会計検査院の実地検査は入金後の数年後に来ます。令和6年度は中小機構分で399事業が対象となり25事業・約3億8,199万円が指摘され、最多の類型は補助金で買った設備の無断処分でした。情報基準日: 2026-08-20。
本記事にはプロモーション(アフィリエイト広告)が含まれます。紹介する順序や評価は、公的機関の一次情報および各社の公式情報をもとに編集部が独自に判断しており、広告の有無で内容を変えていません。
この記事の結論(3行)
- 令和6年度の会計実地検査は、ものづくり補助金172事業・事業再構築補助金227事業が対象。抜き打ちで現地に入る。
- 不当と認められたのは合計25件・約3億8,199万円。うち13事業主体は「処分制限財産の無断処分」で、不正ではなく手続きの理解不足が原因とされている。
- 備えの中心は証拠書類の5年保存と単価50万円以上の設備の使い道。この2つを押さえれば、検査は「見せるだけ」で終わる。
「確定検査」と「会計実地検査」はまったく別の検査
図1:3つの「検査」の違い
| 名称 | 時期 | 誰が来るか | 主に見るもの |
|---|---|---|---|
| 中間監査 | 補助事業の期間中(不定期) | 事務局の担当者 | 物品の入手・支払・進捗の状況(交付規程第18条) |
| 確定検査 | 実績報告書の提出後 | 事務局(必要に応じて訪問) | 経費の証拠書類と機械設備の現物。これを経て補助金額が確定する |
| 会計実地検査 | 補助事業の終了後。数年後に来ることがある | 会計検査院(国の検査機関) | 補助金の使途、経理内容、試作品等の開発の経緯・成果・活用状況 |
出典=ものづくり補助金「補助事業の手引き(21次締切)」をもとに編集部作成。
会計検査院は内閣から独立した憲法上の機関で、国のお金の使い道を検査します。補助金では事務局だけでなく受け取った事業者そのものが対象になり、工場や店舗へ検査官が来ます。
令和6年度に指摘されたのは25件・約3億8,199万円
図2:令和6年度の会計実地検査と指摘(中小機構分)
| 補助金 | 実地検査の対象 | 不当と認められた件数 | 不当と認める補助金相当額 |
|---|---|---|---|
| ものづくり補助金 | 155事業主体・172事業 | 5事業主体・5事業 | 3,738万円 |
| 事業再構築補助金 | 226事業主体・227事業 | 20事業主体・20事業 | 3億4,461万円 |
| 合計 | 399事業 | 25件 | 約3億8,199万円 |
会計検査院「令和6年度決算検査報告」(247)〜(271)をもとに編集部集計。金額は万円未満を四捨五入。
検査対象になった399事業のうち25事業が指摘を受けた計算です。事業再構築補助金は227事業中20事業で、率にすると1割近くになります。
処分制限財産は「台帳」で守る
指摘がいちばん多いのは、補助金で買った資産を届け出ずに処分してしまう場面です。取得価額と取得日、耐用年数を固定資産台帳に載せて自社資産と区別しておけば、処分前に承認が要るかどうかを毎回確認できます。
▶ ▶ 補助金の会計処理と圧縮記帳【2026年版】
▶ ▶ 補助金に税金はかかるのか【2026年版】
いちばん多い指摘は「処分制限財産の無断処分」
25件を検査報告の分類で数え直すと、突出して多い類型がひとつあります。補助金で買った単価50万円(税抜き)以上の設備を、承認を受けずに売った・貸した・捨てた・別の用途に使ったという事態です。
図3:指摘の類型別・事業主体数(令和6年度・中小機構分)
1つの事業主体が複数の事態に該当する場合があるため、合計は25を上回ります。
会計検査院「令和6年度決算検査報告」の類型区分をもとに編集部集計。
検査報告は指摘の原因を書き分けています。虚偽の実績報告には「適正な執行に対する認識が著しく欠けていた」、処分制限財産の無断処分には「手続を適正に行う必要があることの理解が十分でなかった」。後者は不正をしたつもりのない事業者が大半だということです。
実際の事例として、次のようなものが掲載されています(いずれも編集部で要約)。
- 導入した自動旋盤について、想定より受注が伸びなかったため、承認を受けないまま補助事業と関係のない部品加工に使っていた(残存簿価相当額910万円、処分制限期間10年)。
- 購入した包装機械を、誓約に反して稼働当初から専ら取引先の従業員に使わせており、事業計画に書いた事業を自ら実施していなかった。
注意:やめる・捨てる・貸すにも「事前の承認」がいる
事業がうまくいかなかったこと自体は指摘の対象ではありません。指摘されるのは手続きを踏まなかったことです。処分制限期間内に単価50万円(税抜き)以上の財産を処分するときは、事前に財産処分承認申請書(様式第10-1)を提出し、承認を受ける必要があります。事後承認はできません。廃棄も「処分」に含まれます。
