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相続放棄の判断と手続き【2026年版】3か月の期限と家庭裁判所への申述|故人の預金に手をつけると放棄できなくなる

家庭裁判所へ提出する相続放棄の申述書類と印鑑、3ヶ月の期限を示す卓上カレンダー

結論の要点

いつまでに自分が相続人になったと知った日から3か月以内に、家庭裁判所へ申述します。「死亡日から」ではなく「知った日から」が起算点です。
どこへ被相続人(亡くなった方)の最後の住所地の家庭裁判所。自分の住所地ではありません。郵送でも提出できます。
いくら裁判所に納めるのは収入印紙800円(申述人1人につき)+連絡用の郵便切手。戸籍の取得費を入れても自分でやれば実費2,500〜3,500円程度が目安です。
最大の罠3か月が残っていても、故人の預金を引き出す・遺品を売る・家を片づけて処分すると「単純承認したもの」とみなされ、以後は放棄できなくなります(法定単純承認)。

親や兄弟が亡くなり、あとから借金や保証債務が見つかった——そんなとき、相続人には「引き継がない」という選択肢があります。それが相続放棄です。

ただしこの手続きは、期限が短いことと、手続きの前にうっかり財産に手をつけると権利を失うことの2点で、他の相続手続きとまったく性質が違います。「とりあえず葬儀を済ませて、落ち着いてから考えよう」と片づけを進めた結果、放棄できなくなる人が実際にいます。

この記事では、裁判所の公式案内をもとに、判断の基準・時系列の進め方・必要書類・費用・やってはいけない行為を、迷わず動ける順番で整理します。(本記事は2026年8月時点の制度にもとづく一般的な情報です。個別の可否判断は弁護士・司法書士にご確認ください。)

目次

まず「3つの選択肢」のどれを選ぶかを決める

相続が始まったとき、相続人が選べる道は裁判所の案内どおり3つです。何もしなければ自動的に1番になります。

選択肢 引き継ぐもの 向いている状況
単純承認プラスの財産も借金もすべて財産のほうが明らかに多いとき。手続き不要(3か月放置でもこれになる)
相続放棄何も引き継がない(財産も放棄)借金のほうが多い/関わりたくない/他の相続人に集約したい
限定承認得た財産の範囲内で借金を負担借金の総額が不明だが、残る可能性もあるとき。相続人全員での申述が必要

出典:裁判所「相続の放棄の申述」の分類にもとづき編集部作成

実務でほとんどの人が迷うのは単純承認か相続放棄かです。限定承認は相続人全員でそろって申述する必要があり、手続きも重いため、利用件数はごく少数にとどまります。

時系列でみる相続放棄|いつ何をするか

「3か月」とだけ覚えていると間に合いません。書類集めに数週間かかるため、逆算して動く必要があります。

死亡当日 〜 7日

死亡届の提出(7日以内)と葬儀。この段階では放棄の判断は不要です。ただし故人の預金には手をつけないこと。葬儀費用の支払いは、可能なら喪主自身の財布から出し、領収書を残しておきます。

〜 2週間 財産と借金の洗い出し

通帳・郵便物・督促状・借用書・保証契約を確認します。借金の有無は信用情報機関(CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センター)への開示請求で調べられます。いずれも相続人から請求でき、数週間かかることがあるため早めに動きます。

〜 1か月 戸籍を集める/伸長を検討

必要な戸籍の請求を始めます。調べても判断材料がそろわないときは、3か月が来る前に「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を家庭裁判所に申し立てられます(裁判所が期間を延ばすことができる、と公式に案内されています)。期限後に慌てるより、伸長を出すほうが確実です。

3か月以内【最重要・過ぎたら原則もう戻せない】

家庭裁判所へ相続放棄の申述書を提出。提出先は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です。郵送可なので遠方でも出向く必要はありません。消印ではなく到達日で見られることがあるため、締切ぎりぎりの郵送は避け、余裕をもって送ります。

申述の 2週間〜1か月後 照会書が届く

家庭裁判所から「相続放棄の申述についての照会書」と回答書が郵送されます。「本当に自分の意思か」「いつ亡くなったことを知ったか」「財産に手をつけていないか」を確認する書類です。記入して期限内に返送します。ここを放置すると受理されません。

