この記事の結論
学資保険は「増やす道具」ではなく「親に何かあっても学費が止まらない仕組み」。増やしたいだけなら向きません。
- 向くのは①貯めるのが苦手/②親の死亡・高度障害でも学費を確保したい/③18年間まず解約しない自信があるの3つがそろう家庭。
- 2026年分(令和8年分)の所得税に限り、23歳未満の扶養親族がいる世帯の一般生命保険料控除は上限4万円→6万円(財務省・令和7年度税制改正)。
- 祖父母からの教育資金の一括贈与1,500万円の非課税は2026年3月31日で終了。4月1日以後の新規拠出はできません(国税庁No.4510)。
- 2025年度から多子世帯(扶養する子3人以上)は所得制限なしで大学等の授業料・入学金が一定額まで減免。必要な自己資金は世帯によって大きく変わります(文部科学省)。
- 途中解約は元本割れが原則。苦しいときは解約の前に減額・払済(はらいずみ)・契約者貸付を検討します。
基準日:2026年9月3日/金額・制度は各公式サイトで確認しています(出典は記事末尾)。
子どもが生まれると、ほぼ必ず勧められるのが学資保険です。一方で「いまは新NISAのほうがいい」「学資保険は時代遅れ」という声も同じくらい耳に入ってきて、結局どうすればいいのか分からなくなります。この記事は、返戻率の高い商品を紹介する記事ではありません。そもそも自分の家庭に学資保険が要るのか要らないのかを、公的な制度と数字だけで判断できるようにするための記事です。
結論から言えば、学資保険の本質は運用ではなく「契約者(親)が亡くなったり高度障害になったりしても、その後の保険料を払わずに満期金が受け取れる」という保険機能にあります。ここに価値を感じないなら、無理に選ぶ必要はありません。教育費そのものの総額は教育費はいくら必要か【2026年版】で詳しくまとめています。
学資保険が「必要な家庭」と「不要な家庭」を分ける3条件
学資保険を検討するとき、多くの人は最初に返戻率(払込総額に対して受け取れる額の割合)を比べます。しかし返戻率は特約の付け方や払込期間で簡単に上下するため、比べる前に「そもそも入るべきか」を決めたほうが早いです。判断は次の3条件で足ります。
3つとも「はい」なら検討する価値があります
口座に置いておくと使ってしまう
引き出しにくさが目的なら、学資保険の「解約しづらさ」は弱点ではなく機能です。
親に万一のことがあっても学費だけは確保したい
保険料払込免除により、以後の保険料を払わずに満期金が受け取れます。ここが預金や投資信託には無い部分です。
満期まで解約しない見通しが立っている
途中解約は元本割れが原則。住宅購入や転職で家計が変わる予定があるなら、金額を抑えるか見送ります。
1つでも「いいえ」があるなら、まずは生活防衛資金と児童手当の取り置きを優先したほうが、家計全体では有利になりやすいです。
2026年に変わった3つのこと(ここを知らないと判断を間違えます)
2026年は、教育資金まわりの制度が同時に3つ動いた年です。学資保険に入るか迷っている段階でも、この3つは先に押さえておいてください。
①2026年分だけ、一般生命保険料控除の上限が6万円に
生命保険料控除は、支払った保険料に応じて所得から一定額を差し引ける制度です。2012年1月1日以後に契約した「新契約」の場合、一般生命保険料控除の所得税の上限は年4万円、一般・介護医療・個人年金の3区分を合計した上限は年12万円です(国税庁タックスアンサーNo.1140)。
ここに令和7年度税制改正で特例が入りました。23歳未満の扶養親族がいる場合、令和8年分(2026年分)の所得税に限り、一般生命保険料控除の適用限度額が4万円から6万円に引き上げられます。3区分合計の12万円という上限は変わりません(財務省「令和7年度税制改正の大綱」)。学資保険の保険料は原則としてこの一般生命保険料控除の枠に入るため、子育て世帯にとっては2026年だけ控除枠が広がる形です。
なお、令和7年12月26日に閣議決定された令和8年度税制改正の大綱には、この特例の適用期限を1年延長する方針が盛り込まれています。ただし大綱は法律そのものではないため、実際の取扱いは国税庁の最新情報で確認してください。
②祖父母からの「教育資金の一括贈与1,500万円」は2026年3月末で終了した
30歳未満の子や孫が、直系尊属(父母・祖父母など)から教育資金として一括で贈与を受けた場合、1,500万円までを非課税にできる特例がありました。この特例は令和8年(2026年)3月31日をもって適用期限が延長されずに終了し、2026年4月1日以後の新規拠出には使えません。ただし2026年3月31日までに適用を受けた分については、引き続きこの特例が適用されます(国税庁タックスアンサーNo.4510)。
