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国民年金の任意加入は得か【2026年版】60歳から5年で年金は月8,800円増・回収は約10年2か月

自宅のダイニングで無地の書類と預金通帳、印鑑を並べて国民年金の任意加入を検討する60歳前後の男性

国民年金の任意加入は60歳以上65歳未満で納付が480月に満たない人が対象です。2026年度の保険料は月17,920円、5年納めると年金は年およそ10.6万円増え、元が取れるのは約10年2か月後です。

情報基準日:2026年8月26日(金額は令和8年度の公表値。加入要件は2026年9月17日に日本年金機構「任意加入制度」で再確認)

ねんきん定期便を見て「40年ぶんに足りていない」と気づくのは、多くの場合60歳が近づいてからです。学生時代の未納、転職の空白、海外赴任。その穴を60歳以降に埋め直せる仕組みが、国民年金の任意加入制度です。

ただし「入れば得」と言い切れる制度ではありません。この記事では、2026年度(令和8年度)の公式な保険料額と年金額をもとに、いくら払っていくら増え、何年で元が取れるのかを実際に計算し、加入すべき人とそうでない人を切り分けます。

この記事の結論
  • 対象は60歳以上65歳未満で、納付月数が480月(40年)に満たない人。厚生年金に加入している人や、繰上げ受給を始めた人は入れません。
  • 2026年度の保険料は月17,920円。1か月納めるごとに老齢基礎年金は年およそ1,765円増えます。
  • 5年(60か月)フルで納めると保険料は約107.5万円、年金は年およそ10.6万円(月8,800円ほど)増える計算です。
  • 元が取れるのは約10年2か月後。65歳から受け取り始めるなら75歳過ぎが分岐点になります。
  • さかのぼって加入することはできません。申し出た月からの加入です。1か月遅れれば1か月分の権利が消えます。
  • 受給資格期間(10年)に届いていない人にとっては損得の問題ではなく、年金を受け取れるかどうかの分かれ目になります。
基準日:2026年8月26日/金額は令和8年度の公表値にもとづく試算です。
目次

任意加入できるのはどんな人か|4つの条件

日本年金機構は、次の4つをすべて満たす人が任意加入できると定めています。ひとつでも欠けると加入できません。

図1|任意加入の可否チェックリスト
1
日本国内に住所がある60歳以上65歳未満である
2
老齢基礎年金の繰上げ支給を受けていない
3
20歳以上60歳未満の保険料の納付月数が480月(40年)未満である
4
厚生年金保険・共済組合等に加入していない
このほか、次の人も加入できます。
・年金の受給資格期間を満たしていない65歳以上70歳未満の人
・外国に居住する日本人で、20歳以上65歳未満の人

条件2に注意してください。老齢基礎年金の繰上げ受給を始めてしまうと、任意加入の道は閉じます。60歳で年金を早くもらい始めるか、任意加入して年金額を増やすかは、二者択一です。繰上げの減額率とあわせて判断したい方は、年金の繰上げ・繰下げの損益分岐もご覧ください。

条件4も見落としがちです。60歳以降も会社員として厚生年金に入って働いているなら、そちらで加入期間が増えていくので任意加入はできません。

いくら払って、いくら増えるのか|2026年度の数字で計算する

厚生労働省が2026年1月23日に公表した令和8年度の年金額改定によると、2026年度の国民年金保険料は月17,920円(前年度から410円増)、老齢基礎年金の満額は月70,608円・年847,300円です。

老齢基礎年金は480月(40年)納めて満額になるので、1か月ぶんの価値は 847,300円 ÷ 480 = 約1,765円(年額)。これが計算の土台です。

図2|任意加入の期間別・払う額と増える年金(2026年度の額で試算)
加入期間保険料の総額増える年金(年額)月額換算
1年(12か月)215,040円約21,200円約1,770円
2年(24か月)430,080円約42,400円約3,530円
3年(36か月)645,120円約63,500円約5,300円
5年(60か月)1,075,200円約105,900円約8,830円
※保険料は2026年度の月17,920円で固定して計算した概算です。実際の保険料は毎年度改定され、2027年度は月18,290円になることが公表されています。年金額も毎年度改定されます。

では、何年受け取れば元が取れるのか。5年フルで納めた場合、1,075,200円 ÷ 年105,900円 = 約10.15年。つまりおよそ10年2か月です。

図3|受け取り開始からの累計額の推移(5年フル加入・保険料107.5万円の場合)
支払った保険料 1,075,200円 5年後 7年後 8.5年後 10.2年後← 損益分岐 12年後 15年後 累計0円 約159万円
※増える年金額を年105,900円で固定した概算です。実際の年金額は毎年度改定されるため、この図は目安としてご覧ください。

