賃上げ促進税制は、従業員の給与総額を前年度より増やした中小企業が、増やした金額の最大45%を法人税(個人事業主は所得税)から差し引ける制度です。補助金のように事前申請や採択は不要で、要件を満たせば確定申告で税額控除を受けられます。設備投資系の補助金で加点される「賃上げ表明」とも密接に関わる、賃上げとセットで使いたい制度です。
- ✓ 中小企業は給与総額1.5%増で15%、2.5%増で30%の税額控除
- ✓ 教育訓練費・くるみん/えるぼし認定の上乗せで最大45%(控除上限は法人税額の20%)
- ✓ 赤字でも最大5年間の繰越税額控除が使える(中小の特例)
- ✓ 事前申請不要。確定申告に別表を添付するだけで適用できる
本記事は2026年7月24日時点の情報です。制度の詳細・最新の要件は、中小企業庁「中小企業向け「賃上げ促進税制」」および同「ご利用ガイドブック」で必ずご確認ください。
賃上げ促進税制(中小企業向け)の概要
| 項目 | 内容(中小企業向け) |
|---|---|
| 対象者 | 青色申告をする資本金1億円以下の法人、または常時使用する従業員1,000人以下の法人・個人事業主など |
| 通常要件 | 雇用者給与等支給額が前年度比 +1.5%以上(→控除率15%)/+2.5%以上(→控除率30%) |
| 上乗せ①(教育訓練費) | 教育訓練費が前年度比+5%以上 かつ 給与等の0.05%以上 → +10%(※令和8年度改正で廃止予定) |
| 上乗せ②(両立支援・女性活躍) | くるみん/えるぼし等の認定取得 → +5% |
| 最大控除率 | 45%(教育訓練費の上乗せ廃止後は最大35%の見込み) |
| 控除上限 | その年度の法人税額(所得税額)の20%まで |
| 繰越控除 | 控除しきれない分は最大5年間繰り越し可能(中小の特例) |
| 適用期間 | 令和6年4月1日〜令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度 |
控除率はどう決まる?段階ごとの上乗せ
控除率は「通常要件」を土台に、教育訓練費と各種認定で積み上がります。要件をすべて満たすと最大45%に達します。
適用までの流れ(申請の手順)
- 給与・教育訓練費の集計:当年度と前年度の雇用者給与等支給額を集計。役員・その親族分は除きます。
- 要件の判定:給与総額の増加率(1.5%/2.5%)と、上乗せ要件(教育訓練費・認定)の該当を確認します。
- 控除額の計算:給与増加額 × 控除率。控除上限(法人税額の20%)を超える分は繰越を検討します。
- 確定申告:別表6(24)などの明細と適用額明細書(法人)を添付して申告します。事前の届出は不要です。
適用時の注意点
- キャリアアップ助成金・業務改善助成金などの助成金を受け取った分は、給与等支給額から差し引いて増加率を計算します。
- 控除できるのは法人税額の20%まで。赤字や税額が小さい年は繰越(最大5年)を活用します。
- 教育訓練費の上乗せは、明細書の作成・保存が必要(申告時の添付は不要)。範囲外の費用に注意します。
- 教育訓練費上乗せは令和8年度改正で廃止予定。最新の施行時期は公式で確認してください。
補助金の「賃上げ」とセットで考える
賃上げは税制だけでなく、補助金の加点・優遇にも直結します。設備投資で固定資産税を軽減する先端設備等導入計画では賃上げ表明で軽減率が上がり、ものづくり補助金でも賃上げが加点対象です。人件費の負担を抑えながら賃上げしたい場合は、キャリアアップ助成金や業務改善助成金との併用も検討しましょう。補助金や税制の全体像は補助金・助成金 完全ガイド、受け取った補助金の会計処理は補助金の会計処理と圧縮記帳で解説しています。
よくあるご質問
賃上げ促進税制ではいくら税額控除されますか?
中小企業は給与総額が前年度比+1.5%で増加額の15%、+2.5%で30%を控除できます。教育訓練費や認定取得の上乗せを加えると最大45%です。ただし控除できるのはその年度の法人税額(所得税額)の20%までで、超えた分は繰り越します。
赤字でも賃上げ促進税制は使えますか?
中小企業には特例として繰越税額控除があり、赤字などで当期に控除しきれなかった額を最大5年間繰り越せます。将来黒字化したときに控除できるため、先行的な賃上げがしやすくなっています。
補助金や助成金を受け取っていると計算はどうなりますか?
キャリアアップ助成金や業務改善助成金など「給与等に充てるため他から支払を受ける金額」に当たる助成金は、雇用者給与等支給額から差し引いて増加率を計算します。該当する助成金は中小企業庁のガイドブックで確認できます。
いつまでの制度ですか?改正はありますか?
中小企業向けは令和6年4月1日〜令和9年3月31日までに開始する各事業年度が対象です。令和8年度税制改正大綱で教育訓練費の上乗せ(+10%)が廃止予定とされ、廃止後の最大控除率は35%の見込みです。施行時期は法案成立後に確定するため、最新情報を公式でご確認ください。