回答の 1〜2週間後 受理通知書が届く=完了

「相続放棄申述受理通知書」が届けば手続きは完了です。再発行されないので必ず保管してください。債権者や法務局に提出を求められたときは、別途「相続放棄申述受理証明書」を1通150円(収入印紙)で何通でも申請できます。

完了後 次の順位の相続人へ連絡する

自分が放棄すると、相続権は次の順位の人(子が全員放棄すれば親、親もいなければ兄弟姉妹)へ移ります。放棄の事実を伝えないと、その人たちは何も知らないまま3か月を過ぎてしまいます。連絡は義務ではありませんが、事実上いちばん重要な後始末です。

期限・提出先・費用は裁判所の公式案内にもとづく(2026年8月時点)。照会書・受理通知書が届くまでの日数は運用による目安で、裁判所や時期によって前後します。

必要書類と費用|自分でやるといくらか

裁判所が示す標準的な添付書類は、誰が放棄するか(続柄)によって変わります。共通で必要なのは次の2点です。

【全員に共通】

① 相続放棄の申述書(裁判所の書式・記載例あり)
② 被相続人の住民票除票 または 戸籍附票
③ 申述人(放棄する人)の戸籍謄本

放棄する人 追加で必要な戸籍
配偶者被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
子・孫(第1順位)同上。孫が代襲相続人の場合は、本来の相続人(親)の死亡の記載のある戸籍も
父母・祖父母(第2順位)被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍ほか。量が一気に増えます
兄弟姉妹・甥姪(第3順位)被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍+直系尊属の死亡の記載のある戸籍など最も多い

出典:裁判所「相続の放棄の申述」6. 申述に必要な書類。先順位の相続人がすでに提出済みの戸籍は重ねて出す必要がありません。

ここで効いてくるのが、先に申述した人が出した戸籍は使い回せるというルールです。兄弟でそろって放棄するなら、まとめて申述したほうが戸籍代も手間も減ります。また、戸籍に代えて「法定相続情報一覧図の写し」を提出できる場合があると裁判所は案内しています(可否は申述先の家庭裁判所に要確認)。戸籍集めそのものの進め方は相続の戸籍謄本の集め方で詳しく整理しています。

費用は「自分でやる」と「頼む」で桁が変わる

相続放棄にかかる費用の目安(1人あたり)

自分で手続き 約2,500〜3,500円 司法書士に依頼 3万円前後+実費 弁護士に依頼 5万〜10万円+実費 裁判所に納めるのは収入印紙800円+郵便切手。差額はすべて代行報酬です。

収入印紙800円・郵便切手は裁判所の公式案内による。戸籍取得費・専門家報酬は各事務所が公開する料金帯をもとにした一般的な目安で、事案の難易度により変動します。

損しないポイント|知らないと取り逃がすお金

相続放棄しても、これは受け取れます

① 生命保険の死亡保険金
受取人が「配偶者」「子」など相続人本人に指定されている場合、保険金は受取人固有の財産であり、相続財産ではありません。放棄しても受け取れます。ただし受取人が「被相続人本人」になっていると相続財産扱いになり、放棄すると受け取れません。証券の受取人欄を必ず確認してください。

② 遺族年金
遺族基礎年金・遺族厚生年金は、社会保険制度にもとづき遺族に支給されるもので相続財産ではありません。相続放棄をしても受給できます。

③ 葬祭費・埋葬料
国民健康保険や健康保険から葬儀を行った人に支給される給付です。申請しないと1円も出ません。葬祭費・埋葬料のもらい方で手順を確認してください。

逆に、これをやると放棄できなくなる(法定単純承認)

民法は、相続人が相続財産の全部または一部を「処分」したときは単純承認したものとみなす、と定めています(法定単純承認)。3か月以内であっても、この行為をした時点で相続放棄の道は閉じます。

やってはいけない代表例

・故人の預金を解約して使う/自分の口座へ移す
・故人の車・株・不動産を売却・名義変更する
・高価な遺品(宝石・骨董・ブランド品)を持ち帰る・人に譲る
・故人あての債権を取り立てて回収する
・賃貸物件を解約して部屋を丸ごと片づけ、家財を処分する
・故人の借金を相続財産から返済する

