「通夜は省いて、1日で送りたい」。そう考えたとき最初に迷うのが、費用がいくら変わるのか、そして省いて差し支えないのか、という2点です。一日葬は通夜を行わず、告別式と火葬を1日で行う形式で、2026年の全国調査では実施割合11.9%、費用総額の平均は74.43万円でした。家族葬の96.39万円より約22万円低い一方で、菩提寺(ぼだいじ)がある家では「通夜を省いたので納骨は受け入れられない」と後から言われる例が実際に起きています。この記事では、費用の実額と当日までの流れ、そしてお金より先に確認すべき菩提寺の可否を、公的資料と調査データに沿って整理します。
結論の要点
- 一日葬=通夜を省き、告別式と火葬を1日で行う形式。実施割合は11.9%で、家族葬(47.0%)・一般葬(30.2%)に次ぐ第3の選択肢。
- 費用の平均は74.43万円(第7回お葬式に関する全国調査/2026年)。家族葬96.39万円より約22万円、一般葬122.01万円より約48万円低い。
- 安くなるのは主に通夜1晩ぶんの飲食・返礼・式場。火葬料・棺・搬送・安置は一日葬でもほぼ同額でかかる。
- 最初に決めるのは日程ではなく菩提寺の可否。「一日葬はお断り」と明示している寺院が実在し、無断で進めると納骨を断られる。
- 火葬は死亡から24時間経過後(墓地埋葬法第3条)。当日中には終わらず、最短でも安置が1晩入る。
基準日:2026年8月10日/費用は鎌倉新書「いい葬儀」第7回お葬式に関する全国調査(2026年3月実施・有効回答2,000件)の平均値。
一日葬とは——通夜を省き、告別式と火葬を1日で行う
一般葬や家族葬は、1日目に通夜、2日目に告別式と火葬という2日構成をとります。一日葬はこのうち1日目の通夜を行わない形式です。2日目にあたる告別式と火葬だけを行うため、参列者が拘束される時間は半日ほどになります。宗教者を招いて読経・戒名を受ける点は変わらないため、「宗教儀礼のない直葬・火葬式」とは別物です。
鎌倉新書「いい葬儀」が2026年3月に行った第7回お葬式に関する全国調査(直近2年以内に喪主を経験した40歳以上、有効回答2,000件)では、実施された葬儀の形態は家族葬47.0%、一般葬30.2%、一日葬11.9%、直葬・火葬式10.8%でした。前回調査と比べて家族葬が3.0ポイント減り、一日葬と直葬・火葬式が微増しています。主流とまでは言えないものの、選択肢として定着しつつある形式だと読めます。
ここで先に押さえておきたいのが日程の制約です。墓地、埋葬等に関する法律第3条により、火葬は死亡から24時間を経過した後でなければ行えません。一日葬は「亡くなった当日に終わる葬儀」ではなく、安置を1晩はさんだ翌日以降に、通夜を省いた1日で行う葬儀だと理解してください。
費用相場:平均74.43万円。家族葬との差は約22万円
同調査で公表された形態別の費用総額(葬儀一式・飲食・返礼品などを含む喪主の負担総額の平均)は次のとおりです。全体平均は96.73万円で、前回調査から約2.5万円上がりました。
| 葬儀の形態 | 費用総額の平均 | 前回調査比 | 実施割合 |
|---|---|---|---|
| 一般葬 | 122.01万円 | +0.63万円 | 30.2% |
| 家族葬 | 96.39万円 | +6.49万円 | 47.0% |
| 一日葬 | 74.43万円 | +1.99万円 | 11.9% |
| 直葬・火葬式 | 49.56万円 | +1.71万円 | 10.8% |
差額の中身を分解すると、一日葬で減るのは通夜1晩ぶんに紐づく費用です。具体的には通夜振る舞いの飲食、通夜の返礼品、式場の1日ぶんの使用料、宗教者へのお礼のうち通夜読経にあたる分、そして親族の宿泊費です。逆に、火葬料、棺、ドライアイスと安置、寝台車での搬送、遺影、骨壺といった費用は形式にかかわらず発生します。「半分の日数だから半額」にはならず、実額の差は20万円台に収まるのが平均像だと考えてください。