終了しても「祖父母からの援助」がなくなるわけではありません
扶養義務者どうしで、教育費や生活費を必要になった都度、必要な額だけ直接支払う場合は、もともと贈与税の課税対象になりません。年110万円の基礎控除(暦年課税)も従来どおりです。一括で先に渡す形が使えなくなっただけで、入学金や授業料の請求書が来たタイミングで祖父母が直接支払うという方法は残っています。相続との関係は生前贈与の持ち戻し【2026年版】で解説しています。
③多子世帯は所得制限なしで大学等の授業料・入学金が減免される
高等教育の修学支援新制度では、令和7年度(2025年度)から扶養する子どもが3人以上の世帯について、所得制限なく大学等の授業料・入学金を国が定める一定額まで減免する取扱いが始まりました。私立大学の場合は授業料が年70万円、入学金が26万円までが目安として示されています(文部科学省)。
これは学資保険の要否に直結します。子どもが3人以上いる世帯では、大学でいちばん重い授業料の相当部分が公的に軽くなる可能性があるため、18年かけて満期金を積み上げる必要性そのものが下がるからです。ただし「子3人を同時に扶養している間」という条件があり、上の子が扶養から外れると対象外になります。詳細は大学の学費が払えないときの支援【2026年版】にまとめました。
お金が要るのはいつか——0歳から22歳までの時系列
学資保険の満期をいつに設定するかは、「教育費の山がどこに来るか」で決まります。日本政策金融公庫の「教育費負担の実態調査結果」(令和3年度・2021年12月公表)では、高校入学から大学卒業までにかかる子ども1人あたりの費用は942.5万円でした。なお同調査はこの令和3年度分を最後に新しい結果が公表されていないため、金額はあくまで目安として扱ってください。
教育費が動くタイミング
0歳〜 加入を検討できる期間
学資保険は加入できる子どもの年齢に上限があり、多くは小学校入学前まで。早いほど月々の保険料は下がります。
0歳〜高校生年代 児童手当
第1子・第2子で受け取れる総額は約234万円。手をつけずに残せるかどうかが最初の分岐点です。
15歳 高校入学
制服・教材・通学定期などの初期費用が一度に出ます。就学支援金があっても現金の持ち出しはゼロになりません。
17〜18歳 受験と入学(最大の山)
受験料、入学金、前期授業料、下宿の初期費用が半年に集中します。学資保険の満期を17歳・18歳のどちらにするかはここで決まります。
18〜22歳 在学中
授業料は毎年かかり続けます。満期金を一度に受け取るか、進学時から毎年分割で受け取るかは商品で選べます。
出典:日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査結果(令和3年度)」、こども家庭庁「児童手当制度のご案内」。
学資保険・新NISA・定期預金の3つを同じ物差しで比べる
「学資保険か新NISAか」という比べ方は、実はあまり意味がありません。目的が違うからです。学資保険は保険、NISAは非課税で投資する口座の枠、定期預金は元本が減らない置き場所です。判断に必要なのは、次の6項目を同じ表で見ることです。
金額の見当をつけるには、まず利息も運用益も考えない「元本だけ」の積み上げを見るのが確実です。0歳から18歳まで216か月積んだ場合、月々いくらならいくらになるのかを図にしました。学資保険の満期金も、まずはこの元本の線を基準に「それより増えるのか減るのか」で判断します。
0歳から18歳まで積んだときの元本(216か月・運用益は考慮しない)
単位:万円
児童手当(第1子・第2子で総額約234万円)を手をつけずに残せた場合、月10,000円を18年積んだのとほぼ同じ額になります。まずここを守れるかどうかが出発点です。
損しないポイント5つ
ここを外すと数十万円単位で変わります
1. 医療特約を足すと、貯蓄としては不利になる
子どもの入院保障などの特約は、その分の保険料が保障に回るため、満期金に対する払込総額は増えます。貯蓄目的なら特約は最小限にし、子どもの医療費は自治体の助成制度を先に確認します。
2. 払込期間は「短いほど」払込総額は小さくなりやすい
10歳払済・15歳払済のように早く払い終える設計にすると、同じ満期金でも払込総額を抑えられます。ただし毎月の負担は重くなるので、家計が続くかを優先します。
3. 満期は「17歳」も選べる
18歳満期にすると、入学金の振込期限に満期金が間に合わないことがあります。推薦・総合型選抜で早く合格が決まると、11〜12月に入学金が必要になるためです。心配なら17歳満期にします。
4. 契約者は「収入が多いほう」にする
保険料払込免除は契約者に万一があったときに働きます。世帯の収入を支えている側を契約者にしないと、この機能の意味が薄れます。