一方、保存行為(財産の現状を維持する行為)は処分にあたりません。雨漏りの応急修理、火災保険の継続、無価値な生活ゴミの片づけなどがこれにあたるとされます。ただし「形見分けのつもりだった」「たいした値打ちはないと思った」は通用しないことがあり、境目は最終的に個別判断です。迷うものには手を触れず写真だけ残す、が最も安全です。

なお、公共料金や携帯・サブスクの解約そのものは、故人の財産を処分する行為とは性質が異なりますが、支払いを故人の口座や相続財産から行うと処分と評価されるおそれがあります。放棄を検討している段階では、故人の公共料金・携帯・サブスクの解約と名義変更を進める前に、支払い原資に注意してください。

あなたの場合はどうなる|パターン別の分岐

兄弟姉妹が複数いる

相続放棄は1人ずつ単独でできます。全員の同意は不要で、他の兄弟に知らせる義務もありません。ただし1人だけ放棄すると、その分の借金は放棄しなかった兄弟に集中します。借金が理由なら、そろって放棄するかを先に話し合うのが実務的です。

実家(持ち家)が残っている

放棄すれば家も相続しません。ただし2023年4月1日施行の改正民法により、放棄した時点でその家を「現に占有していた」人は、次の管理者に引き継ぐまで保存義務を負います。同居していた人は放棄しても即座に無関係にはなりません。逆に遠方に住み管理に関与していなければ、この義務は生じません。

相続人が全員放棄した

相続する人がいなくなるため、利害関係人などの申立てで家庭裁判所が相続財産清算人を選任します。この申立てには収入印紙800円と官報公告料5,582円のほか、財産が乏しい場合は数十万円の予納金を求められることがあります。「全員放棄すれば終わり」ではない点に注意してください。

放棄したい人が未成年

法定代理人(親)が代理して申述します。親と子がどちらも相続人で、子だけが放棄する場合などは、家庭裁判所で「特別代理人」の選任が必要です。手続きが1段階増えるため、3か月の逆算をさらに早める必要があります。

3か月をすでに過ぎている

起算点は「死亡日」ではなく「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」です。疎遠で死亡を後から知った、督促状が来て初めて借金を知った、といった事情があれば、その時点を起算日として申述が受理される余地があります。ここは説明の仕方で結論が変わる領域なので、自力で出す前に専門家に相談する価値が最も高い場面です。

現場でつまずくところ|書面には書いていない実務

体験談で繰り返し語られる、事前に知っておくと差が出るポイントを整理します(以下は公式の手続き要件ではなく、経験者の記録に多く見られる傾向です)。

照会書の「財産に手をつけていないか」欄で手が止まる。申述後に届く照会書には、故人の財産を処分していないかを問う項目があります。葬儀費用を故人の口座から出していた人がここで青ざめる、というのが典型例です。迷う支払いがあるなら、申述の前に領収書と出金元を整理しておくと回答がぶれません。

戸籍は「出生から死亡まで」が想像以上に重い。第2順位・第3順位の放棄では、被相続人の出生までさかのぼる戸籍が必要です。転籍や結婚で本籍が動いていると、複数の自治体に郵送請求を重ねることになり、往復で3〜4週間かかることも珍しくありません。2024年3月から始まった戸籍の広域交付を使えば最寄りの窓口でまとめて請求できる場合があり、期間短縮の切り札になります。

受理通知書は1通しか来ない。債権者が複数いると提出を求められる場面が増えますが、通知書は再発行されません。必要通数の「受理証明書」(1通150円)をまとめて申請しておくと後が楽です。原本を渡す前にコピーを取るのも忘れずに。

放棄した後も督促が止まらないことがある。債権者は放棄を知りません。受理証明書を添えて通知して初めて止まります。放置すると訴訟を起こされ、対応の手間が増えます。

編集部の判断材料|自分でやるか、頼むか

相談すると「念のため弁護士に」と勧められがちですが、すべてのケースで必要なわけではありません。費用の差は実費3千円と報酬5万〜10万円で、20倍以上になります。判断材料として、編集部の見方を示します(最終判断はご自身で行ってください)。

堅実に、費用をかけずに済ませたい人はここまで
「配偶者または子が」「死亡から間もなく」「財産に一切手をつけていない」——この3つがそろうなら、必要な戸籍は少なく、書式も裁判所が記載例まで公開しています。自分で申述して問題になりにくい典型例です。実費3千円程度で完結します。

