結婚が決まってからの手続きは、婚姻届を出して終わりではありません。婚姻届の受理そのものは無料で、その日のうちに終わります。時間もお金もかかるのは、そのあとに続く氏名変更のほうです。マイナンバーカード、運転免許証、パスポート、銀行口座、勤務先への届出と、窓口の数は10か所を超えることもあります。
しかも2024年から2026年にかけて、この分野のルールは静かに変わり続けています。2024年3月からは本籍地以外に出す婚姻届でも戸籍謄本の添付が原則不要になり、2024年4月には女性の再婚禁止期間が撤廃されました。2025年5月26日からは戸籍に氏名のフリガナが記載される制度が始まり、婚姻届でも読み方を届け出ます。さらに2026年10月には社会保険のいわゆる106万円の壁のうち賃金要件が撤廃される予定です。この記事は、2026年8月時点で確認できる公的情報をもとに、当日から2週間で何をどの順番で片づけるかを整理したものです。
- 婚姻届は24時間365日受け付け。役所の閉庁時間外でも宿直窓口で預かり、不備がなければ提出した日が入籍日になる。
- 戸籍謄本は原則不要。2024年3月1日の戸籍情報連携により、本籍地以外の役所でも添付がいらない。
- 証人2名(18歳以上)が最大の律速。書類の中で他人の手を借りるのはここだけ。押印は任意。
- 名義変更は「住民票→マイナンバーカード→その他」の順。新しい氏の本人確認書類が1枚できると、残りの窓口が一気に楽になる。
- 実費がかかるのは実質パスポートだけ。免許証とマイナンバーカードの氏名変更は無料。新婚旅行が旧姓の航空券なら、旅券はあえて変えない判断もある。
結婚の手続きは「婚姻届」と「名義変更」の二段構え
結婚にまつわる手続きは、性質のまったく違う2つの塊に分かれます。前半は婚姻届で、これは法律上の身分を変える一度きりの届出です。後半は名義変更で、こちらは「新しい氏になった事実を、各機関にひたすら伝えて回る作業」です。前半は1日で終わりますが、後半は平日の窓口に何度も足を運ぶことになります。
順番を間違えると後半が長引きます。よくあるのは、婚姻届を出した直後に勤務先へ書類を出そうとして、新しい氏の本人確認書類がまだ手元にないために止まるパターンです。逆に住民票とマイナンバーカードを先に片づけておくと、そのあとの銀行・保険・携帯電話はほとんど窓口1回で通ります。
婚姻届を出すまでの手順
- 用紙を手に入れる
婚姻届はA3判で、全国どの市区町村の窓口でももらえます。自治体のサイトからダウンロードして印刷することもできますが、A3・白い紙・折り目なしが条件です。書き損じに備えて2枚もらっておくと安心です。
- 夫または妻どちらの氏を名乗るかを決める
民法750条により、夫婦は夫か妻いずれかの氏を名乗ります。この選択が、そのあとの名義変更の量をそのまま決めます。氏が変わらない側は原則として名義変更が不要です。
- 本籍地をどこにするか決める
新しい戸籍の本籍地は、日本国内であればどこでも指定できます。ただし将来、戸籍の証明書を郵送請求する場面を考えると、住所地か実家の近くにしておくと手間が減ります。
- 証人2名に署名してもらう
証人は18歳以上であれば誰でもかまいません。親、兄弟、友人が一般的です。押印は2021年9月から任意になりました。ここだけは他人の予定に左右されるため、いちばん早く動き出します。
- フリガナと本人確認書類を確認する
2025年5月26日から戸籍に氏名のフリガナが記載されるようになり、婚姻届でも読み方を届け出ます。窓口では運転免許証やマイナンバーカードなど、顔写真つきの本人確認書類が求められます。
- 役所に提出する
出せるのは、夫または妻の本籍地か、いずれかの所在地の市区町村です。2024年3月1日からは本籍地以外に出す場合でも戸籍謄本の添付は原則不要です。開庁時間外は宿直窓口で預かってもらえ、不備がなければ提出した日が入籍日になります。
入籍当日から2週間の時系列
期限がはっきり決まっているのは、住民票の異動(転入・転居届は14日以内)、マイナンバーカードの記載事項変更(14日以内)、勤務先の健康保険の被扶養者届(事実発生から5日以内が目安)の3つです。それ以外は法律上の期限がないぶん、後回しにすると忘れます。
パターン別の分岐:働き方で手続きの重さが変わる
名義変更の量は氏を変える側かどうかで決まりますが、社会保険の手続きは「結婚後にどう働くか」で三通りに分かれます。ここを最初に決めておかないと、勤務先に出す書類が二度手間になります。