5. 生命保険料控除は年末調整で必ず出す
控除証明書は毎年10月ごろに届きます。出し忘れても確定申告で取り戻せますが、翌年以降の住民税にも影響するため、その年のうちに提出するのが確実です。
パターン別の分岐——あなたの家庭ならどれか
A 子が0〜2歳・共働き・貯蓄が続かない
学資保険が最も機能する層です。月1万円前後から始め、家計が安定したら余力を積立投資に回す二段構えが現実的。特約は付けません。
B すでに毎月の積立が習慣になっている
学資保険の必要性は下がります。優先すべきは親の死亡保障を必要保障額まで確保すること。生命保険の見直し方で必要額を先に出してください。
C 子どもが3人以上いる
多子世帯の授業料等減免が使える可能性があります。減免の対象と上限額を先に確認してから、不足分だけを積む設計にします。
D 子がすでに小学校高学年以上
加入年齢の上限を超えていることが多く、超えていなくても期間が短いため払込総額に対する上乗せは小さくなります。定期預金や自動積立で確実に貯めるほうが素直です。
イレギュラー・現場対応——払えなくなったときに、解約の前にできること
学資保険で実際に多いつまずきは、返戻率の選び間違いではなく「途中で払えなくなって解約し、元本割れした」というものです。保険会社や相談窓口が公開している解説を編集部で読み比べると、共通して次の点が挙げられています。早期の解約ほど解約返戻金は払込総額を大きく下回り、契約者に万一があったときの保険料払込免除も同時に失う、という指摘です。
ただし、解約は最後の手段です。契約を残したまま負担を軽くする方法が、順番として先にあります。名称は保険会社によって異なるため、電話口では「解約したい」ではなく「保険料の負担を下げる方法を全部教えてほしい」と伝えるのが確実です。
注意:契約日から一定期間内なら「クーリング・オフ」もあります
申込みから間もない段階で「やはり合わない」と気づいた場合、書面等による申込みの撤回ができる期間が設けられています。期間や手続きは契約のしおり・約款に書かれているため、迷ったらまず約款の該当ページを開いてください。契約後しばらく経ってからでは使えません。
相場観と編集部の価値判断
相場観として、学資保険の月払保険料は1万円前後から2万円台に設定する家庭が多く、満期金は200万円〜300万円台を目標に置く設計が一般的です。これは、大学入学時の一時金(入学金と前期授業料、住まいの初期費用)を賄える水準を目安にしているためで、大学4年分の学費すべてを学資保険で用意しようとする設計はあまり現実的ではありません。
編集部としての判断は、「学資保険は、返戻率を1%競うための商品ではなく、家計の意思の弱さと親の万一を同時に補うための商品」というものです。金利が上がっても下がっても、この性質は変わりません。逆に言えば、すでに毎月の積立が自動化できていて、親の死亡保障も足りている家庭にとっては、学資保険を足す積極的な理由はほとんど残りません。
もうひとつ、はっきり書いておきたいことがあります。返戻率だけを根拠に「入るべき/入らないべき」と断定する説明は、どちらの側であっても信用しないでください。返戻率は払込期間・満期年齢・特約の有無・契約者の年齢で変わり、同じ商品でも家庭ごとに違う数字になります。必ず自分の条件で設計書(見積書)を出してもらい、払込総額と受取総額の実額を並べて見てください。判断材料はその2つの数字と、この記事の3条件だけで足ります。
なお、この記事は制度と一般的な仕組みの解説であり、特定の商品の推奨ではありません。当編集部は保険の募集人ではなく、個別の契約可否は保険会社・代理店、税務の取扱いは所轄の税務署にご確認ください。
加入・見直しを決めるまでの6ステップ
STEP1 いま貯まっている額と、毎月の余力を出す
通帳と家計簿アプリで、教育費に回せる金額を1つの数字にします。ここが決まらないと商品比較に意味がありません。
STEP2 使える公的支援を先に確認する
児童手当、高等学校等就学支援金、多子世帯の授業料等減免。公的支援で埋まる部分は、自分で貯める必要がありません。
STEP3 不足額と、必要になる時期を決める
「18歳の3月までに250万円」のように、金額と期限をセットで書き出します。
STEP4 3条件で学資保険の要否を判定する
この記事の冒頭の3条件に当てはめます。「いいえ」がある場合は、預金と積立でまず形を作ります。
STEP5 自分の条件で設計書を2〜3社分そろえる
払込総額・受取総額・満期年齢・払込期間・特約の有無を、同じ表に書き写して比べます。
STEP6 契約したら控除証明書の提出まで済ませる
10月ごろ届く控除証明書を年末調整で提出します。ここまでやって初めて手取りベースの効果が出ます。
よくある質問
学資保険と新NISA、どちらが得ですか?
