「IT導入補助金を申請しようとしたら、サイトの名前が変わっていた」。2026年度からこの補助金はデジタル化・AI導入補助金という名称になりました。中身の骨格は従来のIT導入補助金を引き継いでいますが、2回目以降の申請に賃上げ要件が加わるなど、見落とすと返還につながる変更も入っています。この記事は、公式サイト(中小企業基盤整備機構)の記載を基準日2026年8月29日時点で確認し、枠の選び方と締切から逆算した動き方に絞って整理したものです。
- 名称が「IT導入補助金」からデジタル化・AI導入補助金へ変わった。制度の枠組みは継続
- 通常枠は5万円〜450万円、補助率は原則1/2以内(最低賃金近傍の事業者は2/3以内)
- 通常枠・インボイス枠・セキュリティ枠の5次締切は2026年9月29日(火)17:00
- 申請にはgBizIDプライムとSECURITY ACTIONの事前準備が要る。ここで1〜2週間溶ける
- 2022〜2025年に交付決定を受けた事業者は、賃上げを含む3年間の事業計画が申請要件に追加された
デジタル化・AI導入補助金2026とは(旧・IT導入補助金)
中小企業・小規模事業者がソフトウェアやクラウドサービスを導入する費用の一部を補助する制度です。運営は独立行政法人中小企業基盤整備機構が採択し、中小企業庁の監督のもとで事務局が運営しています。会計ソフト、勤怠管理、販売管理、予約システムといった「業務プロセスを持つソフトウェア」が対象で、補助対象にはソフトウェア購入費のほかクラウド利用料が最大2年分、導入コンサルティングや導入研修、保守サポートなどの役務も含まれます。
注意したいのは、汎用・自動化・分析ツール単体では申請できない点です。顧客対応・販売支援/決済・債権債務・資金回収管理/供給・在庫・物流/会計・財務・経営/総務・人事・給与・教育訓練・法務・情シス・統合業務、あるいは業種特化型プロセスのいずれか1つ以上を持つソフトウェアであることが前提になります。
IT導入補助金2025からの変更点は3つ
- 名称の変更:ツール導入にとどまらないデジタル化とAI活用を促す趣旨で「デジタル化・AI導入補助金」へ。ただし申請マイページや事務局メールの一部では旧名称が残っており、公式も「読み替えて対応してほしい」と案内しています
- 2回目以降の申請要件が追加:IT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けた事業者は、翌事業年度以降3年間の事業計画を作り、1人当たり給与支給総額の年平均成長率を日本銀行の物価安定目標+1.5%以上にすること、賃金引上げ計画を従業員へ表明していることが求められます。要件未達や効果報告未提出は補助金の全部または一部の返還につながります
- AI機能の明示:ITツール検索でAI機能を持つツールを絞り込めるようになりました。ただしIT導入支援事業者が「AI機能あり」として申請したツールに限られます
申請枠は5つ。補助額と補助率の一覧
| 申請枠 | 補助額 | 補助率 |
|---|---|---|
| 通常枠 | 1〜3プロセス:5万〜150万円 4プロセス以上:150万〜450万円 | 1/2以内(最低賃金近傍の事業者は2/3以内) |
| インボイス枠 (インボイス対応類型) | ITツール:〜350万円(1機能のみは〜50万円) PC・タブレット等:〜10万円 レジ・券売機等:〜20万円 | 50万円以下の部分:3/4以内(小規模事業者は4/5以内) 50万円超350万円以下:2/3以内 ハード:1/2以内 |
| インボイス枠 (電子取引類型) | 〜350万円 | 2/3以内(大企業は1/2以内) |
| セキュリティ対策推進枠 | 5万〜150万円 | 1/2以内(小規模事業者は2/3以内) |
| 複数者連携 デジタル化・AI導入枠 | 消費動向分析経費:〜50万円×構成員数 事務費・専門家経費:〜200万円 (合計上限3,000万円) | 2/3以内 ほか |
出典:デジタル化・AI導入補助金2026 公式サイト(2026年8月29日確認)。金額・要件は公募回により変わるため、申請前に必ず公募要領を確認してください。
小規模な会計ソフトや勤怠システムの導入なら通常枠か、インボイス対応なら補助率が有利なインボイス枠が現実的な選択肢です。インボイス枠は50万円以下の部分の補助率が3/4(小規模事業者は4/5)と高く、同じ金額を使うなら手出しが最も小さくなります。
通常枠はプロセス数で上限が変わる
