世帯主が亡くなると、役所には「世帯主変更届(世帯変更届)」という届出が発生します。期限は亡くなった日から14日以内。ただし、この届出は全員に必要なわけではありません。残された家族の構成によっては、出しても受け付けてもらえません。この記事は、必要・不要の判定を先に済ませ、同じ窓口で片づく手続きをまとめて終わらせるための手順書です。
結論の要点
- いつまでに:亡くなった日から14日以内(住民基本台帳法の届出期間)
- いくら:手数料0円。ただし正当な理由なく届け出ないと5万円以下の過料の対象になり得る
- そもそも要るか:残った世帯員のうち15歳以上が2人以上いるときだけ必要。1人になったなら届出不要
- どこで:住んでいた市区町村の窓口。おくやみコーナーがあれば、国保・介護・年金をまとめて案内してもらえる
- 持ち物:本人確認書類、新しい世帯主になる人との関係がわかるもの、(自治体により)委任状
まず判定|あなたに世帯主変更届は必要か
世帯主変更届は「誰を新しい世帯主にするか、住民票に書き込む」ための届出です。したがって候補が2人以上いて初めて意味を持ちます。候補が1人しかいなければ、市区町村が自動的にその人を世帯主として処理するため、届出そのものが不要です。判断の基準になるのは「残った世帯員のうち15歳以上が何人か」です。
| 亡くなったあとの世帯の状況 | 世帯主変更届 |
|---|---|
| 残ったのが1人だけ(配偶者のみ など) | 不要 |
| 残ったのが親1人+15歳未満の子(15歳以上が1人) | 不要 |
| 残ったのが母と成人の子など、15歳以上が2人以上 | 必要(14日以内) |
| 故人がひとり暮らしだった(世帯員が0人になる) | 不要 |
※「15歳」が基準になるのは、15歳未満の子は単独で世帯主になれない扱いのためです。細部の運用は自治体で異なるため、窓口で確認してください。
時系列|死亡から14日までに役所で終わらせること
死亡当日から14日までの流れ
7日以内
死亡届と火葬許可申請
死亡診断書と一体の用紙で提出します。多くは葬儀社が代行します。提出前に死亡診断書のコピーを5〜10枚とっておくと、後の保険・年金・金融機関の手続きで繰り返し使えます。
10日以内(厚生年金)/14日以内(国民年金)
年金受給権者死亡届
日本年金機構にマイナンバーが収録されている人は原則として省略できます。ただし未支給年金がある場合は、別途「未支給年金・未支払給付金請求書」の提出が必要です。
14日以内
世帯主変更届
上の判定表で「必要」に当たる場合のみ。窓口は住民票のある市区町村です。
14日以内
国民健康保険・後期高齢者医療・介護保険の資格喪失
保険証(資格確認書)の返却が必要です。世帯主が変わると、残された家族の保険証も記載が変わるため作り直しになります。
すみやかに
公共料金・銀行・携帯などの名義変更
役所の手続きではありませんが、住民票(除票)や戸籍が必要になります。役所に行く日にまとめて取得しておくと二度手間が減ります。
3か月以内
相続放棄・限定承認の判断期限
家庭裁判所への申述期限です。財産より借金が多い可能性があるなら、この期限が最優先になります。
損しないポイント
申請しないともらえないお金・出し忘れると損をする手続き
- 未支給年金:年金は亡くなった月分まで支払われます。受け取っていない分は、生計を同じくしていた遺族が請求できます。請求しなければ支払われません。
- 葬祭費・埋葬料:国民健康保険・後期高齢者医療なら葬祭費、健康保険なら埋葬料。いずれも申請主義で、資格喪失の窓口と同じ場所で申請できることが多いです。
- 高額療養費の払い戻し:亡くなる直前の入院費が自己負担限度額を超えていた場合、相続人が受け取れます。
- 住民票の除票・戸籍のまとめ取り:役所に行くその日に、金融機関の数+2通ほど余分に取っておくと、後の郵送往復が減ります。
あなたの場合はこう|状況別の進め方
父が亡くなり、母と同居の自分が残った
15歳以上が2人以上なので届出が必要です。実務上は「生計の中心になっている人」を新しい世帯主にするのが自然ですが、法律上どちらでなければならないという決まりはありません。国民健康保険の保険料は世帯主に納付義務がまとめて課されるため、保険料の通知が誰宛てに届くかが変わります。ここだけは意識して決めてください。
父が亡くなり、母だけが残った
届出は不要です。窓口に行っても「必要ありません」と言われます。ただし国民健康保険・介護保険の資格喪失や保険証の返却は別途必要なので、「世帯主変更はいらない」=「役所に行かなくていい」ではない点に注意してください。
故人がひとり暮らしで、自分は遠方に住んでいる
世帯主変更届は不要です。この場合の主戦場は、故人の住んでいた自治体での資格喪失・葬祭費の申請と、金融機関・不動産の手続きに移ります。遠方から何度も通うのは現実的でないので、1回の訪問で戸籍・除票をまとめ取りする設計が効きます。おくやみコーナーのある自治体なら、事前予約で必要書類を先に教えてもらえることがあります。
世帯を分けて(世帯分離)住んでいた
同じ住所でも住民票上の世帯が別なら、故人の世帯には世帯員がいなくなるため世帯主変更届は不要です。介護保険の自己負担割合などを理由に世帯分離していたケースでは、死亡後に世帯を合併するかどうかが次の論点になります。保険料や自己負担への影響が出るので、窓口でシミュレーションしてもらってください。
現場で起きること|窓口に行く前に知っておきたい細部
体験談として繰り返し語られるのは、次のような「制度の説明には出てこない」部分です。事実関係は公式で確認できるものだけを残し、体験談として語られる部分はその旨を明記しています。
- 14日を過ぎても受け付けてもらえる:期限を過ぎたから門前払い、ということはありません。ただし自治体によっては「届出期間経過通知書」など、遅れた理由を書く用紙の記入を求められます。過料に処すかどうかを判断するのは市区町村ではなく簡易裁判所で、実際に科されるかは事案によります。窓口で「必ず罰金です」と言われることはまずありません。
