離婚時の年金分割は、離婚等をした日の翌日から5年以内に請求します(2026年4月1日より前の離婚は2年以内)。分けられるのは厚生年金の報酬比例部分だけで、国民年金の老齢基礎年金は対象外です。以下、請求の手順と必要書類を整理します。
- いつまでに:請求期限は離婚等をした日の翌日から5年以内。ただし令和8年(2026年)4月1日より前に離婚した場合は2年以内のままです。ここを間違えると請求権を失います。
- 何を:分けられるのは厚生年金の報酬比例部分だけ。国民年金の老齢基礎年金は分割されません。
- 2種類ある:合意分割(婚姻期間全体・相手の合意または裁判が必要・上限1/2)と3号分割(平成20年4月1日以後の第3号被保険者期間・自動的に1/2・相手の合意不要)。
- 最初にやること:年金事務所で「年金分割のための情報通知書」を取る。離婚前でも請求できます。取得までおおむね3〜4週間。
離婚の話し合いで年金分割が抜け落ちたまま成立してしまうと、あとで取り返せません。2026年4月1日から請求期限が2年から5年に延びましたが、これはその日以後に離婚した人だけの話です。それより前に離婚した方は今も2年のままなので、心当たりのある方は日付の確認を最優先にしてください。
この記事では、期限の数え方、2種類の分割の違い、必要書類、そして年金事務所で実際につまずくところまでを手順の形でまとめます。
この記事の基準日:2026年8月6日。制度内容は日本年金機構の公式ページ(2026年4月1日更新)で確認しています。按分割合の決め方は個別事情によるため、争いがある場合は弁護士等の専門家にご相談ください。
まず期限を確認する(ここが最重要)
期限の起算点になる「離婚等をした日」は、①離婚をしたとき、②婚姻の取り消しをしたとき、③事実婚関係にある人が国民年金第3号被保険者資格を喪失し事実婚関係が解消したと認められるとき、のいずれかです。
期限の特例(過ぎても間に合う場合)
裁判手続きが絡む場合には特例があります。離婚から5年(2026年4月1日より前の離婚は2年)を経過するまでに審判や調停を申し立てていた場合で、本来の請求期限を過ぎてから、または期限日前6か月以内に審判が確定・調停が成立したときは、その日の翌日から6か月経過するまで請求できます。按分割合に関する附帯処分を求める申立てを行い、判決が確定した場合・和解が成立した場合も同様です。
また、按分割合を決めた後、分割手続き前に当事者の一方が亡くなった場合は、死亡日から1か月以内に限り請求が認められます。
合意分割と3号分割の違い
| 合意分割 | 3号分割 | |
|---|---|---|
| 対象となる離婚 | 平成19年4月1日以後の離婚等 | 平成20年4月1日以後の第3号被保険者期間がある場合 |
| 分割の対象期間 | 婚姻期間中の厚生年金記録の全体 | 平成20年4月1日以後の第3号被保険者期間中の記録のみ |
| 相手の合意 | 必要(合意できなければ裁判手続きで按分割合を定める) | 不要(一方の請求のみで手続き可能) |
| 分割の割合 | 当事者の合意または裁判で定めた按分割合(上限1/2) | 自動的に2分の1 |
| 請求できる時期 | 離婚後 | 離婚後 |
| 同時に行われるか | 婚姻期間中に3号分割の対象期間が含まれるときは、合意分割の請求で3号分割も同時に請求があったとみなされます | — |
専業主婦(主夫)期間が平成20年4月以後にある場合は、その部分は相手の合意がなくても半分になります。一方で平成20年3月までの期間や、自分も働いていた期間については合意分割の話し合いが必要です。
手続きの時系列
必要書類(公式に定められているもの)
情報通知書の請求に必要なもの
- 年金分割のための情報提供請求書
- 基礎年金番号を明らかにできる書類(基礎年金番号通知書・年金手帳等)、またはマイナンバーカード等
- 婚姻期間を明らかにできる書類:それぞれの戸籍謄本または戸籍抄本。請求日から6か月以内に交付され、婚姻日および離婚日が確認できるもの
- 事実婚の場合は、事実婚関係にあったことを明らかにできる書類(住民票等)
分割請求(標準報酬改定請求)に必要なもの
- 標準報酬改定請求書
- 基礎年金番号を明らかにできる書類、またはマイナンバーカード等
- 婚姻期間を明らかにできる書類(それぞれの戸籍謄本等・請求日から6か月以内)
- 請求日前1か月以内に交付されたお二人の生存を証明できる書類(戸籍謄本・戸籍抄本または住民票。請求書にマイナンバーを記入すれば省略可)
- 按分割合を明らかにできる書類(いずれか1つ)
・公正証書の謄本または抄本
・公証人の認証を受けた私署証書
・年金分割の合意書(二人そろって年金事務所に持参が必要)
・審判/判決の場合は謄本または抄本+確定証明書
・調停/和解の場合は調書の謄本または抄本
損しないポイント
- 年金分割は自動では行われません。離婚届を出しただけでは何も起きません。請求しなければ1円も分割されません。
- すでに老齢厚生年金を受けている場合、増額されるのは請求した月の翌月分から。受給中の方は請求が遅れるほど取り戻せない月が積み上がります。
- 情報通知書は離婚前に取っておく。取得に3〜4週間かかるため、離婚後に慌てると話し合いの材料がないまま期限が近づきます。
- 戸籍謄本には有効期限がある。婚姻期間の確認用は請求日から6か月以内、生存確認用は請求日前1か月以内。使い回そうとして出し直しになるのが典型的なつまずきです。
