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生前贈与の持ち戻しは7年?【2026年版】いま相続が起きると加算は3年|暦年課税と相続時精算課税の選び方

生前贈与の準備をする和室の卓上。持ち戻し期間と加算年数を確認するイメージ

「生前贈与の持ち戻しが3年から7年に延びた」という話を聞いて、あわてて贈与をやめた方がいるかもしれません。ですが2026年8月時点で相続が起きた場合、実際に相続財産へ加算されるのはいまも「3年以内」の贈与だけです。7年がフルに効くのは2031年(令和13年)1月1日以後に相続が開始したときからで、その間には段階的な移行期間があります。この記事では、国税庁の公表内容にもとづいて「いま何年分が加算されるのか」「暦年課税と相続時精算課税のどちらを選ぶか」を、判断できる形に整理します。

結論の要点

いまの加算期間相続開始日が2026年12月31日までなら相続開始前3年以内。7年になるのは2031年1月1日以後の相続から
誰に効くか加算されるのは相続や遺贈で財産を取得した人への贈与。相続人でない孫やお嫁さんへの贈与は原則として加算対象外
いくら控除できるか延長された4年分については、2027年1月2日以後の相続から総額100万円まで加算されない
もう一つの選択肢相続時精算課税の年110万円の基礎控除は持ち戻しなし。ただし一度選ぶと暦年課税へ戻せない
最大の罠通帳と印鑑を親が管理したままの「名義預金」。贈与したつもりでも相続財産として課税されることがある

本記事は2026年8月8日時点で、国税庁タックスアンサー(No.4161・No.4103・No.4402・No.4408・No.4508・No.4452)を確認して作成しています。税額や適用可否は個別事情で変わります。実行前に必ず税務署または税理士にご確認ください。

「7年に延びた」は半分正しい。いま加算されるのは3年分

暦年課税で贈与を受けた財産は、贈与した人が亡くなったときに一定期間さかのぼって相続財産に加算されます。これがいわゆる「持ち戻し」(生前贈与加算)です。国税庁は、令和6年1月1日以後の贈与について加算対象期間を相続開始前7年以内とすると示していますが、同時に相続開始日に応じた移行スケジュールも公表しています。ここを読み飛ばすと「もう7年間は贈与しても無駄」という誤解が生まれます。

図1|相続開始日でこう変わる「加算対象期間」

被相続人の相続開始日加算対象期間
〜2026年12月31日
令和8年12月31日まで=いまここ
相続開始前3年以内(死亡の日から遡って3年前の日から死亡の日までの間)
2027年1月1日〜2030年12月31日
令和9年1月1日〜令和12年12月31日
2024年1月1日から死亡の日までの間
=年を追うごとに3年→7年へ徐々に伸びる
2031年1月1日〜
令和13年1月1日〜
相続開始前7年以内(死亡の日から遡って7年前の日から死亡の日までの間)

出典:国税庁タックスアンサーNo.4161「贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」(令和7年4月1日現在法令等)をもとに編集部作成

つまり2026年8月現在、贈与した本人が明日亡くなったとしても、相続財産に加算されるのは直近3年分です。移行期は「2024年1月1日から死亡日まで」という区切り方になるため、2027年に相続が起きれば約3年分、2028年なら約4年分、と一年ずつ伸びていくイメージになります。7年が完全に効くのは2031年以後です。

また、延長された部分についてはクッションが用意されています。国税庁は、相続開始の日が2027年1月2日(令和9年1月2日)以後の場合、加算対象期間内に取得した財産のうち相続開始前3年以内より前の部分は、贈与時の価額の合計額から総額100万円まで相続税の課税価格に加算されない、としています。年100万円ではなく「総額」100万円である点に注意してください。

贈与を始めてから相続までの流れ

生前贈与は「渡して終わり」ではありません。翌年の申告、そして相続時の精算まで一続きの手続きです。全体像を先に押さえておくと、どの段階で何を残しておくべきかが見えてきます。