扶養に入るかどうかを迷っている場合、2026年は判断材料が動く年です。社会保険の加入基準のうち月額8.8万円という賃金要件(いわゆる106万円の壁)は2026年10月に撤廃される予定で、その後は週20時間以上という労働時間が基準になります。また130万円の基準は2026年4月から労働契約書ベースで判定されるようになりました。詳しくは年収の壁の見直しの記事で整理しています。
名義変更は順番で早さが変わる
氏が変わった側がやることは、突き詰めると「新しい氏の本人確認書類を1枚つくり、それを持って残りの窓口を回る」だけです。だから順番が効きます。最初に住民票を新しい氏に更新し、次にマイナンバーカードか運転免許証のどちらかを変えてしまえば、そのあとの民間の窓口はほぼ1回で通ります。
| 順 | 手続き | 窓口 | 目安 | 費用 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 住民票(転入・転居・世帯合併) | 市区町村 | 14日以内 | 無料(写しの発行は1通300円前後) |
| 2 | マイナンバーカード | 市区町村 | 14日以内 | 無料 |
| 3 | 運転免許証(記載事項変更) | 警察署・免許センター | 速やかに | 無料 |
| 4 | 勤務先への氏名変更届 | 勤務先 | 社内規定による | 無料 |
| 5 | 銀行口座・クレジットカード | 各社 | 期限なし | 無料 |
| 6 | 生命保険・損害保険(受取人も確認) | 各社 | 期限なし | 無料 |
| 7 | パスポート(記載事項変更) | 都道府県の旅券窓口 | 急がなくてよい | 6,000円 |
| 8 | 印鑑登録(旧姓の印鑑は失効) | 市区町村 | 必要になったとき | 登録手数料は自治体により数百円 |
同居のために引っ越すなら、手続きと同時に進めたいこと
結婚を機に住まいを移すなら、名義変更と並行して引越しの見積もりとライフラインの切り替えを進めると二度手間になりません。費用の目安は次の記事にまとめています。
損しないポイント
イレギュラー・現場でつまずくところ
ブライダル各社が公開している窓口取材や体験記事を編集部で読み比べると、つまずきどころは驚くほど共通していました。多いのは書類の中身そのものではなく、「時間外に出したときの扱い」と「本籍地の書き間違い」です。
時間外や休日に提出した婚姻届は、その場では受け取っているだけで、審査は次の開庁日に行われます。不備がなければ提出した日が婚姻日になりますが、不備が見つかれば連絡が来て、補正するまで受理されません。記念日にこだわりがあるなら、平日の開庁時間に一度持ち込んで事前審査を受けておくのが確実だと、複数の媒体が窓口取材で共通して指摘しています。編集部としても、日付にこだわる人ほど「本番の1〜2週間前にリハーサルとして窓口へ行く」ことをすすめます。
記入ミスで最も多いのは本籍地です。本籍と住所は別物で、番地の表記まで戸籍どおりに書く必要があります。自分の本籍を正確に言えない人は珍しくないので、事前に本籍の記載がある住民票を取っておくと確実です。もう一つ見落とされやすいのが筆記具で、消せるボールペンは公的書類では使えません。
再婚のケースでは、2024年4月1日の民法改正で女性の再婚禁止期間(100日)が撤廃されている点も押さえておきたいところです。以前の情報を載せたままのページがまだ残っているため、古い記事を見て待つ必要はありません。
かかるお金の相場と、編集部の価値判断
結婚の手続きそのものにかかる公的費用は、驚くほど小さい額です。婚姻届の提出は無料、運転免許証とマイナンバーカードの氏名変更も無料。実費が出るのは証明書の発行手数料と、パスポートだけです。
合計しても2,000円に届かないことがほとんどで、パスポートを変えても8,000円弱です。つまり、この手続きで本当に消費されるのは平日の時間です。編集部の見方はこうです。費用を削る工夫より、平日に窓口へ行く回数を1回でも減らす工夫のほうが割に合います。住民票の写しをまとめて取る、旧姓併記を使って急ぎでない名義変更を先送りする、といった判断はすべてこの一点に集約されます。
もうひとつ、金額に表れないコストがあります。それは氏を変える側に一方的に集中する作業量です。どちらの氏を名乗るかは民法上まったく対等な選択ですが、実務の負担は完全に非対称です。結婚後の働き方や資格の名義まで含めて、この非対称をどう分担するかを最初に話しておくと、あとの数週間が穏やかになります。
結婚とほぼ同時に引っ越しをする人も多いはずです。転入届と一緒に片づけたい項目は引越しでやることリストにまとめています。共働きで続ける場合の社会保険の考え方は年収の壁の記事もあわせてご覧ください。
よくある質問
婚姻届に戸籍謄本は必要ですか?
