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特許の審査請求料は中小企業なら半額【2026年版】減免に申請書も証明書も不要/2024年度から年180件の上限|外国出願は最大300万円の補助

町工場の事務所で書類と電卓を前に費用を確認する経営者

結論の要点

  • 特許の審査請求料と特許料(第1年分〜第10年分)は、中小企業なら2分の1、小規模企業と中小スタートアップ企業なら3分の1に軽減されます。
  • 手続きは申請書も証明書も不要。出願審査請求書に【手数料に関する特記事項】欄を設けて1行書くだけです。
  • ただし2024年4月1日から、中小企業には年度あたり180件の上限が設けられました。小規模企業・中小スタートアップ企業・大学等は上限の対象外です。
  • 減免されるのは特許の審査請求料・特許料とPCT国際出願の手数料です。出願料14,000円と、商標・意匠の登録料は対象外という点は誤解が多いところです。
  • 海外に出す場合はINPIT外国出願補助金があり、補助率2分の1、1事業者あたり300万円以内。名称が変わったばかりで、古い「中小企業等外国出願支援事業」の情報が今も出回っています。

「特許は中小企業には高すぎる」と言われます。たしかに定価で払えば、出願から10年維持するまでで40万円を超えます。ところが特許庁は中小企業向けに料金を半額以下にする制度を用意していて、しかも申請書も証明書も要りません。使わない理由がほとんどない制度なのに、書類仕事が増えると思われて敬遠されがちです。

この記事は、自分がどの区分に当たるのか・いくら下がるのか・どこに何を書けばいいのかを、特許庁の公表資料の数字だけで組み立てたものです。あわせて、2024年度から入った「年180件の上限」と、2025年度から名称が変わった外国出願の補助金についても整理します。

基準日:2026年8月21日。料金は特許庁「産業財産権関係料金一覧」(更新日2026年4月6日)、減免制度は同「特許料等の減免制度」(更新日2026年7月6日)に基づきます。

目次

いくら下がるのか(請求項5つで試算)

まず定価を確認します。2019年4月1日以降に出願した特許の場合、出願審査請求料は138,000円+(請求項の数×4,000円)です。特許料は2004年4月1日以降に審査請求した出願で、第1年〜第3年が毎年4,300円+(請求項の数×300円)、第4年〜第6年が毎年10,300円+(請求項の数×800円)、第7年〜第9年が毎年24,800円+(請求項の数×1,900円)、第10年〜第25年が毎年59,400円+(請求項の数×4,600円)です。

図1:請求項5つの特許を10年維持した場合(審査請求料+特許料10年分)

審査請求料158,000円+特許料10年分245,600円=403,600円が定価。ここに軽減がかかります。

区分 軽減率 審査請求料 特許料10年分 合計
軽減なし—158,000円245,600円403,600円
中小企業2分の179,000円122,800円201,800円
小規模企業/中小スタートアップ3分の152,660円81,820円134,480円
10年で払う額の比較(請求項5つ・編集部試算) 軽減なし 403,600円 中小企業 201,800円 小規模・スタートアップ 134,480円 出典:特許庁「産業財産権関係料金一覧」(2026年4月6日更新)をもとに編集部が試算。10円未満切り捨て。

差額は中小企業で201,800円、小規模企業なら269,120円です。1件でこれだけ違うので、複数出願する会社ほど効いてきます。なお出願料14,000円は減免の対象外で、これは全員が同額を払います。

自分はどの区分に当たるのか

軽減率は「会社の規模」で決まります。中小企業か小規模企業かの線引きは常時使用する従業員の数で、業種によって基準が変わります。

図2:区分の分かれ目

小規模企業(3分の1・件数上限なし)

  • 常時使用する従業員が20人以下
  • 卸売業・小売業・サービス業は5人以下
  • 法人の場合は大企業に支配されていないこと
  • 従業員0人の個人事業主・法人も対象

中小企業(2分の1・年180件まで)

  • 中小企業基本法の定義に沿った会社・個人事業主・組合・NPO法人
  • 大企業に支配されていないこと
  • 小規模企業の人数基準を超える場合はこちら

中小スタートアップ企業(3分の1・件数上限なし)

  • 設立からの年数など、特許法施行令第10条第5号の要件を満たす中小企業
  • 人数が多くても、要件を満たせば3分の1になる

大学・研究機関等(件数上限なし)

  • アカデミック・ディスカウント、独立行政法人、公設試、地方独立行政法人、承認TLOなど

出典:特許庁「小規模企業(法人・個人事業主)を対象とした減免措置について」ほか。図は編集部が作成。

「常時使用する従業員」の数え方は労働基準法第20条の解雇予告が必要な人が基準です。会社役員は含めません。アルバイトやパートは原則として含みませんが、1か月を超えて引き続き使用される場合は含めます。業種の判定は総務省の日本標準産業分類と中小企業庁の対応表で確認します。

