ランサムウェアで受注システムが止まった、取引先から「セキュリティ体制の確認書を出してほしい」と言われた──中小企業のセキュリティ投資は、いまや「余裕があればやること」ではなくなりました。その費用を国が半分から3分の2まで持つ制度が、デジタル化・AI導入補助金2026の「セキュリティ対策推進枠」です。
ただしこの枠は、他の補助金と設計がかなり違います。買えるものはIPAの「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に載っているサービスだけ、申請の前提としてSECURITY ACTIONの宣言が必要、そして補助額に5万円の下限がある。この3点を知らずに準備を始めると、締切直前で申請そのものができないと分かります。
この記事では、事務局が公開している公募要領(2026年5月15日改訂版)と交付規程をもとに、申請できる条件・実際にいくら戻るか・交付決定後に事故を起こさない順番を、締切から逆算して整理します。
この記事の結論(6行)
- 補助額は5万円〜150万円、補助率は中小企業1/2以内・小規模事業者2/3以内。対象経費はサービス利用料(最大2年分)です。
- 買えるのはIPAの「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」掲載サービスのうち、IT導入支援事業者が提供し事務局に登録されたものだけ。自分で選んだセキュリティ製品は対象外です。
- 申請要件としてIPAの「SECURITY ACTION」一つ星または二つ星の宣言が必須。二つ星は加点にもなります。
- 4次締切は2026年8月25日(火)17時、交付決定は10月7日(水)予定。締切時刻を過ぎるといかなる理由でも受け付けられません。
- 下限5万円がある以上、月額が安すぎるサービスは補助対象にならない。中小企業なら2年分の利用料が10万円以上、小規模事業者なら7.5万円以上必要です(編集部の試算)。
- IT導入補助金2022〜2025でお助け隊サービスの交付決定を受けた事業者は、この枠に申請できません。継続利用の更新には使えない設計です。
基準日:2026年8月22日/出典:中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「公募要領(セキュリティ対策推進枠)」2026年5月15日改訂、同「セキュリティ対策推進枠」ページ、同「事業スケジュール」
セキュリティ対策推進枠とはどんな補助金か
デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金)は、通常枠・インボイス枠・複数者連携枠・セキュリティ対策推進枠の4系統に分かれています。このうちセキュリティ対策推進枠だけは、導入できるITツールがIPAの登録リストに限定されているという点で他と設計が異なります。
| 項目 | セキュリティ対策推進枠の内容 |
|---|---|
| 補助額 | 5万円〜150万円(下限あり) |
| 補助率 | 中小企業1/2以内/小規模事業者2/3以内 |
| 補助対象経費 | サービス利用料(最大2年分) |
| 機能要件 | IPAが公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているいずれかのサービスであること |
| 4次締切 | 2026年8月25日(火)17:00 |
| 交付決定日 | 2026年10月7日(水)予定 |
| 事業実施期間 | 交付決定〜2027年3月31日(水)17:00(予定)/実務上は交付決定日から6か月間程度 |
| 実績報告期限 | 2027年3月31日(水)17:00(予定) |
出典:中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「セキュリティ対策推進枠」および「事業スケジュール」(いずれも2026年8月22日時点)。スケジュールは変更される場合があります。
通常枠と比べると位置づけがはっきりします。通常枠は補助額5万円〜150万円未満(1プロセス以上)と150万円〜450万円以下(4プロセス以上)の2段構えで、対象経費にソフトウェア購入費や導入関連費が含まれます。これに対しセキュリティ対策推進枠は、「モノを買う補助金」ではなく「見守りサービスを2年分まとめて契約する補助金」です。通常枠の詳細はデジタル化・AI導入補助金2026(通常枠)で扱っています。
