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産業雇用安定助成金は2026年4月から出向先も対象【2026年版】スキルアップ支援は1日9,110円・産業連携人材確保は1人250万円

日本の小さな工場の作業台で機械部品を扱う作業服姿の技術者

人が採れない。育てる余裕もない。それでも新しい分野に出ていかなければ、事業が続かない——。この行き詰まりに、厚生労働省が用意しているのが産業雇用安定助成金です。名前から中身が想像しにくいこともあって、ものづくり補助金やIT導入補助金ほど知られていません。

ですが、金額は小さくありません。スキルアップ支援コースは出向中の賃金の3分の2(中小企業)が、1人1日あたり9,110円を上限に助成されます。産業連携人材確保等支援コースは、要件を満たす人材1人につき中小企業で250万円。設備ではなく「人」に効く助成金です。

そして2026年、この助成金には見逃せない改正が入りました。2026年4月8日以降に計画届を出す場合、これまで出向元しか受け取れなかったスキルアップ支援コースの助成金を、出向先も受け取れるようになりました。人を出す側と受け入れる側の両方に原資が付く構造に変わったということです。この記事では、コースの選び分け、金額の実額、そして計画届のタイミングという落とし穴を整理します。

この記事の結論(5行)

  • 生きているコースは2つ。スキルアップ支援コースと、産業連携人材確保等支援コースです。事業再構築支援コースは2023年11月28日限りで廃止されています。
  • 2026年4月8日が分岐点。この日以降に計画届を出せば、スキルアップ支援コースは出向元だけでなく出向先も支給対象になります。
  • 上限は1人1日9,110円。雇用保険の基本手当日額の最高額に連動し、毎年8月に改定されます。1事業所1年度あたり1,000万円が天井です。
  • 産業連携人材確保等支援コースは1人250万円(中小企業)。ただし事業再構築補助金またはものづくり補助金の交付決定が前提で、単独では使えません。
  • 企業グループ内の出向は対象外。親子会社間・関連会社間で完結する出向には支給されません。ここを勘違いすると計画そのものが無駄になります。
目次

2つのコースはまったく別の制度だと考える

「産業雇用安定助成金」という名前は共通ですが、中身は別物です。片方は社員を他社へ出向させてスキルを付けさせるための助成、もう片方は補助金の採択を受けた企業が即戦力を採用するための助成。使う場面も要件も重なりません。

比較項目スキルアップ支援コース産業連携人材確保等支援コース
何をする制度か自社の社員を他社へ在籍型出向させ、スキルを身につけて戻す補助金採択後の新事業に必要な即戦力を、正社員として外部から雇い入れる
助成額(中小企業)負担した賃金の2/3
上限9,110円/人・日
250万円/人
(125万円×2期)
助成額(中小以外)負担した賃金の1/2
上限9,110円/人・日
180万円/人
(90万円×2期)
上限1事業所1年度あたり1,000万円1事業主あたり5人まで
期間出向は1か月以上2年以内、助成は最長1年1年(6か月ごとに2回に分けて支給)
前提条件復帰後6か月の各月の賃金を出向前より5%以上上げること事業再構築補助金またはものづくり補助金の交付決定を受けていること

選び方はシンプルです。補助金の交付決定をすでに持っているなら産業連携人材確保等支援コース、持っていないならスキルアップ支援コース。後者は補助金の採択と無関係に使えるので、間口はこちらのほうが広くなります。

2026年4月8日の改正──出向先にも助成金が付くようになった

スキルアップ支援コースは2022年12月に創設されましたが、長らく支給対象は出向元事業主のみでした。社員を送り出す側は助成を受けられても、受け入れて教える側には何も出ない。この非対称が、出向先を探すときの壁になっていました。

厚生労働省は2026年4月8日、支給要件と支給対象事業主の見直しを行い、この日以降に計画届を提出した場合は、出向元・出向先の双方が支給対象になり得るとしました。判定の基準は「出向を始めた日」でも「支給申請の日」でもなく、計画届を提出した日です。