見落としやすいのが「サービス業は5人以下」という線です。エンジニア10人のソフトウェア受託会社は、業種の判定次第で小規模企業に入らず中小企業(2分の1)になります。自分がどちらかで軽減額が変わるので、出願の前に業種分類を一度確認しておく価値があります。

2024年4月から入った「年180件」の上限

ここが2026年時点で最も情報が古いまま出回っている点です。「不正競争防止法等の一部を改正する法律(令和5年6月14日法律第51号)」に基づき、2024年4月1日以降に審査請求した出願の審査請求料の減免について、件数の上限が導入されました。特許庁は導入理由を「制度趣旨にそぐわない形での制度利用がなされている実態を踏まえ」と説明しています。

図3:件数上限の要点(ここを間違えると補正指令が来る)

  • 上限は1年度あたり180件(毎年4月1日から翌年3月31日まで)。大企業の平均的な審査請求件数を勘案して定められた数字です。
  • 対象は中小企業・研究開発型中小企業・法人税非課税中小企業など。小規模企業、中小スタートアップ企業、大学・研究機関等、福島特措法の認定中小は上限の対象外です。
  • 件数管理は原則として申請者本人が行います。特許庁に問い合わせれば担当者が確認できる範囲で回答してくれますが、正確な把握は自社で行う前提です。
  • 181件目以降の減免申請には、満額の納付が必要である旨の手続補正指令が出されます。
  • 減免申請後に出願を取り下げて審査請求料の返還請求をしても、カウントは削除されません。
  • 複数の識別番号を使っている場合は合算されます。共同出願では、減免申請をした申請人それぞれに1件ずつカウントされます。
  • 登録料・特許料は件数制限の対象外です。制限がかかるのは審査請求料だけです。

出典:特許庁「審査請求料の減免制度の改正(令和6年4月1日施行)に関するお知らせ」。

年180件というのは、中小企業のほとんどにとっては当たらない水準です。ただし「うちは関係ない」と読み飛ばすと、区分の選び方を間違えます。同じ会社でも小規模企業の要件を満たすなら3分の1かつ上限なし、満たさなければ2分の1かつ上限ありになります。件数の多い会社ほど、区分の確認が実利につながります。

手続きは書類ゼロ。書くのは1行だけ

2019年4月からの新減免制度では、減免申請書も証明書類も提出不要になりました。出願審査請求書や特許料納付書に欄をひとつ足して、該当する条文を書くだけです。特許庁のリーフレットも「手続き簡単、申請書・証明書不要」と明記しています。

単独出願の場合(小規模企業の例)

出願審査請求書に【手数料に関する特記事項】欄を設け、次のように書きます。

【手数料に関する特記事項】
(個人事業主の場合)特許法施行令第10条第4号イに掲げる者に該当する請求人である。減免申請書の提出を省略する。
(法人の場合)特許法施行令第10条第4号ロに掲げる者に該当する請求人である。減免申請書の提出を省略する。

特許料を納めるときは、特許料納付書に【特許料等に関する特記事項】欄を設けて同じ趣旨を書きます。第1年分から第3年分をまとめて納める設定登録時も、第4年分以降の年金納付時も同じです。

共同出願の場合はもう2か所書き足す

減免を受ける人を含む共同出願では、(1)【請求人】欄に減免を受ける者を含めて記載し、(2)【手数料に関する特記事項】欄に「減免を受ける旨」「減免を受ける者」「その者の持分の割合」「減免申請書の提出を省略する旨」を書き、(3)【その他】欄に正規の納付金額に対する軽減後の納付金額の割合を書きます。

特許庁が挙げている例は次のとおりです。出願人Aと出願人Bの持分がそれぞれ2分の1で、Aは軽減なし、Bは3分の1に軽減される場合、割合は「1×1/2+1/3×1/2=2/3」となるため、「手数料の納付の割合2/3」と記載します。この計算だけは自分でやる必要があります。

図4:減免を使う場合の時系列

出願時:出願料14,000円(減免なし)

ここでは減免の記載は不要です。出願料は全員同額。

出願から3年以内:出願審査請求(ここが1回目の減免)

出願審査請求書に【手数料に関する特記事項】欄を設けて記載。3年を過ぎると出願は取り下げたものとみなされます。

特許査定から30日以内:第1年〜第3年分の特許料(2回目の減免)