関連:処分制限が切れた設備・不要になった什器を手放すとき
指摘のうち最多が「処分制限財産の無断処分」である一方、処分制限期間が満了した財産は承認なしで手放せます。期間を確認したうえで、売れるものと処分するものを分けると入れ替えの費用を抑えられます。事務所の移転をともなうなら、書類と什器の運び方も同時に決めておくと安全です。
検査で実際に見られる3つの領域
ものづくり補助金の手引きは、会計検査院の実地検査の対象を3つ挙げています。抽象的な「適正か」ではなく、具体的にこの3点を見ると明示されています。
- 試作品等の開発の経緯、成果及びその活用状況——実験データ、図面、仕様書、部品一覧、議事録。
- 補助金の使途内容(経理の処理方法を含む)——見積依頼書、相見積書、注文書、契約書、納品書、請求書、振込金受取書。
- 補助事業完了後の追加研究の有無、事業化時期・計画の内容・規模、収益見通し等——報告の内容と現物が合っているか。
- 「使わなくなった」時点で事務局に電話する。指摘の最多類型は不正ではなく手続き漏れ。売る・貸す・捨てる・別用途に回すのいずれも、動く前に相談すれば承認の道がある。
- 取得財産等管理台帳に処分制限期間を書き込む。台帳に「いつまで縛られるか」が書いてあれば、担当者が代わっても事故が起きない。
- 証拠書類は補助事業ごとに1箱にまとめて5年置く。科目別・物件別・時系列。検査当日に探し始めると、あるはずの書類が出てこない。
- 事業化状況報告のコピーを同じ箱に入れる。検査官は報告内容と現場を突き合わせる。自分が何を報告したかを言えないのがいちばん危ない。
- 設備に貼ったラベルを剥がさない。「もの補助 機-(番号)」の表示は現物特定の起点。剥がれていると、台帳と現物の照合に時間がかかる。
- 引越し料金の相場と見積もりの取り方【2026年版】|事業所移転の実費を先に把握する
- 引越し・新生活のインターネット回線ガイド【2026年版】|開通待ちを見込んだ申込時期の逆算
3つ目が抜けやすい領域です。事業化状況報告で「事業化済み・売上あり」と書いたのに現地では機械が止まったままだった、というズレは検査で気づかれます。
図4:入金後に残る義務の時間軸(ものづくり補助金の場合)
補助金の入金
確定検査を経て額が確定し、精算払で振り込まれる。ここが義務のスタート地点。
交付年度の終了後5年間|証拠書類の保存
経理の証拠書類は5年保存(交付規程第9条第2項)。開発記録・図面・議事録も同じく5年。
5年間・計6回|事業化状況・知的財産権等報告
毎年4月1日〜5月31日。ここに書いた内容が、そのまま検査で照合される。
処分制限期間|設備の使い道が縛られる
耐用年数省令と経済産業省告示に基づく期間。開発研究用の機械は4年、ソフトウェアは3年だが、内装や建物系は10年を超えるものもある。
この間、いつでも|会計検査院の実地検査
抜き打ちで入ることがある。時期・必要書類は事務局から連絡が入る。
ものづくり補助金「補助事業の手引き(21次締切)」をもとに編集部作成。
検査に強い帳簿は「支払った時点」で決まる
会計実地検査で見られるのは、補助対象経費と自社経費の区分・支払の事実・証憑の保存の3点です。取引が起きた時点で証憑と仕訳が結びついていれば、数年後にさかのぼって書類を探す作業そのものが不要になります。
▶ 補助金の証拠書類はいつまで保存するのか【2026年版】
▶ 補助金の見積書と相見積の取り方【2026年版】
指摘されるとどうなるか——返還・加算金・公表
不当と認められた場合の流れは補助金等適正化法に定められています。交付決定の取消し(第17条)、返還命令(第18条)、加算金(第19条)で、加算金は受け取った日から納付の日までの日数に応じて年10.95%。返還命令の期限に遅れれば年10.95%の延滞金(第20条)も加わります。
偽りその他不正の手段で交付を受けた場合は、5年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその併科という罰則もあります(第29条)。決算検査報告には事業者名と所在地が実名で掲載されます。
損しないポイント(5つ)
損しないポイント(5つ)
パターン別の分岐:あなたの状況はどれか
図5:状況別の対応チェックリスト
| いまの状況 | 先にやること |
|---|---|
| 補助事業が終わって数年たった。何も来ていない | 証拠書類の所在と、処分制限財産の現況を1回だけ棚卸しする。台帳と現物の一致を確認できていれば準備は足りる。 |
| 補助金で買った設備を使っていない・売りたい | 動かす前に事務局へ連絡し、財産処分承認申請書を提出する。承認後に処分し、収入があれば納付する。 |