「サイバーセキュリティお助け隊サービス」はIPAが2021年春から運用している制度で、相談窓口・異常の監視・事案発生時の初動対応(駆けつけ支援など)・簡易サイバー保険をワンパッケージにしたサービスを認定するものです。1類と2類に分かれ、IPAの登録一覧は2025年10月3日(第12回審査)に10サービス、2026年3月3日(第13回審査)に8サービスが追加されるなど、いまも増え続けています。
申請の前提──SECURITY ACTIONと、見落とされがちな重複禁止ルール
SECURITY ACTIONの宣言は「あったほうがよい」ではなく必須
公募要領の申請要件には、「独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する『SECURITY ACTION』の『★ 一つ星』又は『★★ 二つ星』いずれかの宣言を行うこと」が明記されています。宣言内容の確認のため、事務局が交付申請情報の一部をIPAと共有することへの同意も求められます。
さらに公募要領は、第2回公募以降については2026年4月より運用開始のSECURITY ACTION管理システムで宣言していることを条件としています。過去に宣言した記録があっても、新システム側に反映されているかは別問題です。申請前に管理システムで自社の宣言状況を必ず確認してください。二つ星を宣言していれば加点対象にもなります。
過去にお助け隊サービスで交付決定を受けていると申請できない
これがもっとも見落とされやすい条件です。公募要領には次のとおり書かれています。
「サイバーセキュリティお助け隊サービス」を含むITツールについて、IT導入補助金2022、2023、2024及び2025において、いずれかの枠で交付決定を受けた場合又はデジタル化・AI導入補助金2026において、いずれかの枠で申請を行っている若しくは交付決定を受けた場合、本事業の申請を行うことはできない。
出典:デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(セキュリティ対策推進枠)3-2(4)申請単位
つまりこの枠は、「まだお助け隊サービスを補助金で入れたことがない事業者」のための一度きりの入口です。2年分の利用料を補助してもらい、3年目以降は自費で継続する、という前提で設計されていると読むのが実態に近いでしょう。過去にIT導入補助金でお助け隊サービスを入れた覚えがあるなら、申請準備に入る前にその履歴を確認してください。
申請単位は1法人・1個人事業主あたり1申請
デジタル化・AI導入補助金2026の交付申請期間中、申請は1事業者につき1申請のみです(交付決定も同様)。ただし同期間中に通常枠・インボイス枠・複数者連携枠を同時に申請し、交付決定と補助金の交付を受けることは可能とされています。同一法人の認定には「みなし同一法人」の考え方が適用され、親会社が議決権の50パーセント超を持つ子会社などは1社しか申請できません。
申請前チェックリスト(すべて満たさないと申請できません)
- 日本国内で法人登記され、法人番号公表サイトに掲載されている(個人事業主は国内に事業実施場所がある)
- GビズIDプライムを取得済み
- SECURITY ACTIONの一つ星または二つ星を、2026年4月開始の管理システムで宣言済み
- 直近月の事業場内最低賃金が地域別最低賃金以上
- 翌事業年度以降3年間で労働生産性の年平均成長率1パーセント以上の事業計画を策定できる
- IT導入補助金2022〜2025でお助け隊サービスの交付決定を受けていない
- 申請者本人が管理する携帯電話番号とメールアドレスを登録できる
実際にいくら戻るのか──「下限5万円」が意味すること
補助率だけを見ると「小規模事業者なら3分の2も出る」と読めますが、この枠には補助額5万円という下限があります。補助額は「サービス利用料(最大2年分)×補助率」で決まるので、下限を逆算すると、契約金額がある程度以上でないと申請そのものが成立しません。
| 区分 | 補助率 | 補助額5万円に必要な2年分の利用料 | 月額に直すと |
|---|---|---|---|
| 小規模事業者 | 2/3以内 | 7万5,000円以上 | 約3,125円以上 |