なお香典を受け取る場合、参列者が減ればその収入も減ります。費用だけでなく手元に残る差額で比べる視点が要ります。参列いただく方の作法や香典の相場は弔問・参列の作法と香典の相場にまとめています。
逝去から火葬までの流れ——一日葬は「2日目だけ」ではない
一日葬でも、逝去から火葬までは最短でおおむね2日かかります。火葬が死亡から24時間経過後に限られること、死亡届と火葬許可の手続きが挟まることが理由です。全体像は次のとおりです。
逝去から火葬までの時系列
当日(0〜3時間)
死亡診断書を受け取り、葬儀社へ連絡して搬送・安置を依頼。この時点で菩提寺にも連絡し、一日葬で差し支えないかを確認する。
当日〜翌日(打ち合わせ)
葬儀社と形式・式場・人数・見積りを決定。火葬場の空き状況で日程が動くため、希望日は複数用意する。
7日以内(届出)
死亡届を提出し、火葬許可証の交付を受ける(実務では葬儀社が代行することが多い)。許可証がなければ火葬できない。
翌日以降(24時間経過後)
告別式(読経・焼香・お別れ)→出棺→火葬→収骨。ここまでが一日葬の「1日」。
葬儀後(2週間〜)
葬祭費・埋葬料の請求、年金・健康保険の資格喪失、納骨の相談へ進む。
損しないポイント——決める順番を間違えない
損しないポイント
- 菩提寺の可否を、葬儀社に申し込む前に確認する。後から通夜を戻すのは費用より段取りの負担が大きい。
- 見積りは「一日葬プラン」の外に何があるかで比べる。火葬料・式場使用料・安置日数・ドライアイス・返礼品は別建てになりやすい。
- 安置日数を見積りで確認する。火葬場が混む時期は安置が3〜4日に伸び、1日あたりの安置料と保冷費が積み上がる。
- 相見積りを1社は取る。同調査では87.1%が他社と比較せず1社で決めていた。比較していないことが、相場から離れた見積りに気づけない最大の理由になっている。
- 葬祭費・埋葬料の申請を忘れない。国民健康保険なら葬祭費、健康保険なら埋葬料が支給される。申請しなければ支給されない。
4点目の相見積りは、費用面でいちばん効く割に実行されていない項目です。調査では葬儀業者の選定時に87.1%が他社と比較せず1社のみで決定し、63.8%が事前準備をしていなかったと回答しています。時間がない中で1社に任せる構図が、そのまま費用のばらつきにつながっています。支給されるお金の側は葬祭費・埋葬料のもらい方で確認してください。
パターン別の分岐——菩提寺の有無で進め方が変わる
| あなたの状況 | 先にやること/向く選択 |
|---|---|
| 先祖代々の墓が寺院にある | まず菩提寺へ電話し、一日葬で読経を受けられるか、その後の納骨に支障がないかを確認する。可否は寺院ごとに異なり、電話1本で確定できる。 |
| 菩提寺がない/宗旨にこだわらない | 一日葬の制約はほぼない。僧侶を葬儀社に手配してもらうか、無宗教形式にするかを費用と希望で選ぶ。 |
| 遠方の親族が多い | 一日葬は移動と参列を1日に集約できるため相性がよい。一方で「通夜に伺えなかった」という不満が出やすく、事前の連絡文で通夜を行わない旨を明記する。 |
| 参列者が20名を超えそう | 式場・接待が1日に集中し、家族葬との差額が縮む。人数が読めない段階では家族葬の見積りも並べて取る。 |
| 費用を最優先で抑えたい | 直葬・火葬式(平均49.56万円)が下限。ただし宗教儀礼がないため、菩提寺の納骨で一日葬以上に制約が出やすい。 |
イレギュラー・現場対応——「一日葬はお断り」という寺院は実在する
