病気やけがで働けなくなったとき、「年金は65歳からでしょう」と思って何もしない人が多くいます。しかし障害年金は現役世代でも受け取れる年金で、がん・糖尿病・人工透析・うつ病や発達障害などの精神疾患も対象です。この記事は、日本年金機構が公表している「障害年金ガイド 令和8年度版」をもとに、いくらもらえるのか・誰がもらえるのか・どう請求するのかを、この通りに進めれば迷わない順番で整理しました。基準日は2026年7月28日です。
- 障害基礎年金は1級1,059,125円・2級847,300円(年額)。18歳年度末までの子がいれば2人目まで1人243,800円が加算されます。
- 障害厚生年金3級には最低保障635,500円があります。厚生年金加入中の初診なら3級でも受け取れます。
- カギは「初診日」。初診日にどの年金に入っていたかで、もらえる年金の種類と金額が変わります。
- さかのぼれるのは5年まで。心当たりがあるなら、まず年金事務所に相談するのが最短ルートです。
- 請求書は65歳の誕生日の前々日までに出す必要があります(事後重症による請求の場合)。
障害年金はいくらもらえる?【令和8年度・2026年度の金額】
障害年金には、初診日に国民年金に加入していた人が請求できる障害基礎年金(1級・2級)と、厚生年金に加入していた人が請求できる障害厚生年金(1級〜3級)があります。障害厚生年金の1級・2級に該当すると、障害基礎年金もあわせて受け取れます。
| 等級 | 障害基礎年金(年額) | 障害厚生年金(年額) |
|---|---|---|
| 1級 | 1,059,125円 昭和31年4月1日以前生まれは1,056,125円 | 報酬比例の年金額 × 1.25 +配偶者の加給年金243,800円 |
| 2級 | 847,300円 昭和31年4月1日以前生まれは844,900円 | 報酬比例の年金額 +配偶者の加給年金243,800円 |
| 3級 | なし | 報酬比例の年金額 最低保障 635,500円 昭和31年4月1日以前生まれは633,700円 |
| 障害手当金 (一時金) | なし | 報酬比例の年金額 × 2 を一時金で 最低保障 1,271,000円 昭和31年4月1日以前生まれは1,267,400円 |
子がいる人・配偶者がいる人は加算がある
1級・2級の障害基礎年金には子の加算、1級・2級の障害厚生年金には配偶者の加給年金がつきます(生計を維持されている対象者がいる場合)。
- 子2人まで:1人につき243,800円/3人目から:1人につき81,300円(障害基礎年金に加算)
- 配偶者:243,800円(障害厚生年金1級・2級に加算。配偶者が65歳未満であること)
- 対象になる子は、18歳になった後の最初の3月31日までの子、または20歳未満で障害等級1級・2級の状態にある子です。
たとえば2級の障害基礎年金を受け取る人に高校生の子が2人いれば、847,300円+243,800円×2=年額1,334,900円になります。
もらえる人の3条件|「初診日」がすべての起点
障害年金は、次の3つをすべて満たす人が受給できます。
- 初診日要件/障害の原因となった病気やけがで初めて医師の診療を受けた日に、国民年金または厚生年金に加入していたこと(20歳前や、日本に住む60歳以上65歳未満で年金制度未加入の期間も障害基礎年金の対象)。
- 障害状態要件/障害認定日(初診日から1年6か月を過ぎた日。1年6か月以内に症状が固定したときはその日)に、障害等級表の1級・2級(厚生年金は3級まで)に該当すること。
- 保険料納付要件/初診日の前日において、保険料の納付要件を満たしていること。
3つ目の納付要件は、原則として「初診日がある月の2か月前までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間+免除期間が3分の2以上」です。これを満たせなくても、初診日が令和18年3月末日までにあるなら、次の特例で救われます。
初診日において65歳未満であり、初診日の前日において初診日がある月の2か月前までの直近1年間に保険料の未納期間がないこと。この2つを満たせば納付要件はクリアです。
※過去に未納があっても、直近1年がきれいなら通る可能性があります。あきらめる前に年金事務所で確認してください。
なお、20歳前に初診日がある場合は納付要件そのものが不要です(先天性の障害や、学生時代に発症したケースなど)。
請求から入金までの流れ|時系列で見る
ポイントは、請求してから実際にお金が入るまでおおむね4〜5か月かかることです。生活費の見通しを立てるときは、この空白期間を織り込んでおいてください。
「障害認定日による請求」と「事後重症による請求」の違い
- 障害認定日による請求/障害認定日にすでに障害の状態だった場合。障害認定日の翌月分から受け取れます。過去にさかのぼって請求することも可能です。
- 事後重症による請求/障害認定日には軽かったが、その後悪化した場合。請求日の翌月分からしか受け取れません。1日でも早く出したほうが有利です。
損しないポイント|知らないと取り返せない4つ
