まず、これだけ
「落ちる理由」の多くは、審査の裁量ではなく、公式に明記された除外事由です。
- 確実に通らない:確定申告をしていない/代位弁済の求償債務が残っている/銀行取引停止処分/法的整理中/延滞中。これは交渉の余地がありません。
- 実務で最も多い:税金の滞納と資料不足。ただし完納の見通しが立てば道は残ります。
- 保証割合:一般保証は80%を保証協会・20%を金融機関が負担(責任共有制度)。だから銀行も本気で審査します。
- 責任共有の対象外:創業関連保証、セーフティネット保証1〜4号・6号、危機関連保証など13の制度は100%保証。ここに乗れるかが通過率を左右します。
- 保証料:年0.45〜1.90%の9区分。分割返済なら分割係数(0.55〜0.77)がかかって実質的に安くなります。
基準日: 2026年8月5日。出典はページ末尾。制度の細部は各都道府県の信用保証協会で異なります。
金融機関に融資を申し込んだら「保証協会付きで進めます」と言われ、しばらくして「今回は難しい」と返ってきた——理由は教えてもらえなかった。事業者からよく聞く話です。
ただ、信用保証協会は「ご利用いただけない中小企業とは」というページで、対象外になる条件を公表しています。まずここに自分が当たっていないかを確認するのが最短です。当たっていなければ、落ちた原因は「資料の出し方」や「制度の選び方」にある可能性が高く、そこは手を打てます。
1. 公式に「利用できない」と書かれている条件
以下は東京信用保証協会が公表している内容(2026年2月6日更新)です。表現は協会ごとに多少違いますが、骨格は全国共通です。
| 対象外となる状態 | 実務上の見え方 |
|---|---|
| 代位弁済先で、協会に求償債務が残っている | 過去に協会が肩代わりし、その返済が終わっていない状態。他県の協会分も含まれます |
| 協会に対して求償権の保証人として債務を負っている | 他社の連帯保証人として残債を負っているケース |
| 銀行取引停止処分を受けている | 1回目の不渡り・支払不能から6か月未満も含む。法人代表者個人が処分を受けている場合、その法人も原則利用不可 |
| 破産・民事再生・会社更生等の法的手続中(申立中を含む)、または私的整理中 | 申立の準備段階でも該当し得ます |
| 休眠会社としてみなし解散された(最後の登記から12年以上) | 登記を放置している法人は事前に確認を |
| 保証付融資・プロパー融資に延滞等の債務不履行がある | 「数日の遅れが数回」でも記録に残ります |
| 確定申告をしていない | 個人事業主で最も多い門前払い。申告してから出直すしかありません |
| 事業実態・資金使途・返済能力を判断する資料の提示がない | ここが「準備次第で変わる」唯一の項目です |
| 粉飾決算・融通手形操作/税金を滞納し完納の見通しが立たない/反社会的勢力に該当 | 粉飾は発覚時点で信頼が失われます。税金は「滞納がある」より「完納の見通しがない」が問題 |
このほか、農林漁業・性風俗関連特殊営業・金融業(一部除く)・学校法人・宗教法人・NPO以外の非営利団体・LLPなどは業種等の理由で対象外です。
誤解されやすい点
- 赤字だから落ちる、とは書かれていません。除外事由に「赤字」「債務超過」は入っていません。返済能力を説明できる資料があるかどうかが論点です。
- 税金の滞納そのものより「完納の見通し」。分納の合意書があり実際に納めている状態と、放置している状態はまったく別に扱われます。
- 創業間もないことは不利ではありません。創業関連保証は責任共有制度の対象外(=100%保証)で、むしろ通りやすい設計です。
2. 責任共有制度:なぜ銀行も厳しく見るのか
「保証協会がつくなら銀行はノーリスクでは?」と思われがちですが、いまは違います。2007年に導入された責任共有制度により、原則すべての保証で金融機関も一定の負担を負います。
代位弁済が起きたときの負担割合
つまり一般保証では、貸したお金が焦げついたとき銀行も2割かぶります。ここが理解できると、銀行が資金使途や返済計画をしつこく聞く理由も腑に落ちます。逆に言えば、責任共有制度の対象外となる制度に乗せられれば、銀行側のリスクはゼロになり、話が前に進みやすくなります。
責任共有制度の対象外となる主な保証(=100%保証)
- 経営安定関連保証(セーフティネット保証)1号〜4号、6号 ※5号は対象外ではない点に注意
- 災害関係保証/危機関連保証
- 創業関連保証(再挑戦支援保証、スタートアップ創出促進保証制度を含む)
