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遺族厚生年金はいくら【2026年版】報酬比例の4分の3と2028年改正

遺族厚生年金はいくら出るのか 報酬比例の4分の3・2028年に改正 自宅の窓辺で年金の書類を確認する50代の女性

この記事の結論

  • 遺族厚生年金の額は、亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。在職中の死亡など一定の場合は、被保険者期間が300月(25年)未満でも300月とみなして計算されます。
  • 受け取れる遺族には優先順位があります。上から「子のある配偶者」「子」「子のない配偶者」「父母」「孫」「祖父母」の順で、最も順位の高い方だけが受け取ります。
  • いまの制度では男女で条件が違います。子のない30歳未満の妻は5年間のみ。子のない夫は55歳以上に限られ、受給開始は原則60歳からです。
  • 妻には中高齢寡婦加算があり、要件を満たすと40歳から65歳になるまで年額635,500円が加算されます。
  • 2028年4月施行予定の改正で、この男女差が解消され、子のない配偶者は原則5年の有期給付(約1.3倍に増額)へ移行します。女性は20年かけて段階的に、男性は2028年4月から実施される予定です。

基準日:2026年8月27日/出典:日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」(2026年6月22日更新)、厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」

配偶者や親を亡くしたあと、「遺族年金はいくら出るのか」がわからないまま手続きだけが進んでいく——これは葬儀後の相談でとても多い状態です。遺族年金は遺族基礎年金と遺族厚生年金の二階建てで、しかも誰が受け取れるかに順位があり、男女で条件が違います。金額の見当がつかない理由は、この構造にあります。

この記事では、日本年金機構が公表している要件・金額の一次情報をもとに、遺族厚生年金の「誰が」「いくら」「いつまで」を整理します。あわせて、2028年4月に施行が予定されている大きな見直しの内容と、いま何を確認しておくべきかも扱います。

目次

そもそも「遺族厚生年金」が出るのはどんなときか

日本年金機構によれば、次の1〜4のいずれかを満たす方が亡くなったときに、遺族に遺族厚生年金が支給されます。

  1. 厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき
  2. 厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で、初診日から5年以内に死亡したとき
  3. 1級・2級の障害厚生(共済)年金を受け取っている方が死亡したとき
  4. 老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡したとき

1と2には保険料の納付要件があります。原則は「死亡日の前日において、保険料納付済期間(免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上」。ただし死亡日が令和18年3月末日までのときは、亡くなった方が65歳未満であれば、死亡日の前日時点で「死亡月の前々月までの直近1年間に未納がない」ことで足りる特例があります。4については、納付済期間・免除期間・合算対象期間などを合算した期間が25年以上ある方に限られます。

受け取れるのは誰か|順位が高い人「だけ」が受け取る

遺族厚生年金は、亡くなった方に生計を維持されていた遺族のうち、最も優先順位の高い方だけが受け取ります。人数で分け合う仕組みではありません。ここを誤解していると、金額の見積もりが大きくずれます。

図1|受給の優先順位と、順位ごとの条件

順位対象条件
1子のある配偶者遺族基礎年金を受け取れる場合は、あわせて受給できる
2子18歳になった年度の3月31日まで、または20歳未満で障害等級1級・2級の状態。子のある妻・子のある55歳以上の夫が受給している間は支給されない
3子のない配偶者妻…30歳未満なら5年間のみ/夫…55歳以上に限り受給でき、受給開始は原則60歳から
4父母55歳以上に限り受給でき、受給開始は60歳から
5孫18歳になった年度の3月31日まで、または20歳未満で障害等級1級・2級の状態
6祖父母55歳以上に限り受給でき、受給開始は60歳から

出典:日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」。子のない夫は、遺族基礎年金をあわせて受給できる場合に限り、55歳から60歳の間でも受給できます。

いくらになるのか|報酬比例部分の4分の3と「300月みなし」

遺族厚生年金の額は、亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。報酬比例部分は、その方の在職中の平均的な給与・賞与と加入月数で決まるため、金額は人によって大きく変わります。「一律いくら」という制度ではありません。

ただし、若くして亡くなった場合に不利になりすぎないよう、上記の受給要件1・2・3にもとづく遺族厚生年金では、厚生年金の被保険者期間が300月(25年)未満なら300月とみなして計算されます。加入10年で亡くなっても、25年分として計算されるということです。

図2|金額の決まり方(考え方の順序)

亡くなった方の 報酬比例部分 → 300月みなし (要件1・2・3の場合) → その4分の3が 遺族厚生年金 妻の場合は、さらに加算がある 中高齢寡婦加算 年635,500円(40〜65歳) 経過的寡婦加算 65歳以降(生年月日要件)

出典:日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」。中高齢寡婦加算には夫の被保険者期間などの要件があります。

