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死亡一時金と寡婦年金はどちらを選ぶか【2026年版】一時金は最大328,500円・寡婦年金は年最大635,472円|時効2年で選び直しはできない

和室のテーブルで年金の書類に向き合う60代の女性

国民年金だけに入っていた夫や親が亡くなったとき、遺族基礎年金は「18歳到達年度末までの子がいる配偶者か子」しか受け取れません。子どもが独立していれば、遺族基礎年金は1円も出ないことになります。その受け皿として国民年金には死亡一時金と寡婦年金という2つの独自給付があり、両方の条件を満たしてもどちらか一方しか選べません。しかも死亡一時金には「死亡日の翌日から2年」という時効があり、寡婦年金を待っているうちに片方の選択肢が消えます。この記事では日本年金機構の制度ページをもとに、金額・期限・選び方を整理します(2026年8月23日時点)。

この記事の結論

  • 死亡一時金は120,000円〜320,000円の一時払い。付加保険料を36月以上納めていれば8,500円が加算される。
  • 寡婦年金は妻が60歳から65歳になるまでの5年間の年金。夫の第1号被保険者期間だけで計算した老齢基礎年金額の4分の3で、上限イメージは年635,472円。
  • 両方の条件を満たす場合はどちらか一方を選ぶ。金額だけを見れば寡婦年金が有利になりやすい。
  • ただし死亡一時金の時効は死亡日の翌日から2年。妻が60歳になるまで待つと、その間に死亡一時金の権利は消える。「後から選び直す」はできない。
  • 妻が繰上げ支給の老齢基礎年金を受けていると寡婦年金は支給されない。繰上げを検討中なら順番に注意する。
目次

まず、自分がどちらの土俵に立っているかを確かめる

この2つはどちらも「国民年金の第1号被保険者だった人が、老齢基礎年金も障害基礎年金も受け取らないまま亡くなったとき」の給付です。会社員(第2号)や扶養に入っていた配偶者(第3号)としての期間は、この判定には使えません。まず故人の年金記録のうち第1号被保険者だった期間を切り出すところから始まります。

どちらの受給資格があるかの判定(編集部作成)

遺族基礎年金を受けられる場合は、原則としてこの2つの出番はありません

第1号被保険者だった人が死亡 遺族基礎年金を受けられるか いいえ 死亡一時金 保険料を納めた月数が36月以上 配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹 時効は死亡日の翌日から2年 寡婦年金 納付+免除の期間が10年以上ある夫 婚姻10年以上・生計維持されていた妻 妻が60歳から65歳になるまで

死亡一時金は妻に限らず、生計を同じくしていた遺族が配偶者→子→父母→孫→祖父母→兄弟姉妹の順で請求できます。一方の寡婦年金は名前のとおり妻だけの給付です。つまり、独身の子が亡くなった親の分を請求するようなケースでは、そもそも死亡一時金しか選択肢がありません。「どちらを選ぶか」で本当に悩むのは、60歳前後の妻の場面に絞られます。

死亡一時金は12万円〜32万円。時効は死亡日の翌日から2年

死亡一時金は、死亡日の前日において第1号被保険者として保険料を納めた月数が36月(3年)以上ある人が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けないまま亡くなったときに支給されます。4分の3納付の月は0.75月、半額納付の月は0.5月、4分の1納付の月は0.25月として数えます。金額は納付月数で6段階です。

死亡一時金の額(保険料を納めた期間別)

保険料を納めた期間一時金の額
3年以上15年未満120,000円
15年以上20年未満145,000円
20年以上25年未満170,000円
25年以上30年未満220,000円
30年以上35年未満270,000円
35年以上320,000円
付加保険料を36月以上納めていた場合+8,500円

出典:日本年金機構「死亡一時金」/大阪市「死亡一時金」(2026年4月1日更新)