- 分割を受けても、受給資格期間や支給開始年齢の条件は自分で満たす必要があります。分割後の記録に基づく老齢厚生年金を受けるには、自身の加入期間等で受給資格を満たしていることが必要です。
あなたの場合はこう(状況別)
| あなたの状況 | 動き方 |
|---|---|
| 平成20年4月以後、ずっと相手の扶養(第3号被保険者)だった | その期間は3号分割で自動的に1/2。相手の合意は不要。まず情報通知書で対象期間を確認する |
| 共働きで、お互いに厚生年金に加入していた | 合意分割の話し合いが必要。収入差が小さいと分割してもほとんど増えない場合がある。情報通知書で増減の幅を確認してから判断 |
| 相手が自営業で国民年金だけだった | 分割の対象は厚生年金の報酬比例部分のみ。婚姻期間中に厚生年金の記録がなければ分割できません |
| 相手が話し合いに応じない | 家庭裁判所の調停・審判へ。期限内に申立てをしておけば6か月の特例が使えます。まず情報通知書を取る |
| 2026年4月1日より前に離婚した | 期限は2年。日付を数えて残り期間を確認。過ぎている場合でも裁判手続きの特例に該当しないか年金事務所に相談 |
| すでに年金を受け取っている | 増額は請求月の翌月分から。1か月でも早く請求する |
| 事実婚を解消した | 第3号被保険者資格の喪失と事実婚関係の解消が認められる場合は対象。事実を明らかにできる書類(住民票等)が必要 |
年金事務所で実際に起きること(現場対応)
手続きの実務解説で共通して指摘される点をまとめます。
まず情報通知書は紙のみの交付で、窓口または郵送での受け取りになります。取得までおおむね3〜4週間かかると案内されており、年金事務所に電話予約をしてから窓口で受け取るのが最も早いという助言が複数の解説で共通しています。なお年金分割については管轄がなく、全国どこの年金事務所でも手続きできると説明されています。
次に「年金分割の合意書」を使う場合の二人同行です。公正証書や公証人の認証を受けた私署証書ではなく合意書で請求する場合、日本年金機構の案内ではお二人(それぞれ代理人可)がそろって年金事務所に合意書を持参する必要があるとされています。代理人が行く場合は、代理人自身の本人確認書類のほかに、委任状に押印した印鑑の印鑑登録証明書が必要です。「離婚後に二人で窓口へ行く」のが難しい事情があるなら、離婚前に公正証書にしておく方が現実的です。
本人確認書類にも細かい条件があります。運転経歴証明書は平成24年4月1日以降に発行されたもの、パスポートは令和2年2月4日までに発行された所持人記入欄があるものに限られます。窓口で足りずに再訪、という事態を避けるため、事前に電話で持ち物を確認しておくのが確実です。
どこまでやるか(編集部の判断材料)
よくある質問
年金分割の請求期限は何年ですか?
原則として離婚等をした日の翌日から起算して5年以内です。ただし令和8年(2026年)4月1日より前に離婚等をした場合は、離婚等をした日の翌日から起算して2年以内のままです。この期限は分割請求だけでなく、情報通知書を取得する情報提供請求にも同じくかかります。
期限を過ぎたらもう請求できませんか?
原則として請求できません。ただし離婚から期限を経過するまでに審判や調停を申し立てており、本来の請求期限の経過後または期限日前6か月以内に審判が確定・調停が成立した場合などは、その日の翌日から6か月経過するまで請求できます。按分割合を決めた後に一方が亡くなった場合は、死亡日から1か月以内に限り認められます。
相手が同意しなくても年金分割はできますか?
3号分割はできます。平成20年4月1日以後の国民年金第3号被保険者期間中の厚生年金記録については、一方からの請求のみで自動的に2分の1に分割されます。一方、合意分割は当事者双方の合意または家庭裁判所の調停・審判で按分割合を定める必要があります。
分割されるのは年金の半分ですか?
いいえ。分割の対象は婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)で、効果は厚生年金の報酬比例部分に限られます。国民年金の老齢基礎年金には影響しません。また按分割合の上限は2分の1です。
情報通知書はどこで、どのくらいで取れますか?
お近くの年金事務所に「年金分割のための情報提供請求書」を提出して請求します。離婚の前でも後でも請求できます。取得までおおむね3〜4週間かかると案内されており、電話予約のうえ窓口で受け取るのが最も早い方法とされています。年金分割には管轄がなく、全国どこの年金事務所でも手続きできます。
年金分割の合意書で請求する場合、一人で年金事務所に行けますか?
日本年金機構の案内では、合意分割の請求のためにお二人(それぞれ代理人可)がそろって年金事務所に合意書を持参する必要があるとされています。代理人が行く場合は、代理人自身の本人確認書類に加え、委任状に押印した印鑑の印鑑登録証明書が必要です。同行が難しい場合は公正証書にしておく方法があります。
すでに年金を受け取っています。請求したらいつから増えますか?
現に老齢厚生年金を受けている場合、年金分割の請求をした月の翌月分から年金額が変更されます。遡って増額されるわけではないため、請求が遅れた分は取り戻せません。
出典・関連記事
離婚にともなう住まいと契約の切り替え:引越し料金の相場と見積もりの取り方/電気・ガスの乗り換えと名義変更の手順。年金分割の手続きと並行して、住まいと公共料金の名義もあわせて整理しておくと後が楽になります。