- 時効は5年/障害認定日から何年も経ってから請求しても、5年より前の分は時効で受け取れません。さかのぼれるのは最大5年です。
- 事後重症は請求日の翌月分から/症状が重くなった月に請求できていれば受け取れたはずのお金は、遅れた月数ぶんそのまま消えます。「書類が揃ってから」と先延ばしにしないでください。
- 65歳の誕生日の前々日まで/事後重症による請求や、額改定の請求は、この日を過ぎると原則できなくなります。
- 3級・障害手当金も見落とさない/「1級・2級でなければ無理」と思われがちですが、厚生年金加入中の初診なら3級(最低保障635,500円)や障害手当金(最低保障1,271,000円)の可能性があります。
あなたの場合はこう|状況別の分かれ道
| あなたの状況 | こう考える |
|---|---|
| 会社員のときに発症した | 初診日に厚生年金なら障害厚生年金。3級まで対象で、1級・2級なら障害基礎年金も上乗せ。いちばん手厚いルートです。退職済みでも、初診日が在職中なら対象になります。 |
| 自営業・フリーランス・無職のときに発症 | 障害基礎年金のみで1級・2級だけが対象。3級相当だと受け取れません。国民年金保険料の未納があると納付要件で落ちるため、納付・免除の記録をまず確認を。 |
| 20歳前に発症した | 納付要件は不要。ただし本人の前年所得による支給制限があり、扶養親族がいない場合は4,794,000円超で全額停止・3,761,000円超で半額停止(令和8年4月時点)。判定期間は10月分〜翌年9月分です。 |
| 働きながら受け取れる? | 障害年金に「働いたら不支給」という一律のルールはありません。ただし就労状況は診断書と病歴・就労状況等申立書を通じて審査に影響します。実態を正確に書くことが大切です。 |
| すでに老齢年金や遺族年金がある | 原則は一人一年金で選択制。ただし65歳以上なら「障害基礎年金+老齢厚生年金」「障害基礎年金+遺族厚生年金」の組み合わせが選べます。有利なほうを試算してもらいましょう。 |
| 傷病手当金をもらっていた | 同じ病気で障害厚生年金をさかのぼって受給できると、受給済みの傷病手当金が調整(返還)されます。想定外の請求が来ないよう、健康保険の保険者にも早めに相談を。 |
現場でつまずくのはここ|イレギュラーと対処法
以下は、日本年金機構の案内で示されている取り扱いと、社会保険労務士事務所や請求経験者のブログで繰り返し語られている実務上のつまずきを編集部が整理したものです。制度の根拠がある部分と、体験談ベースの部分を分けて記載します。
最初の病院が閉院していて初診日を証明できない
これがもっとも多い壁です。日本年金機構は、初診時の医療機関の証明が得られない場合でも、初診日を合理的に推定できる一定の書類があれば、本人が申し立てた日が初診日と認められる場合があるとしています。診察券、当時の入院記録、健康診断の結果、身体障害者手帳を作ったときの診断書の写しなどが手がかりになります。まず年金事務所に相談してください。
体験談で多く語られるのは、カルテの保存義務が5年であるため、10年以上前の初診はそもそも記録が残っていないという現実です。「証明が取れなかったので数年分あきらめた」という声も見られます。心当たりがあるなら、記録が消える前に動くのが最善です。
診断書の書き方ひとつで結果が変わる
障害年金の診断書は、一般の診断書とは別の専用様式(8種類)で、障害の部位・疾患ごとに使い分けます。体験談で共通して語られるのは、医師は日常生活の実際を必ずしも知らないということです。診察室では気丈にふるまってしまい、「日常生活能力の判定」欄が実態より軽く書かれてしまった、という後悔がよく見られます。受診前に、家事・買い物・服薬管理・対人関係などで困っている場面をメモにして医師に渡す、という工夫が繰り返し勧められています。
病歴・就労状況等申立書は自分で書く
この書類だけは本人(または家族)が作成します。発病から現在までを時系列で埋める必要があり、「何年も前のことを思い出すのがいちばんつらかった」という声が体験談では目立ちます。お薬手帳、診察券、通院の領収書、家計簿、当時のSNSやメモが日付の手がかりになります。書き始める前に、これらを机の上に並べておくと一気に進みます。
審査が長引くことがある
年金機構は「年金請求書の提出から3か月程度で年金証書が届く」としつつ、詳細な障害の状態を確認する必要がある場合などは、通常より審査に時間を要することがあると明記しています。半年以上かかったという体験談もあります。待っている間に生活が詰まらないよう、傷病手当金・自立支援医療・高額療養費など、他の制度もあわせて確認しておいてください。
関連記事:高額療養費制度の使い方/退職後の健康保険3択の選び方
自分でやる?社労士に頼む?|編集部の価値判断
障害年金の請求は自分でもできます。年金事務所や市区町村の窓口は無料で相談に応じ、日本年金機構は年金請求書の記入方法を解説する動画も公開しています。一方で、障害年金を専門にする社会保険労務士に依頼する選択肢もあります。ここは「どちらが正解」ではなく、あなたの状況と体力しだいです。判断材料として整理します。
