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キャリアアップ助成金 短時間労働者労働時間延長支援コース【2026年版】1人最大75万円|旧・社会保険適用時処遇改善コースは令和7年度末で終了

日本の小さな店舗のバックヤードで、エプロン姿の女性スタッフが朝の光の中で書類をそろえている様子

パートやアルバイトを社会保険に入れたときに使える「年収の壁」対策の助成金は、2026年(令和8年)4月から中身が入れ替わりました。長く使われてきた社会保険適用時処遇改善コースは、令和7年度末(2026年3月31日)までに社会保険を適用した場合が対象で終了。令和8年度以降に新しく加入させる場合は、短時間労働者労働時間延長支援コースを使います。検索して出てくる解説記事はまだ旧コース前提のものが多いため、金額も要件も違う説明にたどり着きやすいのが今の状況です。この記事では、厚生労働省の事業主向けQ&Aと公式リーフレットをもとに、新コースの助成額・要件・申請の順番を整理します(2026年8月23日時点)。

この記事の結論

  • 旧「社会保険適用時処遇改善コース」は、令和7年度末までに社会保険を適用した場合で終了。令和8年度以降の新規適用は対象外。
  • 後継は「短時間労働者労働時間延長支援コース」。1人あたり小規模企業75万円/中小企業60万円/大企業45万円(1年目+2年目の合計)。
  • 1年目は「週の所定労働時間を5時間以上延長」が基本。延長幅が小さい場合は賃上げ率で補う(4時間以上なら5%以上、3時間以上なら10%以上、2時間以上なら15%以上)。
  • 2年目は「さらに2時間延長」「基本給をさらに5%以上増額」「昇給・賞与・退職金制度の適用」のいずれかで上乗せ。
  • 支給申請上限人数はなし。要件を満たす人数だけ積み上げられる。
  • 先にキャリアアップ計画書。社会保険の手続きを先に済ませてしまうと入口で外れる。
目次

まず押さえる:2026年4月に何が切り替わったのか

いわゆる「年収の壁」対策として、国は2023年(令和5年)10月から社会保険適用時処遇改善コースを走らせてきました。手当等支給メニュー・労働時間延長メニュー・併用メニューの3本立てで、106万円の壁を越える人の手取りが減らないよう事業主を支援する仕組みです。

一方で、130万円の壁(被扶養者から外れるライン)についても働き控えの解消を求める声が強く、令和7年2月25日の三党合意を受けて、旧コースの「労働時間延長メニュー」の要件と助成額を見直した新コースが令和7年7月1日に新設されました。それが短時間労働者労働時間延長支援コースです。しばらくは新旧が並走していましたが、旧コースは令和7年度末(2026年3月31日)までに社会保険を適用した場合を支援対象としており、令和8年度以降に適用した場合は対象になりません。

新旧コースの対応表(厚生労働省の事業主向けQ&Aをもとに編集部作成)
比べる観点 旧・社会保険適用時処遇改善コース 新・短時間労働者労働時間延長支援コース
主に想定する壁106万円の壁130万円の壁(保険料負担がより重い層)
対象になる時期令和7年度末までに社会保険を適用した場合令和7年7月1日以降。終期は現時点で未定(当分の間の暫定措置)
取組のかたち手当等支給/労働時間延長/併用の3メニュー労働時間延長(+必要に応じて賃上げ)に一本化
延長時間の入口週所定労働時間4時間以上の延長週所定労働時間5時間以上の延長(下回る場合は賃上げ率で補う)
中小企業の助成額労働時間延長メニューで1人30万円1年目40万円+2年目20万円=最大60万円
2年目の支援なし(メニューの組み合わせで対応)あり。長期定着とキャリアアップを促す上乗せ

制度の背景をもう少し広く知りたい場合は、「106万円の壁」は2026年10月に撤廃もあわせて読むと、労働者側の視点と事業主側の支援がつながります。

いくらもらえるか:1年目と2年目の助成額

助成額は企業規模で3段階に分かれます。ここでいう小規模企業とは、各支給申請の時点で常時雇用する労働者の数が30人を常態として超えない企業を指します(業種による資本金基準は中小企業の判定に使います)。

1人あたりの助成額(1年目+2年目の合計)

厚生労働省の公表資料をもとに編集部作成のイメージ図

小規模企業 75万円 中小企業 60万円 大企業 45万円 1年目 2年目の上乗せ

1年目は、週の所定労働時間をどれだけ延ばしたかと賃金をどれだけ上げたかの組み合わせで判定します。延長幅が大きいほど賃上げ要件は軽くなり、延長幅が小さいほど重い賃上げが必要になる、という設計です。