編集部が公開情報を確認したところ、寺院自身が公式サイトで一日葬を受けない方針を明示している例がありました。北海道の曹洞宗寺院は「一日葬はお断りしています」と題した記事を掲げ、納骨堂は仏弟子として葬送された方を納める宗教施設であるため、その寺の通夜・葬儀を行わなかった場合は納骨堂に納められないという考えを説明しています。葬儀社側の解説記事でも、菩提寺に連絡せずに他の僧侶へ依頼したり無宗教形式で済ませたりした結果、後日「納骨は受け入れられない」と断られる例が繰り返し取り上げられています。
これは寺院が理不尽なのではなく、通夜・葬儀という宗教儀礼と納骨が一続きのものとして扱われている、という前提の違いです。したがって現場での対応は単純で、葬儀社に申し込む前に菩提寺へ電話し、一日葬で構わないかを聞く。断られた場合の選択肢は、通夜を行う家族葬に戻すか、寺院と離れて別の納骨先(お墓の種類と費用相場)を探すかの二択になります。後者を選ぶと離檀の話に発展し、一日葬で浮いた約22万円を大きく超える負担になることがあります。
確認せずに進めた場合のリスク
菩提寺に無断で一日葬を行う → 四十九日や一周忌の読経を受けられない/納骨を断られる → 離檀と改葬の検討へ。金額も時間も、通夜1晩を行う場合を上回る可能性があります。電話1本で避けられる分岐です。
相場観と編集部の価値判断
数字だけを見れば、一日葬は家族葬より約22万円、一般葬より約48万円低い選択肢です。ただし削れているのは通夜1晩ぶんの飲食・返礼・式場であり、葬儀の中核である火葬・搬送・安置・宗教者へのお礼は残ります。費用を下げる手段としての効き幅は、形式の変更より見積りの比較のほうが大きいというのが編集部の見立てです。87.1%が1社で決めているという実態は、逆に言えば比較の余地がそれだけ残っているということでもあります。
そのうえで一日葬が向くのは、参列者が身内中心で20名以下、菩提寺がないか一日葬を許容している、遠方の親族の移動負担を減らしたいという条件がそろう場合です。逆に、寺院墓地への納骨を予定していて菩提寺の意向が未確認、あるいは会葬者数が読めない段階なら、一日葬に決め打ちせず家族葬の見積りも並べたほうが安全です。なお費用と形式の全体像は葬儀の種類と費用相場で比較できます。
本記事は制度と公表データの解説であり、宗教上の判断や個別の寺院との関係については、菩提寺および葬儀社に直接ご確認ください。
よくある質問
一日葬の費用は平均でいくらですか。
鎌倉新書「いい葬儀」の第7回お葬式に関する全国調査(2026年3月実施・有効回答2,000件)では、一日葬の費用総額の平均は74.43万円でした。家族葬96.39万円、一般葬122.01万円、直葬・火葬式49.56万円で、全体平均は96.73万円です。
一日葬は亡くなった当日に終わりますか。
終わりません。墓地、埋葬等に関する法律第3条により、火葬は死亡から24時間を経過した後でなければ行えません。一日葬は安置を1晩はさみ、通夜を省いた1日で告別式と火葬を行う形式です。
菩提寺があっても一日葬にできますか。
寺院によります。公式サイトで一日葬を受けない方針を明示している寺院が実在し、その寺の通夜・葬儀を行わないと納骨堂に納められないと説明しています。葬儀社に申し込む前に菩提寺へ確認してください。
一日葬にすると香典はどうなりますか。
参列者が減るぶん香典収入も減ります。費用の総額だけでなく、香典を差し引いた実質負担で家族葬と比べてください。
一日葬でも葬祭費や埋葬料はもらえますか。
形式によって支給の可否が変わるものではありません。国民健康保険なら葬祭費、健康保険なら埋葬料が申請により支給されます。金額と申請先は加入していた保険により異なるため、加入していた保険者の案内で確認してください。
公式情報と出典
公式情報で最終確認する
火葬の時期や届出の期限は法令で定められています。費用の平均値は民間調査の集計値であり、地域・人数・式場により実額は大きく変わります。契約前に葬儀社の見積書で内訳をご確認ください。