| 中小企業 | 1/2以内 | 10万円以上 | 約4,167円以上 |
補助率と補助額の範囲は公募要領2-3の記載。そこから逆算した「必要な利用料」と「月額換算」は編集部の試算です(24か月で均等に割った単純計算)。
逆に上限側も見ておきましょう。補助額150万円に届くには、小規模事業者で2年分225万円(月額約9万4,000円)、中小企業で300万円(月額12万5,000円)の契約が必要です。お助け隊サービスは中小企業向けに安価なワンパッケージを提供することを目的とした制度なので、この価格帯に届くサービスはごく一部です。
月額別・2年契約でいくら補助されるか(小規模事業者2/3・編集部の試算)
棒の長さは補助額に比例した編集部の作図です。月額3,000円は2年分7.2万円に補助率2/3を掛けても4.8万円にしかならず、補助額の下限5万円に届かないため申請できません。中小企業(1/2)の場合は同じ月額でも補助額が半分になるため、下限に届く水準がさらに上がります。
編集部の見方:この枠は「上限150万円の大型補助金」ではなく、「年10万〜30万円のセキュリティ費用を2年ぶん軽くする補助金」だと捉えるのが正確です。上限額に引っ張られて高額なサービスを選ぶより、自社の規模に合ったサービスを選び、補助が切れる3年目以降も払い続けられる金額かどうかで判断するほうが、投資として続きます。
申請から入金までの流れ(時系列)
この補助金は、事業者が単独で申請するのではなく、IT導入支援事業者と共同事業体を組んで申請するのが特徴です。申請マイページへの招待もIT導入支援事業者から届くため、支援事業者を先に決めないと手続きが始まりません。
STEP 1 締切の1か月前まで
GビズIDプライムとSECURITY ACTIONを準備する
GビズIDプライムの取得には日数がかかります。SECURITY ACTIONは2026年4月開始の管理システムで一つ星または二つ星を宣言します。この2つは締切直前では間に合いません。
STEP 2 締切の2〜3週間前
IT導入支援事業者とサービスを選ぶ
IPAのお助け隊サービスリストに載っていて、かつ本事業でIT導入支援事業者が提供し事務局に登録したサービスだけが対象です。この段階ではまだ契約しません。
STEP 3 4次締切は2026年8月25日17:00
申請マイページを開設し交付申請を出す
IT導入支援事業者から招待を受けて申請マイページを開設し、事業者情報を入力します。IT事業者ポータル側で事業計画とITツール情報が入力され、最後に事業者が内容を確認・宣誓して提出します。
STEP 4 2026年10月7日(予定)
交付決定の通知を受ける
申請マイページで結果が通知されます。交付決定を受けた事業者の名称・法人番号・所在地は事業ホームページで公表されます。
STEP 5 交付決定日〜6か月程度
契約・導入・支払いをこの順番で行う
交付決定より前に契約・発注・納品・支払いをすると補助対象になりません。契約が最初、その後に納品と支払い(順不同)。ただし支払いの前に必ず請求が行われている必要があります。
STEP 6 2027年3月31日17:00まで(予定)
実績報告を出す
請求書・支払いの証憑・契約書の写し・補助金の振込口座情報などを提出します。小規模事業者として申請した場合は従業員一覧も必要です。
STEP 7 実績報告の後
補助金の額の確定と入金
事務局が確定検査を行い、補助金は事務局から補助事業者へ直接支払われます。
STEP 8 最長で2031年1月まで
効果報告を提出する
事業計画期間前(2027年3月〜)、1年度目(2028年4月〜2029年1月)、3年度目(2030年4月〜2031年1月)の3回。2年度目の報告は不要です。
出典:公募要領(セキュリティ対策推進枠)3-1補助事業の流れ、3-2交付申請、3-4補助事業の実施及び実績報告、3-5事業実施効果の報告。スケジュールは変更される場合があります。
後払いである点は他の補助金と同じです。支払いを済ませてから補助金が入るまでの資金繰りについては、補助金の概算払(中間払)は使えるのかで制度別の可否を整理しています。
交付決定後にやってはいけない3つのこと
この補助金で交付決定の取消しにつながるのは、審査の甘さではなく手順の間違いです。公募要領が具体的に警告しているのは次の3点です。
確定検査で落ちる典型パターン