1年目の要件と1人あたり助成額
所定労働時間の延長 賃金の増加 助成額(小規模/中小/大企業)
週5時間以上要件なし50万円/40万円/30万円
週4時間以上5時間未満5%以上
週3時間以上4時間未満10%以上
週2時間以上3時間未満15%以上

2年目は、被用者保険の適用後、1年目と2年目を比べて次の①〜③のいずれかを満たすと、小規模企業25万円/中小企業20万円/大企業15万円が上乗せされます。

  • ① 週の所定労働時間をさらに2時間以上延長する
  • ② 基本給をさらに5%以上増額する
  • ③ 昇給・賞与・退職金制度のいずれかを新たに適用する(1年目の取組前は適用されていなかったこと)

③は「制度を作っただけ」では足りません。就業規則または賃金規定等に対象者の範囲とともに規定され、実際にその制度どおり運用されている(賞与が規定の月にきちんと支給されている等)ことまで見られます。水準の目安としては、同じキャリアアップ助成金の賞与・退職金制度導入コースが基準にしている「6か月あたり5万円以上の賞与」「1万8千円以上の退職金積立」が指標になり得るとされています。

誰が対象になるか(事業主・労働者の条件)

対象になるのはパート・アルバイト・派遣労働者などの有期雇用労働者等で、正社員は対象外です。取組の途中で正社員に転換した場合は、このコースではなく正社員化コースを使うことになり、両方を同時に受けることはできません。

着手前のチェックリスト

  • 対象者は有期雇用労働者等(パート・アルバイト等)である
  • 延長後の労働時間で社会保険(健康保険・厚生年金)の被保険者になる
  • 雇用契約書または労働条件通知書を、延長前後の両方で交付・保管している
  • 賃金台帳と出勤簿を、延長前6か月分・延長後6か月分そろえられる
  • キャリアアップ計画書を、取組より前に労働局・ハローワークへ提出できる
  • 2年目に昇給・賞与・退職金制度を使うなら、就業規則または労働協約に規定がある
  • 実態として社会保険に遡及加入すべき働き方になっていない

最後の項目は見落としやすいところです。雇用契約書上は週18時間でも、直前6か月の実労働時間が週20時間以上あった場合、そもそも社会保険に遡って加入すべきだったと判断されれば助成の対象になりません。判断に迷うときは、申請前に年金事務所へ確認しておくのが安全です。

従業員が10人未満で就業規則の作成義務がない事業所でも、2年目に昇給・賞与・退職金制度を使うなら就業規則または労働協約の整備が必要になります。その場合は、事業所内周知を取組日までに行ったうえで、支給申請前に労働基準監督署長へ届け出るか、周知の実施について事業主と労働者代表の氏名等を記載した申立書を添える必要があります。

申請の流れ:順番を間違えると入口で外れる

申請のタイムライン(1年目)

  1. 取組の前:キャリアアップ計画書を管轄の都道府県労働局・ハローワークへ提出する。
  2. 労使で条件を決める:週の所定労働時間と賃金を決め、雇用契約書または労働条件通知書を改めて交付する。
  3. 労働時間を延長し、社会保険に加入させる:適用日の前日から起算して1か月前の日から3か月が経過するまでの間に取組を行う。
  4. 6か月継続する:延長後の労働時間と賃金を維持して勤務してもらう。
  5. 支給申請:週所定労働時間を延長した日を基準に、6か月目の賃金を支給した日の翌日から2か月以内に提出する。
  6. 2年目:第2期の要件(さらに2時間延長/基本給5%増/昇給・賞与・退職金制度の適用)を満たし、同じ要領で支給申請する。

提出先は事業所の所在地を管轄する都道府県労働局またはハローワークです。郵送も可能ですが、メールでの提出はできません。2025年7月1日から電子申請(助成金ポータル)にも対応しており、電子申請にはGビズIDプライムが必要になります。取得に時間がかかるため、紙で出す予定がない事業所は早めに手を打っておくと安心です。

損しないための3つのポイント

ここで差がつく

  • 計画書が先、社会保険の手続きが後。順番を逆にすると、条件を満たしていても申請できません(旧コースの計画書を出している事業主が切り替える場合を除く)。
  • 猶予は3か月。労使の話し合いに時間がかかることを見込んで、社会保険の適用日の前日から起算して1か月前の日から3か月が経過するまでの間に取組を行えば対象になります。
  • 申請期限は2か月。6か月目の賃金を支給した日の翌日から2か月です。賃金支払日が決まった時点でカレンダーに入れておくのが確実です。