2024年3月1日の戸籍情報連携の開始により、本籍地以外の市区町村に出す場合でも戸籍謄本の添付は原則不要になりました。ただし戸籍の電子化が済んでいない一部の市区町村が本籍地の場合は求められることがあるため、提出先に確認すると確実です。
土日や夜間に婚姻届を出しても、その日が入籍日になりますか?
なります。時間外は宿直窓口で預かる扱いで、審査は次の開庁日に行われますが、不備がなければ提出した日が婚姻日として記録されます。逆に不備があると受理が遅れるため、日付にこだわるなら平日に事前審査を受けておくのが安全です。
証人は誰に頼めばよいですか。押印は必要ですか?
証人は18歳以上であれば誰でも構いません。親、兄弟姉妹、友人が一般的です。押印は2021年9月から任意になり、署名だけで有効です。
名義変更はどこから手をつけるのが早いですか?
住民票、次にマイナンバーカードの順です。新しい氏の本人確認書類が1枚できると、銀行や保険など民間の窓口が一度で通ります。運転免許証の記載事項変更も無料なので、早めに済ませておくと使い勝手が良くなります。
結婚後に配偶者の扶養に入るには、いつまでに何をしますか?
配偶者の勤務先に健康保険の被扶養者異動届を出します。事実発生から5日以内が目安です。同時に国民年金の第3号被保険者の届出も勤務先経由で行われます。必要書類は健康保険組合によって異なるため、婚姻届を出す前に確認しておくと当日から動けます。
再婚の場合、女性は一定期間待つ必要がありますか?
2024年4月1日の民法改正で、女性の再婚禁止期間(100日)は撤廃されました。現在は男女とも、離婚が成立していればすぐに再婚できます。
あなたの体験を聞かせてください
この手続きで「実際はこうだった」「ここでつまずいた」という経験があれば、体験談募集フォームから教えてください。許諾をいただいたものだけ、出所を明示して記事に反映します。
出典と基準日
本記事の内容は2026年8月29日時点で公表されている情報にもとづいています。制度は改正されることがあるため、手続きの前に各機関の最新の案内をご確認ください。個別の事情による判断については、市区町村の戸籍窓口、勤務先の人事・健康保険組合、または専門家にご相談ください。
- 法務省「戸籍法の一部を改正する法律(令和元年法律第17号)の施行について」(戸籍謄本の添付省略・2024年3月1日施行)
- 政府広報オンライン「戸籍に氏名のフリガナが記載されます」(2025年5月26日施行)
- 法務省「民法等の一部を改正する法律」(女性の再婚禁止期間の廃止・2024年4月1日施行)
- 日本年金機構「国民年金保険料」(令和8年度は月額17,920円)
- 外務省「パスポートの記載事項変更・切替申請の手数料」
- 厚生労働省「社会保険適用拡大」および年収の壁に関する公表資料(賃金要件の撤廃は2026年10月予定)
引越しを伴う結婚のときに読む記事
新居での生活を止めないために、期限のある手続きと回線の申し込みは同じカレンダーで管理するのが確実です。
