親が亡くなったあと、年金の窓口で「未支給年金の請求はされますか」と聞かれて戸惑う方は少なくありません。未支給年金は「もらい忘れると誰も代わりに気づいてくれないお金」です。この記事では、日本年金機構の公表内容をもとに、誰が・いつまでに・何を持っていけばよいのかを時系列で整理します。
- 未支給年金とは、亡くなった方が受け取るはずだった年金のうち「亡くなった月分まで」で未払いになっている分のこと。年金は後払いのため、ほぼ必ず発生します。
- 請求できるのは亡くなった当時、生計を同じくしていた遺族。順位は①配偶者②子③父母④孫⑤祖父母⑥兄弟姉妹⑦その他3親等内の親族です。
- 使う用紙は「年金受給権者死亡届(報告書)兼 未支給年金・未支払給付金請求書」(様式514)1枚。死亡届と未支給年金の請求は同じ用紙で足ります。
- 死亡届が必要な場合の期限は10日以内(国民年金のみの方は14日以内)。ただし日本年金機構にマイナンバーが収録されていれば死亡届は原則省略できます。
- 戸籍謄本と住民票は「亡くなった日より後に交付されたもの」でなければ受け付けられません。ここでのやり直しが一番多いポイントです。
あわせて読みたい:親が亡くなったらやること/遺族年金のもらい方/ハブ:相続・お葬式の手続きガイド・退職・年金ガイド
未支給年金とは?「年金は後払い」だから必ず発生する
公的年金は偶数月の15日に、前月までの2か月分をまとめて後払いする仕組みです。たとえば6月15日に振り込まれるのは4月分と5月分です。このため、受給者が亡くなると「働いた分(生きていた月の分)なのに、まだ振り込まれていない年金」が必ずと言っていいほど残ります。これが未支給年金です。
日本年金機構は「年金を受けている方が亡くなったときに、まだ受け取っていない年金や亡くなった日より後に振り込みされた年金のうち、亡くなった月分までの年金については、未支給年金としてその方と生計を同じくしていた遺族が受け取ることができます」と説明しています。亡くなった月の分までは満額もらえる(日割りにはならない)のがポイントです。
- 4月20日に亡くなった場合 → 4月分までが未支給年金の対象。
- 直前の振込(4月15日)は2月分・3月分。したがって4月分が丸ごと未払いとして残る。
- さらに、亡くなった後の6月15日に「4月分・5月分」として振り込まれてしまった場合、4月分は未支給年金・5月分は返還という整理になります。
※上記は仕組みを理解するための一般的な整理です。実際の金額・対象月は年金事務所の確認が必要です。
請求できる人と順位|「生計を同じくしていた」が判断の軸
未支給年金を受け取れるのは、亡くなった当時その方と生計を同じくしていた次の遺族です。受け取れる順位もこの順番です。
| 順位 | 続柄 | よくあるつまずき |
|---|---|---|
| 第1 | 配偶者 | 事実婚の場合は別様式(様式7)と証明が必要 |
| 第2 | 子 | 別居していても「生計同一」なら請求できる |
| 第3 | 父母 | 高齢の親が請求者になるケースは手続き代行の相談が多い |
| 第4 | 孫 | 親(子)が先に亡くなっている場合に登場 |
| 第5 | 祖父母 | 実務では稀 |
| 第6 | 兄弟姉妹 | 独身の方が亡くなったときによくある |
| 第7 | 上記以外の3親等内の親族 | 民法上の3親等内であれば請求可 |
- 先順位者がいる場合、後順位者は受け取れません。「兄が請求しないから弟が」という形は原則できません。
- 同順位者が2名以上いるときは、そのうち1名が代表して請求します。きょうだい間の分け方は年金の手続きではなく当事者間の話し合いになります。
- 「生計を同じくしていた」は同居に限りません。別住所でも、仕送りや定期的な行き来などがあれば「生計同一関係に関する申立書(様式3または様式4)」を添えて請求できます。
- JR・JT・NTT・農林共済の共済年金を受け取っていた場合は、法定相続人が請求します(一般の未支給年金とは扱いが違います)。
手続きの流れ|死亡から入金までを時系列で