もうひとつ、比較のしかたにも独特のルールがあります。1年目の判定では、延長前6か月の週平均「実」労働時間と、延長後6か月の週「所定」労働時間を比べて差が5時間以上あれば対象になり得ます。逆に、延長前の「所定」と延長後の「実」を比べる形は認められません。所定同士で比べる場合は、実労働時間同士でも5時間以上延ばされていることが条件です。週平均実労働時間は「6か月間の総労働時間÷暦日×7日」または「÷26週」で計算し、所定時間外労働や有給休暇も総労働時間に含めます。

パターン別:あなたの会社はどれに当たるか

これから新しく社会保険に加入させる(令和8年度以降)

迷わず新コースです。旧コースは令和8年度以降の適用を対象にしていません。まずキャリアアップ計画書を出し、それから労働時間の延長と社会保険の手続きに進みます。

旧コースの計画書を出して取組の途中だった

支給申請がまだの対象者について新コースの要件を満たすなら、切り替えて申請できます。この場合、キャリアアップ計画書の変更届は不要とされています(年収の壁対応として同趣旨の助成であるため)。ただし2年目の取組を予定しているなら、支給申請書 様式第3号の7欄「2年目の取組を予定しているか」に「はい」と回答しておく必要があります。

旧コースで支給申請まで済ませてしまった

原則は、旧コースの支給申請を取り下げて出し直しです。例外として、旧コースの支給申請期間の終期が令和7年7月1日より後で、その申請がそのまま新コースの支給要件も満たしており、まだ支給決定が出ていない場合に限り、労働局・ハローワークへの申出と書類の差替えで切り替えられることがあります。

複数年かけて少しずつ労働時間を延ばす

複数年かけて要件を満たす形も対象になり得ますが、条件は厳しめです。社会保険の適用日と、適用日前に労働時間を延長した日のいずれもキャリアアップ計画期間内にあること、そして「最初に延長した日の前6か月」と「適用日以後6か月」を比べて要件を満たすことが必要です。社会保険の適用時点で延長・賃上げの要件を満たしていない場合は、その後の年で積み上げても対象外になります(例:1年目に2時間延長+5%賃上げで適用し、2・3年目にそれぞれ5%ずつ賃上げして通算15%にしても支給されません)。また、新コース施行前(令和7年7月1日より前)に行った延長は算入できません。

現場で起きるイレギュラーへの対応

よくつまずく場面と、公式が示している扱い

  • シフト制で所定労働時間が固定できない:雇用契約書等に「平均の週所定労働時間が約●時間となるようシフトにより調整する」と書く形なら、所定労働時間の明示要件を満たす扱いとされています。
  • 対象者が病気で休職した:休職・育児介護休業・事業主都合の休業の月は勤務した日に含めず、勤務日が11日以上ある月の6か月分の賃金を支給するまで申請できません。有給休暇を取得した日は勤務日に含みます。
  • 最低賃金の改定に合わせて賃上げした:最低賃金の発効日以後に賃金規定等を上げた場合、最低賃金に達するまでの増額分は賃上げ率に含められません。ただし改定が決定した日から発効日の前日までに規定を改定していれば、その分を含めてよい扱いです。
  • 社会保険が未適用の事業所:任意適用を行って適用事業所になったうえで加入させる取組が必要です。
  • 他コースと併用したい:賃金規定等改定コースとの併給はできません。賞与・退職金制度導入コースは、対象者とその他の有期雇用労働者等に同時に制度を適用する場合など、要件を満たせば併給できることがあります。

賃金規定等改定コースの中身はキャリアアップ助成金 賃金規定等改定コースで、正社員転換を選ぶ場合はキャリアアップ助成金 正社員化コースで確認できます。

編集部の見方:使う価値があるのはどんな会社か

金額だけを見れば、小規模企業で1人75万円は助成金としてかなり手厚い部類です。ただし、これは「もともと労働時間を増やしたい」会社のための制度だという点は押さえておくべきでしょう。週5時間の延長は、時給1,200円なら年間およそ30万円強の人件費増(社会保険料の事業主負担を除く)に相当します。助成は2年で終わりますが、増えた人件費はその後も続きます。