65歳から受け取り始めるなら、75歳を過ぎたあたりが損益の分かれ目ということになります。厚生労働省の令和6年簡易生命表では65歳男性の平均余命は19.47年、女性は24.38年ですから、平均的な寿命まで生きれば回収できる計算です。ただし「増えた年金にも税・社会保険料がかかる」点は割り引いて考える必要があります。

月400円で効率を上げる|付加保険料の併用

意外と知られていないのが、65歳未満の任意加入被保険者は付加保険料を納められることです。定額の保険料に月400円を上乗せすると、老齢基礎年金に「200円 × 納付月数」(年額)が一生涯上乗せされます。

5年ぶん納めた場合、付加保険料は 400円 × 60か月 = 24,000円。増える付加年金は 200円 × 60か月 = 年12,000円です。2年受け取れば元が取れます。任意加入するなら、付加保険料を付けない理由はほとんどありません。

ただし、国民年金基金に加入している人は付加保険料を納められません。iDeCo(個人型確定拠出年金)とは同時加入できますが、拠出限度額の扱いが変わるため、運営管理機関に確認してください。

手続きの流れ|60歳の誕生日前日から動ける

任意加入で最も大事なルールは、申し出た月からしか加入できないという一点です。さかのぼって納めることはできません。60歳の誕生日の前日から手続きできるので、「気づいたら1年過ぎていた」という取りこぼしを避けるために、早めに動いてください。

図4|任意加入の手続きタイムライン
60歳の数か月前
ねんきん定期便・ねんきんネットで納付月数を確認
480月に何か月足りないかを数える。年金事務所で正確な記録を照会してもよい。
誕生日の前日〜
市区町村の国民年金窓口、または年金事務所で申し出
この日から手続き可能。申し出た月からの加入になる。
同時に
付加保険料の納付も申し出る
同じ「国民年金被保険者関係届書(申出書)」で手続きできる。こちらも申出月から。
その後
口座振替で納付が始まる
任意加入は口座振替が原則。国内居住者は納付書払いを選べないのが通常。
480月到達時
自動的に資格を喪失する
納付月数が480月に達した時点で任意加入被保険者ではなくなる。

窓口に持っていくもの

  • 通帳やキャッシュカードなど口座情報がわかるもの、および金融機関への届出印
  • 基礎年金番号通知書、または年金手帳など基礎年金番号がわかる書類
    (マイナンバーで手続きする場合はマイナンバーカード。無い場合は、番号確認書類+運転免許証などの身元確認書類)

申し込み先は、お住まいの市区町村役場の国民年金担当窓口、または年金事務所です。

パターン別の分岐|あなたはどれに当てはまるか

図5|状況別・任意加入をどう考えるか
A|受給資格期間(10年)に届いていない
最優先で検討。ここは損得の話ではありません。10年に届かなければ老齢基礎年金は1円も受け取れません。65歳になっても足りない場合は70歳まで任意加入できる特例があります。
B|480月に足りず、60歳以降に無職・自営業
基本的に検討する価値がある。回収は約10年2か月。長生きするほど有利で、付加保険料を併用すればさらに効率が上がります。
C|60歳以降も厚生年金で働く
任意加入はできない。ただし厚生年金の加入で「経過的加算」により基礎年金部分の不足が埋まっていくことがあります。ねんきんネットで見込額を確認してください。
D|手元資金に余裕がない
無理をしない。60代前半の月17,920円は軽くありません。回収に10年かかる以上、生活を削ってまで満額を目指す必要はありません。1年だけ、といった部分加入も可能です。
E|すでに繰上げ受給を始めている
任意加入はできない。繰上げ請求は取り消せません。繰上げを検討中で、かつ納付月数が足りない人は、請求前にどちらが有利か必ず試算してください。

保険料の免除や納付猶予を受けていた期間がある人は、追納(10年以内)のほうが先に検討すべき選択肢になることがあります。免除期間は年金額に一部しか反映されないため、追納で満額に近づけられる場合があるからです。

イレギュラー・現場対応|窓口でつまずきやすい点

公式ページには短く書かれているだけで、実際の窓口で戸惑いやすい点を、自治体の案内や利用者の発信から編集部の視点で要約します。

1. 口座振替が原則で、納付書払いを選べない

日本年金機構は「任意加入の保険料の納付方法は口座振替が原則」としています。多くの自治体は、口座振替ができない正当な事由がある場合に「事由該当申出書」の提出を求める運用をしています。窓口に行く前に、通帳と金融機関の届出印を必ず用意してください。これを忘れて出直しになる例が非常に多いパターンです。