上限まで納めていても328,500円です。葬儀費用の全額をまかなえる規模ではありませんが、国民健康保険の葬祭費(多くの自治体で3万〜7万円)などと合わせれば足しにはなります。請求先は住所地の市区町村役場の窓口で、年金事務所や街角の年金相談センターでも手続きできます。

寡婦年金は60歳から65歳まで。上限イメージは年635,472円

寡婦年金は、死亡日の前日において第1号被保険者としての保険料納付済期間と保険料免除期間が合わせて10年以上ある夫が亡くなったとき、その夫と10年以上継続して婚姻関係(事実上の婚姻関係を含む)にあり、死亡当時に生計を維持されていた妻に、60歳から65歳になるまでの間支給されます。学生納付特例期間と納付猶予期間は10年の判定には含まれますが、年金額には反映されません。

年金額は夫の第1号被保険者期間だけで計算した老齢基礎年金額の4分の3です。令和8年度の老齢基礎年金の満額は月70,608円(昭和31年4月2日以後生まれ)=年847,296円ですので、夫が第1号のまま40年間納めきっていた場合の上限イメージは847,296円×4分の3=年635,472円、月あたり約52,956円になります。納付期間が20年なら、その半分の年約317,736円が目安です。

受け取れる総額の比較(上限どうしで並べた場合)

夫が第1号で40年納付・妻が60歳から65歳まで満額受け取ったと仮定した編集部の試算

死亡一時金(上限) 328,500円 寡婦年金・1年分 635,472円 寡婦年金・5年分 3,177,360円

グラフのとおり、寡婦年金は1年分だけでも死亡一時金の上限を上回ります。夫の納付期間が短いケースでも、寡婦年金の年額は死亡一時金の額を1〜2年で追い越す構造です。単純な損得だけを見るなら、寡婦年金を受けられる妻は寡婦年金を選ぶのが合理的、というのが出発点になります。

それでも死亡一時金を選ぶ人がいる理由

金額で寡婦年金が上回るのに選択で悩む理由は、寡婦年金が「妻が60歳になるまで1円も出ない」年金だからです。妻が45歳で夫を亡くせば、受け取り開始は15年後。その間に再婚すれば権利は消え、妻自身が60歳前に亡くなればゼロです。一方の死亡一時金は請求すればすぐ振り込まれますが、時効は死亡日の翌日から2年。「寡婦年金を待つ」と決めた時点で、2年後には死亡一時金という選択肢が消えます。

パターン別・どちらに寄せるか

妻の状況傾きやすい選択理由
すでに60歳以上65歳未満寡婦年金すぐ受給が始まり、残り年数分がそのまま上乗せになる
55歳〜59歳寡婦年金が有力待期間が数年で、5年分をほぼ取り切れる見通しが立つ
50歳未満で当面の現金が必要死亡一時金も検討受給開始まで10年以上あり、再婚・死亡で権利が消える不確実性がある
老齢基礎年金の繰上げを考えている死亡一時金繰上げ支給を受けていると寡婦年金は支給されない
遺族厚生年金など別の年金を受けている要相談妻が他の年金を受けている場合は年金どうしの選択になるため、年金事務所で試算してもらう

損しないための3つのポイント

  1. 「待つ」と決めた瞬間に片方が消えることを理解する。死亡一時金の時効は2年。妻が58歳未満なら、寡婦年金の開始を待つ間に死亡一時金の請求期限が先に来る。
  2. 繰上げ受給の申請より先に、寡婦年金の要件を確かめる。繰上げ支給の老齢基礎年金を受け始めてしまうと寡婦年金は支給されない。順番を逆にすると取り返せない。
  3. 夫の年金記録は「第1号だけ」を切り出して数える。会社員期間が長い夫だと第1号の納付月数が36月に届かず、死亡一時金の対象外になることがある。ねんきん定期便や年金事務所の記録照会で先に確認する。