「プロセス」とは、導入するITツールが担う業務の区分のことです。会計ソフト1本だけなら1プロセスで上限150万円、販売管理と在庫管理と会計と人事をまとめて入れ替えるような案件なら4プロセス以上になり、上限が450万円まで上がります。金額を伸ばしたいならツールの選び方の段階で決まる、というのがこの枠の性格です。
5次締切は2026年9月29日。そこから逆算する
- いますぐ
gBizIDプライムとSECURITY ACTIONの準備gBizIDプライムは印鑑証明書等を添えた書面申請だと発行まで日数がかかります。オンライン申請でも余裕をみて動くのが安全です。
- 締切の2〜3週間前
IT導入支援事業者とITツールを決める申請は事業者と共同で行います。ツールが公式のITツール検索に登録されていることが前提です。
- 2026年9月29日(火)17:00
5次締切(交付申請の締切)締切時間を過ぎるといかなる理由でも受付されないと公式が明記しています。直前はアクセス集中でSMS認証に時間がかかります。
- 2026年11月9日(月)(予定)
交付決定交付決定前に発注・契約・支払いをすると補助対象外になります。
- 2027年4月30日(金)17:00(予定)
事業実施期間の終了・実績報告期限ここまでに導入と支払いを終え、実績報告を出します。
複数者連携枠のみ3次締切が2026年10月30日(金)17:00、実績報告期限は2027年5月31日(月)(予定)。出典:公式「事業スケジュール」(2026年8月29日確認)。
6次締切分の日程も公式に枠は用意されていますが、本稿の確認時点では日付が確定・公表されていません。「次があるから」と待つより、要件が整っている回で出すのが実務上は堅い判断です。
申請の流れ(交付申請まで)
- 公式の「申請を行う前に必要な手続き」を開く
事前手続きの一覧はここに集約されています。年度で内容が変わるため、他年度の解説記事ではなく公式で確認します。
- gBizIDプライムを取得する
法人・個人事業主の共通認証IDです。取得済みでもID・パスワードが有効か先に確認します。発行に日数がかかるため最初に着手します。
- SECURITY ACTIONを自己宣言する
情報処理推進機構(IPA)のサイトで宣言し、発行される番号を申請時に使います。
- IT導入支援事業者とITツールを選ぶ
申請は支援事業者との共同作業です。公式のITツール検索に登録済みのツールであることが前提になります。
- 申請マイページで交付申請を作成・提出する
支援事業者が下準備をし、事業者側が入力を完了して提出します。締切当日17:00で締め切られます。
- 交付決定を待ち、決定後に契約・発注する
交付決定前の発注・支払いは補助対象外です。ここを間違えると全額が自己負担になります。
損しないポイント
- 交付決定前に発注しない。見積を取るのは自由ですが、契約・発注・支払いは交付決定後です
- クラウド利用料は最大2年分がまとめて補助対象。月額サービスなら1年ではなく2年分で積むと補助額が伸びます
- 1プロセスと4プロセスの壁。上限が150万円と450万円で3倍違うため、導入範囲の設計段階で枠が決まります
- 過去に交付決定を受けた事業者は賃上げ計画が要件。1人当たり給与支給総額の年平均成長率を日本銀行の物価安定目標+1.5%以上にする3年計画が必要で、未達なら返還の対象になり得ます
- 効果報告を出し忘れない。報告未提出も返還事由として公式が明示しています
パターン別:あなたはどの枠を見ればよいか
- 会計・勤怠・販売管理などを新しく入れたい → 通常枠。1ツールなら5万〜150万円、複数プロセスをまとめるなら150万〜450万円
- インボイス対応の会計・受発注ソフトを入れたい/レジやPCも一緒に → インボイス枠(インボイス対応類型)。50万円以下の部分は3/4、小規模事業者は4/5と補助率が最も有利
- 取引先とのやり取りを電子化したい(EDI等) → インボイス枠(電子取引類型)。〜350万円・2/3以内
- サイバー攻撃対策のサービスを入れたい → セキュリティ対策推進枠。5万〜150万円・1/2以内(小規模事業者2/3以内)
- 商工会や組合など複数社でまとめて導入したい → 複数者連携デジタル化・AI導入枠。締切だけ他枠と異なり2026年10月30日(3次)
現場でつまずきやすいところ
補助金の実務でよく聞くのは、制度の中身ではなく準備物と時間配分でのつまずきです。gBizIDプライムは取得に手間がかかるうえ、一度取ったきり使っておらずパスワードが分からない、代表者交代で情報が古い、といった理由で締切直前に止まる例が目立ちます。事務局も締切前日・当日は電話がつながりにくく、マイページのアクセス集中でSMS認証に時間がかかると公式に注意喚起しています。
