「アパートの給湯器がそろそろ寿命だが、全戸まとめて替えると費用が重い」——そんな賃貸オーナーのための国の補助が賃貸集合給湯省エネ2026事業です。従来型の給湯器を小型の省エネ型(エコジョーズ/エコフィール)に交換すると、追い焚きなしで1台5万円、追い焚きありで1台7万円が補助されます。ただしオーナーが自分で申請することはできません。ここが最初のつまずきポイントです。
この記事は、2026年7月30日時点で公表されている公式情報(資源エネルギー庁・事業公式サイト)をもとに、編集部が手順と判断材料を整理したものです。専門家の監修は受けていません。金額・期限は必ず公式サイトの最新情報でご確認ください。
まず押さえる4つの要点
| 何を | 賃貸集合住宅の従来型給湯器を、小型の省エネ型給湯器(エコジョーズ/エコフィール)に交換する |
| いくら | 追い焚きなし5万円/台、あり7万円/台。条件を満たす排水工事で各+3万円/台(1住戸1台まで) |
| いつまで | 着工は2025年11月28日〜予算上限に達するまで。交付申請の受付は2026年3月31日開始、締切は遅くとも2026年12月31日 |
| だれが | 補助対象者はオーナー等(個人・法人・管理法人)。ただし申請手続きは登録事業者が行う(オーナーの直接申請は不可) |
出典:賃貸集合給湯省エネ2026事業 公式サイト「対象要件の詳細」(2026年7月30日時点)
賃貸集合給湯省エネ2026事業とは|対象になる人・建物・機器
正式には令和7年度補正予算「既存賃貸集合住宅の省エネ化支援事業」で、資源エネルギー庁が所管する住宅省エネ2026キャンペーンの一つです。持ち家向けの制度と違い、賃貸に出している集合住宅(アパート・マンション)が対象という点が最大の特徴です。
補助対象者になれるのは誰か
次の3つをすべて満たす方が補助対象者(登録事業者との共同事業者)になります。
- 賃貸集合住宅のオーナーである個人または法人、あるいはオーナーから管理委託を受けている管理法人等であること
- 登録事業者である「賃貸集合給湯省エネ事業者」と、工事請負契約またはリース(賃貸借)契約を締結すること
- 1棟あたり1戸以上の賃貸住戸で、従来型給湯器を補助対象機器に交換すること
賃貸住戸を2戸以上所有していれば、1棟まるごとでなく区分所有でも対象になります。一方で、販売目的で保有する買取再販事業者は対象外です。
対象になる建物・ならない建物
| 対象になる | 対象にならない |
|---|---|
| 1棟に賃貸住戸が2戸以上ある建物 | 新築住宅/戸建住宅 |
| 建築から1年以上経過、またはいずれかの住戸で居住実績がある建物 | 交付申請時点で住宅に区分されない建物(倉庫等) |
| 空室の住戸(賃貸のために貸し出す住宅であること) | 特別養護老人ホーム・有料老人ホーム等の施設 |
| リースで機器を導入する場合(転リースを含む) | 民泊施設/専ら旅館業法の許可で運営する施設(ウィークリーマンション含む) |
| - | オーナーや親族が居住する住戸/事業用に貸し出す住戸 |
不動産登記で建物の用途が集合住宅と確認できない場合、原則として補助対象になりません。登記事項証明書は早めに手元に用意しておくと安心です。
補助額はいくら?基本額+加算額の早見
補助額は「基本額」と「加算額」の合計です。加算の条件を満たさない場合は基本額のみになります。
1台あたりの補助額(基本額+加算額)
| 区分 | 内容 | 補助額 |
|---|---|---|
| 基本額 | 小型の省エネ型給湯器(追い焚き機能なし) | 5万円/台 |
| 基本額 | 小型の省エネ型給湯器(追い焚き機能あり) | 7万円/台 |
| 加算額 | (追い焚きなし)共用廊下を横断するドレン排水ガイド敷設工事 | +3万円/台 |
