全額免除は納めた場合の2分の1が反映されます。選べるなら免除のほうが有利です。
| 区分 | 月々の負担(令和8年度) | 老齢基礎年金への反映 | 障害・遺族年金の資格期間 |
|---|---|---|---|
| 全額納付 | 17,920円 | 100% | あり |
| 全額免除 | 0円 | 2分の1 | あり |
| 4分の3免除 | 4,480円 | 8分の5 | あり |
| 半額免除 | 8,960円 | 8分の6 | あり |
| 4分の1免除 | 13,440円 | 8分の7 | あり |
| 納付猶予(50歳未満) | 0円 | なし | あり |
| 未納(何もしない) | 0円 | なし | なし |
一部免除(4分の3・半額・4分の1)は、減額後の保険料を実際に納めて初めて免除として扱われます。承認だけ受けて納付を忘れると未納と同じ扱いになるため、ここは要注意です。
40年間その状態だった場合、1年間に受け取れる老齢基礎年金(昭和31年4月2日以後生まれ)
いつ・何をするか:申請から承認までの時系列
払えないと気づいたとき(できるだけ早く)
納付書を放置しない。まず自分が「免除」の対象か「納付猶予」の対象かを確認する。50歳以上は納付猶予を使えず、免除のみ。学生は学生納付特例が別枠。
申請書と本人確認書類をそろえる(当日〜数日)
マイナンバーカード、または基礎年金番号がわかる書類。所得証明書の添付は原則不要(市区町村に照会される仕組みのため)。ただし本人・配偶者・世帯主の誰かが住民税の申告をしていない場合は、先に税の申告が必要。
退職・廃業が理由なら「離職を証明する書類」を添える
雇用保険被保険者離職票のコピー、または雇用保険受給資格者証・受給資格通知のコピー。これがあると本人の前年所得は審査から外れる(失業等による特例免除)。廃業した個人事業主は、税務署に出した個人事業の開廃業等届出書の写しなど。
提出(市区町村の国民年金窓口/年金事務所/郵送/電子申請)
ねんきんネットの画面上で申請書を作成することもできる。電子申請なら窓口に行かずに完結する。
審査・結果通知(おおむね2〜3か月後)
全額免除・4分の3・半額・4分の1の順に審査され、通ったところで承認される。結果は郵送で届く。承認された区分によって、その後に納める金額が変わる。
翌年度以降:原則として毎年申請が必要
ただし全額免除・納付猶予が承認された人が継続審査を希望していれば、翌年度は自動で審査される。一方、失業等の特例免除で承認された人は翌年度も申請が必要。ここを勘違いして未納が生まれるケースが多い。
所得の基準:いくらまでなら通るのか
前年の所得が、次の式で計算した金額の範囲内であることが条件です。審査されるのは本人・配偶者・世帯主の3人分(納付猶予は本人・配偶者の2人分のみ)。世帯主が入るかどうかが、実家暮らしの人にとっては分かれ目になります。
| 区分 | 前年所得の基準(この額以下) |
|---|---|
| 全額免除 | (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円 |
| 4分の3免除 | 88万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
| 半額免除 | 128万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
| 4分の1免除 | 168万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
| 納付猶予(20歳以上50歳未満) | (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円 |
単身・扶養親族なしなら、全額免除の基準は「1×35万円+32万円=67万円」。給与収入だけの人ならおおむね年収122万円前後が目安になりますが、控除の中身によって変わるため、ここは自己判断せず窓口で確認するのが確実です。なお障害者・寡婦・ひとり親に該当する場合は基準額が変わります。
申請しないと損すること・取り返しがつかないこと
① いちばん重い:障害基礎年金・遺族基礎年金が受け取れなくなる
障害基礎年金は、初診日の前々月までの被保険者期間のうち保険料納付済期間(免除期間を含む)が3分の2以上あること、または直近1年間に未納がないことが条件です。事故や病気が起きてから慌ててさかのぼって申請しても、この納付要件には算入されません。免除なら納付要件を満たしたものとして扱われるので、「払えないなら免除申請だけはしておく」ことの価値はここに集約されます。障害基礎年金は1級1,059,125円、2級847,300円(年額)です。
