実家を片づけるとき、多くの人が最後まで手を出せずに残すのが仏壇です。粗大ごみに出していいのか、お寺に頼むべきなのか、費用はいくらか――判断材料が見つからないまま数か月が過ぎることも珍しくありません。結論から言えば、仏壇の処分は「閉眼供養をするか」と「どこに引き取ってもらうか」の2つを決めれば進みます。2026年8月時点の相場と手順を整理します。
この記事の結論
- 法律上、仏壇は「家具」。自治体の粗大ごみとして出すこと自体は禁じられていません。宗教的な区切りをつけたい場合に閉眼供養を行います。
- 閉眼供養(魂抜き)のお布施は1万〜5万円が目安。自宅へ来てもらうならお車代として別途数千円〜1万円。
- 仏具店・専門業者に一式を任せると総額1万〜6万円。供養とお焚き上げ、運び出しまで含む価格帯です。
- 浄土真宗は「魂を抜く」考え方を取らない。閉眼供養ではなく遷座法要として営みます。呼び方が違うだけで頼めないわけではありません。
- 先に位牌・過去帳・遺影を分ける。仏壇本体より扱いが重いものが中に入っています。処分後に取り返しがつきません。
※金額は当編集部が2026年8月時点で確認した仏具店・供養事業者の公表相場です。地域と仏壇の大きさで変わります。
処分の前に決める2つのこと
手順に入る前に、家族で先に合意しておくべき論点が2つあります。ここが決まらないまま業者に電話をすると、見積もりの比較ができません。
図1|処分前に決める2点のチェックリスト
① 閉眼供養(魂抜き)をするか
- □ 菩提寺がある → まず菩提寺に相談する(他寺に頼むと後で角が立つことがある)
- □ 菩提寺がない → 仏具店や供養サービスが僧侶を手配してくれる
- □ 家族に「供養してから」と考える人がいるか確認する
- □ 費用の目安はお布施1万〜5万円+お車代数千円〜1万円
② 中身をどう分けるか
- □ 位牌 … 継承するか、別途お焚き上げするかを決める
- □ 過去帳・法名軸 … 家系の記録。原則として残す
- □ 本尊・掛軸 … 菩提寺へ返納できる場合がある
- □ 遺影・写真・手紙 … 仏壇の引き出しに入っていることが多い。必ず全段を確認する
- □ 現金・通帳・貴金属 … 実際に出てくる。開ける前に相続人立ち会いを
仏壇処分の流れを時系列で見る
菩提寺の予定と業者の空き状況が律速になります。実家の明け渡し期限がある場合は、逆算して1か月前には動き出してください。
図2|相談から引き取りまでの標準スケジュール
1か月前|家族で方針を決める
閉眼供養の有無、位牌の扱い、費用の負担者を決める。相続手続き中なら他の相続人へも一報を。
3〜4週間前|菩提寺へ連絡
「仏壇を処分するので閉眼供養をお願いしたい」と伝える。日程とお布施の目安、お車代の要否をこの電話で確認する。
2〜3週間前|引き取り先を決める
仏具店・供養サービス・遺品整理業者・自治体粗大ごみのいずれかへ見積もり。階段の有無と仏壇の寸法を先に伝えると金額がぶれない。
前日〜当日朝|中身をすべて出す
引き出し・天板裏・下台まで確認。写真、証書、現金が出てくることがある。
当日|閉眼供養→引き取り
読経は15〜30分程度。供養を終えてから運び出す。お焚き上げまで頼む場合は後日、供養証明が届くサービスもある。
処分方法4択の比較|費用と手間はトレードオフ
引き取り先は大きく4つです。安さを取るなら自治体、手間のなさを取るなら仏具店・専門業者、という関係になります。
表1・図3|引き取り先別の費用と特徴(2026年8月時点)
| 依頼先 | 費用の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 菩提寺に依頼 | 1万〜5万円 | 供養〜引き取りまで対応してくれる寺院もある。処分は受けず供養のみのことも多い |
| 仏具店・供養サービス | 1万〜6万円 | 閉眼供養・運び出し・お焚き上げを一括。供養証明を出す事業者もある |
| 遺品整理・不用品回収業者 | 1万〜5万円 | 家財一式と同時に処分するなら割安。僧侶手配をオプションで持つ業者もある |
| 自治体の粗大ごみ | 1,000〜3,000円程度 | 最安。ただし供養は自分で手配し、指定場所まで自力で運ぶ必要がある |
※粗大ごみの料金は自治体により異なります。品目に「仏壇」の区分がない自治体もあるため、事前に窓口で確認してください。
費用の内訳|何にいくら払っているのか
表2|仏壇処分でかかる費用の内訳
| 項目 | 目安 | 補足 |
|---|---|---|
| 閉眼供養のお布施 | 1万〜5万円 | 白封筒に「御布施」。菩提寺との関係の深さで幅が出る |
| お車代 | 数千円〜1万円 | 自宅へ出向いてもらう場合。寺院で行うなら不要 |
| 運び出し・引き取り | 1万〜4万円 | 仏壇の高さ・階数・エレベーターの有無で変わる。大型の唐木仏壇は上振れしやすい |
| お焚き上げ | 運び出し費に含むことが多い | 位牌・仏具のみを郵送で受け付けるサービスもある |