図2|生前贈与の時系列

STEP1 方針を決める(贈与する年の前まで)

誰に・いくら・何年かけて渡すかを決める。暦年課税か相続時精算課税かをここで選ぶ。相続時精算課税は一度選ぶと元に戻せない。

STEP2 贈与契約書を作る(贈与のつど)

贈与する人・受け取る人の双方が署名押印。日付・金額・方法を記載する。口約束でも贈与は成立するが、後から証明できないと否認されやすい。

STEP3 受け取る人の口座へ振り込む

現金手渡しではなく銀行振込にして記録を残す。通帳・印鑑・キャッシュカードは受け取った本人が管理する。

STEP4 翌年2月1日〜3月15日に贈与税の申告

暦年課税で年110万円以下なら申告不要。相続時精算課税を選ぶ最初の年は、110万円以下でも「相続時精算課税選択届出書」の提出が必要。

STEP5 贈与を続ける/記録を保管する

契約書・振込記録・申告書控えを一式で保管。相続のときに提示できる形にしておく。

STEP6 相続が発生したら加算対象を洗い出す

加算対象期間内の贈与を全部拾う。基礎控除110万円以下の贈与や、亡くなった年の贈与も加算対象になる。

STEP7 相続開始を知った日の翌日から10か月以内に相続税申告

加算した贈与財産に課された贈与税は相続税額から控除される。相続時精算課税の贈与税は、控除しきれなければ申告により還付される。

暦年課税と相続時精算課税、どちらを選ぶか

2024年(令和6年)以降、この2つの制度の力関係は大きく変わりました。相続時精算課税に年110万円の基礎控除ができ、しかもその110万円分は相続財産に持ち戻されないためです。暦年課税の110万円は持ち戻しの対象になるのとは対照的です。

図3|2つの制度の比較

項目暦年課税相続時精算課税
誰から誰へ制限なし(他人でも可)贈与年の1月1日時点で60歳以上の父母・祖父母から、18歳以上の子・孫など
毎年の非課税枠基礎控除110万円基礎控除110万円+特別控除2,500万円(累計)
110万円の持ち戻し加算対象期間内なら持ち戻される持ち戻しなし
超過分の税率10〜55%の累進一律20%(相続時に精算)
やり直しいつでも変更可一度選ぶと暦年課税へ戻せない(贈与者ごと)
申告の手間110万円以下なら申告不要最初の年に選択届出書が必要。110万円以下の年は申告不要
向いている人まだ元気で10年以上かけられる/相続人でない孫に渡したい高齢で贈与できる年数が短い/値上がりしそうな資産を先に渡したい

出典:国税庁タックスアンサーNo.4103・No.4161・No.4402・No.4408をもとに編集部作成

損しないための4つのポイント

見落とすと数十万円変わるところ

  1. 相続人でない孫・子の配偶者への贈与は加算されにくい。加算の対象は「相続や遺贈によって財産を取得した人」です。相続人でない孫が贈与だけを受けていて遺贈も受けていなければ、原則として持ち戻しの対象になりません。ただし孫が生命保険金の受取人になっている場合などは取得者に該当しうるため、個別確認が必要です。
  2. 加算されても贈与税は二重取りにならない。加算された贈与財産にかかっていた贈与税は、相続税額から控除されます。「持ち戻されるから贈与税を払い損」ではありません。
  3. 非課税特例を使った分は加算されない。贈与税の配偶者控除の控除額相当分、住宅取得等資金の非課税適用額、教育資金・結婚子育て資金の一括贈与の非課税適用額は、加算対象から外れます(贈与者死亡時の管理残額は別途取扱いあり)。
  4. 住宅取得等資金の非課税は2026年12月31日までの贈与が対象。省エネ等住宅で最大1,000万円、それ以外で最大500万円。年内に家を建てる・買う予定があるなら、贈与のタイミングを設計する価値があります。