- 保険証は世帯主の名前で作り直しになる:世帯主が変わると、残された家族の国民健康保険の保険証(資格確認書)も差し替えが必要です。体験談では「保険証を返しに行っただけのつもりが、その場で全員分の再交付になった」という声が多く見られます。窓口に行くときは同一世帯の全員分の保険証を持参するのが結果的に早道です。
- おくやみコーナーは予約制のことが多い:死亡や相続に関する手続きを一つの窓口で案内する「おくやみコーナー」は、国が2020年に設置ガイドラインと支援ナビを示して以降、設置する自治体が増えています。ただし全国すべてにあるわけではなく、あっても事前予約が前提の運用が一般的です。体験談では「予約なしで行ったら通常窓口を1つずつ回る羽目になった」という話が定番です。
- 印鑑は「念のため」持っていく:押印廃止が進み、多くの自治体で世帯変更届に押印は不要です。それでも他の手続き(金融機関など)で使う可能性があるため、認印を1本持っていくのが実務的です。
- 本人以外が行くなら委任状の確認を:世帯変更届は原則として本人または同一世帯の人が届け出ます。別世帯の親族が代理する場合、委任状が必要かどうかは自治体で運用が分かれます。往復を避けるため、行く前に電話で確認するのが確実です。
編集部の価値判断|どこまで自分でやり、どこから頼むか
死後手続きの代行サービスは、パッケージで10万〜30万円台の価格帯が中心です。相談すれば「全部お任せ」を勧められることが多い領域ですが、役所の窓口手続きそのものは、難易度としては高くありません。判断材料として、二つの目安を示します。
堅実に済ませたい人はここまで
役所での手続き(世帯主変更・資格喪失・葬祭費・年金)は自分で1〜2回の来庁で完結させる。おくやみコーナーがあれば予約して使う。外部に頼むのは、相続登記と相続税申告など資格が要る部分だけ。費用を最小化できます。
こだわりたい・余力がない人はここまで
遠方に住んでいる、平日に休めない、相続人が多くて連絡調整が重い——このいずれかに当てはまるなら、戸籍収集と金融機関の手続きを含めて依頼する価値があります。判断軸は「難しいから」ではなく「平日の時間を何回捻出できるか」です。
逆に、3か月の相続放棄の期限が視野に入っている場合だけは話が別です。借金の有無がはっきりしないまま時間を使うと取り返しがつかないため、ここは早めに専門家に相談したほうが安全側に倒せます。
よくある質問
世帯主変更届は14日を過ぎたらどうなりますか?
届出自体は14日を過ぎても受け付けてもらえます。住民基本台帳法では正当な理由なく届出をしない場合に5万円以下の過料の定めがありますが、実際に過料に処すかどうかを判断するのは簡易裁判所です。遅れた場合は理由を書く用紙の記入を求められることがあります。
届出に手数料はかかりますか?
世帯主変更届(世帯変更届)そのものに手数料はかかりません。同時に取得する住民票の写しや戸籍謄本には、1通あたりの交付手数料がかかります。
新しい世帯主は誰にすればよいですか?
法律で「この人でなければならない」と決まっているわけではありません。実務では生計の中心になっている人を選ぶのが一般的です。国民健康保険の保険料は世帯主に納付義務がまとめて課されるため、通知の宛先が誰になるかを踏まえて決めてください。
年金の死亡届も14日以内ですか?
年金受給権者死亡届の期限は、厚生年金が10日以内、国民年金が14日以内です。ただし日本年金機構にマイナンバーが収録されている人は原則として省略できます。未支給年金がある場合は、別途「未支給年金・未支払給付金請求書」の提出が必要です。
おくやみコーナーはどこの役所にもありますか?
全国すべての市区町村にあるわけではありません。国が2020年におくやみコーナーの設置ガイドラインと支援ナビを示して以降、設置する自治体が増えています。設置の有無と予約の要否は、お住まいの自治体の公式サイトで確認してください。
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出典・基準日
基準日:2026年8月3日。制度・期限は変更されることがあります。手続きの前に、お住まいの市区町村と各制度の公式サイトで最新の内容をご確認ください。本記事は一般的な情報提供であり、個別の法律相談・税務相談に代わるものではありません。
- 住民基本台帳法(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000081
- 総務省「住所の異動届は正しく行われていますか?」https://www.soumu.go.jp/menu_kyotsuu/important/topics081127.html
- 日本年金機構「年金を受けている方が亡くなったとき」https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/kyotsu/jukyu/20140731-01.html
- 日本年金機構「亡くなった方の未支給年金を受け取れるとき」https://www.nenkin.go.jp/shinsei/jukyu/kyotsu/20140731-02.html
- 政府CIOポータル「『おくやみコーナー』を設置する市町村支援」https://cio.go.jp/sibousouzoku_siennabi_2020/
- 大阪市「世帯変更届」https://www.city.osaka.lg.jp/shimin/page/0000369828.html/広島市「住所変更などの届け出が遅れるとどうなるのですか」https://www.city.hiroshima.lg.jp/faq/koseki/1001558/1001860.html