② 老齢基礎年金そのものを受け取れなくなる可能性
老齢基礎年金には「納付済期間+免除期間などを合算して10年以上」という受給資格期間があります。未納は1か月もカウントされませんが、全額免除も納付猶予もカウントされます。年金額に反映されない納付猶予にも、この一点で意味があります。
③ 令和8年10月から始まる「育児免除」を取りこぼす
2026年10月1日から、1歳未満の子を養育する国民年金第1号被保険者(自営業・フリーランス・学生・無職の方)は、所得に関係なく保険料が免除される制度が始まります。実父・養父母は最大12か月、産前産後免除を受けた実母はそれに続く9か月(合わせて最大13か月)。しかもこの期間は「納付したもの」として老齢基礎年金の額に満額反映されます。すでに納付済みの分や、免除・学生納付特例が承認済みの期間も、届出すれば育児免除として扱われ、納めた保険料は充当または還付されます。夫婦とも第1号被保険者なら2人とも対象です。制度施行前から子を育てていて施行時点で1歳未満なら、令和8年10月以降の月分が対象になります。
あなたの場合はこう:状況別の進め方
会社を辞めて国民年金に切り替えた(前年は普通に働いていた)
前年所得で審査されると通りませんが、失業等による特例免除を使えば本人の前年所得は審査対象から外れます。離職票か雇用保険受給資格者証のコピーを必ず添えてください。ただし配偶者・世帯主の所得は審査されるため、共働きの配偶者に十分な収入があると通らないことがあります。
実家暮らしで収入がほとんどない(20代・30代)
免除は世帯主(多くは親)の所得も審査対象になるため、親に収入があると免除は通りにくい。一方、納付猶予は本人と配偶者だけが審査対象なので、こちらなら通る可能性があります。50歳未満限定である点に注意。
50歳以上で収入が少ない
納付猶予は使えません。免除の4区分で申請します。全額免除が通れば年金額の2分の1は確保され、しかも翌年度からは継続審査の対象になるため毎年の手続きが不要になります。
学生である
この記事の免除・納付猶予ではなく学生納付特例が対象です。制度が別なので、申請書も窓口の案内も変わります。
出産予定・出産した/1歳未満の子を育てている
所得に関係なく使える産前産後期間の免除、そして2026年10月からの育児免除が優先です。所得審査のある免除より条件がよいので、まずこちらを確認してください。
現場で起きること:申請でつまずきやすい5つ
- 「一部免除の承認=支払い不要」だと思い込む。4分の3免除・半額免除・4分の1免除は、減額後の保険料を実際に納めないと免除として扱われません。承認通知が来て安心し、納付書を放置して未納になるパターンは体験談でもよく語られます。
- 世帯主の存在を見落とす。本人に収入がなくても、同一世帯の世帯主に所得があると免除は通りません。世帯分離をすれば通る場合もありますが、国民健康保険料や介護保険の負担にも波及するため、単独では判断しにくい選択です。
- 住民税の申告をしていない家族がいて審査が止まる。本人・配偶者・世帯主のうち誰かが確定申告も年末調整もしていないと、所得の照会ができず審査が進みません。先に市区町村で住民税の申告を済ませる必要があります。
- 失業を理由に申請したのに、翌年度も自動で続くと思っている。全額免除・納付猶予は継続審査の対象ですが、失業等の特例免除で承認された人は翌年度も申請が必要です。この差で未納期間が生まれます。
- 結果通知が来るまで数か月かかることを知らない。審査には時間がかかります。その間に納付書の期限が来ても、申請済みであれば慌てて納める必要はありません(審査結果を待ってから対応)。判断に迷ったら年金事務所に確認を。
体験談で多く語られるのは「窓口で相談したら、自分が思っていた区分と違う制度をすすめられた」というものです。免除・納付猶予・学生納付特例・産前産後免除・法定免除は入口が別々で、どれに当たるかは本人の属性で決まります。自己判断で申請書を選ぶより、状況を伝えて窓口に振り分けてもらうほうが早いというのが実務的な感触です。
追納すべきか:編集部としての価値判断
免除・納付猶予を受けた期間の保険料は、10年以内なら後から納める(追納する)ことができ、老齢基礎年金を満額に近づけられます。ただし「追納は絶対にすべき」と押し切る記事には注意が必要です。判断材料を並べます。