パターン別・あなたはどれを選ぶか

A|贈与する側が60代・健康で、10年以上かけられる

暦年課税で年110万円ずつを基本線に。相続開始まで7年超の期間を確保できれば、古い年の贈与は加算対象から外れていきます。相続人でない孫を混ぜると加算リスクをさらに下げられます。

B|贈与する側が80代・時間が読めない

相続時精算課税の年110万円が有力です。この110万円は持ち戻されないため、贈与できる年数が短くても確実に相続財産から切り離せます。ただし選択後は同じ贈与者からの贈与に暦年課税を使えません。

C|値上がりしそうな自社株・不動産を渡したい

相続時精算課税は相続時に「贈与時の価額」で精算されます。将来値上がりする見込みが強い資産では有利に働く一方、値下がりすれば高い価額のまま加算される逆リスクもあります。専門家の試算をおすすめします。

D|子どもの住宅購入を援助したい

住宅取得等資金の非課税(2026年12月31日までの贈与)と暦年課税110万円は併用でき、省エネ等住宅なら最大1,110万円まで非課税にできます。契約・引渡し・居住開始の時期に細かい要件があるため、着工前に確認を。

E|配偶者に自宅を残したい

婚姻期間20年以上の夫婦なら、贈与税の配偶者控除で居住用不動産またはその取得資金を最高2,000万円まで控除できます。控除額相当分は持ち戻しの対象外です。ただし不動産取得税・登録免許税がかかるため、相続で取得する場合との比較が必要です。

イレギュラー・現場でつまずくところ

ここからは、制度の説明だけでは見えにくい実務上のつまずきです。税理士事務所や金融機関が公開している相談事例、および相続を経験した方の体験談で繰り返し語られる論点を、編集部の視点で整理しました(個別の事例を再現したものではありません)。

つまずきやすい5つの場面

  • 名義預金と判定される。子ども名義の口座に毎年振り込んでいたが、通帳も印鑑も親が保管し、子どもは口座の存在すら知らなかった——このケースは「贈与が成立していない=親の財産」と扱われることがあります。受け取る側が自由に使える状態にしておくことが要点です。
  • 毎年同じ日・同じ金額で贈与している。「最初から総額を約束していた(定期金の贈与)」と見られるリスクを指摘する専門家がいます。贈与のつど契約書を作る、金額や時期に変化をつける、といった実務対応が語られています。
  • 亡くなった年の贈与を忘れる。相続開始の年に受けた贈与も加算対象です。1月に振り込んで3月に亡くなった場合も拾う必要があります。
  • 相続時精算課税を選んだのに届出書を出していない。選択届出書は贈与を受けた年の翌年2月1日〜3月15日に提出します。期限を過ぎると、その年分については選択できません。
  • 110万円ちょうどにこだわりすぎる。贈与税の申告実績を残す目的で、あえて111万円を贈与して1,000円の贈与税を納める運用が紹介されることがあります。ただし、これ自体が贈与の成立を保証するものではないという指摘もあります。記録の整備が本質です。

費用の相場観と、編集部の判断

生前贈与そのものにかかる公的な費用は多くありません。現金の贈与なら、贈与契約書の作成費用と、必要な場合の贈与税の申告費用が中心です。不動産を贈与する場合は登録免許税・不動産取得税・司法書士報酬が加わり、金額の桁が変わります。

図4|かかる費用の目安(現金贈与の場合)

自分で契約書+自分で申告ほぼ0円(印紙不要・通信費程度)贈与契約書の作成を依頼1万〜3万円程度贈与税の申告を税理士へ3万〜10万円程度相続時精算課税の選択サポート5万〜15万円程度贈与プラン全体の設計10万円〜