提出先は年金事務所です。郵送で提出できるほか、対面相談を希望する場合は予約のうえ年金事務所または街角の年金相談センターへ。e-Gov電子申請でも提出できます(「電子申請用送付書(一時金請求及び諸変更届等)」から様式を選択する方式)。
なお、地方公務員共済組合の期間のみで基礎年金の代行払いを受けていた方が亡くなった場合は、提出先が加入していた地方公務員共済組合になります。
必要書類チェックリスト|「死亡日より後に交付」が最大の落とし穴
請求する方が配偶者・子・父母などの通常のケースで必要になる書類は次のとおりです。
| 書類 | 中身 | 省略できる条件 |
|---|---|---|
| 請求書 | 年金受給権者死亡届(報告書)兼 未支給年金・未支払給付金請求書(様式514・両面印刷) | — |
| 亡くなった方の年金証書 | — | — |
| 請求する方のマイナンバー確認書類 | マイナンバーカード、または番号確認書類+身元確認書類(運転免許証など) | — |
| 続柄が確認できる書類 | 戸籍謄(抄)本、または法定相続情報一覧図の写し | 請求者が配偶者または遺族年金を請求する子なら、マイナンバー記入で戸籍謄本を省略可 |
| 生計を同じくしていたことが分かる書類 | 亡くなった方の住民票の除票+請求者の世帯全員の住民票の写し(別住所なら生計同一関係に関する申立書も) | マイナンバー記入で世帯全員の住民票を省略可。除票はマイナンバー収録済みなら不要 |
| 受取口座が確認できる書類 | 通帳等の写し(金融機関名・支店名・カナ氏名・預金種別・口座番号が見えるページ) | 公金受取口座を使う場合、または請求書に金融機関の証明を受けた場合は不要 |
- 戸籍謄本・住民票は「亡くなった日より後に交付されたもの」でなければなりません。葬儀の前に取っておいた戸籍は使えません。ここでの取り直しが最も多い手戻りです。
- コピーの向き:マイナンバーカードは郵送なら両面のコピー、窓口なら原本提示です。表だけ入れて返送される例が多く報告されています。
- ネット銀行を受取口座にする場合は、口座番号が確認できる画面をプリントアウトして添付します(通帳がないため)。指定できる銀行は限られるので事前確認を。
- 提出が遅れると年金を受け取りすぎることになり、あとで返還が必要になります。年金機構も「すみやかに提出を」と明記しています。
- 未支給年金を請求しても、故人の口座を解約していないと入金されてしまう場合があります。口座の扱いは金融機関に相談を。
損しないポイント|申請しないと1円ももらえないお金
未支給年金は請求しないと支給されません。役所や年金事務所が自動的に振り込んでくれる仕組みではない点に注意してください。あわせて、次の3点は取りこぼしが多い論点です。
① 未支給年金は「相続財産」ではない
国税庁は、未支給年金請求権について「当該死亡した受給権者に係る遺族が、当該未支給年金を自己の固有の権利として請求するものであり、当該死亡した受給権者に係る相続税の課税対象にはなりません」としています(最高裁平成7年11月7日判決を踏まえた整理)。
つまり相続放棄をしていても未支給年金は請求できるという理解につながります。ただし個別の事情で結論が変わることがあるため、相続放棄を検討中の方は必ず年金事務所と専門家に確認してください。
② 受け取った未支給年金は「一時所得」
遺族が支払を受けた未支給年金は、その遺族の一時所得に該当します。日本年金機構は「支給金を受け取る年分において、その支給金を含む一時所得の金額の合計額が50万円以下である場合には、確定申告は不要」と案内しています。生命保険の一時金など他の一時所得と合算される点に注意が必要です。
③ 同時に確認したい他の遺族給付
- 遺族基礎年金・遺族厚生年金:要件に当てはまれば継続的に受け取れます
- 寡婦年金・死亡一時金:国民年金の第1号被保険者期間がある場合の給付
- 葬祭費・埋葬料:健康保険・国保からの給付。窓口が年金とは別です
- 凍結された口座の仮払い制度:当面の支払いに困ったときの選択肢
あなたの場合はこう|状況別の分かれ道
| あなたの状況 | 未支給年金の扱い | まずやること |
|---|---|---|