- 交付決定より前に契約・発注してしまう。「早く守りを固めたい」と先に申し込むと、その時点で補助対象外が確定します。交付決定日以降の契約日・申込日であることが実績報告時に確認されます。
- 契約より先に納品や支払いが行われている。順番は契約が先で、その後に納品と支払い(この2つの順は問わない)。さらに支払いの前に必ずIT導入支援事業者からの請求が行われている必要があります。確定検査で逆転が見つかると交付決定の取消しになる場合があります。
- 現金・分割払い・リボ払いで支払う。支払方法は原則、銀行振込とクレジットカード1回払いのみ。振込は補助事業者名義の口座からIT導入支援事業者の口座へ。窓口やATMでも現金による支払いは認められません。個人事業主は代表者本人名義のカード、法人は法人名義のカードが必要です。
実績報告で提出する証憑も細かく指定されています。振込の場合は支払日・支払元口座情報(金融機関名・口座番号・口座名義人)・支払先名・支払金額が確認でき、振込が完了したことが分かる書類が必要で、IT導入支援事業者側の入金明細や領収証は認められません。請求書が一式表記になっている場合は請求明細書もあわせて出します。
また、ITツールの利用を証する資料として契約書または利用申込書の写しが求められ、契約日または申込日が交付決定日以降であること、利用者が補助事業者であること、利用期間が分かることが確認されます。契約書のひな形を先に取り寄せて、この3点が読み取れるかを確認しておくと、報告時に慌てません。見積書や証憑の整え方は補助金の見積書と相見積の取り方にまとめています。
3年間の賃上げ目標と「全額返還」のリスク
見落とすと影響が大きいのが賃上げ要件です。IT導入補助金2022からIT導入補助金2025までの間に交付決定を受けた事業者は、この枠でも次の計画を策定・実行することが申請要件になります。
- 事業計画期間において、1人当たり給与支給総額(非常勤を含む全従業員)の年平均成長率を3.5パーセント以上向上させること
- 交付申請を行う時点で、その賃金引上げ計画を策定し従業員に表明していること
未達の場合は補助金の全部の返還を求められることがあります。公募要領は「補助金交付額が100万円のケースで返還額100万円(全額)」という具体例を示しています。ただし、付加価値額が増加しておらず、かつ企業全体として3年の事業計画期間の過半数が営業利益赤字の場合や、天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合は返還を求めないとされています。
この要件は、保険医療機関・保険薬局、介護サービス事業者、社会福祉事業・更生保護事業を行う事業者、学校教育法に基づく学校等については適用外です。
さらに、交付申請時に「表明した」と申告したのに実際には表明していなかったことが交付決定後に発覚した場合、事務局は交付決定を取り消すと明記されています。就業規則の改定や社内掲示など、表明した事実が残る形にしておいてください。賃上げ要件の考え方は最低賃金はいつから上がるかもあわせて確認すると全体像がつかめます。
効果報告は3回、そして「解約=辞退」というルール
補助金が入って終わりではありません。効果報告の対象期間と提出期間は次のとおりです。
| 回 | 効果報告対象期間 | 報告期間 |
|---|---|---|
| 事業計画期間前 | ITツール導入後〜 | 2027年3月〜 |
| 1年度目 | 交付申請時点の翌事業年度 | 2028年4月〜2029年1月 |
| 2年度目 | 報告の必要なし | |
| 3年度目 | 交付申請時点より決算期を3期経過した事業年度 | 2030年4月〜2031年1月 |
出典:公募要領(セキュリティ対策推進枠)3-5事業実施効果の報告。報告内容は営業利益・人件費・減価償却費・総労働時間・1人当たり給与支給総額・事業場内最低賃金などの数値とセキュリティ対策状況です。
注意が要るのは解約の扱いです。公募要領は「本事業において導入したITツールを解約・利用停止した場合」を辞退に該当する行為として挙げ、2026年5月15日の改訂で「複数のITツールを導入し、そのうちの一部を解約する場合であっても、実施している補助事業の辞退とみなす場合があるため、辞退の手続きを行う必要がある」と表現が改められました。
注意:辞退した場合の返還と加算金