堅実に済ませたい人:まず「納付猶予の期間」から追納する
納付猶予は年金額に1円も反映されません。同じ金額を追納するなら、反映ゼロの猶予期間を埋めるほうが増える幅が大きい。全額免除の期間はすでに2分の1が確保されているので、優先度は下がります。
こだわりたい人:10年の期限と加算額を見て、収入が戻った年にまとめて
追納は承認から3年度目以降になると当時の保険料額に加算額が上乗せされます。10年を過ぎると追納そのものができません。収入が回復し、社会保険料控除で所得税・住民税が軽くなる年に寄せるのが合理的です(追納した保険料は全額が社会保険料控除の対象になります)。
追納を急がなくてよい場合もある
目の前の生活費、子どもの教育費、金利の高い借入がある——こうした状況で無理に追納するのは、編集部としてはおすすめしません。追納は「余裕ができたときに10年以内でやる」ものであり、期限内であれば順番は自分で決められます。年金は増やせても、いまの生活が回らなければ意味がありません。
申請先・様式の確認は公式ページから
申請書の様式ダウンロード、電子申請、最寄りの年金事務所の検索は日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」から。所得基準の個別判定や世帯の事情がからむ相談は、お住まいの市区町村の国民年金窓口が確実です。
よくある質問
免除の申請は、過去にさかのぼってできますか?
保険料の納付期限から2年を経過していない期間、つまり申請時点から2年1か月前までさかのぼって申請できます。ただし、障害や死亡といった事態が起きた後にさかのぼって申請しても、障害基礎年金の保険料納付要件には算入されません。気づいた時点で早く出すことに意味があります。
全額免除と納付猶予、どちらを選ぶべきですか?
選べるなら全額免除です。全額免除は老齢基礎年金の額に2分の1が反映されますが、納付猶予は反映されません。ただし免除は世帯主の所得も審査対象になるため、実家暮らしで親に収入がある場合は免除が通らず納付猶予しか使えないことがあります。申請書では希望を出せますが、審査は全額免除から順に行われます。
免除は毎年申請しないといけませんか?
原則として毎年度必要です。ただし全額免除または納付猶予の承認を受けた人が継続審査を希望した場合は、翌年度以降は申請があったものとして自動的に審査されます。一方、失業等による特例免除で承認された人は翌年度も申請が必要です。
免除された期間の保険料は、あとから納められますか?
10年以内であれば追納できます。追納すると老齢基礎年金を満額に近づけられ、納めた額は社会保険料控除の対象になります。ただし承認から3年度目以降の追納には加算額が上乗せされ、10年を過ぎると追納できなくなります。
2026年10月から始まる育児免除は、所得が高くても使えますか?
使えます。育児免除に所得要件はありません。1歳未満の子と親子関係があり、同一住所であることが条件です。対象は国民年金第1号被保険者で、会社員・公務員(第2号)や、その扶養に入っている配偶者(第3号)は対象外です。
あなたの体験を聞かせてください
この手続きで「実際はこうだった」「ここでつまずいた」という経験があれば、体験談募集フォームから教えてください。許諾をいただいたものだけ、出所を明示して記事に反映します。
関連記事と出典
- 日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」(2026年8月3日更新)https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/20150428.html
- 日本年金機構「令和8年(2026年)10月から国民年金保険料の育児免除制度が始まります!」(2026年4月1日更新)https://www.nenkin.go.jp/tokusetsu/ikujimenjo.html
- 日本年金機構「国民年金保険料の追納制度」https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/20150331.html
基準日:2026年8月6日。金額は令和8年度(2026年4月〜2027年3月)のものです。制度・金額は改定されることがあるため、申請前に必ず公式ページで最新の内容をご確認ください。本記事は情報提供を目的としたもので、個別の判定を行うものではありません。
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