| 親と同居していた子 | 請求できる(配偶者がいなければ第2順位) | 住民票で同一世帯なら生計同一の証明は比較的簡単 |
| 親と別居していた子 | 別住所でも請求できる | 「生計同一関係に関する申立書(様式3または4)」を用意する |
| きょうだいが複数いる | 同順位のため1名が代表して請求 | 誰が請求するかを先に決める。分け方は当事者間の話し合い |
| 配偶者が健在 | 配偶者が第1順位。子は請求できない | 配偶者名義で請求。遺族年金の可否も同時に確認 |
| 相続放棄を検討している | 相続財産ではないため請求できると整理されている | 放棄の申述前に年金事務所と専門家の両方に確認 |
| 事実婚のパートナー | 請求できるが別様式 | 様式7(事実婚関係及び生計同一関係に関する申立書)と第三者証明が必要 |
| 故人が公務員だった | 提出先が共済組合になる場合がある | 地方公務員共済組合員期間のみなら共済組合へ |
現場でつまずくのはここ|イレギュラーと対処法
「戸籍を先に取ってしまった」
葬儀や相続の準備で先に戸籍謄本をそろえる方は多いのですが、未支給年金では亡くなった日より後に交付された戸籍でなければ受け付けられません。相続手続きで使う戸籍と年金で使う戸籍は取得タイミングの条件が違うため、戸籍は「死亡届を出したあと」にまとめて多めに取るのが結果的に近道です。
「亡くなったあとも年金が振り込まれてしまった」
届出が遅れると、亡くなった日の翌日以後の分まで振り込まれてしまうことがあります。この分はあとで返還が必要です。振り込まれた金額をすぐに使わずに残しておくと、返還時の負担が軽くなります。また、未支給年金を請求しても故人の口座を解約していないとそちらに入金されてしまう場合があるため、口座の扱いは金融機関と年金事務所の両方に確認しておくと安全です。
「窓口が混んでいて進まない」
年金事務所の窓口は混み合うことが多く、体験談でも「予約なしで行って2時間待った」「必要書類が1点足りず出直しになった」といった声が多く語られています。対面相談は予約制が基本です。書類がそろっているなら郵送やe-Gov電子申請のほうが早く終わることも多いので、まず電話(ねんきんダイヤル)で必要書類を確認してから提出方法を選ぶのがおすすめです。
※体験談として語られている内容は編集部が個人ブログ等で確認した傾向です。制度上の取り扱いは必ず年金事務所にご確認ください。
「いつまでに請求すればいいのか分からない」
年金を受ける権利は法律上5年で時効消滅すると定められています(国民年金法第102条ほか)。未支給年金の請求もこの5年が目安とされますが、起算日の考え方は個別事情で変わります。「もう何年も前だから無理」と自己判断せず、まず年金事務所に相談するのが正解です。
自分でやる?専門家に頼む?|編集部の価値判断
結論から言うと、未支給年金の請求は「相続手続きの中では簡単な部類」です。用紙は1枚、添付書類も6点程度で、遺産分割や相続登記のような合意形成は不要だからです。
- 同居していた配偶者・子が請求するケースは、ほぼ書類をそろえるだけで完了します。
- まずねんきんダイヤルか年金事務所に電話し、「未支給年金を請求したい」と伝えて自分のケースの必要書類を読み上げてもらうのが最短です。
- 戸籍・住民票の取得費用(数百円〜千円台)と郵送費だけで済みます。
- 別居で生計同一の証明が難しい(仕送りの記録が残っていない、住所も世帯も別など)。
- 相続全体が複雑で、相続放棄や遺産分割と絡めて判断したい。
- 請求者が高齢・遠方で、窓口や書類収集の負担が大きい。
- 公務員共済など提出先が特殊で、どこに出すかから調べる必要がある。
- 未支給年金の請求単体を有料で代行する事務所は多くありません。多くは相続手続き一式のパッケージに含まれる形です。
- 料金は事務所によって幅があります。「この手続きだけを頼んだ場合いくらか」を明示してもらい、2社以上で比較してください。
- 未支給年金だけのために高額なパッケージを契約する必要はありません。まず年金事務所に電話して、自分でできそうか判断してからでも遅くありません。
よくある質問
未支給年金はいくらもらえますか?