特許料納付書に【特許料等に関する特記事項】欄を設けて記載します。

第4年目以降:毎年(または数年分まとめて)年金納付

第10年分までは減免の対象。第11年分以降は減免がありません。

出典:特許庁の減免制度ページと料金一覧をもとに編集部が時系列に整理。

損しないポイント:減免されないものを先に知っておく

  • 出願料14,000円は減免の対象外です。
  • 商標の登録料(区分数×32,900円)や更新登録料は、この減免制度の対象ではありません。商標中心の会社は、減免ではなく後述の外国出願補助金や自治体の助成を探すことになります。
  • 意匠登録料も対象外です。
  • 特許料の軽減は第1年分から第10年分まで。第11年目以降は満額です。
  • 軽減後の額に10円未満の端数が出たら切り捨て。複数年分を納めるときは年ごとに切り捨ててから合算します。

海外に出すなら「INPIT外国出願補助金」(名称が変わっています)

国内の減免とは別に、外国出願の費用を補助する制度があります。ここで注意したいのが制度の移管です。長く使われてきた「中小企業等外国出願支援事業」は令和5年度をもって終了し、独立行政法人 工業所有権情報・研修館(INPIT)に移管されて令和7年度から「INPIT外国出願補助金」として実施されています。検索すると旧名称の解説記事が今も多く出てくるため、問い合わせ先や公募スケジュールを間違えやすいところです。

図5:INPIT外国出願補助金の枠(令和8年度)

枠 1案件あたりの上限 補助率
特許出願150万円2分の1
実用新案・意匠・商標の登録出願60万円2分の1
冒認対策商標出願30万円2分の1
中間手続(各国別1手続あたり)50万円2分の1
1事業者あたりの上限300万円以内

出典:INPIT「INPIT外国出願補助金」および公募要領の公表内容。金額・要件は公募回ごとに変わるため、申請前に必ず最新の公募要領で確認してください。

令和8年度の交付申請受付は2026年4月1日10時から12月14日17時までとされており、回ごとに締切が区切られています。出願前に交付決定を受ける必要がある点が最大の注意事項で、先に外国に出願してしまうと対象外になります。海外展開の計画がある段階で、先に補助金の受付期間を確認するのが順序です。

注意:旧制度の情報で動くと空振りする

「ジェトロの外国出願支援事業に申し込む」「都道府県の中小企業支援センター経由で出す」といった案内は、移管前の手続きです。ジェトロ自身も中小企業等外国出願支援事業の終了を告知しています。現在の窓口はINPITで、冒認商標の無効・取消の係争支援など別事業として今もジェトロが担っているものと混同しないよう、事業名で確認してください。

イレギュラー・現場でよく起きること

特許庁が公表しているQ&Aのうち、実務で問い合わせが集中している論点を編集部の視点で整理します。

出願のときは中小企業だったが、審査請求の前に規模が大きくなった

減免の判定は審査請求や特許料納付といった手続きの時点で行われます。出願時に要件を満たしていても、審査請求の時点で大企業に支配される状態になっていれば減免は使えません。逆に、出願時は要件を満たしていなくても、審査請求時に満たしていれば使えます。

2019年3月31日以前に審査請求した案件はルールが違う

審査請求日が2019年3月31日以前の案件には旧減免制度が適用されます。旧制度は証明書類の提出が必要で、対象者の範囲も異なります。長く維持している特許の年金を納めるとき、新旧どちらの制度かで手続きが変わるため、審査請求日を先に確認してください。

請求項を増やす補正をしたら追加の審査請求料が出た

手続補正書や誤訳訂正書で請求項が増えると、その分の審査請求料が発生します。この分にも減免を申請できますが、件数カウントの対象になります。ただし審査請求時に既に減免を受けている出願であれば、同じ出願の増項分は重ねてカウントされません。

外国の会社でも減免を受けられるのか

特許庁は「要件を満たしていれば、外国の出願人又は特許権者も減免制度の適用対象になります。要件は国内の出願人又は特許権者と同様です」と回答しています。日本法人であることは条件ではありません。

相場観と編集部の価値判断

特許にかかるお金は、特許庁に払う「印紙代」と、弁理士に払う「代理人費用」の2階建てです。減免が効くのは前者だけです。ここを混同すると「半額になるはずが全然安くならなかった」という誤解が生まれます。

費目金額の目安(請求項5つ)減免の対象
出願料14,000円対象外
出願審査請求料158,000円対象(2分の1/3分の1)
特許料 第1年〜第10年245,600円対象(2分の1/3分の1)
特許料 第11年以降毎年59,400円+請求項×4,600円対象外
拒絶理由通知への応答(審判請求)49,500円+請求項×5,500円対象外
弁理士費用(明細書作成等)事務所により大きく異なる対象外

