資格やスキルの学び直しのために、退職せずにまとまった時間をつくりたい。そう考えたときに2025年10月1日から使えるようになったのが「教育訓練休暇給付金」です。仕事を辞めずに、連続30日以上の無給の休暇を取って学ぶ間、失業給付(基本手当)と同じ日額が支給されます。
ただしこの制度には、他の給付金にはない独特の入口があります。勤務先の就業規則に「教育訓練休暇制度」が定められていないと、本人がどれだけ要件を満たしていても使えません。この記事では、その確認から復職までを時系列で整理します。
※本記事は2026年8月1日時点の公表情報をもとに、編集部が公的機関の資料を整理したものです。個別の可否や金額はお住まいを管轄するハローワークでご確認ください。
| まず何を | 勤務先の就業規則に「教育訓練休暇制度」があるかを人事に確認する。ここが無いと制度そのものが使えない。 |
| いつまでに | 休暇の開始前に、会社の承認と受講予定を固める。申請窓口は住居所を管轄するハローワーク。 |
| いくら | 失業給付(基本手当)と同じ日額。所定給付日数は雇用保険の加入期間に応じて90日/120日/150日。 |
| 最低ライン | 連続30日以上の「無給」の休暇であること。有給扱いだと対象外。 |
教育訓練休暇給付金とは|「辞めずに学ぶ」ための生活費
厚生労働省の説明では、労働者が離職することなく教育訓練に専念するため、自発的に休暇を取得して仕事から離れる場合に、その訓練・休暇期間中の生活費を保障するため、失業給付(基本手当)に相当する給付として賃金の一定割合を支給する制度とされています。2025年(令和7年)10月1日に創設されました。
似た名前の「教育訓練給付金」が受講費用の一部を返してくれる制度なのに対し、こちらは休んでいる間の生活費を埋める制度です。役割が違うので、混同しないでください。
| 教育訓練休暇給付金 | 教育訓練給付金 | |
|---|---|---|
| 何を埋めるか | 休暇中の生活費 | 講座の受講費用 |
| 働き方 | 在職のまま無給の休暇を取る | 在職・離職どちらでも可 |
| 会社の関与 | 必須(就業規則の規定と承認) | 原則不要 |
| 金額の考え方 | 基本手当と同じ日額×所定給付日数 | 受講費用の20%/40%/最大80% |
費用は教育訓練給付金、生活費は教育訓練休暇給付金。制度が噛み合えば両輪で使える設計になっています。教育訓練給付金そのものの区分と申請の流れは教育訓練給付で安く資格を取る【2026年版】で詳しく整理しています。
やることを時系列で|制度確認から復職まで
支給の条件と金額|「30日・12か月・5年」の3つの数字
対象になる人
雇用保険の一般被保険者が対象です。高年齢被保険者・短期雇用特例被保険者・日雇労働被保険者は対象外とされています。
満たすべき条件
- 就業規則や労働協約などに基づく教育訓練休暇制度によって休暇を取ること
- その休暇が連続30日以上かつ無給であること
- 業務命令ではなく労働者が自発的に取得し、事業主の承認を受けていること
- 休暇開始前2年間に被保険者期間が12か月以上あること
- 雇用保険の加入期間が通算5年以上あること
もらえる日数
もらえる金額
離職した場合の失業手当(基本手当)と同じ日額が支給されます。日額は離職前の賃金と年齢で決まり、賃金日額のおおむね50〜80%の範囲で、年齢区分ごとに上限額が設けられています。この上限額は毎年8月1日に改定されるため、具体的な金額は最新の数字をハローワークで確認してください。厚生労働省のサイトには支給額のシミュレーションも用意されています。
- 休暇が29日以下だと1円も出ない。「連続30日以上」が入口の条件。カレンダー上の日数で必ず数え直す。
- 有給休暇や特別有給休暇を充てると対象外になりうる。この給付は「無給の休暇」の生活費を埋めるもの。会社の厚意で一部を支給してもらうと逆に不利になる場合がある。
- 通算5年に届かないと使えない。加入期間が4年11か月なら、休暇開始日をずらすだけで受給できるようになることがある。
- 高年齢被保険者(65歳以上)・短期雇用特例被保険者・日雇労働被保険者は対象外。65歳到達をまたぐ計画は要注意。
- 会社に規定が無いまま休むと、ただの無給欠勤になる。先に規定、次に休暇。順番を逆にしない。
あなたの場合はこう|パターン別の分かれ道
会社に教育訓練休暇制度が「ある」場合
最短ルートです。人事に受講計画と休暇希望を出し、承認を得たうえでハローワークの手続きに進みます。会社側にも書類の作成が発生するので、希望日の1〜2か月前には相談を始めるのが現実的です。
会社に制度が「ない」場合
制度の導入は法律上の義務ではないため、規定が無い会社は珍しくありません。この場合、本人の要件がそろっていても給付金は使えません。取れる手は3つです。
- 会社に規定の新設を相談する。企業側には人材開発支援助成金など制度整備を後押しする仕組みがあり、「無給休暇なので人件費は増えない」点は説得材料になります。
- 休暇ではなく費用側の支援に切り替える。働きながら受講し、教育訓練給付金で費用の補助を受ける形なら会社の規定は不要です。
- 時期をずらす。制度整備には就業規則の変更と労基署への届出が要るため、数か月単位で見ておきます。
雇用保険の加入が5年に届かない場合
通算5年が入口条件です。転職で空白期間がある人は通算されるかどうかで結論が変わります。空白が長いと前職分がリセットされている可能性があるため、計画を立てる前にハローワークで加入期間を照会しておくと、後から崩れません。