中高齢寡婦加算|40歳から65歳まで年635,500円

次のいずれかに当てはまる妻が受ける遺族厚生年金には、40歳から65歳になるまでの間、年額635,500円が加算されます。これを中高齢寡婦加算といいます。

  • 夫が亡くなったとき、40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子がいない妻
  • 遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていた子のある妻が、子が18歳到達年度の末日に達した(障害の状態にある場合は20歳に達した)等のため、遺族基礎年金を受給できなくなったとき

ただし、老齢厚生年金の受給権者または受給資格期間を満たしている夫が亡くなった場合は、夫の厚生年金保険の被保険者期間が20年以上であることが条件になります。65歳以降は、生年月日の要件を満たす方について経過的寡婦加算に切り替わります。

パターン別|自分のケースで何が起きるか

図3|現行制度でのパターン別の扱い

状況現行制度での扱い
18歳年度末までの子がいる妻・夫遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受給できる。子が18歳年度末を過ぎると遺族基礎年金は終わり、妻は要件を満たせば中高齢寡婦加算へ。
子のない30歳未満の妻5年間のみの受給。ここはいまも有期給付。
子のない30歳以上の妻期間の定めなく受給できる。40歳以上65歳未満なら中高齢寡婦加算の対象になり得る。
子のない55歳未満の夫受給できない。ここが現行制度の男女差の中心で、2028年改正の対象になる部分。
65歳以上で自分の老齢厚生年金もある老齢厚生年金が全額支給となり、遺族厚生年金はそれに相当する額の支給が停止される。金額は「亡夫の報酬比例の4分の3」と「亡夫の報酬比例の2分の1+自分の老齢厚生年金の2分の1」の高いほうで決まる。

出典:日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」

2028年4月の改正|男女差の解消と「5年の有期給付」

2025年に成立した年金制度改正法により、遺族厚生年金は2028年4月施行予定で大きく見直されます。厚生労働省の説明によれば、見直しの柱は次のとおりです。

  • 男女差の解消。男性は2028年4月から、女性は2028年4月から20年かけて段階的に実施される。
  • 子のない配偶者は原則5年の有期給付へ。女性で施行直後に対象となるのは、18歳年度末までの子がおらず、2028年度末時点で40歳未満の方。男性で新たに5年の有期給付を受けられるようになるのは、18歳年度末までの子がいない60歳未満の方。
  • 有期給付には加算が上乗せされる。有期給付加算により、現在の遺族厚生年金の額の約1.3倍になるとされている。
  • 5年で終わらない道もある。障害状態にある方や、収入が十分でない方は、5年の有期給付の終了後も引き続き増額された遺族厚生年金を受給できる(継続給付)。

図4|注意|「5年で打ち切り」という理解は正確ではない

改正の報道では「遺族年金が5年で打ち切りになる」という表現が使われることがあります。厚生労働省の資料では、対象は18歳年度末までの子がいない、一定年齢より若い配偶者に限られており、有期給付には加算がつき、終了後も障害状態や収入の状況によっては継続給付があるとされています。

2028年4月施行分は施行予定の内容です。対象範囲・経過措置の詳細は今後の政省令等で具体化されます。ご自身が対象になるかは、年金事務所または「ねんきんダイヤル」でご確認ください。

損しないための4つのポイント

損しないポイント

  1. 「うちは加入期間が短いから出ない」と決めつけない。在職中の死亡などでは300月みなしがあります。加入年数の短さだけを理由にあきらめる必要はありません。
  2. 他の給付との重複を確認する。亡くなった方に国民年金第1号被保険者の期間があれば、寡婦年金や死亡一時金を受けられる場合があります。どちらが有利かは条件で変わります。
  3. 老齢厚生年金・退職共済年金の裁定請求を忘れない。日本年金機構は、遺族厚生年金の支給額を決めるためにこれらの年金の裁定請求が必要だと明記しています。請求漏れは金額の決定そのものを止めます。
  4. 繰下げの扱いが変わる点に注意する。原則として、66歳到達日以前に遺族年金等を受け取る権利を持つと老齢年金の繰下げができません。ただし令和7年の法改正により、令和10年3月31日時点で遺族厚生年金の受給権があり65歳未満の方(昭和38年4月2日以降生まれ)は、老齢厚生年金について遺族厚生年金の請求を行っていない場合に限り繰下げ請求ができるようになります。

イレギュラー・現場でつまずきやすいところ

年金事務所や社会保険労務士が公開している解説、および日本年金機構のQ&Aで繰り返し論点になっている箇所を、編集部で整理しました。制度の条文からは読み取りにくい部分です。