計画届の提出日で扱いが変わる

2026年4月8日以降に計画届を提出

支給対象は出向元事業主と出向先事業主の両方。それぞれが負担した出向中の賃金に助成率を掛けた額が支給されます。中小企業は2/3、それ以外は1/2。

2026年4月7日以前に計画届を提出

支給対象は出向元事業主のみ。助成額は「出向元が負担した出向中の賃金」と「出向前賃金の2分の1」のいずれか低い額に助成率を掛けた額になります。旧ルールのほうが計算が絞られる点に注意してください。

すでに古いガイドブックを見ながら計画を組んでいる場合、提出のタイミングを数日ずらすだけで受け取れる金額が変わることになります。厚生労働省のページにはコース別・改正日別にガイドブックと支給要領がすべて残っているので、自分がどちらの扱いになるかを最初に確定させてください。

スキルアップ支援コースの金額を実額で見る

上限額の9,110円という数字は、任意に決められたものではありません。雇用保険の基本手当日額の最高額に連動しており、毎年8月に改定されます(2026年8月1日時点で9,110円)。年度をまたぐ出向では、途中で上限が変わる可能性があるということです。

1人を6か月出向させた場合の助成額イメージ(中小企業・編集部の試算)

月25万円を6か月負担約100万円月35万円を6か月負担約140万円月45万円を6か月負担約164万円(上限で頭打ち)0円200万円※助成率2/3で計算。上限9,110円/人・日は暦日ベースのため、月45万円の例では上限に達して頭打ちになります。※実際の支給額は対象日数の数え方や賃金の内訳で変わります。必ずガイドブックの計算方法で確認してください。

ポイントは賃金が高くなるほど上限で頭打ちになることです。管理職級を出向させる場合、助成率2/3の恩恵は途中から効かなくなります。逆に、中堅どころの技術者を出す設計であれば、負担額のかなりの部分を回収できます。

申請の流れ(時系列)

STEP 1 出向開始の2〜3か月前

出向先を決め、出向契約を設計する

企業グループ内の出向は対象外です。取引先や業界団体、産業雇用安定センターのマッチング支援を使って社外の出向先を探します。就業規則と出向契約書の整備もこの段階で行います。

STEP 2 出向開始前(最重要)

計画届を労働局へ提出する

この助成金は事前の計画届が必須です。出向を始めてから気づいても間に合いません。そして2026年4月8日以降の提出であれば、出向先も支給対象になります。電子申請は雇用関係助成金ポータルから行えます。

STEP 3 1か月以上2年以内

出向を実施する

出向中の賃金は、出向前に支払っていた額以上でなければなりません。下げると要件を外れます。出向期間の終了後に元の事業所へ戻ることが前提になっている必要もあります。

STEP 4 復帰後6か月

賃金を5%以上上げて維持する

復帰後6か月間の各月の賃金を、出向前賃金と比較していずれも5%以上上昇させることが要件です。「平均で5%」ではありません。1か月でも割り込むと不支給になります。

STEP 5 要件を満たした後

支給申請する

都道府県労働局またはハローワークの助成金窓口へ。賃金台帳、出勤簿、出向契約書などで実績を証明します。入金までは申請からさらに数か月かかると見ておいてください。

産業連携人材確保等支援コースは「補助金の後工程」

もうひとつのコースは、単独では使えません。事業再構築補助金(第12回・第13回公募の成長分野進出枠 通常類型)またはものづくり補助金(第17回以降の製品・サービス高付加価値化枠)の採択・交付決定を受けていることが入口の条件です。しかも、事業計画書の「実施体制」欄に人材確保に関する事項を書いていることが求められます。

雇い入れる人材に求められる条件

  • 専門的な知識・技術が必要な企画立案や指導(教育訓練等)の業務に従事する者、または部下を指揮監督する係長相当職以上の者
  • 1年間に350万円以上の賃金が支払われる者(時間外手当・休日手当を除く基本給と諸手当)
  • 雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として雇い入れること
  • 期間の定めのない労働契約を締結すること(パートタイム労働者は除く)

支給は雇入れから6か月ごとに2回。各支給対象期に支払われた賃金が175万円以上であることが条件になります。

要件を並べると厳しく見えますが、裏を返せば補助金に採択された企業が「新事業の責任者を年収400万円台で正社員採用する」場面にぴったり合う設計です。1人250万円が2年目までに戻ってくるなら、採用の意思決定はかなり変わります。ものづくり補助金の申請段階から人材確保を実施体制に織り込んでおくかどうかが分かれ目です。ものづくり補助金の申請の考え方とあわせて設計してください。