書類集めだけ外注したい人はここまで
第2順位・第3順位で戸籍の量が多い、平日に役所へ行けない、という場合は司法書士に書類作成と収集を任せる選択があります。3万円前後。ただし照会書への回答や裁判所とのやり取りは自分で行うのが一般的な範囲です。

迷わず専門家に払う価値がある人
次のいずれかに当てはまるなら、費用を惜しむべきではありません。①3か月をすでに過ぎている ②故人の財産に手をつけてしまった可能性がある ③債権者から訴訟や支払督促を起こされている ④事業の連帯保証が絡む ⑤相続人間で対立している。これらは「受理されるかどうか」自体が争点になり、一度失敗すると取り返しがつきません。弁護士費用5万〜10万円は、背負う可能性のある債務額と比べて判断してください。費用が払えない場合は法テラスの民事法律扶助(立替払い)という選択肢もあります。

逆に言えば、「借金があるかどうか分からない」という理由だけで高額な依頼をする必要はありません。まず信用情報の開示で借金の有無を確かめ、判断がつかなければ期間伸長を申し立てる。この2手で、多くの人は落ち着いて選べる状態になります。

よくある質問

相続放棄の3か月は、いつから数えますか?

死亡日からではなく、「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」から3か月です。同居の子であれば通常は死亡を知った日ですが、疎遠で後から知った場合や、先順位の相続人が放棄したことで自分が相続人になった場合は、その事実を知った日が起算点になります。

相続放棄をすると、生命保険金も受け取れなくなりますか?

受取人があなた自身に指定されている保険金は受取人固有の財産であり、相続放棄をしても受け取れます。ただし受取人が「被相続人本人」と指定されている場合は相続財産となるため、放棄すると受け取れません。保険証券の受取人欄を確認してください。遺族年金や葬祭費・埋葬料も、相続財産ではないため放棄後も受給できます。

相続放棄は自分1人でできますか。他の相続人の同意は必要ですか?

単独でできます。他の相続人の同意も、事前の通知も法律上は不要です。ただし、あなたが放棄すると次の順位の親族に相続権が移るため、知らせないままだとその人たちが借金を背負う事態になりかねません。連絡は義務ではありませんが、実務上は必須と考えてください。なお、相続人全員でそろって行う必要があるのは限定承認のほうです。

相続放棄をしたのに、実家の管理を求められることはありますか?

あります。2023年4月1日施行の改正民法により、放棄した時点でその財産を「現に占有していた」相続人は、次に管理する人へ引き渡すまで保存義務を負います。実家に同居していた場合が典型です。一方、遠方に住んでいて管理に関与していなければ、この義務は生じません。

3か月を過ぎてしまいました。もう手遅れですか?

直ちに手遅れとは限りません。借金の存在を知らなかったことに相当の理由がある場合など、起算点を後ろにずらして申述が受理される余地があります。ただし事情の説明が結論を左右する領域で、一度却下されると再申立ては困難です。この場合は自力で出す前に弁護士・司法書士へ相談してください。

手続きの前に確認する公式情報

申述書の書式・記載例、必要書類、提出先の家庭裁判所は、すべて裁判所の公式サイトで無料で確認・ダウンロードできます。有料の代行を検討する前に、まず公式の書式と記載例に目を通してください。

・裁判所|相続の放棄の申述
・裁判所|相続の放棄の申述書(書式・記載例)
・裁判所|相続の承認又は放棄の期間の伸長
・裁判所|申立書提出先一覧(家庭裁判所)

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※本記事は2026年8月7日時点の公開情報にもとづく一般的な解説です。制度は改正されることがあり、個別の事情によって結論が異なります。実際の手続きは必ず管轄の家庭裁判所または弁護士・司法書士にご確認ください。編集部は法律事務所ではなく、本記事は法的助言ではありません。

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この記事を書いた人

みんなのミカタナビ編集部です。運営者・たくの編集方針のもと、相続・出産・退職・補助金など「知らないと損する手続きとお金」を、公的機関の一次情報と体験談の取材をもとに時系列で整理しています。数値・期限は必ず公式情報で裏取りし、出典を明記します。

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