  • 「生計維持」の判定でつまずく。受給できるのは亡くなった方に生計を維持されていた遺族です。共働きの場合、収入の要件を満たすかどうかで結論が変わります。書類だけで自己判断せず、年金事務所に確認するほうが早いです。
  • 子が受給できるのは「配偶者が受けていないとき」。子のある妻、または子のある55歳以上の夫が受給している間は、子には遺族厚生年金は支給されません。世帯の合計額を二重に数えてしまう誤りが起きやすい箇所です。
  • 父母・祖父母は55歳以上でも受給開始は60歳から。順位が回ってきても、すぐに支給が始まるとは限りません。
  • 再婚すると権利を失う。受給権は婚姻等によって失われます。額の見通しを立てるときは、この点も前提に入れておく必要があります。
  • 金額はねんきん定期便からは直接読めない。遺族厚生年金は亡くなった方の報酬比例部分から計算されます。概算を知りたい場合は、年金事務所での相談が確実です。

相場観と編集部の価値判断|「金額」より先に「いつまで」を確認する

遺族厚生年金の相談で最初に聞かれるのはほぼ必ず「いくらですか」です。ただ、生活の設計という意味でより効くのは「いつまで出るのか」のほうだと編集部は考えています。子のある世帯では、子が18歳年度末を迎えた時点で遺族基礎年金が終わり、世帯の年金収入が一段下がります。妻であれば中高齢寡婦加算に切り替わりますが、遺族基礎年金と同額ではありません。

つまり、遺族年金は金額が階段状に変わる給付です。いま受け取っている額が続く前提で家計を組むと、数年後に想定外の減少に直面します。2028年の改正で有期給付が広がることを踏まえれば、この「段差がいつ来るか」を先に把握しておく重要性はさらに上がります。

実務的には、年金事務所で(1)いま受けられる給付の種類、(2)それぞれの終了時期、(3)終了後に切り替わる加算の有無を一枚に書き出してもらうのが最短です。金額の精査はそのあとで構いません。なお本記事は制度の一般的な解説であり、個別の受給可否や金額の判断ではありません。

身近な方が亡くなったあとの手続き全体は相続・お葬式の手続きガイドにまとめています。遺族基礎年金も含めた全体像は遺族年金のもらい方をご覧ください。国民年金第1号被保険者の期間がある方については死亡一時金と寡婦年金はどちらを選ぶか、亡くなった月分までの年金については未支給年金の請求もあわせてご覧ください。

よくある質問

夫が亡くなりました。私は会社員ですが、遺族厚生年金は受け取れますか?

働いていること自体は受給の妨げになりません。ただし、亡くなった方に「生計を維持されていた」ことが要件になるため、収入の状況によって判断が分かれます。日本年金機構は生計維持の考え方を公開していますが、境界のケースは自己判断が難しいので、年金事務所にご相談ください。

妻を亡くしました。50歳ですが受け取れないのですか?

現行制度では、子のない夫は55歳以上に限り受給でき、受給開始は原則60歳からです。18歳年度末までの子がいる場合は「子のある配偶者」として受給の対象になります。なお、2028年4月施行予定の改正でこの男女差は解消される予定で、男性については2028年4月から実施されるとされています。

遺族厚生年金と自分の老齢厚生年金は両方もらえますか?

65歳以上で両方の受給権がある場合、老齢厚生年金が全額支給となり、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給が停止されます。単純な合算にはなりません。遺族厚生年金の額そのものも、「亡くなった方の報酬比例部分の4分の3」と「亡くなった方の報酬比例部分の2分の1+自身の老齢厚生年金の2分の1」を比べて高いほうで決まります。

中高齢寡婦加算はいくらで、いつまで出ますか?

要件を満たす妻について、40歳から65歳になるまでの間、年額635,500円が加算されます。65歳以降は、昭和31年4月1日以前生まれなど生年月日の要件を満たす方について経過的寡婦加算に切り替わります。老齢厚生年金の受給権者だった夫が亡くなった場合は、夫の厚生年金保険の被保険者期間が20年以上であることが条件です。

2028年の改正で、いま受け取っている遺族年金は打ち切られますか?

厚生労働省の資料では、見直しの対象範囲は限定的に説明されており、施行直後に5年の有期給付の対象となるのは、18歳年度末までの子がいない一定年齢より若い配偶者とされています。また有期給付には加算が上乗せされ、終了後も障害状態や収入の状況によっては継続給付があるとされています。詳細は今後の政省令等で具体化されるため、ご自身の扱いは年金事務所でご確認ください。

出典(すべて2026年8月27日確認)

  • 日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」(2026年6月22日更新)
  • 日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」
  • 厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」
  • 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」

金額は2026年8月27日時点で日本年金機構が公表している数値です。年金額は改定されることがあります。2028年4月施行分は施行予定の内容で、詳細は今後の政省令等で変わる可能性があります。本記事は制度の一般的な解説であり、個別の受給可否・金額の判断ではありません。実際の請求にあたっては年金事務所またはねんきんダイヤルにご確認ください。

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この記事を書いた人

みんなのミカタナビ編集部です。運営者・たくの編集方針のもと、相続・出産・退職・補助金など「知らないと損する手続きとお金」を、公的機関の一次情報と体験談の取材をもとに時系列で整理しています。数値・期限は必ず公式情報で裏取りし、出典を明記します。

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