| 補助事業とは別の用途にも使ってしまっている | 目的外使用も承認が必要。試作開発の成果を活用する生産転用なら、承認を受けることで納付が免除される仕組みがある。 |
| すでに承認を受けずに処分してしまった | 隠さずに事務局へ申し出る。残存簿価相当額をもとに納付額が算定される。指摘後に発覚するより、状況は必ず軽くなる。 |
| 検査の連絡が来た | 指定された書類の原本を用意する。写しでは確認できないと判断されると、その分が補助対象外になり得る。 |
イレギュラー・現場対応
災害で設備が壊れた・使えなくなった
手引きは「災害等により取得財産を使用できなくなった場合等も、まずは事務局までご連絡ください」としています。自己判断で廃棄すると無断処分になります。事業計画期間中は自然災害を含む損害を補償する保険・共済(付保割合50%以上)への加入も強く推奨されています。
担当者が退職して、当時の書類がどこにあるか分からない
まず交付決定通知書と実績報告書の控えを探してください。この2つで補助対象経費の一覧と取得財産の内容がたどれます。Jグランツで手続きした事業はシステム上に通知書が残るため、GビズIDの管理者アカウントの引き継ぎも同時に確認します。
会社を売却・合併した/事業をやめた
補助事業の承継は事前承認が必要で、承継者は前の事業者の権利義務を引き継ぎます。承認を受けずに実態だけ移すと、無断処分と評価される可能性があります。
相見積書がそろっていない支出がある
単価50万円(税抜き)以上の発注は原則2社以上の相見積が必要で、取れない場合は業者選定理由書を残す運用です。当時省いていたなら今から作れるものではありません。経緯を説明できる資料を同じ箱にまとめておくのが現実的な備えです。
相場観と編集部の価値判断
編集部の見立てでは、多くの事業者が取り違えているのは「検査=不正探し」という前提です。指摘25件のうち検査院が「認識が著しく欠けていた」と書いたのは虚偽報告の6事業主体で、残りの多くは手続きを知らなかった側です。
事業再構築補助金の指摘20件のうち11事業主体が処分制限財産の無断処分でした。撤退そのものは制度の想定内で、出口は用意されています。使わない選択をした時点で事務局に相談することが、金額的にも最も安い解決策です。
よくある質問
会計検査院の検査は、必ず来るのですか
全事業者に来るわけではありません。令和6年度の対象は、ものづくり補助金が155事業主体・172事業、事業再構築補助金が226事業主体・227事業でした。ただし手引きには「抜き打ちで実地検査に入ることがあります」とあり、来ない前提で書類を処分することはできません。
いつまで書類を保存すればよいですか
ものづくり補助金では経理の証拠書類は交付年度の終了後5年間の保存が必要です(交付規程第9条第2項)。実験データ・図面・部品一覧・議事録なども5年間の保存が求められ、処分制限財産は処分制限期間中の現物管理義務が続きます。
補助金で買った機械を別の仕事に使うのは違反ですか
承認を受けずに交付の目的に反して使うと目的外使用として指摘されます。事前に承認を得れば認められる場合があり、試作開発の成果を活用する生産転用は承認により納付義務が免除される仕組みもあります。
返還を求められたら、いくら払うことになりますか
財産処分では譲渡額または残存簿価相当額に、補助対象経費に対する補助金の割合を乗じて算定します。交付決定の取消しによる返還では年10.95%の加算金(適正化法第19条)が加わり、期限に遅れると年10.95%の延滞金(同第20条)も発生します。
指摘されると会社名は公表されますか
決算検査報告には不当事項として事業者名と所在地が掲載されます。個人事業主はアルファベット表記ですが法人は実名です。ものづくり補助金の手引きにも、違反発覚時の企業名公表と、悪質な事案での警察への告訴があり得ると記載されています。
あわせて読みたい
暮らしの実務で使えるガイド
・会計検査院「令和6年度決算検査報告」第3章第2節 第14 独立行政法人中小企業基盤整備機構(247)〜(271)
・ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金事務局「補助事業の手引き(21次締切)1.0版」(令和8年1月)
・補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号)第7条・第17条〜第20条・第22条・第29条
・補助事業等により取得し、又は効用の増加した財産の処分制限期間(令和5年4月26日経済産業省告示第64号)
本記事は公的情報をもとにみんなのミカタナビ編集部が整理したものです。個別の判断は必ず交付規程と事務局の案内でご確認ください。