辞退した場合、交付規程にもとづき補助金の全部または一部の返還が必要になることがあります。返還が必要になったときは、補助金受領の日から返還金納付の日までの日数に応じた加算金を納付する必要があり、納付が遅れるとさらに延滞金が発生します。「合わなかったから途中でやめる」を前提にしない金額とサービスを選ぶことが、結果的にいちばん安上がりです。
加点10項目のうち、いまから間に合うもの
セキュリティ対策推進枠にも加点があります。公募要領が挙げる加点項目は次の10種類です。
- SECURITY ACTIONの「★★ 二つ星」を宣言していること
- (IT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けていない事業者)事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上にし、1人当たり給与支給総額の年平均成長率3パーセント以上の3年計画を策定・表明していること。+50円以上ならさらに加点
- (IT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けた事業者)同+30円以上と年平均成長率3.5パーセント以上。+50円以上ならさらに加点
- 中小機構のデジタル化支援ポータル「デジwith」の「IT戦略ナビwith」を交付申請前に実施し、IT戦略マップを添付すること
- 令和7年度に「健康経営優良法人2026」に認定された事業者であること
- 女性活躍推進法のえるぼし認定、または次世代法のくるみん認定等を受けていること
- 中小企業庁「成長加速マッチングサービス」で会員登録し、挑戦課題を掲載中にしていること
- 中小機構「省力化ナビ」を活用し、「解決策」のPDFをダウンロードして生産性向上の知見を確認していること
- 令和6年10月〜令和7年9月に、一定の賃金帯で雇用している従業員が全従業員の30パーセント以上である月が3か月以上あること
- 交付申請の直近月の事業場内最低賃金を、令和7年7月の事業場内最低賃金+63円以上の水準にしていること
出典:公募要領(セキュリティ対策推進枠)3-3(2)①加点項目について。項目8は2026年5月15日の改訂で「解決策のPDFをダウンロードすることにより」という要件が明記されました。
編集部の見方:締切まで日がないなら、狙えるのは1・4・7・8の4つです。SECURITY ACTIONの二つ星への引き上げ、IT戦略ナビwith、成長加速マッチングの課題登録、省力化ナビの解決策ダウンロードは、いずれも自社の作業だけで当日中に完了します。逆に5・6の認定系は年単位の準備が必要で、いまからは間に合いません。
なお減点もあります。IT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けた事業者は減点対象で、さらに賃上げ加点を受けたのに未達だった事業者も減点されます。加点を取ったうえで未達だった場合は、効果報告で未達が報告されてから18か月間、中小企業庁が所管する他の補助金(ものづくり補助金、持続化補助金、事業承継・M&A補助金など)でも大幅に減点されます。
相場観と編集部の価値判断
セキュリティ対策推進枠は、補助金としては小さな部類です。それでも使う価値があるかを、3つの軸で整理します。
もうひとつ、この枠の性格をよく表しているのが審査項目です。事業面の審査事項には「自社で自立的に、又は出資元の支援を受けてセキュリティ対策を進めているか」「サプライチェーンの寄与度が高いか」が並んでいます。「何も対策していないので補助金で始めたい」よりも、「すでに手をつけていて、サプライチェーンの一部として守る必要がある」という文脈のほうが評価される設計だと読めます。
日程面では、4次締切の2026年8月25日を逃しても5次・6次の設定が予定されています。ただしGビズIDプライムとSECURITY ACTIONの準備には日数がかかるため、次回に回すとしても準備は今週から始めるのが正解です。公募回ごとの締切はデジタル化・AI導入補助金2026 公募スケジュール一覧で追えます。
会計ソフトやインボイス対応など、他の用途で同じ補助金を使う場合は会計ソフトは補助金で導入できるかもご覧ください。セキュリティ対策推進枠と通常枠・インボイス枠は同時申請が可能ですが、オプション・役務の二重計上は不正行為として扱われ、交付決定後でも全額返還を求められる場合があるため、IT導入支援事業者とツールの切り分けをよく確認してください。