- 特別小口保険に係る保証/小口零細企業保証
- 事業再生保証/事業再生計画実施関連保証/求償権消滅保証
- 伴走支援型特別保証制度(一定の要件を満たす場合に限る)ほか
中小企業特定社債保証制度や流動資産担保融資保証(ABL)などは、金融機関の選択方式にかかわらず部分保証です。
3. 信用保証料はいくらか(計算式と具体例)
信用保証料率は決算内容などに応じて年0.45%〜1.90%の9区分。実額は「貸付金額 × 保証料率 × 保証期間(月)÷ 12 × 分割係数」で決まります。分割係数は返済回数が多いほど小さくなり、負担が軽くなります。
| 分割返済回数 | 均等分割係数 | 不均等分割係数 |
|---|---|---|
| 2回以上6回以下 | 0.70 | 0.77 |
| 7回以上12回以下 | 0.65 | 0.72 |
| 13回以上24回以下 | 0.60 | 0.66 |
| 25回以上 | 0.55 | 0.61 |
東京信用保証協会の公表値。協会により差がある場合があります。
計算例(貸付1,200万円・料率年1.15%の場合)
- 満期一括返済・24か月:1,200万円 × 1.15% × 24/12 = 276,000円
- 均等分割24回・24か月(係数0.60):1,200万円 × 1.15% × 24/12 × 0.60 = 165,600円
- 60か月・7か月目から返済(据置6か月・係数0.55):据置分69,000円 + 分割分341,550円 = 410,550円
保証料は原則として融資実行時に一括で支払います(分割払いの取扱いがある協会もあります)。繰上返済すると未経過期間分が返戻されます。
ここで見落とされがちなのが据置期間のコストです。据置期間中は分割係数がかからないため、保証料は満額でかかります。「返済を先送りしたい」という理由だけで長い据置を設定すると、保証料が数万円〜十数万円単位で増えます。運転資金の谷が本当にその期間なのかを確認してから決めるべきです。
4. 申込から実行までの流れと、落ちないための準備
申込前:自分が除外事由に当たらないか確認する
確定申告の未了、税金の滞納、過去の代位弁済、登記の放置。ここに当たっていると資料をいくら作っても通りません。当たっている場合は、まずその解消(申告・分納合意・登記)が先です。
申込:金融機関経由か、協会に直接か
取引銀行・信用金庫を通す方法(金融機関経由)と、協会の窓口に直接相談する方法(協会保証申込)があります。取引実績のある金融機関があるなら経由が早い。まだ取引がない・断られた場合は、協会の窓口相談から金融機関を紹介してもらう道があります。市区町村の制度融資(あっせん)を使う方法もあります。
審査:面談と資料
決算書2〜3期分、試算表、資金繰り表、納税証明書、見積書や契約書(設備資金の場合)。「事業実態・資金使途・返済能力を判断する資料」が公式に要件なので、口頭の説明だけで押し切ろうとすると不利になります。協会担当者の実地訪問が入ることもあります。
保証決定:保証書の発行
協会から金融機関へ信用保証書が発行されます。ここで保証料率と保証料額が確定します。申込から実行までは2週間〜1か月程度が一般的ですが、決算期直後や年度末は混みます。
融資実行:保証料の支払い
保証料は実行時に金融機関が受領し、協会へ送金します。手取り額は「融資額 − 保証料 − 印紙代等」。1,200万円の借入で保証料が41万円なら、口座に入るのはその分少なくなります。資金繰り表を作るときは手取りベースで見てください。
5. 落ちたあとにできること(状況別)
| あなたの状況 | 現実的な次の一手 |
|---|---|
| 確定申告をしていなかった | 期限後申告でも申告してから再挑戦。複数期分をまとめて出すと実態の説明が難しくなるので、税理士に整理を頼んだほうが結果的に早い場合があります。 |
| 税金・社会保険料を滞納している | 税務署・年金事務所と分納の合意を作り、数か月の履行実績を積む。「完納の見通しが見込める」状態を書面で示せるかが分かれ目です。 |
| 創業直後で実績がない | 創業関連保証(責任共有制度の対象外=100%保証)や、日本政策金融公庫の新規開業資金を検討。一般保証の枠で戦わないこと。 |
| 売上が急減している | セーフティネット保証4号・5号や危機関連保証の指定に該当しないか、市区町村の認定窓口で確認。1〜4号・6号なら100%保証です。 |
| 資料不足と言われた | 最新の試算表と、月次の資金繰り表(今後12か月)を作る。「いくら足りず、何に使い、どこから返すか」が1枚で分かる資料があるかどうかで印象が変わります。 |