「得」の意味が違うため、そのままでは比べられません。学資保険は満期まで持てば受取額が契約時に確定し、契約者に万一があれば以後の保険料が免除されます。新NISAは運用益が非課税になる代わりに、受け取れる額は値動きで変わります。確実性を買うのが学資保険、増える可能性を取るのが新NISAです。両方を少しずつ使う家庭も珍しくありません。
子ども名義でNISAを始められますか?
できません。NISA口座を開設できるのは、その年の1月1日時点で18歳以上の人に限られます。0歳〜17歳が使えたジュニアNISAは2023年末で新規投資が終了しました。子どものための資金を投資で準備する場合は、親名義のNISA口座を使うことになります。
2026年分の生命保険料控除が6万円になるのは誰ですか?
23歳未満の扶養親族がいる人です。令和7年度税制改正により、令和8年分(2026年分)の所得税に限り、新契約に係る一般生命保険料控除の適用限度額が4万円から6万円に引き上げられます。一般・介護医療・個人年金の3区分を合計した限度額12万円は据え置きです。
祖父母から教育資金をもらう非課税の制度はもう使えませんか?
教育資金の一括贈与に係る1,500万円の非課税措置は、令和8年3月31日で適用期限が延長されずに終了しました。2026年4月1日以後の新規拠出には使えません。ただし3月31日までに適用を受けた分は引き続き対象です。なお、扶養義務者が教育費を必要な都度直接支払う場合は、もともと贈与税がかからない扱いです。
途中で解約すると、いくら戻ってきますか?
契約からの経過年数や商品によって異なりますが、早い時期の解約ほど解約返戻金は払込総額を大きく下回るのが一般的です。金額は保険会社に照会すれば確認できます。解約する前に、減額・払済保険・契約者貸付で契約を残す方法がないかを必ず確認してください。
満期は17歳と18歳のどちらがよいですか?
入学金の支払時期から逆算します。総合型選抜や学校推薦型選抜で合格が早く決まると、11月〜12月に入学金の納付期限が来ることがあります。18歳満期だと間に合わないおそれがあるため、確実性を優先するなら17歳満期です。
契約者は父と母のどちらにすべきですか?
世帯の収入を主に支えているほうを契約者にするのが基本です。保険料払込免除は契約者に万一があった場合に働く仕組みのため、収入の少ないほうを契約者にすると、この機能が家計を守る効果が小さくなります。
すでに学資保険に入っています。いま見直すべきですか?
返戻率が理由なら、原則としてそのまま続けたほうが有利です。すでに払い込んだ分を捨てて入り直すと、多くの場合は損になります。見直す価値があるのは、家計が苦しくて支払いが続けられないとき、特約が重すぎるとき、そして親の死亡保障が別途足りていないときです。
関連記事とハブ
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迷ったら、公式の一次情報から確認してください
保険料控除の取扱いは国税庁、修学支援新制度は文部科学省、児童手当はお住まいの市区町村が窓口です。商品の設計書は保険会社・代理店に自分の条件で作ってもらうのが確実です。
- 国税庁 タックスアンサー No.1140「生命保険料控除」
- 文部科学省「高等教育の修学支援新制度」
- こども家庭庁「児童手当制度のご案内」
出典(2026年9月3日確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.1140「生命保険料控除」(令和7年4月1日現在法令等)
- 国税庁 タックスアンサー No.4510「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税」(令和8年4月1日現在法令等)
- 財務省「令和7年度税制改正の大綱」(令和6年12月27日閣議決定)/「令和8年度税制改正の大綱」(令和7年12月26日閣議決定)
- 文部科学省「高等教育の修学支援新制度」および「令和7年度からの多子世帯に対する大学等の授業料等減免について」
- 日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査結果」(令和3年度・2021年12月20日公表)
- こども家庭庁「児童手当制度のご案内」
本記事は制度の一般的な解説です。税務・保険の個別の取扱いは、所轄税務署および保険会社・代理店にご確認ください。制度は改正されることがあります。