手続きの時系列と必要書類

どちらを選ぶにしても、最初にやることは同じです。「遺族基礎年金が出るか」「第1号の記録がどれだけあるか」を確認しないと、比較のしようがありません。窓口は住所地の市区町村役場、または年金事務所・街角の年金相談センターです。寡婦年金は電子申請(e-Gov)にも対応しています。

請求までのタイムライン

  1. 遺族基礎年金の可否を確かめる(死亡後すぐ):18歳到達年度の末日までの子がいるかどうかで結論が変わる。遺族基礎年金を受けられるなら死亡一時金は出ない。
  2. 故人の年金記録を取り寄せる(〜1か月):第1号被保険者としての納付月数・免除月数・付加保険料の月数を確認する。年金事務所で記録照会ができる。
  3. 2つの給付の要件を突き合わせる:死亡一時金は納付36月以上、寡婦年金は納付+免除10年以上かつ婚姻10年以上。片方しか該当しないならそこで決まる。
  4. 両方に該当する場合、妻の年齢で比較する:60歳までの残り年数、繰上げ受給の予定、当面の資金繰りを並べて決める。年金事務所で寡婦年金の見込額を試算してもらう。
  5. 請求書と添付書類をそろえる:死亡一時金は国民年金死亡一時金請求書、寡婦年金は年金請求書(国民年金寡婦年金)。戸籍謄本、世帯全員の住民票の写し、死亡者の住民票の除票、本人名義の通帳など。マイナンバーの記入で省略できる書類がある。
  6. 窓口へ提出する(死亡一時金は2年以内):住所地の市区町村役場、または年金事務所・街角の年金相談センターへ。

添付書類でつまずきやすいのは戸籍謄本と住民票の「取得日」です。死亡一時金では戸籍謄本は死亡日以降に交付されたもの、住民票も死亡日以降に交付されたものが求められます。寡婦年金ではさらに厳しく、受給権発生日以降で提出日から6か月以内に交付されたものという条件が付きます。葬儀の直後にまとめて取った戸籍を数か月寝かせてしまうと、寡婦年金の請求では取り直しになることがあります。

イレギュラー・現場でつまずくところ

実務でよく起きる4つの落とし穴

  • 夫が老齢基礎年金を1回でも受け取っていた。この場合、寡婦年金も死亡一時金も出ません。60代前半で亡くなった夫が繰上げ受給を始めていた、というのが典型例です。
  • 内縁関係だった。寡婦年金は事実上の婚姻関係も対象ですが、10年以上継続していたことを示す資料が必要になります。生計維持の確認資料も含めて、事前に年金事務所へ相談してください。
  • 失踪宣告を受けた場合。死亡一時金の請求期間は「失踪宣告の審判の確定日の翌日から2年以内」と、通常とは起算日が異なります。
  • 選び直しはできない。どちらか一方を受け取ったあとで「やはり反対がよかった」と変更することは原則としてできません。迷ったら請求前に年金事務所で両方の試算を出してもらってください。

もうひとつ、2026年以降に効いてくる論点があります。日本年金機構は死亡一時金のページで令和7年の法律改正による留意事項を告知しており、令和10年4月1日以後は、生計を同じくする父または母がいる場合でも子が遺族基礎年金を受けられるようになると説明しています。ただし経過措置があり、令和8年4月1日から令和10年3月31日までに権利が発生した死亡一時金を父または母が受け取った場合、生計を同じくする子の遺族基礎年金は引き続き支給停止されます。子がいる世帯で死亡一時金を請求する場合は、いま受け取ることで子の遺族基礎年金が止まらないかを必ず窓口で確認してください。

相場観と編集部の価値判断

制度の設計を素直に読むと、寡婦年金は「妻が60歳から65歳までの空白を埋める橋渡し」として作られています。60歳から65歳は、老齢基礎年金がまだ始まらず、働き口も細りやすい5年間です。ここに月5万円前後が入るかどうかは家計への影響が大きく、金額の比較でも寡婦年金が圧倒します。したがって編集部としては、妻が55歳以上であれば寡婦年金を軸に検討するのが素直だと考えています。