2. 「480月に足りない月数」の数え方でずれる

ねんきん定期便の表示だけで数えると、免除期間や第3号被保険者期間の扱いを取り違えることがあります。年金事務所で加入記録を出してもらい、不足月数を確定させてから手続きするのが確実です。予約相談を使えば待ち時間も短くなります。

3. 誕生日の「前日」という起点

年金の年齢は誕生日の前日に到達する扱いです。たとえば4月1日生まれの人は3月31日に60歳になったものとして扱われ、3月分から任意加入できます。月初生まれの人ほど、1か月分の得失が生じやすいので注意してください。

4. 途中でやめることもできる

任意加入は5年間続けなければならない制度ではありません。資金繰りが厳しくなれば、申し出て脱退できます。「続けられるか不安だから申し込まない」より、まず入って必要なだけ納めるほうが取りこぼしは少なくなります。

5. 免除・納付猶予は申請できなくなる

任意加入している間は、免除・納付猶予や学生納付特例の申請ができません。保険料は全額自己負担になる前提で判断してください。

相場観と編集部の価値判断

金融商品として見れば、任意加入の利回りは「約10年で元本回収、その後は終身で受け取れる」というものです。民間の個人年金保険でこの条件を確保するのは容易ではありません。しかも払った保険料は全額が社会保険料控除の対象になるため、所得のある人ほど実質負担は下がります。

損しないための3つのポイント
  • 60歳の誕生日前日を過ぎたら、まず不足月数を確認する。さかのぼれないので、迷っている期間そのものが損になります。
  • 入るなら付加保険料も同時に申し出る。月400円の上乗せで、2年で回収できる上乗せ年金が付きます。
  • 繰上げ受給を請求する前に必ず試算する。繰上げを始めると任意加入の道は閉じ、取り消しもできません。

一方で、率直に言えば誰にでも勧められる制度ではありません。健康状態に不安がある、60代前半の家計に余裕がない、そもそも厚生年金の受給額が十分にある。こうした場合は、無理に満額を目指す意味は薄いと考えます。判断に迷うときは、年金事務所の予約相談で自分の数字を出してもらってください。

退職前後の手続き全体を見渡したい方は、退職・年金のガイドもあわせてご覧ください。

よくある質問

国民年金の任意加入は何歳まで入れますか?

原則は65歳になるまでです。ただし、年金の受給資格期間(10年)を満たしていない場合に限り、65歳以上70歳未満でも任意加入できる特例があります。

さかのぼって過去の未納期間を納められますか?

できません。任意加入は申し出のあった月からの加入で、遡及して加入することはできない仕組みです。なお、免除や納付猶予を受けた期間については、承認された月から10年以内であれば追納が可能です。

2026年度の保険料はいくらですか?

月17,920円です。前年度から410円の引き上げで、2027年度は月18,290円になることが公表されています。任意加入では原則として口座振替で納付します。

5年間任意加入すると年金はいくら増えますか?

2026年度の額で試算すると、60か月ぶんで年およそ105,900円(月8,800円ほど)増えます。納める保険料の総額は約107.5万円なので、およそ10年2か月で元が取れる計算です。

繰上げ受給をしていても任意加入できますか?

できません。老齢基礎年金の繰上げ支給を受けていないことが任意加入の条件のひとつです。繰上げ請求は後から取り消せないため、納付月数が足りない人は請求前に試算してください。

付加保険料も一緒に納められますか?

65歳未満の任意加入被保険者であれば納められます。月400円の上乗せで、老齢基礎年金に「200円×納付月数」(年額)が一生涯加算されます。ただし国民年金基金の加入員は納付できません。

あなたの体験を聞かせてください

この手続きで「実際はこうだった」「ここでつまずいた」という経験があれば、体験談募集フォームから教えてください。許諾をいただいたものだけ、出所を明示して記事に反映します。

出典・参考

本記事は2026年8月26日時点の公表情報をもとに編集部が試算・整理したものです。金額は概算であり、実際の年金額は加入記録・改定率・課税関係によって変わります。個別の判断は年金事務所または社会保険労務士にご確認ください。本記事は税務・年金の個別助言ではありません。

年金を増やすより先に効くこともある|固定費の見直し

任意加入で増える年金は月8,800円ほどです。同じ金額は、毎月の通信費と光熱費を見直すことでも作れます。どちらが自分に向くかを比べるために、手続きの手順と注意点をまとめた2本を置いておきます。

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この記事を書いた人

みんなのミカタナビ編集部です。運営者・たくの編集方針のもと、相続・出産・退職・補助金など「知らないと損する手続きとお金」を、公的機関の一次情報と体験談の取材をもとに時系列で整理しています。数値・期限は必ず公式情報で裏取りし、出典を明記します。

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