編集部として強調したいのは、この制度は「申請する手間」がほぼゼロだという一点です。補助金のように事業計画を書いて審査を待つ必要も、実績報告も、返還リスクもありません。書類に1行足すだけで20万円以上の差が出るのに、記載を忘れて満額を払っている中小企業が現に存在します。

もう一点、2024年度の件数上限の導入は「制度が縮小に向かっている」というシグナルとも読めます。特許庁自身が「制度趣旨にそぐわない形での制度利用」に言及している以上、今後さらに要件が絞られる可能性は否定できません。使える立場にあるなら、先送りせずに今の出願から適用しておくのが合理的だと考えます。

図6:出願前チェックリスト

  • 1.常時使用する従業員の数を数える(役員は除く。パートは1か月超なら含む)
  • 2.日本標準産業分類で自社の業種を確認する(サービス業なら5人以下が小規模)
  • 3.大企業に支配されていないかを株式・出資の割合で確認する
  • 4.該当する特許法施行令の号を特定する(小規模企業なら第10条第4号イ・ロ)
  • 5.出願審査請求書に【手数料に関する特記事項】欄を設けて記載する
  • 6.共同出願なら【その他】欄に納付の割合を計算して書く
  • 7.海外にも出すなら、出願前にINPIT外国出願補助金の受付期間を確認する
  • 8.特許料納付のたびに【特許料等に関する特記事項】欄の記載を忘れない

よくある質問

減免を受けるのに証明書や登記簿謄本は必要ですか?

2019年4月1日以降に審査請求する案件では不要です。出願審査請求書や特許料納付書に【手数料に関する特記事項】欄を設け、該当する条文と「減免申請書の提出を省略する」旨を記載するだけで手続きが完了します。ただし審査請求日が2019年3月31日以前の案件は旧減免制度が適用され、証明書類が必要です。

従業員が0人でも減免を受けられますか?

受けられます。特許庁は「従業員数が0人の個人事業主」「従業員数が0人の法人で大企業に支配されていない場合」のいずれも小規模企業の減免措置を受けることが可能だと明記しています。

年180件の上限は、うちの会社にも適用されますか?

中小企業(会社・個人事業主・組合・NPO法人)、研究開発型中小企業、法人税非課税中小企業などが上限の対象です。小規模企業、中小スタートアップ企業、大学・研究機関等、福島特措法の認定中小企業は上限の対象外です。年間180件を超える審査請求をする中小企業は限られるため、多くの会社では実務上の影響はありません。

商標の登録料も半額になりますか?

なりません。特許料等の減免制度の対象は、特許の審査請求料・特許料(第1年分から第10年分)とPCT国際出願に係る手数料です。商標登録料(区分数×32,900円)や意匠登録料は対象外です。商標の海外出願については、INPIT外国出願補助金で1案件60万円以内・補助率2分の1の補助を受けられる可能性があります。

外国出願の補助金は、ジェトロに申し込むのですか?

現在の窓口はINPIT(独立行政法人 工業所有権情報・研修館)です。従来の「中小企業等外国出願支援事業」は令和5年度で終了し、令和7年度からINPIT外国出願補助金として実施されています。冒認商標の無効・取消の係争支援など、ジェトロが引き続き担っている別事業もあるため、事業名で確認してください。

あわせて読みたい

出典

  • 特許庁「産業財産権関係料金一覧」(更新日 2026年4月6日)
  • 特許庁「特許料等の減免制度」(更新日 2026年7月6日)
  • 特許庁「小規模企業(法人・個人事業主)を対象とした減免措置について(2019年4月1日以降に審査請求をした場合)」
  • 特許庁「審査請求料の減免制度の改正(令和6年4月1日施行)に関するお知らせ」
  • 不正競争防止法等の一部を改正する法律(令和5年6月14日法律第51号)、特許法施行規則及び工業所有権に関する手続等の特例に関する法律施行規則の一部を改正する省令(令和6年1月31日経済産業省令第2号)
  • INPIT「INPIT外国出願補助金」、ジェトロ「中小企業等外国出願支援事業の終了と新事業のご案内」

本記事は制度の理解を助けることを目的としたもので、個別の出願戦略や税務判断を行うものではありません。金額・要件・公募期間は改正や公募回によって変わります。実際の手続きにあたっては、特許庁の各問い合わせ窓口、INPIT、または弁理士にご相談ください。

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この記事を書いた人

みんなのミカタナビ編集部です。運営者・たくの編集方針のもと、相続・出産・退職・補助金など「知らないと損する手続きとお金」を、公的機関の一次情報と体験談の取材をもとに時系列で整理しています。数値・期限は必ず公式情報で裏取りし、出典を明記します。

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