| 加算額 | (追い焚きあり)浴室へのドレン水排水工事(三方弁工事、三本管・二重管工事) | +3万円/台 |
対象機器は「潜熱回収型ガス給湯器(エコジョーズ)」と「潜熱回収型石油給湯機(エコフィール)」で、モード熱効率90%以上(給湯暖房機は給湯部熱効率95%以上、油焚き温水ボイラーは連続給湯効率95%以上、石油給湯機(直圧式)は91%以上、(貯湯式)は80%以上)といった性能要件を満たし、事務局に補助対象製品として登録されたものに限られます。
交換を決めてから補助金が戻るまでの時系列タイムライン
この制度でいちばん間違えやすいのは順番です。「契約より先に工事を始めた」だけで全額が対象外になります。下の順番どおりに進めてください。
STEP 1|まず最初に
登録事業者(賃貸集合給湯省エネ事業者)を探す
オーナーは自分で申請できません。住宅省エネ2026キャンペーンの登録事業者検索で、本事業に参加している事業者を探して見積もりを取ります。「うちは登録していない」業者に頼むと補助はゼロです。
STEP 2|着工より前
工事請負契約またはリース契約を結ぶ
契約の前に工事に着手すると補助対象外。リース(転リースを含む)でも対象になります。契約書は申請時の提出書類になるので必ず保管。
STEP 3|2025年11月28日〜
着工(1台目の設置工事に着手)
着工日は「補助対象給湯器の1台目の設置工事に着手した日」。予算上限に達するまで(遅くとも2026年12月31日まで)が対象期間です。
STEP 4|工事完了後
登録事業者が交付申請を提出
交付申請の受付は2026年3月31日開始。申請するのは事業者で、オーナーは共同事業者として書類に協力します。
STEP 5|交付決定後
補助金は事業者に振り込まれ、オーナーへ還元される
受け取りとオーナーへの還元は登録事業者が行います。還元方法(工事費からの値引きか、後日精算か)は契約時に必ず確認してください。
STEP 6|締切
遅くとも2026年12月31日/ただし予算上限で前倒し
締切は予算上限に応じて公表されます。過去の住宅省エネ系事業と同様、年内を待たず終了する可能性があります。
STEP 7|補助金振込後6年間
財産処分の制限(法定耐用年数)
事業者が振込を受けた後6年間は、国または事務局の承認なく、対象機器を交付目的に反して使用・譲渡・交換・貸付・担保提供・破棄できません。建て替えや売却の予定があるなら要注意。
損しないポイント|これを外すと補助はゼロになる
申請が通らなくなる「あるある」7つ
- 契約より先に着工した/工事請負契約・リース契約の前に工事へ着手すると対象外。
- オーナーが機器を自分で買った(施主支給・材工分離)/これは対象外です。
- 交換前がすでにエコジョーズ・エコキュート・電気温水器だった/「従来型給湯器からの交換」が条件。
- 号数を下げた/機能を減らした/交換前より能力(号数)が小さい機器、交換前の機能(給湯・追焚・暖房・オート/フルオート)を欠く機器は対象外。
- 中古品・メーカー保証対象外の機器を使った。
- 2025事業(令和6年度補正)で補助を受けた給湯器を再度申請した/対象になりません。
- 同一機器で国の他制度と重複申請した/みらいエコ住宅2026事業との重複は交付決定の取り消し・返金の対象。ただし別々の機器なら両事業の併用は可能で、同一契約・同一工期でも構いません。
もう一つの落とし穴:地方公共団体の補助制度は、国費が充当されているものを除き併用できます。自治体の給湯器補助を先に調べておくと総額が変わります。
あなたの場合はどうなる?パターン別の分岐
| あなたの状況 | 結論 |
|---|---|
| アパートを1棟まるごと所有 | 王道パターン。1棟あたり1戸以上交換すればOK。1住戸1台まで補助。 |