よくある質問
サイバーセキュリティ対策の補助金はいくらもらえますか。
デジタル化・AI導入補助金2026のセキュリティ対策推進枠では、補助額5万円から150万円、補助率は中小企業が2分の1以内、小規模事業者が3分の2以内です。補助対象経費はサービス利用料の最大2年分で、対象はIPAのサイバーセキュリティお助け隊サービスリストに掲載されたサービスのうち、IT導入支援事業者が提供し事務局に登録されたものに限られます。
どんなセキュリティ製品でも補助の対象になりますか。
なりません。補助対象となるITツールは、独立行政法人情報処理推進機構が公表するサイバーセキュリティお助け隊サービスリストに掲載されているサービスのうち、本事業でIT導入支援事業者が提供し事務局に事前登録されたサービスに限られます。市販のセキュリティソフトを自分で購入しても対象外です。
SECURITY ACTIONの宣言は必ず必要ですか。
必要です。公募要領の申請要件に、IPAが実施するSECURITY ACTIONの一つ星または二つ星いずれかの宣言を行うことが定められています。第2回公募以降は2026年4月より運用開始のSECURITY ACTION管理システムで宣言していることが条件です。二つ星の宣言は加点項目にもなります。
過去にIT導入補助金を使ったことがあっても申請できますか。
サイバーセキュリティお助け隊サービスを含むITツールについて、IT導入補助金2022から2025までのいずれかの枠で交付決定を受けている場合は申請できません。また、デジタル化・AI導入補助金2026において、いずれかの枠で申請中または交付決定を受けている場合も申請できません。それ以外の交付決定歴がある場合は申請できますが、審査上の減点対象になります。
交付決定の前に契約してもよいですか。
いけません。交付決定前に契約、発注、納品、支払い等を行った場合は補助金を受けることができません。順番は契約が先で、その後に納品と支払いを行います。支払いの前には必ずIT導入支援事業者からの請求が行われている必要があり、確定検査でこの順序が逆転していることが確認されると交付決定の取消しとなる場合があります。
途中で解約したらどうなりますか。
導入したITツールを解約または利用停止した場合は補助事業の辞退にあたるため、辞退の手続きが必要です。辞退すると交付規程にもとづき補助金の全部または一部の返還を求められることがあり、その場合は補助金受領の日から返還金納付の日までの日数に応じた加算金の納付も必要になります。納付が遅れると延滞金も発生します。
補助金はいつ振り込まれますか。
後払いです。交付決定を受けたあとに契約・導入・支払いを済ませ、実績報告を提出し、事務局が補助金の額を確定してから、事務局から補助事業者へ直接支払われます。4次締切分では事業実施と実績報告の期限が2027年3月31日17時(予定)とされているため、支払いから入金までの資金繰りをあらかじめ計画しておく必要があります。
出典・参考
- 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(セキュリティ対策推進枠)」2026年2月27日作成/2026年5月15日改訂
- 同「セキュリティ対策推進枠」
https://it-shien.smrj.go.jp/applicant/subsidy/security/ - 同「事業スケジュール」
https://it-shien.smrj.go.jp/schedule/ - IPA「サイバーセキュリティお助け隊サービス制度」「サイバーセキュリティお助け隊サービス登録一覧」
https://www.ipa.go.jp/security/sme/otasuketai/index.html
本記事は2026年8月22日時点の公表情報にもとづく編集部の整理です。制度内容・スケジュール・要件は変更される場合があります。申請にあたっては必ず最新の公募要領と交付規程を確認し、IT導入支援事業者にご相談ください。
補助金・助成金 完全ガイドに戻る|関連記事:デジタル化・AI導入補助金2026(通常枠)/公募スケジュール一覧/補助金の概算払(中間払)/電子帳簿保存法への対応