| 粗大ごみ手数料 | 1,000〜3,000円程度 | 自治体により料金・受付方法が異なる。解体すれば安くなる自治体もある |
宗派による呼び方の違い|浄土真宗は「遷座法要」
閉眼供養は宗派共通の呼び名ではありません。浄土真宗では、教義上「ものに魂を出し入れする」という考え方を取らないため、閉眼供養ではなく遷座法要(せんざほうよう)として営みます。名称が違うだけで、仏壇じまいのお勤めを断られるわけではありません。菩提寺へ相談する際は「仏壇を処分するのでお勤めをお願いしたい」と用件で伝えれば、寺院側が適切な形式に整えてくれます。
また、地域によっては仏壇を「家の格」として扱う慣習が残り、親族の了解なく処分すると強く反発されることがあります。費用より合意形成のほうが難所だと考えて進めるのが安全です。
イレギュラー・現場でよく起きること
図4|つまずきやすい5つの場面
- 菩提寺が分からない。実家の仏壇に入っている過去帳や位牌の裏、法要の案内はがき、香典帳に寺院名が残っていることが多いです。それでも不明なら、仏具店の供養サービスで僧侶を手配できます。
- 仏壇が大きすぎて部屋から出ない。上置き型でなく台付きの大型仏壇は、その場で分解しないと搬出できないことがあります。見積もり時に高さ・幅・奥行きと階段の幅を伝えてください。追加料金の主因はここです。
- 親族から後で抗議される。「聞いていない」が最も多いトラブルです。処分前に写真を撮り、日程と方法をメールなど記録に残る形で共有しておきます。
- 引き出しから現金や証書が出てくる。相続財産に該当する可能性があります。ひとりで開けず、相続人が立ち会える日に作業してください。
- 位牌だけ残したい。本尊と仏壇を処分し、位牌を手元に置く選択もできます。将来の管理者がいない場合は、寺院の永代供養に位牌を預ける方法もあります。
相場観と編集部の価値判断
金額だけを見ると、自治体の粗大ごみ(1,000〜3,000円程度)と仏具店への一括依頼(1万〜6万円)では十倍以上の差があります。ただし、粗大ごみを選ぶと供養の手配・中身の仕分け・階段からの搬出をすべて自分で背負うことになります。実家が遠方なら、往復の交通費と休暇でその差額は簡単に埋まります。
当編集部の見立てでは、菩提寺が明確にある家は「寺院に供養、業者に搬出」の分業が最も納得感が高く、菩提寺がない家は仏具店・供養サービスの一括依頼が結局いちばん早い、という整理になります。逆に、家財一式の整理を同時に進めるなら遺品整理業者にまとめたほうが総額は下がります。
そして最も強調したいのは、安くする工夫より先に、位牌・過去帳・写真を回収することです。仏壇本体は買い直せますが、家系の記録と写真は戻りません。作業当日に慌てて開けるのではなく、前日までに全段を空にしておいてください。
お墓も一緒に整理する場合は墓じまい(改葬)の進め方、遺骨の納め先を決めきれていない場合は納骨はいつまでに?を先に読むと順番を間違えません。家財全体の片づけ費用は遺品整理の費用と業者の選び方にまとめています。
確認先
- 粗大ごみの品目区分と料金:お住まいの市区町村の粗大ごみ受付センター
- 閉眼供養・遷座法要:菩提寺、または仏具店・供養サービスの僧侶手配
- 不用品回収業者の適法性:市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可の有無を確認
料金と受付方法は自治体・事業者ごとに異なります。契約前に見積書で内訳をご確認ください。
よくある質問
仏壇は粗大ごみとして出してもよいのですか?
法律上は問題ありません。仏壇は家具に分類され、宗教的な理由で処分方法が規制されているわけではありません。ただし自治体によって品目区分や料金、解体の要否が異なるため、事前に粗大ごみ受付センターへ確認してください。宗教的な区切りをつけたい場合は、出す前に閉眼供養を行います。
閉眼供養(魂抜き)のお布施はいくら包めばよいですか?
1万〜5万円が目安です。自宅へ出向いてもらう場合は、お車代として別途数千円〜1万円を包むのが一般的です。菩提寺との付き合いの深さや地域の慣習で幅があるため、金額に迷うときは寺院へ率直に目安を尋ねて構いません。
仏壇の処分にかかる総額はいくらですか?
閉眼供養から引き取りまで仏具店や供養サービスに一括で頼む場合、1万〜6万円が目安です。自治体の粗大ごみに自分で出すなら1,000〜3,000円程度ですが、供養の手配と搬出は自分で行う必要があります。
浄土真宗でも閉眼供養は必要ですか?
浄土真宗では「魂を出し入れする」という考え方を取らないため、閉眼供養ではなく遷座法要(せんざほうよう)として営みます。呼び方が異なるだけで、仏壇じまいのお勤めを依頼できないわけではありません。
位牌や過去帳はどうすればよいですか?
位牌は継承するか、仏壇と別にお焚き上げするかを決めます。過去帳や法名軸は家系の記録にあたるため、原則として残すことをおすすめします。本尊や掛軸は菩提寺で返納を受け付けている場合があります。
相続とお葬式まわりの手続きは相続・お葬式ガイドに一覧でまとめています。