損しないポイント5つ

ここだけは押さえる

  1. 計画届を出す前に出向を始めない。これが最も多い失格理由です。事後申請は認められません。出向開始日から逆算して、計画届の提出日をカレンダーに置いてください。
  2. グループ内出向は対象外だと最初に確認する。親会社・子会社・関連会社の間で完結する出向には支給されません。制度を知った直後に社内で「うちのグループ会社に出せば」と話が進みがちですが、そこで止まります。
  3. 復帰後の賃金5%アップは「各月」で見られる。6か月間のうち1か月でも下回れば不支給です。賞与の支給月だけ上がるような設計では要件を満たしません。基本給での手当てが必要になります。
  4. 上限9,110円は毎年8月に変わる。雇用保険の基本手当日額の最高額に連動します。年度をまたぐ計画では、8月以降の試算を別に持っておいてください。
  5. 1事業所1年度あたり1,000万円の枠を意識する。複数名を同時に出向させる場合、途中で枠に当たります。年度をまたいで分散させる設計のほうが、総額では有利になることがあります。

イレギュラー・現場対応──よくある3つのつまずき

厚生労働省が公開しているFAQや労働局の案内で繰り返し取り上げられている論点を、編集部の視点で整理しました。

廃止されたコースの記事が検索上位に残っている

産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)は、2023年11月28日限りで廃止されました。それにもかかわらず、このコース名で解説する記事はいまも大量に残っています。事業再構築補助金の第10回・第11回公募で交付決定を受けている事業主は要件を満たせば引き続き支給申請ができますが、これから新たに使える制度ではありません。第12回・第13回で交付決定を受けた事業主は、産業連携人材確保等支援コースのほうを見てください。助成金の情報は「コース名+改正日」で確認するのが安全です。

出向先が見つからない

この制度の実務上の壁はここです。グループ内が使えない以上、社外に協力先を作らなければなりません。厚生労働省は在籍型出向支援のページで、出向事例、必要な準備事項、就業規則や出向契約書の参考例、マッチング支援の情報を公開しています。2026年4月8日の改正で出向先にも助成金が付くようになったことは、交渉材料そのものです。「受け入れていただければ、御社が負担する賃金の2/3も助成対象になります」と説明できるかどうかで、話の通りやすさが変わります。

賃金5%アップの原資が読めない

復帰後に恒久的な賃上げを約束するのは、中小企業にとって軽い判断ではありません。ここで考えたいのは、賃上げを求める他の制度と重ねられないかという視点です。事業場内最低賃金の引き上げには業務改善助成金、正社員転換とセットの賃上げにはキャリアアップ助成金、教育訓練には人材開発支援助成金があります。制度ごとに併給の可否が定められているため、労働局に事前確認したうえで、賃上げの原資を複数の制度でまかなう設計を検討してください。人材開発支援助成金とリスキリングもあわせて確認できます。

相場観と編集部の価値判断

この助成金は、金額の大きさよりも「使える会社が限られる」ことのほうが本質だと考えています。スキルアップ支援コースは社外の出向先という他人の協力が要り、産業連携人材確保等支援コースは補助金の交付決定という前提条件が要る。どちらも、思い立ってすぐ申請できる制度ではありません。

だからこそ、取り組む価値があるのは「どのみちやるつもりだった会社」だけです。助成金があるから出向させる、という順番は失敗します。復帰後6か月の各月で5%の賃上げを維持する義務が残るので、助成額を上回る固定費を背負うことになりかねません。逆に、技術者を取引先へ半年出して新しい加工技術を持ち帰らせる計画がすでにあるなら、賃金負担の2/3が戻る制度を使わない理由はありません。

金額感を並べておきます。スキルアップ支援コースは、中堅技術者1人を6か月出向させて100万〜150万円前後。産業連携人材確保等支援コースは、1人250万円で5人まで=最大1,250万円。後者のほうが桁は大きいものの、補助金の採択という関門を先に通る必要があります。人手不足への打ち手を横並びで見比べたい方は、人手不足に使える補助金・助成金から自社に合うものを探すのが早道です。