| 分譲マンションを区分所有して賃貸中 | 賃貸住戸を2戸以上所有していれば対象になります。1戸だけの所有は要件を満たしません。 |
| 管理会社に運営を任せている | オーナーから管理委託を受けた管理法人等が補助対象者になれます。誰が申請主体かを管理会社と早めにすり合わせを。 |
| 建物の1室に自分(または親族)が住んでいる | その住戸は賃貸住戸に含まれず対象外。他の賃貸住戸は対象になり得ます。 |
| 初期費用を抑えたい | リース(賃貸借)契約でも対象。転リースも含まれます。 |
| 売却前提で保有している | 販売目的の買取再販事業者は対象外。加えて6年間の財産処分制限があるため、近い将来の売却予定があるなら慎重に。 |
| 1階の一部が店舗になっている | 専ら店舗等で使う機器は対象外。登記上「居宅」「共同住宅」でも、現に事務所・倉庫等に使われている住戸は対象外です。 |
現場で起きるイレギュラーと対処法
ここから先は、制度の文面には書かれていない実務でのつまずきです。オーナーや施工業者がブログ・体験記で繰り返し語っている論点を、編集部が公式情報と突き合わせて整理しました(体験談部分は個別事情に左右されるため、必ず担当業者に確認してください)。
1. エコジョーズは「ドレン水」が出る。ここが集合住宅最大の難所
潜熱回収型(エコジョーズ)は排気の熱を回収する仕組み上、酸性の凝縮水(ドレン水)が出ます。戸建てなら地面に流せますが、外廊下設置が多い賃貸集合住宅では排水先の確保が難題です。本事業が「共用廊下を横断するドレン排水ガイド敷設工事」に3万円の加算を用意しているのは、まさにここにコストがかかるからです。
注意点として、公式サイトはドレン排水の取扱いは各地方公共団体等の方針で異なると明記しています。自治体の下水道部局の取扱いに沿った工事でないと、加算どころか近隣トラブルの原因になります。また、人の通行がない場所への敷設・共用廊下を横断しない敷設・ベランダへの敷設は加算対象外、追い焚きありの機器でドレン排水ガイドを敷設しても加算されません。
2. 追い焚きありは浴室内の工事になり、入居者の在宅が必要になりやすい
追い焚き機能ありの加算対象は「浴室へのドレン水排水工事(三方弁工事、三本管・二重管工事)」です。浴室側に手を入れるため、入居中の住戸では立ち会いの日程調整が要ります。体験談として多く語られるのは「空室のタイミングでまとめてやるのがいちばん段取りが楽だった」という声です。空室期間が読める物件なら、退去から次の募集までの間に計画するのが現実的でしょう。
3. 「入るはずの場所に入らない」寸法問題
築年数の古いアパートではパイプシャフト(PS)内やベランダの狭小スペースに給湯器が収まっており、機種変更で寸法が合わないケースが報告されています。しかも本事業では交換前より号数(能力)が小さい機器は対象外。「入る機種=小さい機種」を選ぶと補助が消えるという板挟みが起きます。見積もり段階で、現地調査と対象製品リストの突き合わせを業者に依頼してください。
4. 入居者への告知を忘れると苦情になる
給湯器の交換当日は数時間お湯が使えません。工事日の1〜2週間前までに掲示・投函で告知しておく、当日の作業時間帯を明示する、といった段取りは補助制度とは無関係ですが、実務では最も苦情になりやすい部分です。
5. 調査への協力義務がある
補助金の交付を受けた(または受けようとした)場合、事務局が行う調査(住宅や事務所への立ち入りを含む)への協力義務があります。拒否すると、交付申請の却下・交付決定の取り消し・返還請求・他の補助事業への申請制限といった措置を受けることがあります。
相場観と編集部の価値判断|どこまでやるか
補助制度の説明はここまでです。ここからは編集部の見方です。判断材料としてお読みください(投資判断の推奨ではありません)。