育児・介護と重なる場合
育児休業給付や介護休業給付とは目的が異なる別制度です。同じ期間に複数の給付を重ねて受け取れるわけではないため、どの休業として届け出るかを先に決める必要があります。介護休業給付金のもらい方【2026年版】もあわせて確認してください。
現場で起きやすいこと|先に知っておきたい5つ
制度が始まって日が浅いため、社内の運用が固まっていない職場が多いのが実情です。ネット上の相談や社会保険労務士の解説で繰り返し話題になっている論点を、編集部の視点で整理しました。(以下は公的資料そのものではなく、実務で語られている傾向としてお読みください。)
- 人事が制度を知らない。2025年10月創設の新しい給付です。「そんな制度は無い」と即答されても、それは規定が無いという意味であって、制度が存在しないという意味ではありません。厚生労働省のリーフレット(事業主向け)を持参して話すほうが早い、という声が目立ちます。
- 「無給」の線引きでもめる。皆勤手当や住宅手当など、休んでも支給される固定的な手当をどう扱うかは判断が要ります。会社任せにせず、支給予定の項目を洗い出してハローワークに確認するのが安全です。
- 社会保険料は免除されない。育児休業と違い、健康保険・厚生年金の保険料免除の仕組みは用意されていません。無給の月も保険料は発生し、会社経由で本人負担分を納めることになるのが通常です。この持ち出しを見込んでいないと家計が崩れます。
- 賞与や昇給の査定に響くことがある。休暇中の評価の扱いは会社ごとに違います。制度を新設してもらうなら、この点も一緒に決めておくと後で揉めません。
- 復職後の配属が保証されるわけではない。育児・介護休業のような法律上の原職復帰の配慮規定と同列には扱われません。上長との合意を文面で残しておくのが無難です。
編集部の見方|どこまで踏み込むかの目安
この制度は「使えるなら強力だが、入口が狭い」タイプです。学び直しをすすめる立場の情報は、どうしても踏み込んだ活用を勧めがちになります。判断材料として、3つの水準に分けて整理しました。どれが正解ということではなく、家計と会社の状況で選ぶものです。
| スタンス | こう考える人向け | 現実的な落としどころ |
|---|---|---|
| 堅実に済ませたい | 収入減はできるだけ避けたい。学びは続けたい。 | 休暇は取らず、働きながら受講。費用は教育訓練給付金で回収する。 |
| バランス型 | 試験直前や実習期間など、どうしても専念したい山場がある。 | 最短の30日〜2か月で区切って取得。所定給付日数を使い切らない前提で組む。 |
| 腰を据えたい | 職種を変えるレベルの学び直しをしたい。 | 90〜150日をフルに使う。ただし社会保険料の自己負担と賞与減を必ず試算してから。 |
編集部として一点だけ強めに言うなら、「日額がいくら出るか」より先に「無給期間の固定支出がいくらか」を数えてください。基本手当と同じ日額は、直前の手取りより確実に少なくなります。社会保険料の本人負担が続くことまで含めて、3か月分の家計を紙に書き出してから決めるのが、この制度との一番堅い付き合い方だと考えています。固定支出の圧縮は固定費見直しナビもあわせてどうぞ。
よくある質問
会社に教育訓練休暇制度がなくても申請できますか?
できません。就業規則や労働協約などに基づく教育訓練休暇制度によって取得した休暇であることが要件のため、規定が無い場合は本人が他の条件を満たしていても対象外です。まず勤務先に規定の有無を確認してください。
休暇は30日連続でなければいけませんか?
連続した30日以上の休暇であることが要件とされています。飛び飛びの休みを合計して30日にする形は想定されていないため、まとまった期間として取得できるかを会社と調整してください。
もらえる金額は失業手当と同じですか?
離職した場合の基本手当に相当する日額が支給されます。日額は離職前の賃金と年齢で決まり、年齢区分ごとの上限額は毎年8月1日に改定されます。厚生労働省のサイトで支給額のシミュレーションが確認できます。
教育訓練給付金と両方もらえますか?
目的が異なる別々の制度です。受講費用を対象とする教育訓練給付金と、休暇中の生活費を対象とするこの給付金は役割が重なりません。ただし個別の併用可否は講座や手続きの内容で変わるため、申込み前にハローワークで確認してください。
休暇中の社会保険料はどうなりますか?
育児休業のような保険料免除の仕組みは設けられていません。無給の期間も健康保険・厚生年金の保険料は発生するのが一般的で、会社経由で本人負担分を納めることになります。取得前に金額を会社に確認しておいてください。
出典・参考
- 厚生労働省「教育訓練休暇給付金」(支給要件・支給額シミュレーション)
- 厚生労働省「教育訓練休暇給付金のご案内(簡略版)」リーフレット(加入期間別の所定給付日数)
- 厚生労働省 職業安定分科会雇用保険部会 資料「教育訓練休暇給付金について」
- 岡山労働局・東京ハローワーク渋谷「教育訓練休暇給付金の創設について(令和7年10月1日)」
基準日:2026年8月1日。制度は改正されることがあります。手続きの可否・金額は必ずお住まいを管轄するハローワークにご確認ください。本記事は編集部が公的機関の公表資料をもとに整理したもので、専門家による監修を受けたものではありません。
資格・学び直しに使えるお金と手順は働きながら取る資格ナビにまとめています。退職を伴う学び直しを考えている方は退職・年金の手続きナビもあわせてご覧ください。