もうひとつは「支援事業者任せ」の落とし穴です。申請はIT導入支援事業者と共同で行いますが、交付決定後の発注タイミング、実績報告、その後の効果報告は補助事業者(=自社)の責任で残ります。2026年からは2回目以降の申請に3年間の賃上げ計画が加わったため、「申請が通ったら終わり」ではなく数年単位の宿題になった点は認識しておいたほうがよい変更です。なお本記事は制度の一般的な整理であり、個別の採否や税務・会計上の取扱いを保証するものではありません。
相場観と編集部の判断
会計ソフトや勤怠管理のクラウドは、年額でおおむね数万円から数十万円という価格帯です。仮に月額2万円のサービスを2年分(48万円)で申請し、通常枠の1/2が適用されれば24万円、インボイス枠で3/4が適用されれば36万円が補助されます。金額の絶対値は大きくない一方、準備に要する手間は450万円の案件とそれほど変わりません。ここが判断の分かれ目です。
編集部としては、(1)すでにgBizIDプライムを持っている、(2)どのみち今年度に入れ替える予定のシステムがある、(3)複数プロセスをまとめられる、のうち2つ以上に当てはまるなら申請の価値が高い、と考えています。逆に「補助金があるから何か入れる」という順序だと、交付決定を待つ数か月と実績報告の手間に対して見合わないことが多く、その場合は補助金を使わず必要なツールを先に入れるほうが合理的な場面もあります。判断に迷うときは、導入予定額×補助率で得られる金額と、社内で動く人の時間を並べて比べてみてください。
補助額・補助率・締切は公募回ごとに変わります。本記事は2026年8月29日時点の公表内容をもとにした整理です。最新の要件はデジタル化・AI導入補助金2026 公式サイトの公募要領と事業スケジュールでご確認ください。
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よくある質問
IT導入補助金はなくなったのですか?
なくなっていません。2026年度から名称が「デジタル化・AI導入補助金」に変わりました。申請マイページや事務局メールの一部では旧名称が残っており、公式は新名称に読み替えて対応するよう案内しています。
通常枠はいくらまで補助されますか?
ITツールの業務プロセスが1〜3つなら5万円以上150万円未満、4つ以上なら150万円以上450万円以下です。補助率は1/2以内で、最低賃金近傍の要件を満たす事業者は2/3以内になります。
2026年9月時点で申請できる締切はいつですか?
通常枠・インボイス枠・セキュリティ対策推進枠の5次締切が2026年9月29日(火)17:00、複数者連携枠の3次締切が2026年10月30日(金)17:00です。以降の回は随時公表されます。
パソコンやタブレットも補助されますか?
インボイス枠(インボイス対応類型)でPC・タブレット等が〜10万円、レジ・券売機等が〜20万円まで対象になります(補助率1/2以内)。通常枠はソフトウェアが必須です。
過去にIT導入補助金を使ったことがあると不利になりますか?
不利になるというより要件が増えます。IT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けた事業者は、3年間の事業計画の策定・実行と効果報告が申請要件に加わり、1人当たり給与支給総額の年平均成長率を日本銀行の物価安定目標+1.5%以上にすることなどが求められます。
交付決定の前に契約してしまったらどうなりますか?
交付決定前の発注・契約・支払いは補助対象外です。導入を急ぐ事情があっても、補助を受けるなら交付決定を待つ必要があります。
出典・参考
- デジタル化・AI導入補助金2026「通常枠」(中小企業基盤整備機構)
https://it-shien.smrj.go.jp/applicant/subsidy/normal/ - デジタル化・AI導入補助金2026「事業スケジュール」
https://it-shien.smrj.go.jp/schedule/ - デジタル化・AI導入補助金2026の概要について(2026年1月23日更新)
https://it-shien.smrj.go.jp/news/40013 - 申請を行う前に必要な手続き
https://it-shien.smrj.go.jp/applicant/measures/
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