よくある質問

産業雇用安定助成金にはどんなコースがありますか。

2026年8月時点で新たに使える主なコースは、スキルアップ支援コースと産業連携人材確保等支援コースの2つです。ほかに災害時の特例として災害特例人材確保支援コースがあります。かつて存在した事業再構築支援コースは2023年11月28日限りで廃止されており、これから新たに申請することはできません。

スキルアップ支援コースの助成額はいくらですか。

出向元・出向先の事業主が負担した出向中の賃金に、中小企業は3分の2、中小企業以外は2分の1を掛けた額です。上限は1人1日あたり9,110円(2026年8月1日時点)で、1事業所1年度あたり1,000万円までとなっています。上限額は雇用保険の基本手当日額の最高額に連動し、毎年8月に改定されます。

出向先の会社も助成金をもらえますか。

2026年4月8日以降に計画届を提出した場合は、出向元事業主だけでなく出向先事業主も支給対象になり得ます。2026年4月7日以前に計画届を提出した場合は、支給対象は出向元事業主のみです。判定の基準になるのは出向の開始日ではなく計画届の提出日なので、提出のタイミングを必ず確認してください。

グループ会社への出向でも使えますか。

使えません。スキルアップ支援コースは、企業グループ内の出向の場合は支給されないと明記されています。親会社・子会社・関連会社の間で完結する出向は対象外なので、取引先や業界のつながり、産業雇用安定センターのマッチング支援などを使って社外の出向先を探す必要があります。

復帰後の賃金は本当に5%上げないといけませんか。

要件です。出向から復帰した後6か月間について、各月の賃金を出向前賃金と比較していずれも5%以上上昇させることが求められます。6か月の平均ではなく各月で判定されるため、1か月でも下回ると支給されません。賞与ではなく基本給や毎月の手当で手当てする設計が必要になります。

産業連携人材確保等支援コースは単独で使えますか。

使えません。事業再構築補助金(第12回・第13回公募の成長分野進出枠 通常類型)またはものづくり補助金(第17回以降の製品・サービス高付加価値化枠)の採択および交付決定を受けていることが条件です。さらに、その事業計画書の実施体制に人材確保に関する事項を記載していることも求められます。

申請はどこにしますか。

都道府県労働局またはハローワークの助成金の支給申請窓口です。電子申請は雇用関係助成金ポータルから行えます。スキルアップ支援コースは出向開始前の計画届が必須で、事後の申請は認められません。提出書類や記入方法は厚生労働省が公開しているガイドブックと支給要領で確認してください。

出典・参考

  • 厚生労働省「産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)」(助成率・上限9,110円・令和8年4月8日の見直し・令和8年8月1日FAQ更新)
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000082805_00012.html
  • 厚生労働省「産業雇用安定助成金(産業連携人材確保等支援コース)」(250万円/人・対象労働者の要件・支給対象事業主)
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/sankokinsangyourenkeijinzaikakuhotou_00001.html
  • 厚生労働省「産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)」(令和5年11月28日限りで廃止)
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/sankokinjigyou-saikouchiku.html
  • 厚生労働省「令和8年度 雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)」(令和8年4月8日時点)
    https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000758206.pdf

本記事は2026年8月22日時点で厚生労働省が公表している内容にもとづく編集部の整理です。助成金の要件・助成額・上限額は改正されることがあり、上限9,110円は雇用保険の基本手当日額の最高額に連動して毎年8月に改定されます。記事中の助成額イメージは編集部の試算であり、実際の支給額は対象日数の算定方法や賃金の内訳により異なります。申請にあたっては、必ず最新のガイドブックと支給要領を確認し、都道府県労働局またはハローワークにご相談ください。

他の補助金・助成金と横断で比較したい方は、補助金・助成金 完全ガイドから制度の探し方と申請の流れを確認できます。

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この記事を書いた人

みんなのミカタナビ編集部です。運営者・たくの編集方針のもと、相続・出産・退職・補助金など「知らないと損する手続きとお金」を、公的機関の一次情報と体験談の取材をもとに時系列で整理しています。数値・期限は必ず公式情報で裏取りし、出典を明記します。

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