したがって、判断の軸は「助成金がもらえるか」ではなく「その時間を任せたい仕事が実際にあるか」になります。人手が足りていて、本人も働く時間を増やしたがっている――この2つがそろっている場合に、社会保険料負担で手取りが落ちる谷を国が埋めてくれる制度、という理解が実態に近いはずです。逆に、助成金目当てでシフトだけ増やすと、2年目以降に固定費だけが残ります。

もうひとつの魅力は支給申請の上限人数がないことです。要件を満たすパートが5人いれば、小規模企業なら理屈のうえでは375万円まで積み上がります。最低賃金の引き上げで人件費が上がる局面では、業務改善助成金など設備投資側の制度と組み合わせて全体を設計するのが現実的です。

なお、このコースは「当分の間の暫定措置」で、終期は現時点で決まっていません。旧コースが3年弱で役目を終えたことを踏まえると、使う予定があるなら早めに計画書を出しておくほうが安全だと考えます。制度の探し方から申請の流れまでは補助金・助成金 完全ガイド【2026年版】にまとめています。

よくある質問

社会保険適用時処遇改善コースはもう使えないのですか?

令和7年度末(2026年3月31日)までに対象労働者へ社会保険を適用した場合が支援対象で、令和8年度以降に適用した場合は対象になりません。厚生労働省も、令和8年4月1日以降に新たに加入させて収入増加の取組を行う場合は、短時間労働者労働時間延長支援コースの活用を検討するよう案内しています。すでに旧コースで取組を進めていた分については、要件を満たせば新コースへ切り替えて申請できる場合があります。

1人あたりいくらもらえますか?

1年目は小規模企業50万円・中小企業40万円・大企業30万円、2年目は小規模企業25万円・中小企業20万円・大企業15万円で、合計すると1人あたり最大75万円です。小規模企業とは、各支給申請の時点で常時雇用する労働者の数が30人を常態として超えない企業を指します。支給申請の上限人数は設けられていません。

キャリアアップ計画書はいつまでに出せばよいですか?

取組を行う前に、管轄の都道府県労働局・ハローワークへ提出しておく必要があります。旧コースのキャリアアップ計画書をすでに提出している事業主が新コースへ切り替える場合は、変更届の提出は不要とされています。様式は厚生労働省のサイトからダウンロードできるほか、労働局・ハローワークの助成金担当窓口でも配布しています。

支給申請の期限はいつですか?

週所定労働時間を延長した日を基準として、6か月目の賃金を支給した日の翌日から起算して2か月以内です。郵送での提出もできますが、メールでは提出できません。2025年7月1日からは電子申請(助成金ポータル)も利用できます。

週20時間未満で働いている人も対象になりますか?

労働時間を延長した結果、新たに社会保険(被用者保険)の被保険者になることが前提です。したがって延長前は週20時間未満でも構いませんが、延長後に被保険者の要件を満たす必要があります。ただし、契約上は週20時間未満でも実態として20時間以上働いていたなど、遡って社会保険に加入すべきだったと判断される場合は対象外です。判断に迷うときは最寄りの年金事務所に確認してください。

相談先・出典

制度の詳細や個別の可否は、管轄の都道府県労働局・ハローワークが窓口です。年収の壁については、厚生労働省が「年収の壁突破・総合相談窓口」(0120-030-045/月〜金 8時30分〜18時15分、土日祝・年末年始を除く)を設けています。各都道府県の働き方改革推進支援センターでも助成金の無料相談を受け付けています。

  • 厚生労働省「短時間労働者労働時間延長支援コース 事業主の方向けQ&A」(問2-4・問2-5・問2-6・問3-1〜3-3・問4-1・問4-2・問5-1〜5-11・問6-1〜6-4)
  • 厚生労働省「キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)」ページ冒頭の注意書き
  • 厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和8年度版)」
  • 厚生労働省「事業主の方のための雇用関係助成金」キャリアアップ助成金ページ
  • 自由民主党・公明党・日本維新の会 三党合意(令和7年2月25日)「Ⅲ 働き控えの解消」

本記事は2026年8月23日時点の公表資料に基づく一般的な解説です。助成金の要件・金額・様式は改正されることがあります。実際の申請にあたっては、必ず管轄の労働局・ハローワークまたは社会保険労務士にご確認ください。

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この記事を書いた人

みんなのミカタナビ編集部です。運営者・たくの編集方針のもと、相続・出産・退職・補助金など「知らないと損する手続きとお金」を、公的機関の一次情報と体験談の取材をもとに時系列で整理しています。数値・期限は必ず公式情報で裏取りし、出典を明記します。

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