※税理士事務所が公開している料金表をもとにした編集部の目安です。公定価格ではなく、資産の内容・件数で大きく変動します。依頼前に必ず見積もりをお取りください。

編集部の見方。現金を年110万円ずつ渡すだけなら、専門家に依頼せず自分で進められる範囲です。契約書のひな形は法務局や金融機関の解説ページで手に入りますし、110万円以下なら贈与税の申告も不要です。一方で、不動産や自社株が含まれる場合、相続税がかかる規模の資産がある場合、そして相続時精算課税を選ぶかどうかを迷っている場合は、初回相談だけでも専門家に見てもらう価値があると考えます。相続時精算課税は取り消せないためです。判断材料としてお読みいただき、実行前には税務署の電話相談センターか税理士にご確認ください。

実行前チェックリスト

図5|贈与する前に確認する8項目

□贈与する人・受け取る人の年齢要件を満たしているか(相続時精算課税は60歳以上→18歳以上)
□贈与契約書を作り、双方が署名押印したか
□受け取る人名義の口座へ振込で渡し、記録が残る形にしたか
□通帳・印鑑・カードを受け取る人自身が管理しているか
□その年の贈与合計が110万円を超える場合、翌年3月15日までの申告予定を立てたか
□相続時精算課税を選ぶなら、選択届出書の提出期限を把握したか
□住宅・教育・結婚子育ての非課税特例が使えないか確認したか
□他の相続人との公平性(特別受益)について、家族で話ができているか

数字と要件は必ず公式でご確認ください

贈与税・相続税の取扱いは、国税庁のタックスアンサーに最新の内容が掲載されています。個別の判断は、国税局電話相談センター(所轄税務署の電話番号にかけて音声案内から選択)でも相談できます。

よくある質問

生前贈与の持ち戻しは、いま何年分ですか?

国税庁の公表内容では、相続開始日が2026年12月31日までなら相続開始前3年以内です。2027年1月1日から2030年12月31日までに相続が開始した場合は2024年1月1日から死亡の日までの間、2031年1月1日以後の相続では相続開始前7年以内となります。

年110万円以下の贈与でも相続財産に加算されますか?

暦年課税の場合、加算対象期間内の贈与であれば、贈与税がかかったかどうかに関係なく加算されます。基礎控除110万円以下の贈与も、亡くなった年に贈与した財産も加算対象です。一方、相続時精算課税の基礎控除110万円の部分は加算されません。

孫への贈与も持ち戻しの対象になりますか?

加算の対象になるのは、相続や遺贈によって財産を取得した人が受けた贈与です。相続人ではない孫が、遺贈も受けず生命保険金なども受け取っていない場合、原則として加算されません。ただし代襲相続人になっている場合や受取人に指定されている場合は対象になりえます。

相続時精算課税を選ぶと、もう暦年課税には戻せませんか?

戻せません。相続時精算課税は贈与者ごとに選択でき、一度選択するとその贈与者からの贈与は選択した年分以降すべて相続時精算課税が適用されます。ただし、別の贈与者からの贈与には暦年課税を使えます。

相続時精算課税で払った贈与税は戻ってきますか?

相続時精算課税を選択した人の相続税額は、贈与を受けた財産と相続財産を合計して計算した相続税額から、すでに納めた相続時精算課税の贈与税相当額を控除して算出します。控除しきれない金額があるときは、相続税の申告をすることで還付を受けられます。

延長された4年分の100万円控除は毎年使えますか?

毎年ではありません。相続開始日が2027年1月2日以後の場合、加算対象期間のうち相続開始前3年以内より前に贈与された財産について、贈与時の価額の合計額から総額100万円までが加算されない扱いです。

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この記事を書いた人

みんなのミカタナビ編集部です。運営者・たくの編集方針のもと、相続・出産・退職・補助金など「知らないと損する手続きとお金」を、公的機関の一次情報と体験談の取材をもとに時系列で整理しています。数値・期限は必ず公式情報で裏取りし、出典を明記します。

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