| こんな人は | 編集部の目安 |
|---|---|
| 初診日がはっきりしていて、いまも同じ病院に通っている | まず自分でやってみて十分。年金事務所の予約相談で書類を確認してもらえば、追加費用はかかりません。 |
| 初診の病院が閉院・転院を繰り返している/10年以上前の初診 | 初診日の立証が勝負どころ。専門家に相談する価値が高い場面です。 |
| 精神疾患などで、書類を集める気力・体力が続かない | 申請そのものが負担で放置してしまうくらいなら、費用を払ってでも進めたほうが結果的に得になりやすい。 |
| 一度不支給になった/等級に納得がいかない | 審査請求・再審査請求は論点が専門的。実績のある専門家に相談を検討する場面です。 |
費用感の目安として、障害年金を扱う社労士事務所が自社サイトで公表している報酬例では、着手金0〜2万円程度+成功報酬(初回にまとめて振り込まれる額の10〜20%、または年金額の2か月分程度)という形が多く見られます。金額・成功報酬の基準は事務所によって差が大きいので、「さかのぼり分にも成功報酬がかかるのか」を契約前に必ず確認してください。ここが総額を大きく左右します。
編集部の立場としては、まず無料の年金事務所相談に一度行くことをおすすめします。そこで「初診日の証明が難しそうだ」と分かった時点で、専門家に頼むかを判断すれば遅くありません。最初から依頼を決める必要はありません。
まず何をすればいい?|今日からの3ステップ
- 初診日を特定する/お薬手帳・診察券・領収書を集め、「この病気で最初にかかった病院と日付」を書き出します。
- 納付記録を確認する/ねんきんネット(マイナポータル経由でも可)や年金事務所で、初診日の前々月までの納付・免除状況を確認します。
- 予約相談に行く/年金事務所の予約はインターネットで毎日8:00〜23:30受け付けています。初診日が国民年金加入中なら市区町村の窓口でも相談できます。
よくある質問
うつ病や発達障害でも障害年金はもらえますか?
対象になります。日本年金機構は、障害年金の対象となる病気やけがとして、手足などの外部障害のほかに、統合失調症・双極性障害・認知障害・てんかん・知的障害・発達障害などの精神障害、および呼吸器疾患・心疾患・腎疾患・肝疾患・糖尿病・がんなどの内部障害を挙げています。診断名ではなく、日常生活や労働がどの程度制限されているかで等級が判断されます。
障害者手帳を持っていれば障害年金ももらえますか?
別の制度です。日本年金機構は「障害年金の等級は身体障害者手帳の等級とは異なります」と明記しています。手帳が2級でも障害年金が不支給になることも、手帳がなくても障害年金を受け取れることもあります。手帳の有無にかかわらず、障害年金は独立して請求してください。
障害の状態が悪化したら等級を上げてもらえますか?
65歳になるまでに障害の状態が重くなった場合は、年金額の改定を請求できます(請求書は65歳の誕生日の前々日までに提出)。なお、過去に一度でも障害基礎年金の受給権を持ったことがある人(2級以上に該当したことがある人)は、65歳を過ぎても額改定の請求ができます。額の改定は本人の請求のほか、定期的に提出する「障害状態確認届(診断書)」によっても行われます。
障害年金はいつ振り込まれますか?
年金証書が自宅に届いてから約1〜2か月後に初回の振込が始まり、以降は偶数月に2か月分がまとめて振り込まれます。年金請求書の提出から年金証書が届くまでは3か月程度が目安なので、請求からおおむね4〜5か月後が初回振込の目安になります。
障害認定日から何年も経っていますが、いまから請求できますか?
請求できます。障害認定日から1年以上経っている場合でも、障害認定日時点の状態がわかる診断書と、現在の状態(請求日前3か月以内の症状)がわかる診断書の2通を用意することで請求が可能です。ただし5年以上前の年金は時効により受け取れません。
あなたの体験を聞かせてください
この手続きで「実際はこうだった」「ここでつまずいた」という経験があれば、体験談募集フォームから教えてください。許諾をいただいたものだけ、出所を明示して記事に反映します。
出典・参考(すべて公的一次情報)
- 日本年金機構「障害年金ガイド 令和8年度版」(金額・受給要件・納付要件・請求の流れ・Q&A)PDF
- 日本年金機構「受診状況等証明書を提出するとき」公式ページ
- 日本年金機構「障害年金の初診日証明書類のご案内(初診時の医療機関の証明を得ることが難しい場合)」PDF
- 日本年金機構 公式サイトhttps://www.nenkin.go.jp/
※この記事は、みんなのミカタナビ編集部が上記の公的情報をもとに整理したものです。専門家による監修は受けていません。金額・要件は令和8年度(2026年度)時点のものです。個別の可否や金額は、必ずお近くの年金事務所・街角の年金相談センター、または市区町村の窓口でご確認ください。基準日:2026年7月28日。
もっと広い流れを知りたい方は、退職・年金の総合ガイドと暮らしの手続きガイドもあわせてご覧ください。近い制度としては遺族年金のもらい方、年金の繰上げ・繰下げ判断があります。