この制度の設計を素直に読むと、国が後押ししたいのは「追い焚きあり+排水工事」の10万円コースです。当然、施工業者側もそちらを勧めやすくなります。ただし追い焚き機能の追加は浴室側の工事が絡み、入居者調整も発生します。「補助が大きいほど得」とは限らない、というのが編集部の立場です。
堅実に済ませたい人はここまで
築年数が古く故障・交換が近い住戸から順に、いまの機能構成のまま同等機種へ交換する。追い焚きなしなら5万円/台。排水経路が既にある物件なら加算を狙わず、工期と入居者への影響を最小にする。「壊れてから慌てて交換する」を避けられるだけで十分な価値があります。
こだわりたい人はここまで
空室対策・家賃維持まで見据えるなら、空室の住戸で追い焚きあり+排水工事まで踏み込み、10万円/台を取りにいく。募集条件に「追い焚き付き」を出せる価値と、6年間の財産処分制限を天秤にかけて判断します。
どちらを選ぶにせよ、判断の軸は「補助額の大きさ」ではなく「その住戸をあと何年貸すか」だと考えています。6年の財産処分制限がある以上、近く建て替えや売却の可能性がある物件で無理に上位プランを入れる合理性は薄くなります。逆に長く保有する物件なら、光熱費が下がることは入居者にとっての訴求にもなります。固定費全般の見直しは固定費見直しガイドもあわせてご覧ください。
よくある質問
オーナーが自分で申請することはできますか?
できません。補助金の申請手続き・受け取り・オーナーへの還元は、登録事業者である「賃貸集合給湯省エネ事業者」が行います。オーナー等は共同事業者という立場です。まず登録事業者を探すところから始めてください。
空室の住戸でも補助の対象になりますか?
対象になります。要件は「人の居住の用に供するために賃貸借契約を締結して貸し出される住宅」であることで、申請時点の入居の有無は問われません。ただし、オーナーや親族が居住する住戸、事業用に貸し出される住戸は対象外です。
1つの住戸に2台設置したら2台分もらえますか?
もらえません。基本額の補助上限は1住戸1台までで、追い焚きなし5万円・あり7万円のいずれか一方です。棟全体の台数分を積み上げる形になります。
締切はいつですか?間に合いますか?
交付申請の受付は2026年3月31日に開始し、締切は遅くとも2026年12月31日です。ただし予算上限に達した時点で締め切られ、その時期は事務局が公表します。着工は2025年11月28日から対象なので、検討しているなら登録事業者の確保を先に進めるのが安全です。
みらいエコ住宅2026事業と両方使えますか?
複数の給湯器を導入する場合、機器の性能等に応じて両事業を併用でき、同一の契約・工期でも構いません。ただし一つの機器に対して両事業から補助を受けることはできません。重複申請が判明した場合、理由を問わず本事業の交付申請は無効となり、交付決定の取り消し・返金の対象になります。
関連記事と出典
住まいの給湯器まわりの補助は、持ち家向けの給湯省エネ2026事業の使い方もあわせて確認すると全体像がつかめます。事業者向けの補助金全般は補助金・助成金の総合ガイド、毎月の固定費そのものを下げる話は固定費見直しガイド、電気・ガス会社の切り替えは電気・ガスの乗り換えガイドで扱っています。
出典(2026年7月30日確認)
・賃貸集合給湯省エネ2026事業【公式】対象要件の詳細
・賃貸集合給湯省エネ2026事業【公式】トップページ
・資源エネルギー庁「賃貸集合給湯省エネ2026事業(令和7年度補正予算「既存賃貸集合住宅の省エネ化支援事業」)について」
・住宅省エネ2026キャンペーン 登録事業者の検索
※本記事は編集部が公式情報をもとに整理したものです。専門家の監修は受けていません。制度の内容・金額・期限は変更されることがあります。実際の申請にあたっては必ず公式サイトおよび登録事業者にご確認ください。