逆に、妻が40代など受給開始まで長い場合は判断が割れます。理屈のうえでは寡婦年金の期待値が高くても、15年後まで再婚せず、生存し、繰上げ受給もしないという条件をすべて満たす必要があります。ここで「2年で消える32万円」を確実に取るという判断は、決して不合理ではありません。どちらが正解かは家計の切迫度で変わるため、本記事は結論を押し付けず、2年の時効という後戻りできない期限だけは必ず意識してほしいという立場です。なお金額・要件は制度改正で変わりますので、最終的な判断の前に年金事務所で最新の試算を受けてください。

よくある質問

死亡一時金と寡婦年金は両方もらえますか?

両方の条件を満たしていても併給はできず、どちらか一方を選びます。日本年金機構も「寡婦年金を受けられる場合は、どちらか一方を選択します」と明記しています。また、遺族が遺族基礎年金を受けられるときは死亡一時金は支給されません。一度受け取ったあとで反対側に変更することは原則としてできないため、請求前に年金事務所で両方の見込額を確認してください。

死亡一時金はいくらもらえますか?

第1号被保険者として保険料を納めた月数に応じて120,000円から320,000円です。3年以上15年未満が120,000円、15年以上20年未満が145,000円、20年以上25年未満が170,000円、25年以上30年未満が220,000円、30年以上35年未満が270,000円、35年以上が320,000円です。付加保険料を納めた月数が36月以上ある場合は8,500円が加算されるため、最大で328,500円になります。

寡婦年金は月いくらくらいですか?

夫の第1号被保険者期間だけで計算した老齢基礎年金額の4分の3です。令和8年度の老齢基礎年金の満額は月70,608円(年847,296円)ですので、夫が第1号のまま40年納めきっていた場合の上限イメージは年635,472円、月あたり約52,956円です。夫の納付期間が20年ならおおむねその半分になります。正確な額は年金事務所で試算してもらってください。

請求はいつまでにすればいいですか?

死亡一時金を受ける権利の時効は、死亡日の翌日から2年です。失踪宣告を受けた場合は、審判の確定日の翌日から2年以内となります。寡婦年金については日本年金機構の制度ページに請求期限の記載はありませんが、年金は請求が遅れるとさかのぼって受け取れる範囲が限られます。妻が60歳になったら早めに手続きしてください。

夫が老齢基礎年金を受け取っていた場合はどうなりますか?

亡くなった夫が老齢基礎年金または障害基礎年金を受けたことがあるときは、寡婦年金は支給されません。死亡一時金も、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けないまま亡くなった方が対象です。繰上げ支給で60歳台前半から年金を受け取り始めていたケースでは、どちらも対象外になる可能性が高いため、まず受給歴を確認してください。なお、妻自身が繰上げ支給の老齢基礎年金を受けている場合も寡婦年金は支給されません。

出典・参考

  • 日本年金機構「死亡一時金」(2026年4月1日更新/金額・要件・時効2年・令和7年法律改正による留意事項)
  • 日本年金機構「死亡一時金を受けるとき」(必要書類・提出先・失踪宣告の取り扱い)
  • 日本年金機構「寡婦年金」(要件・年金額の計算・支給されない場合)
  • 日本年金機構「寡婦年金を受けるとき」(2025年12月16日更新/添付書類・電子申請)
  • 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」(老齢基礎年金の満額 月70,608円)
  • 大阪市「死亡一時金」(2026年4月1日更新/納付期間別の金額表)
  • 大田区「寡婦年金(国民年金)」(2026年5月12日更新/他の年金との選択)

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この記事を書いた人

みんなのミカタナビ編集部です。運営者・たくの編集方針のもと、相続・出産・退職・補助金など「知らないと損する手続きとお金」を、公的機関の一次情報と体験談の取材をもとに時系列で整理しています。数値・期限は必ず公式情報で裏取りし、出典を明記します。

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