| 代位弁済の履歴がある | 求償債務が残っている限り新規保証は困難です。求償権消滅保証など再生系の制度が使えるか、協会の経営支援窓口に相談する道はあります。 |
6. 編集部の見立て:どこまで手を打つか
資金調達の相談先には「まず経営改善計画を作りましょう」と提案が来ることがあります。必要な場面はありますが、全員に必要なわけではありません。判断材料として3段階に分けます。
| 方針 | やること | 向いている人 |
|---|---|---|
| まずここまで 堅実に済ませたい | 除外事由の自己点検+決算書2期分・試算表・12か月の資金繰り表を自分で用意。費用はほぼゼロ。 | 黒字または軽微な赤字で、滞納がない |
| もう一歩 制度を選び直す | 市区町村の制度融資、セーフティネット保証の認定、創業関連保証など100%保証の枠に乗せられないかを洗う。認定窓口は無料。 | 売上減・創業直後・小規模事業者 |
| ここまでやる 専門家を入れる | 認定支援機関による経営改善計画策定。協会が費用を補助する制度を設けている地域もあります。 | 債務超過・複数行取引・条件変更中 |
「落ちたから専門家に頼む」の前に、除外事由の確認と制度の選び直しを済ませたほうが費用対効果は高いと考えます。
もうひとつ。断られた理由を金融機関に聞くこと自体は失礼ではありません。「どこを整えれば次は前に進めますか」という聞き方であれば、担当者は答えられる範囲で教えてくれることが多い、という声をよく聞きます。理由が分からないまま別の金融機関に同じ資料で申し込むのは、時間の無駄になりやすい進め方です。
公式の窓口
制度の全体像は全国信用保証協会連合会、お近くの協会はこちらの一覧から。セーフティネット保証の認定申請は市区町村の商工担当窓口です。
よくある質問
赤字だと信用保証協会の審査には通りませんか?
「赤字」は公式に公表されている利用対象外の条件には含まれていません。対象外として明記されているのは、確定申告をしていない、代位弁済の求償債務が残っている、銀行取引停止処分、法的整理中、延滞中などです。赤字であっても、事業実態・資金使途・返済能力を判断できる資料を示せるかどうかが論点になります。
税金を滞納していると必ず落ちますか?
協会が取り扱えないと明記しているのは「税金を滞納し完納の見通しが見込めない」場合です。税務署等と分納の合意があり、実際に納付を続けている状態であれば、審査の土俵には乗り得ます。滞納を隠したまま申し込むと、納税証明書の提出段階で分かるため逆効果です。
責任共有制度とは何ですか。自分に関係ありますか?
2007年に導入された、代位弁済時の損失を保証協会と金融機関で分担する仕組みです。一般保証では協会80%・金融機関20%。ただし創業関連保証、セーフティネット保証1〜4号・6号、危機関連保証、小口零細企業保証など13の制度は対象外で、実質100%保証になります。どの制度で申し込むかによって金融機関のリスクが変わるため、事業者にとっても無関係ではありません。
信用保証料はいくらくらいかかりますか?
保証料率は年0.45%〜1.90%の9区分で、決算内容などにより決まります。計算式は「貸付金額 × 保証料率 × 保証期間(月数)÷ 12 × 分割係数」。たとえば1,200万円・年1.15%・24か月・均等分割24回(係数0.60)なら165,600円です。原則として融資実行時に支払い、繰上返済すれば未経過分が返戻されます。
一度落ちたら、しばらく再申込できませんか?
明確な待機期間が公表されているわけではありませんが、状況が何も変わらないまま再申込しても結果は変わりにくいのが実情です。断られた理由を確認し、資料を整える・制度を選び直す・滞納の履行実績を作るなど、状況を変えてから出し直すのが現実的です。
出典・関連記事
- 全国信用保証協会連合会「信用保証制度を支えるしくみ」(責任共有制度の方式・対象外制度一覧)
- 東京信用保証協会「ご利用いただけない中小企業とは」(2026年2月6日更新)
- 東京信用保証協会「信用保証料の計算例」(分割係数・計算例)
- 中小企業庁「信用補完制度の見直し」
基準日: 2026年8月5日。信用保証協会は各都道府県等に設置されており、対象外業種・保証料率・分割係数・取扱制度の細部は協会ごとに異なります。本記事は公表資料をもとに編集部がまとめたもので、専門家の監修を受けたものではありません。実際の可否判断は必ずお近くの信用保証協会または取引金融機関にご確認ください。