亡くなった月分までの未払い分です。年金は偶数月に前2か月分を後払いするため、多くの場合1〜2か月分が残ります。金額は年金額や亡くなった日によって変わるので、年金事務所で確認してください。日割り計算にはならず、亡くなった月の分は満額が対象です。
相続放棄をしても未支給年金は請求できますか?
国税庁は、未支給年金請求権は遺族が自己固有の権利として請求するもので、相続税の課税対象にはならないとしています。この整理から、相続放棄をしても請求できると考えられています。ただし個別事情で判断が変わることがあるため、放棄の申述前に年金事務所と専門家の双方に確認してください。
未支給年金に税金はかかりますか?
受け取った遺族の「一時所得」に該当します。日本年金機構は、その年の一時所得の合計額が50万円以下であれば確定申告は不要と案内しています。生命保険の一時金など他の一時所得と合算される点に注意してください。
きょうだいが3人います。どう分ければいいですか?
年金の手続き上は同順位者のうち1名が代表して請求し、その方の口座に振り込まれます。分け方は年金の制度では決まっておらず、きょうだい間の話し合いになります。あとで揉めないよう、請求前に配分を決めておくことをおすすめします。
死亡届は必ず出す必要がありますか?
日本年金機構にマイナンバーが収録されている方は、年金受給権者死亡届は原則として省略できます。ただし未支給年金の請求は別途必要です。死亡届が必要な場合の期限は10日以内(国民年金のみの方は14日以内)です。
戸籍謄本はいつ取ればいいですか?
亡くなった日より後に交付されたものが必要です。死亡届を役所に出したあとに取得してください。相続手続きでも複数枚必要になることが多いため、まとめて取得しておくと二度手間を防げます。
ネット銀行の口座で受け取れますか?
受け取り先に指定できるインターネット専業銀行は限られています。指定できる場合も通帳がないため、口座番号が確認できる画面をプリントアウトして添付します。事前に年金機構の案内で対象銀行を確認してください。
あなたの体験を聞かせてください
この手続きで「実際はこうだった」「ここでつまずいた」という経験があれば、体験談募集フォームから教えてください。許諾をいただいたものだけ、出所を明示して記事に反映します。
次にやること
- 年金証書を探す(基礎年金番号と年金コードが必要です)
- ねんきんダイヤルか年金事務所に電話して、自分のケースの必要書類を確認する
- 死亡届を役所に出したあとに、戸籍謄本と住民票(除票・世帯全員)を取得する
- 様式514を記入して郵送、または予約して窓口へ
出典・参考(すべて公的一次情報)
- 日本年金機構「年金を受けている方が亡くなったとき」(更新日:2026年4月1日)
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/kyotsu/jukyu/20140731-01.html - 日本年金機構 年金Q&A「年金受給者が亡くなりました。何か手続きは必要ですか。」(更新日:2025年11月4日)
https://www.nenkin.go.jp/section/faq/jukyu/jukyushatodoke/kyotsu/shibo/20140421.html - 国税庁 質疑応答事例「未支給の国民年金に係る相続税の課税関係」(令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づく)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/02/09.htm
- 本記事は2026年7月29日時点の公表情報をもとに、編集部が公的一次情報を整理したものです。専門家の監修は受けていません。
- 制度・金額・期限は改正されることがあります。実際の手続きの前に、必ず年金事務所・ねんきんダイヤルで最新の取り扱いをご確認ください。
- 個別の事情によって結論が変わる論点(相続放棄との関係、生計同一の判断など)については、専門家へのご相談をおすすめします。
